25 / 61
第25童 デート失敗
しおりを挟む
「こりゃ酷いな」
エルフの里を離れ、ルーリに連れられ森に入っていく。
少し進んだところで異常な光景を目の当たりにし、思わずつぶやいた。
目の前には黒く不気味に変色した枯れ木が立ち並び、朽木からは禍々しい瘴気の様な物が漂っている。
こんなのが家に迫ってきたら、そら引っ越しするわ。
エルフ達が森を捨てるのも納得できる。
「とんでもない事になってるな。てかこの瘴気みたいなのは吸っても大丈夫なんですか?」
思わず手で口を覆って、ルーリに尋ねる。
だが彼女は言葉の意味が分からないかの様に、キョトンとしていた。
リピを見ると、同様に訳が分からないと言った表情をしている。
あれ?ひょっとして見えてない?
見えてるの俺だけ?
「神様?何を言ってるんですか?」
「あの?勇人さんには何か見えてらっしゃるんですか?」
「ああ、まあ。ちょっと瘴気みたいな黒い靄が、枯れた木から立ち昇ってるのが」
「「ええ!?そうなんですか」」
2人の声がハモった。
リピはその場から飛んで逃げ、遠くの樹の幹からこそっと顔を出して声を上げる。
「それって大丈夫なんですか!?私、死んじゃいませんよね!?」
知らん。
見ただけでどんな影響が出るかなど分かる筈も無い。
だからこそ、ルーリさんに尋ねたのだ。
「森の異変に近づいて、命を落としたエルフってのは居るんですか?」
「い、いえ。私達エルフで亡くなったものは居ません」
ならば命に別条はない。
もしくは短時間ならそこまでの影響はないという事だろう。
だがリピは小さいから、その分影響を受けやすい可能性が高い。
俺は彼女に離れている様大声で伝え、魔法を発動させる。
「サーチ」
これは名前そのままの魔法だ。
辺りの状況を調査し、通常では考えられない現象があればそれを見つけ出してその原因を探り出す。
まあ目の前に広がる状況を考えると、何もかもが異常なので、何も見つからないという事は無いだろう。案の定、大量の異常報告が俺の脳内に流れ込んできた。
「この異常の原因は、どうも地面にあるみたいだな」
頭に入って来た情報を総合して考え、森がこうなっているのは何らかの汚染が地中で広がっている為だと俺は結論付ける。
どうやら枯れ木から上がる黒い瘴気は、地中から木の根によって養分と一緒に吸い上げられたもので、枯れているのもそれが影響の様だ。
「わかったんですか?」
「根本的な理由はまだですが、取り敢えず土壌が原因なのは分かりました」
「かみさまー!ちゃっちゃと片付けちゃってください!」
かなり距離が離れているのだが、リピの地獄耳には俺の言葉が届いていた様だ。
だが声は聞こえていても、意味は脳にまで到達していない様だ。
取り敢えずの原因しか分かっていないのに、リピはさっさとなんとしろと俺を急かしてくる。
「根本的な原因を探る為、空から見て見ましょう」
俺はリピの言葉を無視し、ルーリと二人エアフライで飛び上がる。
瘴気が届いていない上空まで昇り辺り一帯を眺めていると、リピが俺の方に向かって高速で飛んできた。
「ちょっと神様!私を置いて行かないでくださいよ!!」
「ちっ」
調査とはいえ、折角ルーリさんと二人っきりになれると思ったのに本当に邪魔な奴だ。
木にしがみ付いて怯えてればいい物を。
「あ!なんですかその舌打ちは!?私は神様係なんですよ!!神様とはいついかなる時も一緒じゃないといけないんです!私を置いて行こうなんて、そうは問屋が卸しませんから!!」
だからその神様係って何だよ?
見張りか?
妖精共は俺の事を見張ってんのか?
まあ奴らにそんな知能があるとは思えないから、単にリピが適当に口にしてるだけだろうけど。
「はいはい、わかったわかった。この辺り一帯を調べる為に飛び回るから、しっかり掴まっとけよ」
ちらりと横を見ると、ルーリが楽しげに笑っている。
何度見ても天使の様な笑顔だ。
ま、二人っきりにはなれなかったがこの笑顔が見れただけ良しとしよう。
エルフの里を離れ、ルーリに連れられ森に入っていく。
少し進んだところで異常な光景を目の当たりにし、思わずつぶやいた。
目の前には黒く不気味に変色した枯れ木が立ち並び、朽木からは禍々しい瘴気の様な物が漂っている。
こんなのが家に迫ってきたら、そら引っ越しするわ。
エルフ達が森を捨てるのも納得できる。
「とんでもない事になってるな。てかこの瘴気みたいなのは吸っても大丈夫なんですか?」
思わず手で口を覆って、ルーリに尋ねる。
だが彼女は言葉の意味が分からないかの様に、キョトンとしていた。
リピを見ると、同様に訳が分からないと言った表情をしている。
あれ?ひょっとして見えてない?
見えてるの俺だけ?
「神様?何を言ってるんですか?」
「あの?勇人さんには何か見えてらっしゃるんですか?」
「ああ、まあ。ちょっと瘴気みたいな黒い靄が、枯れた木から立ち昇ってるのが」
「「ええ!?そうなんですか」」
2人の声がハモった。
リピはその場から飛んで逃げ、遠くの樹の幹からこそっと顔を出して声を上げる。
「それって大丈夫なんですか!?私、死んじゃいませんよね!?」
知らん。
見ただけでどんな影響が出るかなど分かる筈も無い。
だからこそ、ルーリさんに尋ねたのだ。
「森の異変に近づいて、命を落としたエルフってのは居るんですか?」
「い、いえ。私達エルフで亡くなったものは居ません」
ならば命に別条はない。
もしくは短時間ならそこまでの影響はないという事だろう。
だがリピは小さいから、その分影響を受けやすい可能性が高い。
俺は彼女に離れている様大声で伝え、魔法を発動させる。
「サーチ」
これは名前そのままの魔法だ。
辺りの状況を調査し、通常では考えられない現象があればそれを見つけ出してその原因を探り出す。
まあ目の前に広がる状況を考えると、何もかもが異常なので、何も見つからないという事は無いだろう。案の定、大量の異常報告が俺の脳内に流れ込んできた。
「この異常の原因は、どうも地面にあるみたいだな」
頭に入って来た情報を総合して考え、森がこうなっているのは何らかの汚染が地中で広がっている為だと俺は結論付ける。
どうやら枯れ木から上がる黒い瘴気は、地中から木の根によって養分と一緒に吸い上げられたもので、枯れているのもそれが影響の様だ。
「わかったんですか?」
「根本的な理由はまだですが、取り敢えず土壌が原因なのは分かりました」
「かみさまー!ちゃっちゃと片付けちゃってください!」
かなり距離が離れているのだが、リピの地獄耳には俺の言葉が届いていた様だ。
だが声は聞こえていても、意味は脳にまで到達していない様だ。
取り敢えずの原因しか分かっていないのに、リピはさっさとなんとしろと俺を急かしてくる。
「根本的な原因を探る為、空から見て見ましょう」
俺はリピの言葉を無視し、ルーリと二人エアフライで飛び上がる。
瘴気が届いていない上空まで昇り辺り一帯を眺めていると、リピが俺の方に向かって高速で飛んできた。
「ちょっと神様!私を置いて行かないでくださいよ!!」
「ちっ」
調査とはいえ、折角ルーリさんと二人っきりになれると思ったのに本当に邪魔な奴だ。
木にしがみ付いて怯えてればいい物を。
「あ!なんですかその舌打ちは!?私は神様係なんですよ!!神様とはいついかなる時も一緒じゃないといけないんです!私を置いて行こうなんて、そうは問屋が卸しませんから!!」
だからその神様係って何だよ?
見張りか?
妖精共は俺の事を見張ってんのか?
まあ奴らにそんな知能があるとは思えないから、単にリピが適当に口にしてるだけだろうけど。
「はいはい、わかったわかった。この辺り一帯を調べる為に飛び回るから、しっかり掴まっとけよ」
ちらりと横を見ると、ルーリが楽しげに笑っている。
何度見ても天使の様な笑顔だ。
ま、二人っきりにはなれなかったがこの笑顔が見れただけ良しとしよう。
0
お気に入りに追加
1,034
あなたにおすすめの小説
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
転異世界のアウトサイダー 神達が仲間なので、最強です
びーぜろ@転移世界のアウトサイダー発売中
ファンタジー
告知となりますが、2022年8月下旬に『転異世界のアウトサイダー』の3巻が発売となります。
それに伴い、第三巻収録部分を改稿しました。
高校生の佐藤悠斗は、ある日、カツアゲしてきた不良二人とともに異世界に転移してしまう。彼らを召喚したマデイラ王国の王や宰相によると、転移者は高いステータスや強力なユニークスキルを持っているとのことだったが……悠斗のステータスはほとんど一般人以下で、スキルも影を動かすだけだと判明する。後日、迷宮に不良達と潜った際、無能だからという理由で囮として捨てられてしまった悠斗。しかし、密かに自身の能力を進化させていた彼は、そのスキル『影魔法』を駆使して、ピンチを乗り切る。さらには、道中で偶然『召喚』スキルをゲットすると、なんと大天使や神様を仲間にしていくのだった――規格外の仲間と能力で、どんな迷宮も手軽に攻略!? お騒がせ影使いの異世界放浪記、開幕!
いつも応援やご感想ありがとうございます!!
誤字脱字指摘やコメントを頂き本当に感謝しております。
更新につきましては、更新頻度は落とさず今まで通り朝7時更新のままでいこうと思っています。
書籍化に伴い、タイトルを微変更。ペンネームも変更しております。
ここまで辿り着けたのも、みなさんの応援のおかげと思っております。
イラストについても本作には勿体ない程の素敵なイラストもご用意頂きました。
引き続き本作をよろしくお願い致します。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる