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第20童 エルフが村へやって来た

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「貴方が神様ですか?」

広場に御座を敷いてその上で日光浴をしていると、急に声をかけられる。
神呼ばわりなのでまたリピのアホかと思ったが、視線を向けるとそこには美しい女性が立っていた。

肌は透き通るように白く、プラチナブロンドの髪が太陽の光を照り返しキラキラと輝いている。
目は切れ長で大きく煽情的であり、すっと通った鼻筋と引き結ばれた薄めの唇とのバランスも最高だ。
体には不思議な――まるで植物の葉を布状に鞣し、折り重ねる様に身に着けている――衣類を纏っており、その背には意匠の施された弓が背負われていた。

其の女性の姿を一言で形容するならば、美女の一言に尽きる。
それも絶世と付けていいレベルの。
だが俺が一番気になったのはその耳だ。

女性のその耳は人と比べて明かに長く、そしてその先端は笹状に尖っていた。
つまり彼女は――

「エルフ?」

この世界にはエルフがいると、リピから聞いてる。
そしてその特徴も。
それに合致するので、目の前の女性はエルフで間違いないだろう。

「そだよー。彼女はエルフのルーリさん。私が案内したんだよ!偉いでしょ!」

彼女の傍に浮いているリピが胸を張る。
さっきいきなりどこかに飛んで行ったのだが、どうやら遊びに行ったのではなく、彼女を見つけてここまで案内する為だった様だ。

「初めまして。私はルーリと申します」

彼女は改めて自分の名を名乗り。
丁寧に腰を折って頭を下げる。

カイルに色々と教わり分かった事だが、この世界の作法は現代日本に通じる物が多い。
謝る時や挨拶の時などは頭を下げ、首を縦に頷けばイエス、横ならノーといった感じだ。
そしてどうやらそれは、エルフも同様の様だった。
俺は立ち上がり、軽く会釈して自己紹介する。

「は、初めまして。ゆ、勇人と言いまっぷ……ます……」

相手が綺麗すぎて緊張してしまい。
どもったり噛んだりしてしまう。
死ぬほど恥ずかしい。

「私はエルフの里から、遣いとしてここにやって参りました」

彼女は俺の挙動不審な感じを特に気にするような素振りも見せず、笑顔を見せてくれる。

「つ、遣い?」

「はい。私達は今、世界樹への移住を考えていますので。その許可を頂きに参りました」

「きょ……許可?なんの?」

思わず聞き返してしまう。
俺に一体何の許可を貰う必要があると言うのか?
彼女の意図が良く分からない。

分かっているのは凄く美人だという事だけだ。
こんな美人見るのは生まれて初めての事、さっきから胸のどきどきが止まらん。
あー、結婚してぇなぁ。
股間のあれが無いから絶対無理だろうけど。

まあそれ以前に、30年間童貞だった俺にこの美女はまずムリゲー過ぎるわな。

「勿論神様に世界樹への居住許可を頂きにです」

「へ?居住許可?何で俺に?」

あそこには妖精達が暮らしている。
許可を貰うなら彼らの方だろう。
俺に貰うと言うが、俺に許可を下す権限なぞない。
ていうか――

「あの、さっきから神様って……」

美人を前に浮かれ過ぎてスルーしてしまっていたが、さっきから彼女は俺の事を神神言っている。
自己紹介でちゃんと勇人って名乗っているのだが……

「勇人様は偉大な神とお伺いしています」

「おい。どういう事だ」

リピを掴んで引き寄せる。
初対面の人間が俺を神呼ばわりする原因など、こいつ以外あるはずがない。

「私は何も言ってませんよぉ。彼女が神様の元に案内して欲しいって言ったんですから」

「嘘つけ。お前じゃ無ければ誰だってんだよ」

リピの言う事はまるで信用できん。
こいつのせいで、今じゃ村の人間まで俺の事を神呼ばわりしてくる始末だ。
本気で連れて来た事を、ここ最近では後悔している。

「あ、あの。神様の事は世界樹に住む妖精の長から聞いて参りました。どうか、どうか我々が世界樹で暮らす事をお許しください!」

俺がリピに怒っていたのを否定と取ったのか、ルーリはその場に膝をつき、頭を地面に擦り付けた。
目に飛び込んでくる彼女のうなじが色っぽい……って見惚れてる場合じゃねぇ!

「ああ、いやいやいや。頭を上げてください。そもそも俺は許可云々を下す立場にないんで」

「お願いします!」

彼女は益々体を深く沈め、お願いしますを連呼する。
全然人の話を聞く気が無い様だ。
見た目は美人だが、中身は妖精どもと変わらないのだろうか?

「どうかされたのですか?」

騒ぎに気付いたのか、荷物を運んでいたカイルが此方へと駆け寄って来た。

「ああ、いや。どうも彼女勘違いをしているみたいで……」

事情を説明すると、カイルが取り敢えず許可を上げたらどうだと言うので、何の権限も持ち合わせていないが取り敢えず許可を出してみた。
すると彼女は涙目で起き上がり、今度はありがとうございますを連呼しだす。

何故かカイルの手を掴んで。

え?何で俺の方じゃないの?
と思いつつ、美人と手を繋げているカイルが羨ましくて俺は彼をジト目で睨み付けるのであった。
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