ブラック労働死した俺は転生先でスローライフを望む~だが幼馴染の勇者が転生チートを見抜いてしまう。え?一緒に魔王を倒そう?マジ勘弁してくれ~黒

榊与一

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第66話 気になる

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ネサラ達の目的地は、ガルムス山脈の中でもひときわ高い山の山頂にある祠だ。
俺達はもうじきそこに辿り着くと言う所までやって来ていた。

「ここから別の場所に行ってるな」

それまでずっと同じ方向に進んでいたゾーン・バルターの匂いによる痕跡。
それが俺達の目的地付近で別の咆哮へとそれた。
道中、彼も祠に向かったのではと思われていたが、どうやら違った様だ。

「あの……皆さんは祠ではお祈りを捧げられるんですよね?」

エンデがネサラ達に尋ねる。
彼女達は祠で儀式――祈りを捧げる予定だ。

「ええ、だいたい3時間程です」

「あの……でしたらその間に、父の様子を見に行ってもいいですか?」

どうやらエンデは父親の行動が気になっている様だ。
まあこんな魔物が出る険しい山脈に、小さな女の子を連れてきていると聞かされれば当然か。

「どうしても気になっちゃって。急いで行って、確認出来たらすぐに戻ってきますんで」

ガロスが言うには、匂いから俺達とバルターとの時間差はそれほどないらしい。
だから少し急げば追いつく事も可能だろうと思われる。

「ああ、構わないよ」

俺達は万一の魔人対策の護衛として、ネサラ達に雇われてこの場にやって来ている。
魔人が復活してくる可能性は極めて低いと思われるが、だからと言って護衛対象から離れるのは論外だ。

けど、実はエンデだけは問題なかったりする。
何故なら、雇われた時に彼女はその場にいなかったからだ。

流石にいない人間の意思確認もせず、護衛に加える訳にもいかないだろ?

まあだからお金に困っていた訳でも無かったので、とりあえず俺はその場にいた三人分の報酬で仕事を引き受けた。
つまり雇われているのは俺とイモ兄妹だけで、エンデは只の同行者でしかないという扱いだ。

当然そんな彼女に護衛としての義務なんてものはないので、離れても全く問題なかったりする。

「すいません。わがまま言っちゃって」

「気にしなくていいさ。けど、この辺りは魔物がうようよしてるから気を付けてくれよ」

目指す山頂に近づくにつれ、明らかに魔物の出現頻度が上がっていた。
今のエンデの実力ならまずやられる心配はない程度ではあるが、一応気を付けるように言っておく。

「はい、気をつけます。では」

ガロスに方向を聞いたエンデは、ゾーン・バルターの後を追う。

あくまでも方向でしかないので、更にルートを変えられた場合は追いつけない可能性もあるが……

まあその時はある程度で切り上げて、時間までには山頂の祠にやって来るだろう。
エンデは真面目な性格をしているので、その辺りはきっち利守る筈だ。

「それじゃ、祠に向かいましょうか」

俺達は予定通りそのまま祠へと向かう。
俺自身、何故ソーン・バルターがこんな場所に居るのか気になっていたので、後でエンデと合流したら聞いてみようなんて軽く考えていた。

だがそれがまさかあんな事になるなんて……

俺はこの時、エンデに許可を出した事を後々後悔する事となる。
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