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第41話 キメラ
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「師匠!これは!?」
「わからない。俺はちょっと周囲の確認をして来る」
ダンジョンは色だけでなく、地形自体も変わっていた。
周囲には金属製の柱が立っており。
これまでの洞窟然とした物ではなく、もろ人口物の中にいる様な感じだ。
「俺達も一緒に」
「いや、お前達はエンデさんの傍で万一に備えてくれ」
工房内とは言え、眠っている彼女を一人置いて行くのは問題がある。
かといって、異変が起きている状態をエンデが起きるのを悠長に待つのも問題だ。
だから二人には、この場に残って彼女の護衛をして貰う。
「わかりました。でも気を付けてくださいね、師匠」
「分かってるさ、無茶はしない。それとこれを。何かあったら握り潰すんだ」
俺は袋からの小さな球を2人に渡した。
緊急アラームの様な効果を持つマジックアイテムで、握りつぶすと俺の持っている方の球が反応を示す様になっている。
「じゃあ行って来る」
俺はまず探索魔法を発動させ、周囲に魔物がいないかを確認する。
工房周りに反応はなかったが、謎の異変があったばかりなので油断はできない。
慎重に外に出て、周囲の様子を確認する。
「周りには特に何もないな」
俺は唯一あった、少し離れた場所にある生命反応。
魔物の方へと向かってみる。
「キメラか?」
そこにいたのは、巨大な4足獣の魔物だった。
体高は軽く3メートルを超え。
獅子の頭部に、蛇の尾、肩からはヤギの頭が生えている。
世にいうキメラという奴だ。
初遭遇なので、その強さの程はわからない。
だがその巨体から考えて、深層で処理していたアラクネやミノタウロスよ手強そうにに見える。
「ぐぅぅぅぅぅ……」
俺の察知が敵の殺意を感知する。
隠密フルセットで影からこっそり覗いただけにも拘らず、バレてしまった様だ。
まあ獣型の魔物なので、匂い辺りで気づかれたのだろう。
「があああぁぁぁぁぁ!!」
雄叫びと共に、キメラが突っ込んで来た。
巨体に似合わぬ速度で一気に間合いを詰められ、その巨大な顎が俺に迫る。
「はっ!」
それを躱し、相手の太い足に俺は剣を斬り付けた。
硬い感触。
振るった一撃は肉を切り裂きはしたが、骨までは断てなかった。
「硬った……」
硬さは下位のドラゴン以上だ。
更にその素早い動き。
こいつはミノタウロスなんかよりも遥かに強い。
「イモ達じゃ、少々きつい相手だな」
此方が間合いを離すと、尻尾の蛇が霧状のブレスを吐きかけて来る。
間違いなく毒系の攻撃だろう。
喰らってやる謂れもないので、俺はそれを素早く後ろに飛んで躱す。
「ぐおおおお!!」
そこに、自らの放ったブレスの中を突っ切ってキメラが突進してきた。
その巨体からくる重量に任せて、俺を吹き飛ばすつもりなのだろう。
「舐めんなよ!人間様にはスキルがあるんだぜ!『渾身の一撃』!」
渾身の一撃は、最上級クラスである武王の攻撃スキルだ。
ディレイは1時間と長く、消費もかなり大きい。
だがその威力は、瞬間的に5倍に跳ね上がる程強力だ。
因みにこれは、この前つくったアイススソードについた武器スキルである。
俺自身は、SP的にまだこのスキルを習得できていない。
「はぁっ!!」
アイスソードが強烈なオーラを放ち、キラキラと輝く。
俺は手にしたそれを、縦一文字に力強く振り下ろした。
突っ込んで来たキメラの体が左右に分かれ、慣性で俺の横を通り過ぎていく。
「このスキルが無消費で打てるのはでかいよな」
アイテムに宿ったスキルは、発動や維持に消費が発生しない。
どういう仕組みかは全く分からないが、便利な事この上なしだ。
「しっかし……凄い経験値だな」
キメラを倒した事で、レベルが一気に71から73に上がってしまった。
ドラゴン系でも、最近では1レベル上げるのに2匹は狩らなければならなかった事を考えると、その経験値量は破格だ。
「ひょっとしてボーナスステージなのか?」
ゲームのダンジョンなんかだと、隠し通路や特定の条件で非常に美味しい狩場に行けたりする事がある。
「いや、流石にそれは無いか」
ゲームみたいな世界ではあるが、ここはれっきとした現実である。
それに、スキル渾身の一撃のお陰で簡単に倒せはしたが、普通に戦ったらキメラはかなり手強い魔物だ。
そう考えると、ボーナスには程遠い。
「さて、素材は……と」
キメラの情報は持ち合わせていないので、何が有用か分からない。
なので俺は魔法を発動させ、倒したキメラの死体の魔力をチェックする。
……だいたい使える素材の部分は、魔力を大量に含んでいるからな。
特に魔力の強い反応があったのはヤギの角の部分と、左半身の胸の部分。
つまり、心臓と思わしき部位だ。
「こりゃ……魔石か」
キメラの心臓部分から出てきたのは魔石だった。
それもかなり魔力の籠った強力な物だ。
通常、魔石は鉱山などで地中から採掘される。
魔物の体内から取れるなんて話、聞いた事もない。
「ま、考えても仕方が無いか」
何故とか言い出したら切りがない。
そういう物だと割り切るのが、異世界での正しい生き方だ。
「まあ後は角だけでいいか」
他にも魔力の反応が強めの部位はあったが、それは放置する。
本格的に解体しだすときりがないからな。
今は周囲の確認が先だ。
その後も可能な限り周囲の探索はしたが、結局変わった物は見つからなかった。
俺は探索を切り上げ、一旦工房へと戻る。
「わからない。俺はちょっと周囲の確認をして来る」
ダンジョンは色だけでなく、地形自体も変わっていた。
周囲には金属製の柱が立っており。
これまでの洞窟然とした物ではなく、もろ人口物の中にいる様な感じだ。
「俺達も一緒に」
「いや、お前達はエンデさんの傍で万一に備えてくれ」
工房内とは言え、眠っている彼女を一人置いて行くのは問題がある。
かといって、異変が起きている状態をエンデが起きるのを悠長に待つのも問題だ。
だから二人には、この場に残って彼女の護衛をして貰う。
「わかりました。でも気を付けてくださいね、師匠」
「分かってるさ、無茶はしない。それとこれを。何かあったら握り潰すんだ」
俺は袋からの小さな球を2人に渡した。
緊急アラームの様な効果を持つマジックアイテムで、握りつぶすと俺の持っている方の球が反応を示す様になっている。
「じゃあ行って来る」
俺はまず探索魔法を発動させ、周囲に魔物がいないかを確認する。
工房周りに反応はなかったが、謎の異変があったばかりなので油断はできない。
慎重に外に出て、周囲の様子を確認する。
「周りには特に何もないな」
俺は唯一あった、少し離れた場所にある生命反応。
魔物の方へと向かってみる。
「キメラか?」
そこにいたのは、巨大な4足獣の魔物だった。
体高は軽く3メートルを超え。
獅子の頭部に、蛇の尾、肩からはヤギの頭が生えている。
世にいうキメラという奴だ。
初遭遇なので、その強さの程はわからない。
だがその巨体から考えて、深層で処理していたアラクネやミノタウロスよ手強そうにに見える。
「ぐぅぅぅぅぅ……」
俺の察知が敵の殺意を感知する。
隠密フルセットで影からこっそり覗いただけにも拘らず、バレてしまった様だ。
まあ獣型の魔物なので、匂い辺りで気づかれたのだろう。
「があああぁぁぁぁぁ!!」
雄叫びと共に、キメラが突っ込んで来た。
巨体に似合わぬ速度で一気に間合いを詰められ、その巨大な顎が俺に迫る。
「はっ!」
それを躱し、相手の太い足に俺は剣を斬り付けた。
硬い感触。
振るった一撃は肉を切り裂きはしたが、骨までは断てなかった。
「硬った……」
硬さは下位のドラゴン以上だ。
更にその素早い動き。
こいつはミノタウロスなんかよりも遥かに強い。
「イモ達じゃ、少々きつい相手だな」
此方が間合いを離すと、尻尾の蛇が霧状のブレスを吐きかけて来る。
間違いなく毒系の攻撃だろう。
喰らってやる謂れもないので、俺はそれを素早く後ろに飛んで躱す。
「ぐおおおお!!」
そこに、自らの放ったブレスの中を突っ切ってキメラが突進してきた。
その巨体からくる重量に任せて、俺を吹き飛ばすつもりなのだろう。
「舐めんなよ!人間様にはスキルがあるんだぜ!『渾身の一撃』!」
渾身の一撃は、最上級クラスである武王の攻撃スキルだ。
ディレイは1時間と長く、消費もかなり大きい。
だがその威力は、瞬間的に5倍に跳ね上がる程強力だ。
因みにこれは、この前つくったアイススソードについた武器スキルである。
俺自身は、SP的にまだこのスキルを習得できていない。
「はぁっ!!」
アイスソードが強烈なオーラを放ち、キラキラと輝く。
俺は手にしたそれを、縦一文字に力強く振り下ろした。
突っ込んで来たキメラの体が左右に分かれ、慣性で俺の横を通り過ぎていく。
「このスキルが無消費で打てるのはでかいよな」
アイテムに宿ったスキルは、発動や維持に消費が発生しない。
どういう仕組みかは全く分からないが、便利な事この上なしだ。
「しっかし……凄い経験値だな」
キメラを倒した事で、レベルが一気に71から73に上がってしまった。
ドラゴン系でも、最近では1レベル上げるのに2匹は狩らなければならなかった事を考えると、その経験値量は破格だ。
「ひょっとしてボーナスステージなのか?」
ゲームのダンジョンなんかだと、隠し通路や特定の条件で非常に美味しい狩場に行けたりする事がある。
「いや、流石にそれは無いか」
ゲームみたいな世界ではあるが、ここはれっきとした現実である。
それに、スキル渾身の一撃のお陰で簡単に倒せはしたが、普通に戦ったらキメラはかなり手強い魔物だ。
そう考えると、ボーナスには程遠い。
「さて、素材は……と」
キメラの情報は持ち合わせていないので、何が有用か分からない。
なので俺は魔法を発動させ、倒したキメラの死体の魔力をチェックする。
……だいたい使える素材の部分は、魔力を大量に含んでいるからな。
特に魔力の強い反応があったのはヤギの角の部分と、左半身の胸の部分。
つまり、心臓と思わしき部位だ。
「こりゃ……魔石か」
キメラの心臓部分から出てきたのは魔石だった。
それもかなり魔力の籠った強力な物だ。
通常、魔石は鉱山などで地中から採掘される。
魔物の体内から取れるなんて話、聞いた事もない。
「ま、考えても仕方が無いか」
何故とか言い出したら切りがない。
そういう物だと割り切るのが、異世界での正しい生き方だ。
「まあ後は角だけでいいか」
他にも魔力の反応が強めの部位はあったが、それは放置する。
本格的に解体しだすときりがないからな。
今は周囲の確認が先だ。
その後も可能な限り周囲の探索はしたが、結局変わった物は見つからなかった。
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