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第40話 変色

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「それでパーティーは全滅して、何とか今まで生き延びてきたの……」

欲を出した仲間のせいでトラップにかかり、パーティーは全滅か。
まあ予想通り生存者はいない様だ。

「私がもっと強かったら……皆を守れたのに」

「こんな場所で何日も、たった一人で生き抜いただけでも凄い事ですよ」

「ああ、大したものだ」

自分の未熟さから、大事な物を失う辛さは良く分かるつもりだ。
彼女が落ち着くまでには、きっと相当な時間がかかる事だろう。

「取り敢えず、今日はここでキャンプするとしようか」

休むには少々早いが、弱っているエンデさんを連れ回す訳にはいかないからな。
一旦休憩して体力を回復させてから、彼女を外に連れて行くとする。

――俺は【武具製作】を発動させる。

このスキルは製作に対するボーナスだけではなく、工房を生み出すという効果をも持ち合わせていた。
工房は頑丈なので、そこを宿代わりに使うつもりだ。

まあ発動条件として広い空間が必要となる訳だが、今いる場所なら問題ないだろう。

「ひゃっ!なに!?」

スキルで周りの景色が変わり、エンデが驚いてベニイモに抱き着き怯える。
何と無しに使ってしまったが、事前に説明しておいた方が良かった様だ。
無駄に怖がらせてしまった。

「スキルですから、安心してください」

俺の言葉に、彼女はおっかなびっくりと言った感じに工房内を見渡す。

「スキル……これが?本当に?」

まあ他とは大分毛色が違うので、疑うのも無理はない。

「師匠は凄い人ですから。こんな謎スキルもお手の物なんですよ」

「師匠?それじゃあこの子が、貴方達の言っていた勇者ソアラさんに匹敵するもう一人の?」

「はい!アドル師匠です!」

「いやちょっと待て。俺がソアラに匹敵してた事なんて、一度もないんだが?」

「何言ってるんですか!いつも凄い勝負してたじゃないですか!」

ソアラは俺と訓練する時でも、常にある程度手加減してくれていた。
まあ最後の勝負は別だったが。
当然それにはベニイモ達も気づいていると思っていたのだが、案外節穴だった様だ。

「はぁ……まあいい。この中は安全なんで、エンデさんもゆっくり休んでください」

「すいません。ありがとうございます」

袋から寝袋を取り出す。
一応予備も入れてあるので、彼女にはそれを使ってもらう。

「よっぽど疲れてたんだな」

彼女は寝袋に包まると、あっという間に寝息を立て始めた。
ソロ用の用意もなく単独行動していた事を考えると、きっと殆ど寝れていなかったのだろう。

「取り敢えず、一休みしてエンデさんの調子が戻ったら――っ!?」

その時、背筋に悪寒が走る。
咄嗟に周囲を見渡すが、特に工房内には異変は見当たらなかった。

何だ今の悪寒は?
敵襲か?

だがそれにしては、察知が反応していない。
外壁を攻撃される様な音もないので、その可能性は低く思えた。

「師匠?急にどうかしたんですか?」

ベニイモ達は何も感じなていないらしく、急にキョロキョロしだした俺を不思議そうに見ている。

「ああ、いや。何でもない」

悪寒はもう既に消えている。
若干気にはなるが、俺は気のせいだと結論付けた。

だがまあ、一応外の様子だけは確認しておこう。
そう思って工房の扉を開けると――

「――っ!?なんだ!どうなってる!?」

俺は我が目を疑う。
何故なら、色が変わっていたからだ。

ダンジョン内の外壁などの色が、青からメタリックなシルバーへと。
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