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大陸制覇

第2話 2本目

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「ああ、すまん。言ってる意味が良く分からないんだが?要は俺がとんでもなく強くなって、周りを死ぬ程ビビらせれば逆らう奴が減るって事か?」

アイス達は逆らうのが絶望的な相手なら、人間達も反抗を諦めて従順になると言いたいのだろうか?
だがそれならもう、十分な気もするんだが。
ピータンの広範囲魔法は俺がやった事になっているからな。

――もっとも、その状態でも俺に恐怖より憎しみの目を向ける人間の方が多い。

怒りや憎しみは、絶望を凌駕する。
かつてダンジョンの最深部に送られた俺がそうであった様に。
人を恐怖だけで完全に縛る等は不可能だ。

「いえ……そういう精神的な物ではなく……」

「エネルギー供給の……事になります……」

「エネルギー供給?詳しく教えてくれ」

どうやら全然違った様だ。
二人から説明を聞く。

「は……はい。魔王様とダンジョンは――」

アイス達の話を纏めると――

俺とダンジョンはコアを通じて繋がっている。
そのため、俺はダンジョンからエネルギー供給を受ける事が出来るそうだ――やった事ないけど。
そしてその逆も叱りで、俺からダンジョンにエネルギーを送る事も出来るらしい。
要は、俺のエネルギーで不足分を補うというのが二人の案だ。

――魔王の肉体にはエネルギーを生成する機関があり、その効率は出鱈目に優れていた。

今の俺の力は、進化した配下達とほぼ同等位だ。
レアが1日のエネルギーを食事だけで賄おうとしたら、穀物や肉類が100キロ程必要になる。
それに対して、俺は普通の人間一食分の食事で十分だった。
この事から、魔王のエネルギー変換能力高さが分かって貰えるだろう。

え?魔王の癖に配下と同じレベルとかショボいって?

まあそうだな。
だがそれにはちゃんと理由がある。

魔王には、配下の魔物を強化する能力があった。
配下の強さを大体2倍に強化する力で、これはピータンから貰った魔牛を統べる者ミノタウロスマスターの上位互換の様な物だ――上位互換であるため、この能力に効果が上書きされて称号の方は今は機能していない。

つまり俺が弱いのではなく、レア達が強化されて出鱈目に強くなっているだけなのだ。

あと基礎の能力が同じとは言っても、もし彼女達と戦えば確実に俺が勝つだろう。
何せ俺には竜化がある。
しかも効果2倍のアイテムが使い放題な訳だからな。
ほぼチートである即死アイテム抜きにしても、俺の方が圧倒的に有利だ。

――っと、話がそれたな。

要は変換効率に優れる俺が食事を摂りまくり、ダンジョンにエネルギーを供給すれば不足を補えるという話だ。
とは言え、必要とされるエネルギーは膨大である。
大陸の人口が最低今の倍はいると仮定して、それだけの数を管理する為の魔物達を維持するエネルギーを賄えるかと言うと、今のままではかなり難しい。

そこでアイス達の、俺が強くなればと言う言葉に繋がる。
俺自身の能力を底上げすれば、変換効率も上がると予想されるからだ。

――つまり、二人の案は俺にパワーアップポーションを飲ませるという物だった。

通りで言い淀むはずである。
パワーアップポーションの苦しみを、二人は身をもって体験しているのだからな。
ましてやそれが忠誠を誓う相手だ。
笑顔でスパッと切り出せるはずもない。

「その案で行こうか」

「え?……よろしいのですか?」

断られるとでも思っていたのだろうか、返事を聞いてアイス達は――いや、それ以外のメンツも驚いた表情になる。

まあ俺は散々嫌がってたからな、ポーションを飲むのを。
それがすんなり受け入れられてびっくりするのも無理はない。

「ああ」

状況次第ではあるが、場合によっては俺は魔王ヴリトラとも戦わなければならない可能性がある。
当然今のままでは万に一つも可能性はない――効果2倍になった即死アイテムも、恐らくは効かないだろう。
先の事を考えれば、強くなるに越した事はなかった。

「ほ、本当によろしいのですか?アレは……その……あれですので」

ナゲットが再度確認して来る。
だが俺の返事は変わらない。

「分かってるよ。だが俺は魔王だからな。統治者として力が必要なら、それを手に入れるだけだ」

覚悟は決まっている。
ピータンを蘇らせ、魔王として全ての大陸を統治する覚悟は。
そのために必要な事なら、どんな苦痛も乗り越えて見せるつもりだ。

ま……本音を言うなら、死ぬ程飲みたくないんだがな。

ダンジョンコアと繋げた事で、ピータンの記憶の断片を――記憶と言うよりも記録に近い――俺は確認する事が出来る様になっている。
その中にはパワーアップポーションの情報も入っており、そこには恐るべき事実が含まれていた。

それは――

パワーアップポーションは飲めば飲むほど苦痛が増す、という物だ。

強化した体を再度強化するには、より大きな変化を起こす必要がある。
そのため、苦痛が飲む度に増してしまうのだ。
しかも恐ろしい事に、飲めば飲むほどその苦痛に反比例し手に入る力は小さくなっていく。

もしヴリトラと戦う事になったら、俺もピータンと同じ様に限界までパワーアップする必要が出て来るだろう。
考えただけでも憂鬱な話だ。
3つの聖遺骸で済む事を、心の底から願わずにはいられない。

……ま、今は取り敢えずエネルギー問題の解決の為に1-2回だけ飲むとしよう。

「ウェンディ。パワーアップポーションを」

小物類は、基本ウェンディの体内に納めて貰っていた。
元がぶよぶよのスライムではあるが、実は彼女が配下の中で一番耐久力が高かったりする。
そのため、俺が革袋に入れて持ち歩くより遥かに安全だ――ポーションなんかは攻撃で割れてしまったりするからな。

「ぷるぷるぷる(どうかお気をつけて)」

彼女のプレート状になった手に浮かぶ文字は、少しズレた物だ。
だがまあ言わんとする事は分かる。
心配してくれているのだろう。

「別に死ぬわけじゃないからな。心配するな」

そう笑顔で答え、俺はパワーアップポーションを一気に飲み干した。
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