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第61話 騎士
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「ん?」
朝、村から出勤してきたタゴルがニューフェイスに気づいて顔を顰める。
「彼女はいったい誰です?」
「私はポッポゥ。火の騎士ポッポゥだ。君がタゴルだな」
「ああ、そうだけど……」
「共にマスターを守る護衛騎士として、よろしく頼む」
「え?あ、いや……俺は別に騎士って訳じゃ……」
爽やかな笑顔で握手を求めるポッポゥに、困った様に頬をかく。
まあ確かに、俺は彼を騎士に任命していない。
とは言え……
「確かに、タゴルさんは正式に任命されていませんね。ですが、貴人の護衛は騎士が務めるのが通例です。なので現在マイロードの専任護衛を務めるタゴルさんは、暫定的ではありますが騎士であると言って差し支えないかと」
ジャガリックの言うとおりだ。
正式に任命していないだけで、貴族である俺の専属である以上、実質騎士の様なものである。
「そうだな。暫定のままってのもあれだし、今度任命式でもするとしよう」
現在俺の知る中で、最も腕が立ち――人間の中ではあるが。
魔剣(鉈)に選ばれる素質の持ち主で、更に呪いのせいで絶対裏切らないと来ている。
信頼度や作法などの問題はあるが、辺境の木っ端男爵である俺が社交場に出る事もない訳だし、騎士としては及第点と言えるだろう。
「俺が騎士……」
お、信頼度が上がった。
どうやら騎士に任命されるのは嬉しいみたいだな。
まあ勇壮な騎士ってのは、男のロマン的な要素を秘めてるし別に意外ではないか。
この方面で攻めていったら、信頼度上がってくかな?
「マスター。その際は是非とも私もお願いします」
「ああ、わかった」
叙任式は簡単にできるからな。
二人同時でも特に問題はない。
「感謝します。では――早速手合わせ願おうか」
ポッポゥが俺に一礼し、それから佩剣していた剣を引き抜きその切っ先をタゴルへと向ける。
「いや、急にそんな事言われても……」
「タゴル殿。マスターの護衛を十全に務めるには、互いの実力の程を知っておく必要がある。そしてそれを知るには、手合わせが一番手っ取り早い」
護衛するにあたって同僚の力量をしておく必要がある。
急に剣を引き抜いたのには少しびっくりしたが、そういう理由なら一応納得だ。
まあ手合わせの申し込みだけなら、わざわざ剣を抜いて相手に向ける必要はないだろって気はするが。
「なので手合わせ願う」
「手合わせっつっても、女に武器を向けるってのはなぁ……」
手合わせとは言え、女性との戦いはあまり気が進まない様だ。
粗暴な性格の割りに、タゴルはレディファースト的な思考もちゃんと持ち合わせている様である。
『タゴル。彼女はお前より確実に強い。安心して胸を借りるがいい』
「俺よりも強いのか?そうは見えねぇんだが……」
ポッポゥは騎士っぽく鎧を着こんでいる姿だが、見えている手や足の細さからパワーがある様には全く見えない。
その見た目から、タゴルは胡散臭げに腰にかかっているナタンへと視線をやる。
『我が嘘をついているとでも言いたいのか?それとも……まさか負けるのが怖くて渋っているんじゃないだろうな?もしそうなら、そんな根性なしを我は相棒と認めた覚えはないぞ』
「ちっ、わかったよ。受けりゃいいんだろ。ポッポゥさんだっけか。手合わせを受ける」
相棒に根性なし呼ばわりされたのが効いたのか、タゴルが嫌そうに顏を歪めつつ手合わせを承諾する。
ナタンの言う通りならポッポゥはタゴルよりも強いらしいけど、まあどの程度か見させて貰うとするか……
朝、村から出勤してきたタゴルがニューフェイスに気づいて顔を顰める。
「彼女はいったい誰です?」
「私はポッポゥ。火の騎士ポッポゥだ。君がタゴルだな」
「ああ、そうだけど……」
「共にマスターを守る護衛騎士として、よろしく頼む」
「え?あ、いや……俺は別に騎士って訳じゃ……」
爽やかな笑顔で握手を求めるポッポゥに、困った様に頬をかく。
まあ確かに、俺は彼を騎士に任命していない。
とは言え……
「確かに、タゴルさんは正式に任命されていませんね。ですが、貴人の護衛は騎士が務めるのが通例です。なので現在マイロードの専任護衛を務めるタゴルさんは、暫定的ではありますが騎士であると言って差し支えないかと」
ジャガリックの言うとおりだ。
正式に任命していないだけで、貴族である俺の専属である以上、実質騎士の様なものである。
「そうだな。暫定のままってのもあれだし、今度任命式でもするとしよう」
現在俺の知る中で、最も腕が立ち――人間の中ではあるが。
魔剣(鉈)に選ばれる素質の持ち主で、更に呪いのせいで絶対裏切らないと来ている。
信頼度や作法などの問題はあるが、辺境の木っ端男爵である俺が社交場に出る事もない訳だし、騎士としては及第点と言えるだろう。
「俺が騎士……」
お、信頼度が上がった。
どうやら騎士に任命されるのは嬉しいみたいだな。
まあ勇壮な騎士ってのは、男のロマン的な要素を秘めてるし別に意外ではないか。
この方面で攻めていったら、信頼度上がってくかな?
「マスター。その際は是非とも私もお願いします」
「ああ、わかった」
叙任式は簡単にできるからな。
二人同時でも特に問題はない。
「感謝します。では――早速手合わせ願おうか」
ポッポゥが俺に一礼し、それから佩剣していた剣を引き抜きその切っ先をタゴルへと向ける。
「いや、急にそんな事言われても……」
「タゴル殿。マスターの護衛を十全に務めるには、互いの実力の程を知っておく必要がある。そしてそれを知るには、手合わせが一番手っ取り早い」
護衛するにあたって同僚の力量をしておく必要がある。
急に剣を引き抜いたのには少しびっくりしたが、そういう理由なら一応納得だ。
まあ手合わせの申し込みだけなら、わざわざ剣を抜いて相手に向ける必要はないだろって気はするが。
「なので手合わせ願う」
「手合わせっつっても、女に武器を向けるってのはなぁ……」
手合わせとは言え、女性との戦いはあまり気が進まない様だ。
粗暴な性格の割りに、タゴルはレディファースト的な思考もちゃんと持ち合わせている様である。
『タゴル。彼女はお前より確実に強い。安心して胸を借りるがいい』
「俺よりも強いのか?そうは見えねぇんだが……」
ポッポゥは騎士っぽく鎧を着こんでいる姿だが、見えている手や足の細さからパワーがある様には全く見えない。
その見た目から、タゴルは胡散臭げに腰にかかっているナタンへと視線をやる。
『我が嘘をついているとでも言いたいのか?それとも……まさか負けるのが怖くて渋っているんじゃないだろうな?もしそうなら、そんな根性なしを我は相棒と認めた覚えはないぞ』
「ちっ、わかったよ。受けりゃいいんだろ。ポッポゥさんだっけか。手合わせを受ける」
相棒に根性なし呼ばわりされたのが効いたのか、タゴルが嫌そうに顏を歪めつつ手合わせを承諾する。
ナタンの言う通りならポッポゥはタゴルよりも強いらしいけど、まあどの程度か見させて貰うとするか……
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