悪役転生。ゲーム世界の山賊に転生しました~気づいたら主人公の姉を殺した後で……どう考えても軌道修正無理!こうなったらもう逃げるしかない!~

榊与一

文字の大きさ
25 / 40

第25話 天空城

しおりを挟む
転移先は、天空城プッチョン前方に広がる庭園。
巨大な庭園には色取り取りの花と、グミの木が植えられている。

「ゲーム通りの景色。特に変な部分は無いか」

庭園には白い翼を生やした、上半身だけの人型の機械が無数に巡回していた。
機械天使――ガーディアン・エンジェル。
庭園の守護者だ。

こいつらのレベルは80。
単体の強さで言えば、隠しダンジョン中最弱である。
ただしそれでも、HPが低い以外はメインストーリー後半に出て来る大ボスと同等以上。
当然勝ち目など一切ない。

まあ戦わないけど。

「初見殺し共はノンアクティブだからな」

機械天使は此方から攻撃を仕掛けない限り襲ってこない、ノンアクティブと言われるタイプの魔物(?)だ。
それでも転移直前にハイパーステルスを発動させたのは、想定外に対する保険の様な物である。
俺の知らない別の魔物が混じってて、急に襲って来るとかあったら洒落にならないからな。

機械天使は、別名初見殺しと呼ばれていた。
その理由は――

一匹殴ると庭園内にいる全ての(100体以上いる)機械天使共に一斉に襲われてしまうからだ。

そう、こいつはいわゆるリンク――味方の戦闘に反応して襲って来る――タイプ。
しかもそのリンク範囲は庭園全体と来ている。

隠しダンジョンである天空城に来て、試しに一匹狩ろうと機械天使に手を出した結果庭園中がリンクして全滅。
プレイヤーあるある話である。
正に初見殺し。

因みにこいつらに勝とうと思ったら、最適化した最強装備にレベルカンストが必要不可欠である。
ぶっちゃけ、天空城のボスを倒すよりもずっとキツイ。

「さて、城に行くか」

広い通路をちょこまかと動き回る天使共と、俺は接触しない様に気を付け庭園を進んで行く。
態々躱すのは、ぶつかると攻撃扱いになってしまうからである。

肩をちょこんとぶつけた程度で『おうわれ、どこに目つけとんじゃ!』的に襲われるのだ。
何処のチンピラだよ全く。

「さて……ここからは気を引き締めて行かないとな」

西洋タイプの城。
天空城の大門前に辿り着いた俺は、気合を入れる。

巨大な門を抜けて広場に入ると、そこからは能動的に攻撃をしかけて来る魔物が出現するからだ。
ただぶつからなければいいだけの機械天使たちとは違い、此処からは敵が寄って来た瞬間、例の水の入った瓶をぶつけて相手の攻撃欲求を静めなければならない。
万一外すと偉い事である。

中庭には人型をした巨大な綿あめの様な魔物が徘徊していた。
象並のそのサイズの体には、かなり小さなピンクの羽が生えている。

――エアイン

ぱっと見、もこもこしたピンクの化け物にしか見えないが、一応こいつは天使型の魔物という事になっている。
レベルは82で、超がつくパワータイプだ。

隠しダンジョンの魔物の中では、こいつが一番倒しやすい上に経験値も多い。
装備が手に入ったら、俺はこいつを狩ってレベルを上げる予定である。

「ハイパーステルスはやっぱ役に立つな……」

敵は目視で此方を見つける訳だが、このスキル使用中は遠くからでは俺の姿を見つける事が出来ない。
そのため、主人公なら余裕で発見される様な距離でも、気づかれる事無くスルー出来ている。

「楽ちん楽ちん」

魔物を避けつつ広場を抜け、天空城の正門へとたどり着く。
幸い、敵に襲われる事はなかった。
まあここはかなり敵の密度が薄いので、ハイパーステルスが効く以上楽勝である。

だがここから先はそうもいかない。
城内には狭い通路もあり、そこで魔物と遭遇したらスルーは絶対に無理だ。

「取り敢えず、まずは指輪からだな」

城内には特に光源はないが、滅茶苦茶明るい。
外よりも明るいレベル。

青いフルフェイスの全身鎧を身に着けた、白い羽の生えた騎士ががチラホラ見える。
戦乙女――ヴァルキッチョ。
レベルは86。
一応中身は美しい女生の姿をしている設定だが、アーマーパージしたりしないので中身を覗く手段はない。

こいつはHPが3割以下になると高確率で『神の御許おんもとに!』とかいうほぼ即死ダメージとなる自爆をして来るので、相手をするには一気に押し切る火力が必要だ。
もちろん俺は戦わない。
仮に装備を揃えても、ソロで自爆阻止できる程の瞬間火力を叩き込むのは難しいからな。
無理ゲー。

「おらっ!」

近くにいた一体のヴァルキッチョが、此方に気付いて突っ込んで来た。
俺はそいつに向かって泉の水が入った瓶を投げつける。
それが当たって砕け、中の水が青い鎧に付着すると魔物はピタリと動きを止めた。

その事からも分る様に、水は生身に当てる必要はない。
装備や体の一部でも問題なかった。

攻撃欲求を押さえる効果は30秒。
それを超えるとまた攻撃してくるので、俺はさっさと移動を始める。

「おらおらおら!」

道中何度か絡まれるが、全てビショビショにしてやり過ごす。
気分は正に戦乙女との聖水プレイ。

なんて事はもちろんない。
中身はともかく、鎧しか見えないし。
流石にな。

敵を捌きつつ、俺は城内の部屋の一つに入る。
そこは円形の広い造りをした空間で、その足元には青い魔法陣が描かれていた。
そしてその魔法陣の中心部分には、小さな青い指輪が浮いている。

隠しダンジョンのみで手に入る、通常プレイでは手に入らない装備。
プッチョンの指輪だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

天才魔導医の弟子~転生ナースの戦場カルテ~

けろ
ファンタジー
【完結済み】 仕事に生きたベテランナース、異世界で10歳の少女に!? 過労で倒れた先に待っていたのは、魔法と剣、そして規格外の医療が交差する世界だった――。 救急救命の現場で十数年。ベテラン看護師の天木弓束(あまき ゆづか)は、人手不足と激務に心身をすり減らす毎日を送っていた。仕事に全てを捧げるあまり、プライベートは二の次。周囲からの期待もプレッシャーに感じながら、それでも人の命を救うことだけを使命としていた。 しかし、ある日、謎の少女を救えなかったショックで意識を失い、目覚めた場所は……中世ヨーロッパのような異世界の路地裏!? しかも、姿は10歳の少女に若返っていた。 記憶も曖昧なまま、絶望の淵に立たされた弓束。しかし、彼女が唯一失っていなかったもの――それは、現代日本で培った高度な医療知識と技術だった。 偶然出会った獣人冒険者の重度の骨折を、その知識で的確に応急処置したことで、弓束の運命は大きく動き出す。 彼女の異質な才能を見抜いたのは、誰もがその実力を認めながらも距離を置く、孤高の天才魔導医ギルベルトだった。 「お前、弟子になれ。俺の研究の、良い材料になりそうだ」 強引な天才に拾われた弓束は、魔法が存在するこの世界の「医療」が、自分の知るものとは全く違うことに驚愕する。 「菌?感染症?何の話だ?」 滅菌の概念すらない遅れた世界で、弓束の現代知識はまさにチート級! しかし、そんな彼女の常識をさらに覆すのが、師ギルベルトの存在だった。彼が操る、生命の根幹『魔力回路』に干渉する神業のような治療魔法。その理論は、弓束が知る医学の歴史を遥かに超越していた。 規格外の弟子と、人外の師匠。 二人の出会いは、やがて異世界の医療を根底から覆し、多くの命を救う奇跡の始まりとなる。 これは、神のいない手術室で命と向き合い続けた一人の看護師が、新たな世界で自らの知識と魔法を武器に、再び「救う」ことの意味を見つけていく物語。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記  大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。 それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。  生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、 まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。  しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。 無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。 これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?  依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、 いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。 誰かこの悪循環、何とかして! まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

処理中です...