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第28童 無人
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呪いをかけた相手を見つけてくれ……か。
エメラルドドラゴンは森を浄化した後、再び眠りに就いた。
その際頼まれた事だ。
そしてその相手が危険ならば、処理して欲しいとも言ってきた。
まああんなでかい竜に呪いをかけて森を腐らせたような相手だ、危険じゃない訳が無い。
つまり処理ありきの頼み事だった。
俺は迷ったが、一応その頼みを承諾している。
危険な者に進んで近づくのはあまり気は進まなかったが、やらかしている事を考えると、ほったらかしにするのは危険だと判断したからだ。
但し、あくまでも自分の生活環境に影響が出そうなら。
という条件付きではあるが。
そいつを見つけ出すために世界中を探し回ったりするつもりは更々無い。
俺もそこまでお人好しではないからな。
因みに犯人の手掛かりは0だ。
エメラルドドラゴンは寝てるところにいきなり呪いをかけられたらしく、パニックから立ち直った時には犯人の影も形も見当たらなかったそうだ。
「神様!村が見えてきましたよ!」
そう言われ、俺はエアフライの速度を落とす。
ぼーっと考え事をしているうちに村に着いた様だ。
そのまま広場の辺りにルーリと一緒に着地する。
ルーリは護衛として俺に付き従う様、マーサさんから命じられて付いて来た。
お別れだと思っていたので嬉しい誤算だ。
彼女を見たら、きっとライリー辺りは小躍りして喜ぶだろうな。
「神様の凱旋だって言うのに、出迎えも無しとか。ほんとにしけた村ですね、ここは」
彼女の言う通り広場には誰も居ない。
とは言え、帰るタイミング等伝えていないのだから出迎えがある方が不自然な訳だが。
しかしあれだな。
リピの言葉遣いが段々悪くなってきた気がする。
折角可愛らしい見た目をしているのに、口と頭が悪くては台無しだ。
「皆さんお昼寝でもされているのでしょうか」
「いや、流石にそれは……」
魔法でこの村は冬とは思えないほどの陽気に包まれている。
とは言え、全員がお昼寝というのは少々考え辛い。
しかし皆は何をしているのだろう。
昼過ぎのこの時間帯、全員が家に籠っているなんてのはかなり珍しい事だ。
「サラー、土産を持って帰って来たぞー」
サラの家の玄関を叩くが、反応は返ってこない。
ガラガラと引き戸を開けて中を覗いてみたが、誰もいない様だ。
折角ご所望の細工を沢山貰ってきたというのに、一体どこに出かけたのやら。
次いで俺はカイルの家を覗いてみる。
だがそこにも誰も居なかった。
俺は不思議に思いつつも、順次住居を覗いて回る。
だが結局誰の姿も見当たらない。
「どうなってるんだ?一体?」
「狩りに出かけられたんでは無いですか?」
ルーリに言われて一瞬納得しかけたが、それはあり得ない事に気づく。
サラの様な子供を狩りに連れて行くとは思えないし、何より生まれたばかりの赤ちゃんだっているのだ。
赤ん坊連れの狩りなど、常軌を逸しているにも程がある。
そこまで行くと最早ホラーだ。
「狩りは無いと思いますよ。行くんならきっと俺が帰ってからにするはずですから」
皆は一体どこに?
もう一度村の中を見て回るが、やはり人っ子一人見当たらない。
建物などが特に倒壊していない事から、魔物に襲われたという線も薄いだろう。
どうしたものかと頭を悩ませていると、遠くから声が聞こえてきた。
「かみさまーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
声の主は妖精だ。
血相を変えて突っ込んできたその妖精は、俺の頭に掴まるとそのままチューチューし始めた。
何だこいつ?
「あ!ポッチャマ!あんたなんで此処にいるのよ」
「げばぁ!」
どうやらリピの知り合いらしい。
彼女は俺の頭に吸い付いている妖精をぞんざいに蹴り飛ばした。
「酷いや、リピ。いきなり蹴り飛ばすなんてさ」
「ふん!神様のそこはあたしの特等席なのよ!」
特等席なんて物をお前に許した覚えは無いんだがな。
まあこいつには言っても無駄だろうが。
「えー、ずるいや!」
「そんな事よりあんた、何しに来たのよ?まさか神様係を狙ってるんじゃないでしょうね!」
「ち、違うよ」
リピが凄むと、ポッチャマは怯えたようにルーリの後ろへと隠れる。
てか神様係ってリピが勝手にほざいてるだけじゃないんだな。
まあどうでもいいけど。
「じゃあ何しに来たのよ!?」
「あ、そうだ!こんな事している場合じゃなかったんだ!神様!長老が攫われちゃったんです!どうか助けてください!!」
は?
攫われた?
誰に?
「どういう事よ!説明しなさい!!」
「実は――」
ポッチャマは事のあらましを説明しだす。
俺はそれを聞いて、とんでもない大事になったと頭を抱えるのだった。
エメラルドドラゴンは森を浄化した後、再び眠りに就いた。
その際頼まれた事だ。
そしてその相手が危険ならば、処理して欲しいとも言ってきた。
まああんなでかい竜に呪いをかけて森を腐らせたような相手だ、危険じゃない訳が無い。
つまり処理ありきの頼み事だった。
俺は迷ったが、一応その頼みを承諾している。
危険な者に進んで近づくのはあまり気は進まなかったが、やらかしている事を考えると、ほったらかしにするのは危険だと判断したからだ。
但し、あくまでも自分の生活環境に影響が出そうなら。
という条件付きではあるが。
そいつを見つけ出すために世界中を探し回ったりするつもりは更々無い。
俺もそこまでお人好しではないからな。
因みに犯人の手掛かりは0だ。
エメラルドドラゴンは寝てるところにいきなり呪いをかけられたらしく、パニックから立ち直った時には犯人の影も形も見当たらなかったそうだ。
「神様!村が見えてきましたよ!」
そう言われ、俺はエアフライの速度を落とす。
ぼーっと考え事をしているうちに村に着いた様だ。
そのまま広場の辺りにルーリと一緒に着地する。
ルーリは護衛として俺に付き従う様、マーサさんから命じられて付いて来た。
お別れだと思っていたので嬉しい誤算だ。
彼女を見たら、きっとライリー辺りは小躍りして喜ぶだろうな。
「神様の凱旋だって言うのに、出迎えも無しとか。ほんとにしけた村ですね、ここは」
彼女の言う通り広場には誰も居ない。
とは言え、帰るタイミング等伝えていないのだから出迎えがある方が不自然な訳だが。
しかしあれだな。
リピの言葉遣いが段々悪くなってきた気がする。
折角可愛らしい見た目をしているのに、口と頭が悪くては台無しだ。
「皆さんお昼寝でもされているのでしょうか」
「いや、流石にそれは……」
魔法でこの村は冬とは思えないほどの陽気に包まれている。
とは言え、全員がお昼寝というのは少々考え辛い。
しかし皆は何をしているのだろう。
昼過ぎのこの時間帯、全員が家に籠っているなんてのはかなり珍しい事だ。
「サラー、土産を持って帰って来たぞー」
サラの家の玄関を叩くが、反応は返ってこない。
ガラガラと引き戸を開けて中を覗いてみたが、誰もいない様だ。
折角ご所望の細工を沢山貰ってきたというのに、一体どこに出かけたのやら。
次いで俺はカイルの家を覗いてみる。
だがそこにも誰も居なかった。
俺は不思議に思いつつも、順次住居を覗いて回る。
だが結局誰の姿も見当たらない。
「どうなってるんだ?一体?」
「狩りに出かけられたんでは無いですか?」
ルーリに言われて一瞬納得しかけたが、それはあり得ない事に気づく。
サラの様な子供を狩りに連れて行くとは思えないし、何より生まれたばかりの赤ちゃんだっているのだ。
赤ん坊連れの狩りなど、常軌を逸しているにも程がある。
そこまで行くと最早ホラーだ。
「狩りは無いと思いますよ。行くんならきっと俺が帰ってからにするはずですから」
皆は一体どこに?
もう一度村の中を見て回るが、やはり人っ子一人見当たらない。
建物などが特に倒壊していない事から、魔物に襲われたという線も薄いだろう。
どうしたものかと頭を悩ませていると、遠くから声が聞こえてきた。
「かみさまーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
声の主は妖精だ。
血相を変えて突っ込んできたその妖精は、俺の頭に掴まるとそのままチューチューし始めた。
何だこいつ?
「あ!ポッチャマ!あんたなんで此処にいるのよ」
「げばぁ!」
どうやらリピの知り合いらしい。
彼女は俺の頭に吸い付いている妖精をぞんざいに蹴り飛ばした。
「酷いや、リピ。いきなり蹴り飛ばすなんてさ」
「ふん!神様のそこはあたしの特等席なのよ!」
特等席なんて物をお前に許した覚えは無いんだがな。
まあこいつには言っても無駄だろうが。
「えー、ずるいや!」
「そんな事よりあんた、何しに来たのよ?まさか神様係を狙ってるんじゃないでしょうね!」
「ち、違うよ」
リピが凄むと、ポッチャマは怯えたようにルーリの後ろへと隠れる。
てか神様係ってリピが勝手にほざいてるだけじゃないんだな。
まあどうでもいいけど。
「じゃあ何しに来たのよ!?」
「あ、そうだ!こんな事している場合じゃなかったんだ!神様!長老が攫われちゃったんです!どうか助けてください!!」
は?
攫われた?
誰に?
「どういう事よ!説明しなさい!!」
「実は――」
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俺はそれを聞いて、とんでもない大事になったと頭を抱えるのだった。
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