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神国編
ユーリ・サンダルフォン⑤
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「思い出したかい?」
男の声は何処か楽し気だ。
「ええ、思い出したわ。貴方が生き返らせてくれたのね。ありがとう」
私は素直に礼を言う。
あんなよく分からない男に殺されて、危うく王国と帝国を滅茶苦茶にするという目的が途切れかけたのだ。感謝しても感謝し足りない。
とは言え――
「もう貴方に危害を加えようとはしないわ。今度こそ本当に姿を現して頂戴」
相手が正体不明である事には変わりない。
きちんと見極めるまでは、まだ安心する事は出来なかった。
何せ相手は死者を蘇生するような化け物なのだから。
「本当かい?僕は気の長い方だけど、流石に同じ事を2度もやられたら君を殺しちゃうかもよ?」
言ってくれる。
そう簡単に私が殺せると思ったら大間違いだ。
まあ相手から仕掛けて来ない限り、もう私も迂闊に攻撃する気は無いが。
再び私の前に、音もなく男が姿を現した。
男は黒いフードを深くかぶり、顔は口元だけしか見る事が出来ない。
だが声のはりと僅かに見える肌が若々しい事から、年齢は10代後半から20代前半程度だと予想する。
「単刀直入に聞くわ。何故私を生き返らせたのかしら?」
親切心でやったのでないのは分かる。
何らかの目的が有っての事だろう。
兎に角、まずは相手の目的を確認する。
「実はこの世界を滅茶苦茶にしたいと思っていてね、僕は。出来れば君にその手伝いをして貰いたいんだ?」
「……」
本気で言っているのだろうか?
内容としては……正直魅力的だった。
鬼子の姿へと変貌した私は、軍に復帰するのは絶望的だ。
カレンドとペイレス。
両方を破滅に追いやりたい身としては、正に渡りに船と言っていい提案だった。
「誘いとしては、悪くないわね。でも――」
だが果たしてこの男にそれだけの力があるのだろうか?
幾ら死者を復活するだけの力があったとしても、それだけで世界を破壊できるとは思えない。
「疑っているみたいだね?」
そう言うと、男が指を鳴らす。
途端暗闇が開け、光が差し込んだ。
「!?」
それは見た事も無い場所だった。
何らかの建造物だと言うのは分かる。
だが正面の大窓から移る光景。
「これは……空を飛んでいる?」
それは雲だった。
視界一面を雲が流れていく。
考え辛い事だが、今私の居る場所は空に浮いているという事になる。
「これは飛空船っていう、空を飛ぶ乗り物さ」
空を飛ぶ乗り物?
そんな物は聞いた事が無い。
もしそんな物があるとしたなら、それは太古の――
「先史文明の遺産さ。これ以外にもいっぱいあるよ。どう?僕のいう事を信じる気になったかい?」
先史文明。
それは今の世が生まれる前に滅びたとされる文明。
極まれに遺跡から特殊なアイテムが発掘され、その精度の高さから今よりも遥かに進んだ技術を有していたと言われている超文明だ。
伝承によると神の怒りによって滅びたとされているけど、その真偽は定かではない。
「ふぅん」
超文明の遺産を大量に保有している……か。
成程。
その話が嘘でないのなら、あながち妄言ではなさそうだ。
乗ってみるのも悪くないわね。
「その顔。どうやら興味を持ってくれたみたいだね」
「ええ、詳しい話を聞かせて頂戴」
世界事態には興味がない。
私が狙うのはあくまでもカレンドとペイレスのみだ。
だが目的達成に手段を選ぶつもりはなかった。
必要だというなら、世界でも何でも滅茶苦茶にしてやろう。
こうして私は、超古代文明の遺産を有する組織に所属する事になる。
男の声は何処か楽し気だ。
「ええ、思い出したわ。貴方が生き返らせてくれたのね。ありがとう」
私は素直に礼を言う。
あんなよく分からない男に殺されて、危うく王国と帝国を滅茶苦茶にするという目的が途切れかけたのだ。感謝しても感謝し足りない。
とは言え――
「もう貴方に危害を加えようとはしないわ。今度こそ本当に姿を現して頂戴」
相手が正体不明である事には変わりない。
きちんと見極めるまでは、まだ安心する事は出来なかった。
何せ相手は死者を蘇生するような化け物なのだから。
「本当かい?僕は気の長い方だけど、流石に同じ事を2度もやられたら君を殺しちゃうかもよ?」
言ってくれる。
そう簡単に私が殺せると思ったら大間違いだ。
まあ相手から仕掛けて来ない限り、もう私も迂闊に攻撃する気は無いが。
再び私の前に、音もなく男が姿を現した。
男は黒いフードを深くかぶり、顔は口元だけしか見る事が出来ない。
だが声のはりと僅かに見える肌が若々しい事から、年齢は10代後半から20代前半程度だと予想する。
「単刀直入に聞くわ。何故私を生き返らせたのかしら?」
親切心でやったのでないのは分かる。
何らかの目的が有っての事だろう。
兎に角、まずは相手の目的を確認する。
「実はこの世界を滅茶苦茶にしたいと思っていてね、僕は。出来れば君にその手伝いをして貰いたいんだ?」
「……」
本気で言っているのだろうか?
内容としては……正直魅力的だった。
鬼子の姿へと変貌した私は、軍に復帰するのは絶望的だ。
カレンドとペイレス。
両方を破滅に追いやりたい身としては、正に渡りに船と言っていい提案だった。
「誘いとしては、悪くないわね。でも――」
だが果たしてこの男にそれだけの力があるのだろうか?
幾ら死者を復活するだけの力があったとしても、それだけで世界を破壊できるとは思えない。
「疑っているみたいだね?」
そう言うと、男が指を鳴らす。
途端暗闇が開け、光が差し込んだ。
「!?」
それは見た事も無い場所だった。
何らかの建造物だと言うのは分かる。
だが正面の大窓から移る光景。
「これは……空を飛んでいる?」
それは雲だった。
視界一面を雲が流れていく。
考え辛い事だが、今私の居る場所は空に浮いているという事になる。
「これは飛空船っていう、空を飛ぶ乗り物さ」
空を飛ぶ乗り物?
そんな物は聞いた事が無い。
もしそんな物があるとしたなら、それは太古の――
「先史文明の遺産さ。これ以外にもいっぱいあるよ。どう?僕のいう事を信じる気になったかい?」
先史文明。
それは今の世が生まれる前に滅びたとされる文明。
極まれに遺跡から特殊なアイテムが発掘され、その精度の高さから今よりも遥かに進んだ技術を有していたと言われている超文明だ。
伝承によると神の怒りによって滅びたとされているけど、その真偽は定かではない。
「ふぅん」
超文明の遺産を大量に保有している……か。
成程。
その話が嘘でないのなら、あながち妄言ではなさそうだ。
乗ってみるのも悪くないわね。
「その顔。どうやら興味を持ってくれたみたいだね」
「ええ、詳しい話を聞かせて頂戴」
世界事態には興味がない。
私が狙うのはあくまでもカレンドとペイレスのみだ。
だが目的達成に手段を選ぶつもりはなかった。
必要だというなら、世界でも何でも滅茶苦茶にしてやろう。
こうして私は、超古代文明の遺産を有する組織に所属する事になる。
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