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第23童 新魔法
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「うわぁ!凄いですね!」
上空高く飛翔し、ルーリが感激して声を上げる。
喜んでくれて何よりだ。
エルフの里は山向う。
険しい山を越えるに当たって、俺はエアフライの魔法を使う。
歩いて山越えなどだるくてしょうがない。
普通に冬の山をエアフライなんかで越えようとしたら凍死間違いなしなのだが、温暖化魔法の影響で上空でも暑いぐらいだ。
というかこの魔法、範囲内の温度は一律になるっぽい。
その為、上空数百メートルまで上昇しても地上と全く同じ感じだ。
「私なんて魔法無しで飛べますよ!」
リピが空中で胡坐をかいて腕を組み、ドヤ顔で自慢する。
羽が生えてるんだからそりゃそうだろう。
寧ろ飛べなかったら、背中のそれは只の重しにしかならない訳だが。
「じゃあ自分で飛べよ」
偉そうに飛べる宣言したのだ。
精々その御自慢の羽でパタパタ飛んで貰うとしよう。
リピの飛行速度は大したことが無いので、これで堂々と置いていける。
ルーリさんと二人で、空の遊覧を楽しむとしよう。
「ままま、待ってくださいよ神様!」
飛んで行こうとすると、慌てたようにリピが俺の首筋に掴まる。
襟足をがっつり掴まれてちょっと痛い。
「おい、置いて行かないから髪を強く掴むのを止めろ」
「ほんとですかぁ?」
神様のいう事なんだから少しは信用しろよ。
こいつは疑り深くて困る。
「クスクスクス。お二人は仲がいいんですね」
ルーリが口元を押さえて笑う。
笑顔も超かわいい。まるで天使の様だった。
普段はうざいだけの妖精だが、偶には役に立つものだ。
「私は神様係ですから」
リピが訳の分からない事を笑顔でほざく。
いつからお前はそんな係に付いた?
ていうか神様係ってなんだよ。
彼女に何かして貰った事等全くない。
一体何の仕事をする係なのやら。
俺達は飛行魔法で景色を堪能しながら進む。
本来雪に覆われているべき山々は、春の到来を勘違いした木々に青々と彩られ。
上空からなので目には見えないが、きっと冬眠している生き物なんかも目覚めて徘徊している事だろう。
その影響で生態系が狂ってしまわないか少し心配だったが、まあたかだか数か月程度の事だ。
そこまで深刻な影響は出ないだろう……たぶん。
俺は不都合な事は気にしないようにして、ルーリとの空のデートを堪能する。
え?デートじゃないって
童貞にとっておまけ付とは言え、女の子と一緒の空の旅を楽しむのは実質デートみたいなもんよ。童貞ってのはそんなもんだ。
「食事にしようか」
お腹が空いて来たので、開けた場所へ着地した。
太陽が真上に差し掛かかっているので、時間的にも丁度お昼頃だろう。
「私は全然平気ですよ!」
「そりゃお前は俺にくっついてる間中、勝手にちょろちょろ人の魔力吸ってたからな」
間食しまくってるんだ、そら腹は減ってないだろう。
大体今のはルーリさんに行ったのであって、お前に入っとらん。
「あれ?バレてました?」
てへぺろしてるリピを無視し、俺は背負った袋からお昼ご飯を取り出す。
村で用意して貰った硬いパンもどきとドライフルーツ、それに干し肉のセットだ。
小型の木製のコップを2つ取り出し、その中に魔法で水を満たした。
わざとコップを一つだけしか出さずに二人で使って関節キッスを狙う手もあったが、童貞には敷居が高すぎて断念する。
「ふふ、美味しいですね」
「ええ」
確かに凄く美味しい。
正直パンは相変わらず硬くてもさもさしているし、肉だってそうだ。
内容はさもしい事この上なしだが、目の前に美人が座っている。
只それだけでこうも食事が美味しく感じられ様とは。
やっぱ結婚してぇ……って、いかんいかん。
これではライリーと変わらんではないか。
人間身の程を知る事が大事だ。
調子に乗っても只痛い目を見るだけ、何事も程々と諦めがが一番。
「そういえば、エルフの村はどの辺りにあるんですか?」
彼女達の住処は山の向うの森とは知っているが、距離については聞いていない。
雑談がてら聞いておく。
「山の直ぐ麓の森ですから、今のペースだと後3時間もあれば着くと思いますよ」
直ぐ麓か。
案外近いな。
彼女とのデートもそう長くはないと知って、物悲しい気分になって来る。
さり気無く速度を落として少しでも長く……でもバレて俺の意図が見透かされたら恥ずかしいしなぁ。
まあ半日とはいえ、美女とほぼ二人っきりでいられるのだ。
それで善しと我慢しよう。
食事を終え。
少し休憩を入れてから出発の段になった所で、リピとルーリの顔色が変わる。
何か良くない事が起きている。
そう言う表情だ。
「どうかしたんですか?」
「何か風を切る音が聞こえます」
風を切る音?
俺にはまるで聞こえない。
だが彼女達の表情を見る限り、冗談を言っているようには見えない。
「なんかおっきいのが、こっちの方に向かって来てるよ」
リピが指さす方向を見ると、小さな点が見えた。
それはどんどんと大きくなっていき、やがて鳥の様なシルエットがハッキリと見える様になって来る。
「あれはまさか!ガルーダ!?」
「ガルーダ?」
「魔物です!それも強力な!」
魔物か。
だが見た目は鳥っぽい。
食べられる様なら、魔法で撃ち落としてエルフへの手土産にするのも悪くないか。
「こっちへ!」
「へ?」
ルーリに手を引かれ、手近な岩陰へと引っ張られた。
顔が近い。
彼女の吐息が俺の顔に掛かり、思わずドキッとしてしまう。
「あの?急に隠れたりして、どうかしたんですか?」
「え!?」
俺の言葉にルーリが驚いた様に目を見開いた。
彼女は一体何に驚いているんだろうか。
「あ……そうか……勇人さんならガルーダを倒せる……そういう事ですよね!」
ルーリが感心したかの様に手を打った。
どうやら彼女は俺が鳥如きに後れを取ると思っている様だ。
ふ、ここはひとつ格好良い所を見せつけてやるとしよう。
「何せ神様ですから!」
何故かリピが偉そうだ。
そう言う態度は自分が褒められた時にするものだが。
まあ一々突っ込まないけど。
「たった10メートル位の怪鳥如き敵ではありません!」
え!?
そんなでかいの?
「ま、まあな」
正直思ってたより遥かにデカいのでかなりびっくりしたが、顔には出さない。
折角上がった俺の株が下がってしまうから。
しかし参った。
まあなとは言ったが、10メートルの怪鳥なんて簡単に料理できるサイズではない
死の破壊なら楽勝なんだろうが、あんな強烈な魔法を使ったら俺が森を消滅させたと感づかれてしまう危険性が出て来る。
他の強力な魔法も同じだ。
出来れば低位の魔法で何とかしたいところだが、10メートルの巨体を果たして一撃で仕留められるだろうか?
最初に撃ったウォーターの威力を思い出す。
あの時は見事に湿地が出来上がった。
あのレベルなら、まあなんとかなるかな?
「神様!さあ、さっさとやっちゃってください!」
岩陰から覗くと、ガルーダのシルエットはかなり大きくなっていた。
後10秒もすれば此処へと到達するだろう。
迷っている時間は余り無さそうだ。
取り敢えず風の魔法であるエアーをぶっぱする事にする。
見切り発車だが、仮に倒し切れなくとも吹っ飛ばす事ぐらいは出来るだろう。
最悪でももう一発打ち込む余裕ぐらいは出来るだろうから、その時は諦めて死の破壊で消し炭にする事にしよう。
とは言え、格好良く一発で仕留めたいので、出来うる限り極限まで俺は魔法へと魔力を込めた。
「喰らえ!」
魔法発動の瞬間、突如頭の中に謎のアナウンスが流れた。
≪魔法の進化に成功しました。新たに誕生した魔法は神の英知に記録されます≫
え?なに?
進化?アーカイブ?
急な出来事に目を白黒させていると、口が勝手に動き出す。
「全てを切り裂け!次元を切り裂く刃!!」
ガルーダに向けて翳していた手から、赤黒い巨大な刃が生み出される。
その禍々しい刃は、バリバリと空間を食い散らかしながら高速でガルーダへと飛んでいき、その巨体を真っ二つに引き裂いた。
「な、なんですかあれ!?神様!?」
リピが空を――空間を引き裂いたかの様な赤黒い跡を指さし叫ぶ。
それはまるで世界そのものに出来た傷跡の様で、今にも血が噴き出してきそうだった。
「怪鳥は倒した。さあ、出発しよう」
「え?あれを放っていくんですか?」
「ほっときゃそのうち治るさ」
俺は笑顔で嘘を吐く。
臭い物には蓋をするに限る。
俺はエアフライを発動させ、その場を逃げるかのように急いでエルフの里へと向かう。
その際、2人にはしっかり黙って置く様に言い聞かせておいた。
その内治るし、変な誤解や嘘が広まっては困ると言って。
特にリピには強く強く言い聞かせた。
上空高く飛翔し、ルーリが感激して声を上げる。
喜んでくれて何よりだ。
エルフの里は山向う。
険しい山を越えるに当たって、俺はエアフライの魔法を使う。
歩いて山越えなどだるくてしょうがない。
普通に冬の山をエアフライなんかで越えようとしたら凍死間違いなしなのだが、温暖化魔法の影響で上空でも暑いぐらいだ。
というかこの魔法、範囲内の温度は一律になるっぽい。
その為、上空数百メートルまで上昇しても地上と全く同じ感じだ。
「私なんて魔法無しで飛べますよ!」
リピが空中で胡坐をかいて腕を組み、ドヤ顔で自慢する。
羽が生えてるんだからそりゃそうだろう。
寧ろ飛べなかったら、背中のそれは只の重しにしかならない訳だが。
「じゃあ自分で飛べよ」
偉そうに飛べる宣言したのだ。
精々その御自慢の羽でパタパタ飛んで貰うとしよう。
リピの飛行速度は大したことが無いので、これで堂々と置いていける。
ルーリさんと二人で、空の遊覧を楽しむとしよう。
「ままま、待ってくださいよ神様!」
飛んで行こうとすると、慌てたようにリピが俺の首筋に掴まる。
襟足をがっつり掴まれてちょっと痛い。
「おい、置いて行かないから髪を強く掴むのを止めろ」
「ほんとですかぁ?」
神様のいう事なんだから少しは信用しろよ。
こいつは疑り深くて困る。
「クスクスクス。お二人は仲がいいんですね」
ルーリが口元を押さえて笑う。
笑顔も超かわいい。まるで天使の様だった。
普段はうざいだけの妖精だが、偶には役に立つものだ。
「私は神様係ですから」
リピが訳の分からない事を笑顔でほざく。
いつからお前はそんな係に付いた?
ていうか神様係ってなんだよ。
彼女に何かして貰った事等全くない。
一体何の仕事をする係なのやら。
俺達は飛行魔法で景色を堪能しながら進む。
本来雪に覆われているべき山々は、春の到来を勘違いした木々に青々と彩られ。
上空からなので目には見えないが、きっと冬眠している生き物なんかも目覚めて徘徊している事だろう。
その影響で生態系が狂ってしまわないか少し心配だったが、まあたかだか数か月程度の事だ。
そこまで深刻な影響は出ないだろう……たぶん。
俺は不都合な事は気にしないようにして、ルーリとの空のデートを堪能する。
え?デートじゃないって
童貞にとっておまけ付とは言え、女の子と一緒の空の旅を楽しむのは実質デートみたいなもんよ。童貞ってのはそんなもんだ。
「食事にしようか」
お腹が空いて来たので、開けた場所へ着地した。
太陽が真上に差し掛かかっているので、時間的にも丁度お昼頃だろう。
「私は全然平気ですよ!」
「そりゃお前は俺にくっついてる間中、勝手にちょろちょろ人の魔力吸ってたからな」
間食しまくってるんだ、そら腹は減ってないだろう。
大体今のはルーリさんに行ったのであって、お前に入っとらん。
「あれ?バレてました?」
てへぺろしてるリピを無視し、俺は背負った袋からお昼ご飯を取り出す。
村で用意して貰った硬いパンもどきとドライフルーツ、それに干し肉のセットだ。
小型の木製のコップを2つ取り出し、その中に魔法で水を満たした。
わざとコップを一つだけしか出さずに二人で使って関節キッスを狙う手もあったが、童貞には敷居が高すぎて断念する。
「ふふ、美味しいですね」
「ええ」
確かに凄く美味しい。
正直パンは相変わらず硬くてもさもさしているし、肉だってそうだ。
内容はさもしい事この上なしだが、目の前に美人が座っている。
只それだけでこうも食事が美味しく感じられ様とは。
やっぱ結婚してぇ……って、いかんいかん。
これではライリーと変わらんではないか。
人間身の程を知る事が大事だ。
調子に乗っても只痛い目を見るだけ、何事も程々と諦めがが一番。
「そういえば、エルフの村はどの辺りにあるんですか?」
彼女達の住処は山の向うの森とは知っているが、距離については聞いていない。
雑談がてら聞いておく。
「山の直ぐ麓の森ですから、今のペースだと後3時間もあれば着くと思いますよ」
直ぐ麓か。
案外近いな。
彼女とのデートもそう長くはないと知って、物悲しい気分になって来る。
さり気無く速度を落として少しでも長く……でもバレて俺の意図が見透かされたら恥ずかしいしなぁ。
まあ半日とはいえ、美女とほぼ二人っきりでいられるのだ。
それで善しと我慢しよう。
食事を終え。
少し休憩を入れてから出発の段になった所で、リピとルーリの顔色が変わる。
何か良くない事が起きている。
そう言う表情だ。
「どうかしたんですか?」
「何か風を切る音が聞こえます」
風を切る音?
俺にはまるで聞こえない。
だが彼女達の表情を見る限り、冗談を言っているようには見えない。
「なんかおっきいのが、こっちの方に向かって来てるよ」
リピが指さす方向を見ると、小さな点が見えた。
それはどんどんと大きくなっていき、やがて鳥の様なシルエットがハッキリと見える様になって来る。
「あれはまさか!ガルーダ!?」
「ガルーダ?」
「魔物です!それも強力な!」
魔物か。
だが見た目は鳥っぽい。
食べられる様なら、魔法で撃ち落としてエルフへの手土産にするのも悪くないか。
「こっちへ!」
「へ?」
ルーリに手を引かれ、手近な岩陰へと引っ張られた。
顔が近い。
彼女の吐息が俺の顔に掛かり、思わずドキッとしてしまう。
「あの?急に隠れたりして、どうかしたんですか?」
「え!?」
俺の言葉にルーリが驚いた様に目を見開いた。
彼女は一体何に驚いているんだろうか。
「あ……そうか……勇人さんならガルーダを倒せる……そういう事ですよね!」
ルーリが感心したかの様に手を打った。
どうやら彼女は俺が鳥如きに後れを取ると思っている様だ。
ふ、ここはひとつ格好良い所を見せつけてやるとしよう。
「何せ神様ですから!」
何故かリピが偉そうだ。
そう言う態度は自分が褒められた時にするものだが。
まあ一々突っ込まないけど。
「たった10メートル位の怪鳥如き敵ではありません!」
え!?
そんなでかいの?
「ま、まあな」
正直思ってたより遥かにデカいのでかなりびっくりしたが、顔には出さない。
折角上がった俺の株が下がってしまうから。
しかし参った。
まあなとは言ったが、10メートルの怪鳥なんて簡単に料理できるサイズではない
死の破壊なら楽勝なんだろうが、あんな強烈な魔法を使ったら俺が森を消滅させたと感づかれてしまう危険性が出て来る。
他の強力な魔法も同じだ。
出来れば低位の魔法で何とかしたいところだが、10メートルの巨体を果たして一撃で仕留められるだろうか?
最初に撃ったウォーターの威力を思い出す。
あの時は見事に湿地が出来上がった。
あのレベルなら、まあなんとかなるかな?
「神様!さあ、さっさとやっちゃってください!」
岩陰から覗くと、ガルーダのシルエットはかなり大きくなっていた。
後10秒もすれば此処へと到達するだろう。
迷っている時間は余り無さそうだ。
取り敢えず風の魔法であるエアーをぶっぱする事にする。
見切り発車だが、仮に倒し切れなくとも吹っ飛ばす事ぐらいは出来るだろう。
最悪でももう一発打ち込む余裕ぐらいは出来るだろうから、その時は諦めて死の破壊で消し炭にする事にしよう。
とは言え、格好良く一発で仕留めたいので、出来うる限り極限まで俺は魔法へと魔力を込めた。
「喰らえ!」
魔法発動の瞬間、突如頭の中に謎のアナウンスが流れた。
≪魔法の進化に成功しました。新たに誕生した魔法は神の英知に記録されます≫
え?なに?
進化?アーカイブ?
急な出来事に目を白黒させていると、口が勝手に動き出す。
「全てを切り裂け!次元を切り裂く刃!!」
ガルーダに向けて翳していた手から、赤黒い巨大な刃が生み出される。
その禍々しい刃は、バリバリと空間を食い散らかしながら高速でガルーダへと飛んでいき、その巨体を真っ二つに引き裂いた。
「な、なんですかあれ!?神様!?」
リピが空を――空間を引き裂いたかの様な赤黒い跡を指さし叫ぶ。
それはまるで世界そのものに出来た傷跡の様で、今にも血が噴き出してきそうだった。
「怪鳥は倒した。さあ、出発しよう」
「え?あれを放っていくんですか?」
「ほっときゃそのうち治るさ」
俺は笑顔で嘘を吐く。
臭い物には蓋をするに限る。
俺はエアフライを発動させ、その場を逃げるかのように急いでエルフの里へと向かう。
その際、2人にはしっかり黙って置く様に言い聞かせておいた。
その内治るし、変な誤解や嘘が広まっては困ると言って。
特にリピには強く強く言い聞かせた。
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