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神国編
第43童 過保護
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「その服、似合うじゃないか」
駆け寄って来たサラに声を掛ける。
今の彼女は粗末な麻の服ではなく、エルフ達が身に着けている植物の様な、それでいて着心地の良い特殊な繊維で出来た服を身に纏っている。
「えへへ……」
サラが照れ臭そうに笑う。
初めて会った頃は亡くなった両親の事を思い出して時々暗い顔をしていた彼女だったが、なんとか吹っ切ってくれたのか、ここ最近はもうそう言った表情を見せる事は無くなっていた。
「馬子にも衣装って奴だな」
ライリーよ。
それは誉め言葉ではないぞ?
因みに実際ライリーが日本の諺を口にしているのではなく、それに近い言葉として魔法が訳してくれているだけだったりする。
「タレスさん、ルーリさん。サラに服を作っていただいて有難うございます」
カイルが遅れてやって来たルーリと、もう一人のエルフの女性――タレスさんに礼を言う。
この服はサラの為に彼女達が拵えてくれたものだ。
「お気になさらずに」
そう答えると、タレスさんは俺に一礼して当たり前の様に傅《かしず》いて来る。
ルーリやマーサさんはそこそこ砕けた態度で接してくれるのだが、他のエルフは大半が未だこの様に硬いままだった。
「あたしも手伝いましたよ!」
「ああ、ルピもありがとう」
絶対に邪魔にしかなっていなさそうなルピが、胸を張って猛アピールする。
厚かましい奴だ。
「ルーリさん!今日も超綺麗っす!」
未だに諦めていないライリーがルーリを見て舞い上がる。
身の程を知れ。
身の程を。
「ふふ、ありがとうございます。それで皆さん方は何をされていたんですか?」
「いや、まあちょっと世間話を……」
俺達が集まっている理由を聞いてくる。
狩りに出かけると言う話は知られては困る内容なので、言葉を濁そうとすると――
「狩です!これから森に狩に行くんですよ!」
ライリーのアホが最速でばらしてしまった。
空気読めよ。
「え!?狩ですか?皆さんで?」
「本当は俺も行きたかったんですけど、俺達はこれから収穫とかがあるんで勇人の奴が……あ、いや。勇人さんが1人で行くみたいです」
俺の名を呼び捨てにした瞬間、タレスさんの視線が険しくなる。
それを見て、ライリーの奴は慌てて俺に敬称を付けた。
エルフは本格的に俺を神としてロックオンしている様で、多少の砕けた態度は兎も角、俺を敬称無しに呼び捨てにする様な行動に対してはかなり厳しい目を向ける。
「勇人さんがたった一人でですか!?そんなの危ないですよ!! 」
エルフ達は過保護だ。
ひたすら俺を安全な世界樹へと押し込めようとして来る。
だから代表にも拘らず、調印式への同行も断られた。
「狩など、勇人様が直接向かわれる必要はございません。その様な事は我らにお任せいただければ」
「いや、みんな忙しいみたいだし。何より肉を喰いたいってのは俺の我が儘だから人を使うってのは」
タラン村の人間もエルフ達も、色々と世界樹の中で忙しく働いてくれている。
ここで仕事をしいていないのは俺や妖精ぐらいのものだ。
その俺が、肉が喰いたいと言う我が儘で、忙しいく働く彼らに追加の用事を押し付ける様な真似をするのは流石に躊躇われる。
だからバレない様、夜中にこそッと出かけて狩りをしようとしてたのだが、ライリーのせいでそれも完全に御破算だ。
「何をおっしゃられます!私達は神である勇人様の為に存在しているのですから!そんな事など気にせず!どうぞ気兼ねなくお命じ下さい!」
「じゃあ申し訳ありません。少しでもいいんで肉を取って来て貰えますか」
こうなるともう、俺が狩りに行くのは難しいだろう。
きっと見張りが付いてしまう筈だ。
勝手に抜け出せば直ぐにばれて、エルフ達が必死に俺を探し回るのは目に見えている。
「お任せください!我らエルフの名誉にかけて、必ずやご期待にお応えして見せましょう!」
タレスさんはそう嬉々として答えると、一礼して去って行く。
俺はそんな彼女の背中を眺め、やれやれと肩を竦めた。
駆け寄って来たサラに声を掛ける。
今の彼女は粗末な麻の服ではなく、エルフ達が身に着けている植物の様な、それでいて着心地の良い特殊な繊維で出来た服を身に纏っている。
「えへへ……」
サラが照れ臭そうに笑う。
初めて会った頃は亡くなった両親の事を思い出して時々暗い顔をしていた彼女だったが、なんとか吹っ切ってくれたのか、ここ最近はもうそう言った表情を見せる事は無くなっていた。
「馬子にも衣装って奴だな」
ライリーよ。
それは誉め言葉ではないぞ?
因みに実際ライリーが日本の諺を口にしているのではなく、それに近い言葉として魔法が訳してくれているだけだったりする。
「タレスさん、ルーリさん。サラに服を作っていただいて有難うございます」
カイルが遅れてやって来たルーリと、もう一人のエルフの女性――タレスさんに礼を言う。
この服はサラの為に彼女達が拵えてくれたものだ。
「お気になさらずに」
そう答えると、タレスさんは俺に一礼して当たり前の様に傅《かしず》いて来る。
ルーリやマーサさんはそこそこ砕けた態度で接してくれるのだが、他のエルフは大半が未だこの様に硬いままだった。
「あたしも手伝いましたよ!」
「ああ、ルピもありがとう」
絶対に邪魔にしかなっていなさそうなルピが、胸を張って猛アピールする。
厚かましい奴だ。
「ルーリさん!今日も超綺麗っす!」
未だに諦めていないライリーがルーリを見て舞い上がる。
身の程を知れ。
身の程を。
「ふふ、ありがとうございます。それで皆さん方は何をされていたんですか?」
「いや、まあちょっと世間話を……」
俺達が集まっている理由を聞いてくる。
狩りに出かけると言う話は知られては困る内容なので、言葉を濁そうとすると――
「狩です!これから森に狩に行くんですよ!」
ライリーのアホが最速でばらしてしまった。
空気読めよ。
「え!?狩ですか?皆さんで?」
「本当は俺も行きたかったんですけど、俺達はこれから収穫とかがあるんで勇人の奴が……あ、いや。勇人さんが1人で行くみたいです」
俺の名を呼び捨てにした瞬間、タレスさんの視線が険しくなる。
それを見て、ライリーの奴は慌てて俺に敬称を付けた。
エルフは本格的に俺を神としてロックオンしている様で、多少の砕けた態度は兎も角、俺を敬称無しに呼び捨てにする様な行動に対してはかなり厳しい目を向ける。
「勇人さんがたった一人でですか!?そんなの危ないですよ!! 」
エルフ達は過保護だ。
ひたすら俺を安全な世界樹へと押し込めようとして来る。
だから代表にも拘らず、調印式への同行も断られた。
「狩など、勇人様が直接向かわれる必要はございません。その様な事は我らにお任せいただければ」
「いや、みんな忙しいみたいだし。何より肉を喰いたいってのは俺の我が儘だから人を使うってのは」
タラン村の人間もエルフ達も、色々と世界樹の中で忙しく働いてくれている。
ここで仕事をしいていないのは俺や妖精ぐらいのものだ。
その俺が、肉が喰いたいと言う我が儘で、忙しいく働く彼らに追加の用事を押し付ける様な真似をするのは流石に躊躇われる。
だからバレない様、夜中にこそッと出かけて狩りをしようとしてたのだが、ライリーのせいでそれも完全に御破算だ。
「何をおっしゃられます!私達は神である勇人様の為に存在しているのですから!そんな事など気にせず!どうぞ気兼ねなくお命じ下さい!」
「じゃあ申し訳ありません。少しでもいいんで肉を取って来て貰えますか」
こうなるともう、俺が狩りに行くのは難しいだろう。
きっと見張りが付いてしまう筈だ。
勝手に抜け出せば直ぐにばれて、エルフ達が必死に俺を探し回るのは目に見えている。
「お任せください!我らエルフの名誉にかけて、必ずやご期待にお応えして見せましょう!」
タレスさんはそう嬉々として答えると、一礼して去って行く。
俺はそんな彼女の背中を眺め、やれやれと肩を竦めた。
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