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第21童 増えるスピーカー
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「神様では無いと仰られるんですか?」
「うん、違う。妖精どもがそう勝手に呼んでるだけで、俺は只の魔導師ですよ」
カイルん家の居間の御座に座り。
ルーリと向かい合っている俺は、冷えた薬湯を一気に飲み干した。
世界では全体的に冬真っ盛りの季節ではあるが、この村は逆に夏真っ盛りだ。
かなり暑いので冷たい薬湯を飲むと冷たくて気持ちいい。
最初は土味で糞不味いと思っていたこれも、冷やして飲むと案外悪くなかったりする。
「世界樹を生み出したのは勇人様と、妖精達から伺っておりますが」
誰にも言うなと言ったのに、速攻でばらしてやがる。
どうやら口が軽いのはリピだけでは無かった様だ。
助けて貰った恩義ありきで速攻ばらすとか、どんだけ不義理な種族なんだよ。
妖精は。
リピの方を睨みつけると、何を勘違いしたかウィンクしてくる。
睨まれてウィンク飛ばすとか、やはり妖精は真正のアホだ。
「実は以前魔法の実験で、神様と偶然出会った事がありまして」
嘘は言ってない。
半分は。
実験なんてやった事は無いが、神様に会った事があるのは事実だ。
「その時、一度きりの奇跡の力を貰ったんですよ。その力を弱った霊樹に使ったらああなっただけです。だから俺は神なんかじゃないですよ」
まあその気になれば何度でも使えるが。
馬鹿みたいな力を持っていると知られてもどうせ碌な事にはならない。
下手に吹聴して森が消滅した原因が俺だと突き止められても敵わないし、黙っておくのが正解だろう。
「成程、そう言う訳だったんですね。でも神様から力を頂けるなんて、それだけで凄い事だと思いますよ」
「そ、そうですか」
美人に褒められたのが照れくさくて頭を掻く。
まあ彼女は凄いと言ってくれているが、力を貰えた理由が童貞だったからと知ればきっと幻滅する事だろう。
それだけは口が裂けても言えない。
まさに黒歴史だ。
「でも貰った力が1度きりという事は、この異常な気候は勇人様とは何の関係も無いという事なのでしょうか?」
どう答えたものか。
村を中心とした広範囲の異常気象、完全に惚けるのは難しい気がする。
正直に話すべきか、それとも何か適当な理由をでっちあげるか……
「これは神様がやったんですよ!ぽかぽか暖かくて快適でしょ!」
俺がどうするべきか迷っていると、リピが横から余計な口を挟んでくる。
この糞妖精は俺に考える暇も与えてくれない。
次から次へとペラペラしゃべりよって……
腹立ちまぎれに軽くはたいてやろうかとも思ったが、止めておく。
ルーリさんに俺が凶暴な奴だと勘違いされかねないからな。
出来れば美人には嫌われたくないのだ。
それが男の悲しき本能というもの。
「これ程の範囲の気候を変えてしまえるなんて、勇人さんは神様の力を抜きにしても凄い方なんですね」
ルーリさんは感心した様に、此方に熱い視線を向けてくる。
美人に尊敬の眼差しを向けられたのは生まれて初めての事だ。
正直悪い気はしない。
とは言え――
「あの、出来れば他言無用でお願いしたいんですけど」
「何故でしょうか?」
彼女は不思議そうに小首を傾げる。
個人的にトラブルに巻き込まれたくないからなのだが、それを素直に言ったらヘタレと思われそうで嫌だ。そこで尤もらしい言い回しで伝えてみる。
「大きな力は悪意ある者の目に留まれば、災いの種になり兼ねませんから。俺は無駄な争いが起きない様、出来るだけ力を周りに見せない様にしてるんです」
面倒事は嫌だよの一言も、こんな感じで伝えれば少しはそれらしく聞こえる物。
もうなんなら彼女には俺が聡明に映っている可能性すらある。
いや、寧ろそう言う風に映って欲しい。
あれが無くなってしまっているとはいえ、俺だって男。
美人には良く見られたい欲求はあるのだ。
「成程。そういう事でしたら外には漏れない様、長老から皆に厳命する旨伝えておきますね 」
どうやら長老や他のエルフには喋る気満々の様だった。
この人は美人だが、妖精共と同じ駄目な匂いがプンプンするのは気のせいだろうか?
土下座の時も俺の話を全然聞いてなかったし……
余計なスピーカーが一つ増えた。
そう思えて仕方ない。
不安の種は日々増えるばかりだ。
「うん、違う。妖精どもがそう勝手に呼んでるだけで、俺は只の魔導師ですよ」
カイルん家の居間の御座に座り。
ルーリと向かい合っている俺は、冷えた薬湯を一気に飲み干した。
世界では全体的に冬真っ盛りの季節ではあるが、この村は逆に夏真っ盛りだ。
かなり暑いので冷たい薬湯を飲むと冷たくて気持ちいい。
最初は土味で糞不味いと思っていたこれも、冷やして飲むと案外悪くなかったりする。
「世界樹を生み出したのは勇人様と、妖精達から伺っておりますが」
誰にも言うなと言ったのに、速攻でばらしてやがる。
どうやら口が軽いのはリピだけでは無かった様だ。
助けて貰った恩義ありきで速攻ばらすとか、どんだけ不義理な種族なんだよ。
妖精は。
リピの方を睨みつけると、何を勘違いしたかウィンクしてくる。
睨まれてウィンク飛ばすとか、やはり妖精は真正のアホだ。
「実は以前魔法の実験で、神様と偶然出会った事がありまして」
嘘は言ってない。
半分は。
実験なんてやった事は無いが、神様に会った事があるのは事実だ。
「その時、一度きりの奇跡の力を貰ったんですよ。その力を弱った霊樹に使ったらああなっただけです。だから俺は神なんかじゃないですよ」
まあその気になれば何度でも使えるが。
馬鹿みたいな力を持っていると知られてもどうせ碌な事にはならない。
下手に吹聴して森が消滅した原因が俺だと突き止められても敵わないし、黙っておくのが正解だろう。
「成程、そう言う訳だったんですね。でも神様から力を頂けるなんて、それだけで凄い事だと思いますよ」
「そ、そうですか」
美人に褒められたのが照れくさくて頭を掻く。
まあ彼女は凄いと言ってくれているが、力を貰えた理由が童貞だったからと知ればきっと幻滅する事だろう。
それだけは口が裂けても言えない。
まさに黒歴史だ。
「でも貰った力が1度きりという事は、この異常な気候は勇人様とは何の関係も無いという事なのでしょうか?」
どう答えたものか。
村を中心とした広範囲の異常気象、完全に惚けるのは難しい気がする。
正直に話すべきか、それとも何か適当な理由をでっちあげるか……
「これは神様がやったんですよ!ぽかぽか暖かくて快適でしょ!」
俺がどうするべきか迷っていると、リピが横から余計な口を挟んでくる。
この糞妖精は俺に考える暇も与えてくれない。
次から次へとペラペラしゃべりよって……
腹立ちまぎれに軽くはたいてやろうかとも思ったが、止めておく。
ルーリさんに俺が凶暴な奴だと勘違いされかねないからな。
出来れば美人には嫌われたくないのだ。
それが男の悲しき本能というもの。
「これ程の範囲の気候を変えてしまえるなんて、勇人さんは神様の力を抜きにしても凄い方なんですね」
ルーリさんは感心した様に、此方に熱い視線を向けてくる。
美人に尊敬の眼差しを向けられたのは生まれて初めての事だ。
正直悪い気はしない。
とは言え――
「あの、出来れば他言無用でお願いしたいんですけど」
「何故でしょうか?」
彼女は不思議そうに小首を傾げる。
個人的にトラブルに巻き込まれたくないからなのだが、それを素直に言ったらヘタレと思われそうで嫌だ。そこで尤もらしい言い回しで伝えてみる。
「大きな力は悪意ある者の目に留まれば、災いの種になり兼ねませんから。俺は無駄な争いが起きない様、出来るだけ力を周りに見せない様にしてるんです」
面倒事は嫌だよの一言も、こんな感じで伝えれば少しはそれらしく聞こえる物。
もうなんなら彼女には俺が聡明に映っている可能性すらある。
いや、寧ろそう言う風に映って欲しい。
あれが無くなってしまっているとはいえ、俺だって男。
美人には良く見られたい欲求はあるのだ。
「成程。そういう事でしたら外には漏れない様、長老から皆に厳命する旨伝えておきますね 」
どうやら長老や他のエルフには喋る気満々の様だった。
この人は美人だが、妖精共と同じ駄目な匂いがプンプンするのは気のせいだろうか?
土下座の時も俺の話を全然聞いてなかったし……
余計なスピーカーが一つ増えた。
そう思えて仕方ない。
不安の種は日々増えるばかりだ。
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