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神国編
第52童 ガーディアン
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クリエイト・ゴーレムの魔法を発動させる。
これは素材を元にゴーレムを生み出す魔法だ。
俺を囲うエルフの外側で土が波打ち、その中からゴーレムが次々と生まれその巨体で黒い騎士達の突進を受け止める。
生み出したその数100体。
こいつらを使って相手の数に対抗する。
材料に地面の土を使用しているので周囲の地形がぼこぼこになってしまったが、森で暮らす身軽なエルフ達なら問題なく動けるはずだ。
相手の足元を崩し、更に硬い壁まで用意する。
正に一石二鳥の作戦だ。
「連携は無理なんで、壁にして戦ってくれ!」
残念ながら、ゴーレムに細かい動きは指示できない。
与えている命令は、黒い鎧の敵を倒せと言う簡単な物だった。
だがかなり魔力を籠めているので、元が土でもその硬さは鋼に匹敵する。
動きは遅いが壁約としてなら優秀なは――
「邪魔くさいわねぇ」
巨大なゴーレムが2体同時に上下に引き裂かれ、崩れ落ちて土くれに戻ってしまう。
ユーリの鞭による攻撃だ。
流石のゴーレムも、以前マッドマニピで作った鋼鉄並みのシェルターを容易く破壊した彼女の前では大して役には立たない様だ。
少々負担は大きいが、ユーリに関してはマーサさんとタレスさんの奮闘に期待するしかないだろう。
今は兎に角周囲の敵を減らす事を優先して――
「敵の騎士達。とんでもない強さです!」
俺の傍に控えるルーリが叫ぶ。
見ると周囲ではエルフ達がゴーレムを遮蔽物として敵に攻撃を仕掛けているが、かなりきつそうだ。
ゴーレムと競り合う程のパワーを持ち。
更ににエルフ達の魔法攻撃等は、全てその身に着けた鎧が弾き飛ばしてしまっている。
ヤバそうな相手だとは感じていたが、想像以上の強さだ。
「マジかよ」
あっと言う間に、生み出したゴーレムの半数ほどが潰されてしまう。
ユーリの奴が、マーサさんとタレスさんを同時に相手にしつつ吹き飛ばしまくっているのもあるが、黒い騎士達もかなりのペースでゴーレム達を蹴散らしていく。
このままでは30秒と持たず、ゴーレムは全滅してしまうだろう。
「ちっ!」
俺は追加でゴーレムを生み出す。
今度は更に魔力を――それこそ限界まで魔力を籠めてクリエイト・ゴーレムを発動させ……
≪魔法の進化に成功しました。新たに誕生した魔法は神の英知に記録されます≫
突如頭の中にアナウンスが流れた。
これは魔法の進化を知らせる物だ。
頭の中に概要が浮かび上がり、俺の口が勝手に言葉を紡ぐ。
「クリエイト・ガーディアン!」
再び大地が波打ち、地面が人型へと変わって行く。
但しそのサイズは初めに生み出したゴーレム達よりずっと小さい。
身長は2メートル程度。
体躯もずんぐりむっくりのゴーレムとは違い、筋肉質なスマート――ゴーレムに比べればだが――体つきをしている。
だが何より違うのは、その身に金属製の鎧を纏い、手には同じく金属製の巨大な剣と盾が握られていた事だ。
それどっから出て来た?
「おお!凄いです!」
頭の上にいるリピが前のめりになる。
そのガーディアンは騎士の一撃を盾で防ぎ、その手にした剣で相手の鎧を容易く切り裂いた。
実力的には黒い騎士達と拮抗……いや、完全にそれを上回っている。
これなら周囲の敵を抑え込めるはずだ。
「ミノタウロスか!?」
一体のガーディアンの剣が騎士の兜を叩き割る。
そこから現れたのは、牛面をした例の魔物を思わせる顔だった。
違う所と言えば、頭部に角が生えて無い事だろうか。
「厄介な物を生み出してくれる」
その場を動かず様子見をしていた杖を持つ騎士が、手にしたそれを天へと掲げた。
翳した杖の先。
黒い結界の一部が波打ち、そこから黒い炎の塊が吐き出された。
それは真っすぐ俺に向かって飛んで来る。
「防げ!」
飛んでくるそれに寒気を感じた俺は、咄嗟に周囲のガーディアン数体に命じる。
彼らは指示に従い、盾を翳して大きくジャンプした。
それはとんでもない跳躍力で、10メートルは軽々と飛び上がる。
元が土とは思えない程の身軽さだ。
空中で巨大な黒炎と、ガーディアン達がぶつかり合う。
炎はガーディアン達を瞬く間に飲み込みんでしまったが、次の瞬間強く燃え上がったかと思うと、まるで破裂するかの様に爆発四散した。
「――っ!?」
強い熱気と風に怯み、腕を顔の前に翳す。
爆炎からは大量の土が吐き出され、周囲にばらばらと降り注ぐ。
ガーディアン達は吹き飛ばされたが、魔法は防げた様だ。
蘇生の事と言い。
今の強力な攻撃と言い。
やはりあの黒い騎士を優先して叩く必要がある様だ。
騎士が再び杖を掲げ、攻撃してくる。
それをガーディアンに命じて防がせ、俺は追加のガーディアンを生み出した。
「そうバンバン撃たせるかよ!」
騎士が三度魔法を発動させようとする。
ディレイ開けがギリギリ間に合ったので、それを阻止すべく俺も魔法を放つ。
「ウォーター!」
俺の手から圧縮した水流が飛び出し、レーザーの様に飛んでいく。
狙いは杖を持つ騎士ではなく、奴の手にある杖の方だ。
「ぬぅっ!?しまった!」
騎士は魔法の発動に集中していたのだろう、俺の魔法は奴の掲げた杖に見事に命中し、その柄をへし折り吹き飛ばした。
「やっぱりか!」
2度目の魔法攻撃の時に俺は気づく。
奴の手にした杖が、魔法を使う際赤黒く輝いている事に。
俺はそれがどうにも引っ掛かったのだ。
そもそもこの世界で魔法を使うのに、杖を手にする必要は無い。
マーサさんやタレスさん、それに他のエルフ達も普通に武器を持って魔法を使っていた。
なのに戦闘向きとは思えない細い杖を、奴は態々その手にしている。
これは何かある筈だ。
そう考えた俺は、その杖自体が魔法を生み出す何らかのマジックアイテムなのではと当りを付けたのだ。
そしてその考えは見事に的中する。
奴の放とうとしていた魔法は中断され。
それ所か、周囲を囲っていた黒い結界も消えていく。
これで状況は好転する筈。
「!?」
チラリとマーサさん達の方を見ると、腕を切り飛ばされ吹き飛ばされるタレスさんの姿が……
これは素材を元にゴーレムを生み出す魔法だ。
俺を囲うエルフの外側で土が波打ち、その中からゴーレムが次々と生まれその巨体で黒い騎士達の突進を受け止める。
生み出したその数100体。
こいつらを使って相手の数に対抗する。
材料に地面の土を使用しているので周囲の地形がぼこぼこになってしまったが、森で暮らす身軽なエルフ達なら問題なく動けるはずだ。
相手の足元を崩し、更に硬い壁まで用意する。
正に一石二鳥の作戦だ。
「連携は無理なんで、壁にして戦ってくれ!」
残念ながら、ゴーレムに細かい動きは指示できない。
与えている命令は、黒い鎧の敵を倒せと言う簡単な物だった。
だがかなり魔力を籠めているので、元が土でもその硬さは鋼に匹敵する。
動きは遅いが壁約としてなら優秀なは――
「邪魔くさいわねぇ」
巨大なゴーレムが2体同時に上下に引き裂かれ、崩れ落ちて土くれに戻ってしまう。
ユーリの鞭による攻撃だ。
流石のゴーレムも、以前マッドマニピで作った鋼鉄並みのシェルターを容易く破壊した彼女の前では大して役には立たない様だ。
少々負担は大きいが、ユーリに関してはマーサさんとタレスさんの奮闘に期待するしかないだろう。
今は兎に角周囲の敵を減らす事を優先して――
「敵の騎士達。とんでもない強さです!」
俺の傍に控えるルーリが叫ぶ。
見ると周囲ではエルフ達がゴーレムを遮蔽物として敵に攻撃を仕掛けているが、かなりきつそうだ。
ゴーレムと競り合う程のパワーを持ち。
更ににエルフ達の魔法攻撃等は、全てその身に着けた鎧が弾き飛ばしてしまっている。
ヤバそうな相手だとは感じていたが、想像以上の強さだ。
「マジかよ」
あっと言う間に、生み出したゴーレムの半数ほどが潰されてしまう。
ユーリの奴が、マーサさんとタレスさんを同時に相手にしつつ吹き飛ばしまくっているのもあるが、黒い騎士達もかなりのペースでゴーレム達を蹴散らしていく。
このままでは30秒と持たず、ゴーレムは全滅してしまうだろう。
「ちっ!」
俺は追加でゴーレムを生み出す。
今度は更に魔力を――それこそ限界まで魔力を籠めてクリエイト・ゴーレムを発動させ……
≪魔法の進化に成功しました。新たに誕生した魔法は神の英知に記録されます≫
突如頭の中にアナウンスが流れた。
これは魔法の進化を知らせる物だ。
頭の中に概要が浮かび上がり、俺の口が勝手に言葉を紡ぐ。
「クリエイト・ガーディアン!」
再び大地が波打ち、地面が人型へと変わって行く。
但しそのサイズは初めに生み出したゴーレム達よりずっと小さい。
身長は2メートル程度。
体躯もずんぐりむっくりのゴーレムとは違い、筋肉質なスマート――ゴーレムに比べればだが――体つきをしている。
だが何より違うのは、その身に金属製の鎧を纏い、手には同じく金属製の巨大な剣と盾が握られていた事だ。
それどっから出て来た?
「おお!凄いです!」
頭の上にいるリピが前のめりになる。
そのガーディアンは騎士の一撃を盾で防ぎ、その手にした剣で相手の鎧を容易く切り裂いた。
実力的には黒い騎士達と拮抗……いや、完全にそれを上回っている。
これなら周囲の敵を抑え込めるはずだ。
「ミノタウロスか!?」
一体のガーディアンの剣が騎士の兜を叩き割る。
そこから現れたのは、牛面をした例の魔物を思わせる顔だった。
違う所と言えば、頭部に角が生えて無い事だろうか。
「厄介な物を生み出してくれる」
その場を動かず様子見をしていた杖を持つ騎士が、手にしたそれを天へと掲げた。
翳した杖の先。
黒い結界の一部が波打ち、そこから黒い炎の塊が吐き出された。
それは真っすぐ俺に向かって飛んで来る。
「防げ!」
飛んでくるそれに寒気を感じた俺は、咄嗟に周囲のガーディアン数体に命じる。
彼らは指示に従い、盾を翳して大きくジャンプした。
それはとんでもない跳躍力で、10メートルは軽々と飛び上がる。
元が土とは思えない程の身軽さだ。
空中で巨大な黒炎と、ガーディアン達がぶつかり合う。
炎はガーディアン達を瞬く間に飲み込みんでしまったが、次の瞬間強く燃え上がったかと思うと、まるで破裂するかの様に爆発四散した。
「――っ!?」
強い熱気と風に怯み、腕を顔の前に翳す。
爆炎からは大量の土が吐き出され、周囲にばらばらと降り注ぐ。
ガーディアン達は吹き飛ばされたが、魔法は防げた様だ。
蘇生の事と言い。
今の強力な攻撃と言い。
やはりあの黒い騎士を優先して叩く必要がある様だ。
騎士が再び杖を掲げ、攻撃してくる。
それをガーディアンに命じて防がせ、俺は追加のガーディアンを生み出した。
「そうバンバン撃たせるかよ!」
騎士が三度魔法を発動させようとする。
ディレイ開けがギリギリ間に合ったので、それを阻止すべく俺も魔法を放つ。
「ウォーター!」
俺の手から圧縮した水流が飛び出し、レーザーの様に飛んでいく。
狙いは杖を持つ騎士ではなく、奴の手にある杖の方だ。
「ぬぅっ!?しまった!」
騎士は魔法の発動に集中していたのだろう、俺の魔法は奴の掲げた杖に見事に命中し、その柄をへし折り吹き飛ばした。
「やっぱりか!」
2度目の魔法攻撃の時に俺は気づく。
奴の手にした杖が、魔法を使う際赤黒く輝いている事に。
俺はそれがどうにも引っ掛かったのだ。
そもそもこの世界で魔法を使うのに、杖を手にする必要は無い。
マーサさんやタレスさん、それに他のエルフ達も普通に武器を持って魔法を使っていた。
なのに戦闘向きとは思えない細い杖を、奴は態々その手にしている。
これは何かある筈だ。
そう考えた俺は、その杖自体が魔法を生み出す何らかのマジックアイテムなのではと当りを付けたのだ。
そしてその考えは見事に的中する。
奴の放とうとしていた魔法は中断され。
それ所か、周囲を囲っていた黒い結界も消えていく。
これで状況は好転する筈。
「!?」
チラリとマーサさん達の方を見ると、腕を切り飛ばされ吹き飛ばされるタレスさんの姿が……
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