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第36話 ダンジョン都市
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王女暗殺未遂に続き、有力貴族の誘拐――実際は殺人だが、遺体が発見されていないので誘拐と言う事になっている。
連夜の大事件連発に城では大騒ぎになっている様だったが、俺達はそんな騒ぎをよそに王都を後にしていた。
正直、王女暗殺が気にはなっていたのだが……
まあ俺に出来る事はないからな。
そこはゼッツさん達の頑張りに期待だ。
で、俺達が向かう目的地だが。
王都から3日ほど南に走った場所にある、パズンと言う都市だ。
‟走った”なのは、自分達の足で走って向かっているからだった。
馬車より此方の方が遥かに速い。
「ついたな……アレがパズンか」
パズンは広い山の谷間にある中規模の都市だ。
元々採掘の為に作られた場所だったが、大規模なダンジョンが発見されてからは其方が経済の中心になっている。
そのため、人々はパズンをダンジョン都市と呼ぶ。
「はぁ……はぁ……やっと追いついた」
「ふぅ……ふぅ……」
俺に追いついたイモ兄妹が、息を整えながらその場にへたり込んだ。
ラストスパートという事で飛ばしてきたからしょうがない。
……ま、俺は全然平気だけど。
体力にはそこまで絶対的な差はないだろうが、筋力の差が大きい。
そこが違うと、同じスピードで走っても消耗する体力が全然違って来るのだ。
「んじゃまず、街に入ったら宿を決めるとしようか」
基本的に必要な物を買い揃えたら、俺達はそのままダンジョン暮らしに移行する事になる。
腰の袋は大量収納が可能だし、同じ効果の袋をその中に入れておけば収納量は更に倍になるので、数か月ぐらいは余裕で潜っていられるはずだ。
食料はザーン親子を入れた物と同じタイプの、冷凍ずた袋に入れてさえおけば腐る心配もないしな。
とは言え、ついていきなりダンジョンに突っ込むのもあれだ。
この三日間ハイペースで走って来たのでイモ兄妹には休息が必要だろうし、ダンジョン都市なら有用な触媒なんかも売っているかもしれないので、2~3日はここで逗留する予定である。
「流石ダンジョン都市。やっぱり冒険者風の人物が多いですねぇ」
門を潜って街の中に入ると、周囲にそれっぽい人間をちらほら見かける様になる。
この都市はそれが売りだけあって、大規模ダンジョン探索を目的とした冒険者が多い。
「宿はここでいいな」
立派な門構えの大きめな宿。
そこで俺とイモ兄妹用に、2部屋取る。
ランク的には上の下って所だ。
無駄遣いするつもりはないが、あんまり安い所をとると落ち着いて休めないからな。
「まず冒険者ギルドに行って。それから街を周って買い物して来るけど、お前らは休んどくか?」
ギルドに寄るのは、別に仕事なんかを受ける為じゃない。
ダンジョンの情報を買う為だ。
どういった魔物が出るのかとかは別にどうでもいいんだが、出来れば地図は手に入れておきたかった。
未踏破のダンジョンなので全体図は当然望めないが、途中までの物でも有るか無いかで大分違って来るだろう。
「あ、私は付いて行きます」
「俺はこの宿の中庭で剣を振っとく」
ベニイモは付いてくるが、タロイモの方は訓練をするつもりの様だった。
庭で剣を振られても迷惑な気もするが、駄目ならまあ、宿の人に注意されるだろう。
「そうか。じゃあ行こう」
「はい!」
宿の受付に場所を訪ね、俺とベニイモは冒険者ギルドへと向かう。
この街には二か所あるそうだが、取り敢えず近い方を選んだ。
情報を買うだけならどちらでも一緒だろう。
「酒場併設型か」
冒険者ギルドは街毎に、結構な差がある。
辿り着いた場所は酒場が併設されている古めかしい造りで、一言で言うと外れだった。
それも大外れ。
内部は余り掃除が行き届いておらず、真昼間にもかかわらずゲラゲラ笑いながら酒を飲んでいる輩がたむろしている。
なんで酒場なんて併設するんだろうか?
それが謎だ。
「だらしない。ここの人達、こんな腑抜けた生き方をしてて恥ずかしくないんですかね」
ベニイモが飲んだくれている冒険者達に汚い物を見る様な目を向け、俺にだけ聞こえる小声で呟く。
兄と同じく努力家である彼女からすれば、彼らがダメな人間に見えて仕方ないのだろう。
「まあ生き方なんて人それぞれだ」
少し前までスローライフでだらだら暮らしたいと考えていた身としては、耳の痛い話である。
俺は酒臭いのを我慢して、受付のカウンターへと向かう。
「何か御用かしら」
受付は50代ぐらいの太ったおばさんだった。
漫画とかだと綺麗な受付が出て来るんだろうが、現実はこんなものである。
まあそこは別にどうでもいいか。
「ダンジョンについての情報を売って欲しいんです。出来れば地図を」
「あらあら、貴方達まだ若いのにダンジョンに挑戦するつもりなの?」
「ええ、まあ」
「特に貴方なんてまだ子供じゃない。あそこは危ない所だし、正直お姉さんからはお勧めできないわねぇ」
レディーに年齢云々は失礼な考えなんだろうが、「流石にお姉さんは厚かましい」と言いたくなる。
ま、言わないけど。
「お気遣いありがとうございます。ですが、色々と事情がありまして。それで地図があれば売って欲しいのですが」
「まあ買いたいって言うのなら止めないけど、結構高いのよ?大丈夫?」
「ええ、大丈夫です」
今までも、何度か武器類を売って金を作っている。
ダンジョンの地図を買う位なら余裕だ。
「じゃあ金貨3枚になるわ」
金貨は1枚で、地球だとおおよそ10万円ぐらいの価値だ。
つまりダンジョンの地図は30万もする事になる。
まあ確かに高いが、それだけ情報に価値があるという事なのだろう。
俺は小振りの革袋から金貨を取り出し、受付の女性に渡す。
お金を受け取った彼女は、奥の方から分厚い紙束を持って来てそれをカウンターの上にドサッと乱雑に置いた。
「はい、これよ」
どうやらこの束が地図の様だ。
チラリと内容を見ると、地形とそこに出て来る魔物の特徴などが挿絵付きで書き込まれたいた。
金貨3枚もするだけあって、中々しっかりしている。
「ありがとうございます」
俺は腰の袋の口を大きく開け――伸縮性が高い――それを中にしまい込んだ。
これさえあればもうここには用はない。
俺達はさっさとギルドを後にする。
「師匠……つけられてますね」
ギルドを出てしばらく歩くと、ベニイモが後ろを気にして小声で俺にそう伝えて来る。
当然俺もそれには気づいていた。
正直、察知すら必要ない程のお粗末な尾行である。
相手はギルドで飲んだくれていた奴らの一部だ。
俺がカウンターで金貨を出していた所が見えたのだろう。
大金を持ったガキが、そいつらには鴨に見えたらしい。
自堕落に生きるのは個人の自由だ。
酒だって好きに飲めばいいし、それを責めるつもりはない。
だが、子供の財布を狙う様な屑共にはそれ相応の報いは受けて貰う。
「お灸をすえるとしよう」
「はい」
俺は態と人気のなさそうな場所に入っていく。
普通に考えれば誘い込まれていると気づきそうなあからさまな動きなのだが、所詮子供と侮っているのか、それとも酔って正常な判断が出来ないのか、背後の奴らはのこのこと俺達について来た。
「俺達に何か用かい?」
完全に人気のない路地裏で、振り返って声をかけた。
馬鹿たれ共は一瞬面食らった様な顔をするが、直ぐにその表情はにやけ面へと変わる。
「おう、坊主共。俺達が先輩冒険者として稽古をつけてやるよ」
「お代はお前の有り金全部。あと、買った地図も含めてな」
「稽古をつけてくれるのか?そいつは有難いな。お代はそうだな――右ひざにしとこう」
「はぁ?何言ってん――ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
素早く近づいて、相手の右膝に蹴りを入れる。
膝の皿所か、相手の関節その物を完全に粉砕してやった。
「お見事です。師匠」
輩の一人が悲鳴を上げて地面に転がる
これが地球なら、確実に障害で真面に歩けなくるダメージだっただろう。
だがこの世界には魔法やポーション類がある。
高度な回復は期待できないだろうから多少時間はかかるだろうが、それでもそのうち回復するはず。
まあカツアゲの罰としてはこんなもんでいいだろう。
俺は残り二人の右ひざも素早く粉砕し、さっさとその場を立ち去る。
人気がないとはいえ、大きな叫び声が響いたからな。
きっと直ぐに人がやって来る筈だ。
「ベニイモは何か必要な物とかあるか?」
「いえ、特には」
「そうか。じゃあ、オプション付加用の素材でも見にいくとしよう」
場所は宿の人間にギルドの場所を尋ねたついでに聞いているので分かっている。
俺はベニイモを連れ、そう言った品物を取り扱っている店へと向かう。
連夜の大事件連発に城では大騒ぎになっている様だったが、俺達はそんな騒ぎをよそに王都を後にしていた。
正直、王女暗殺が気にはなっていたのだが……
まあ俺に出来る事はないからな。
そこはゼッツさん達の頑張りに期待だ。
で、俺達が向かう目的地だが。
王都から3日ほど南に走った場所にある、パズンと言う都市だ。
‟走った”なのは、自分達の足で走って向かっているからだった。
馬車より此方の方が遥かに速い。
「ついたな……アレがパズンか」
パズンは広い山の谷間にある中規模の都市だ。
元々採掘の為に作られた場所だったが、大規模なダンジョンが発見されてからは其方が経済の中心になっている。
そのため、人々はパズンをダンジョン都市と呼ぶ。
「はぁ……はぁ……やっと追いついた」
「ふぅ……ふぅ……」
俺に追いついたイモ兄妹が、息を整えながらその場にへたり込んだ。
ラストスパートという事で飛ばしてきたからしょうがない。
……ま、俺は全然平気だけど。
体力にはそこまで絶対的な差はないだろうが、筋力の差が大きい。
そこが違うと、同じスピードで走っても消耗する体力が全然違って来るのだ。
「んじゃまず、街に入ったら宿を決めるとしようか」
基本的に必要な物を買い揃えたら、俺達はそのままダンジョン暮らしに移行する事になる。
腰の袋は大量収納が可能だし、同じ効果の袋をその中に入れておけば収納量は更に倍になるので、数か月ぐらいは余裕で潜っていられるはずだ。
食料はザーン親子を入れた物と同じタイプの、冷凍ずた袋に入れてさえおけば腐る心配もないしな。
とは言え、ついていきなりダンジョンに突っ込むのもあれだ。
この三日間ハイペースで走って来たのでイモ兄妹には休息が必要だろうし、ダンジョン都市なら有用な触媒なんかも売っているかもしれないので、2~3日はここで逗留する予定である。
「流石ダンジョン都市。やっぱり冒険者風の人物が多いですねぇ」
門を潜って街の中に入ると、周囲にそれっぽい人間をちらほら見かける様になる。
この都市はそれが売りだけあって、大規模ダンジョン探索を目的とした冒険者が多い。
「宿はここでいいな」
立派な門構えの大きめな宿。
そこで俺とイモ兄妹用に、2部屋取る。
ランク的には上の下って所だ。
無駄遣いするつもりはないが、あんまり安い所をとると落ち着いて休めないからな。
「まず冒険者ギルドに行って。それから街を周って買い物して来るけど、お前らは休んどくか?」
ギルドに寄るのは、別に仕事なんかを受ける為じゃない。
ダンジョンの情報を買う為だ。
どういった魔物が出るのかとかは別にどうでもいいんだが、出来れば地図は手に入れておきたかった。
未踏破のダンジョンなので全体図は当然望めないが、途中までの物でも有るか無いかで大分違って来るだろう。
「あ、私は付いて行きます」
「俺はこの宿の中庭で剣を振っとく」
ベニイモは付いてくるが、タロイモの方は訓練をするつもりの様だった。
庭で剣を振られても迷惑な気もするが、駄目ならまあ、宿の人に注意されるだろう。
「そうか。じゃあ行こう」
「はい!」
宿の受付に場所を訪ね、俺とベニイモは冒険者ギルドへと向かう。
この街には二か所あるそうだが、取り敢えず近い方を選んだ。
情報を買うだけならどちらでも一緒だろう。
「酒場併設型か」
冒険者ギルドは街毎に、結構な差がある。
辿り着いた場所は酒場が併設されている古めかしい造りで、一言で言うと外れだった。
それも大外れ。
内部は余り掃除が行き届いておらず、真昼間にもかかわらずゲラゲラ笑いながら酒を飲んでいる輩がたむろしている。
なんで酒場なんて併設するんだろうか?
それが謎だ。
「だらしない。ここの人達、こんな腑抜けた生き方をしてて恥ずかしくないんですかね」
ベニイモが飲んだくれている冒険者達に汚い物を見る様な目を向け、俺にだけ聞こえる小声で呟く。
兄と同じく努力家である彼女からすれば、彼らがダメな人間に見えて仕方ないのだろう。
「まあ生き方なんて人それぞれだ」
少し前までスローライフでだらだら暮らしたいと考えていた身としては、耳の痛い話である。
俺は酒臭いのを我慢して、受付のカウンターへと向かう。
「何か御用かしら」
受付は50代ぐらいの太ったおばさんだった。
漫画とかだと綺麗な受付が出て来るんだろうが、現実はこんなものである。
まあそこは別にどうでもいいか。
「ダンジョンについての情報を売って欲しいんです。出来れば地図を」
「あらあら、貴方達まだ若いのにダンジョンに挑戦するつもりなの?」
「ええ、まあ」
「特に貴方なんてまだ子供じゃない。あそこは危ない所だし、正直お姉さんからはお勧めできないわねぇ」
レディーに年齢云々は失礼な考えなんだろうが、「流石にお姉さんは厚かましい」と言いたくなる。
ま、言わないけど。
「お気遣いありがとうございます。ですが、色々と事情がありまして。それで地図があれば売って欲しいのですが」
「まあ買いたいって言うのなら止めないけど、結構高いのよ?大丈夫?」
「ええ、大丈夫です」
今までも、何度か武器類を売って金を作っている。
ダンジョンの地図を買う位なら余裕だ。
「じゃあ金貨3枚になるわ」
金貨は1枚で、地球だとおおよそ10万円ぐらいの価値だ。
つまりダンジョンの地図は30万もする事になる。
まあ確かに高いが、それだけ情報に価値があるという事なのだろう。
俺は小振りの革袋から金貨を取り出し、受付の女性に渡す。
お金を受け取った彼女は、奥の方から分厚い紙束を持って来てそれをカウンターの上にドサッと乱雑に置いた。
「はい、これよ」
どうやらこの束が地図の様だ。
チラリと内容を見ると、地形とそこに出て来る魔物の特徴などが挿絵付きで書き込まれたいた。
金貨3枚もするだけあって、中々しっかりしている。
「ありがとうございます」
俺は腰の袋の口を大きく開け――伸縮性が高い――それを中にしまい込んだ。
これさえあればもうここには用はない。
俺達はさっさとギルドを後にする。
「師匠……つけられてますね」
ギルドを出てしばらく歩くと、ベニイモが後ろを気にして小声で俺にそう伝えて来る。
当然俺もそれには気づいていた。
正直、察知すら必要ない程のお粗末な尾行である。
相手はギルドで飲んだくれていた奴らの一部だ。
俺がカウンターで金貨を出していた所が見えたのだろう。
大金を持ったガキが、そいつらには鴨に見えたらしい。
自堕落に生きるのは個人の自由だ。
酒だって好きに飲めばいいし、それを責めるつもりはない。
だが、子供の財布を狙う様な屑共にはそれ相応の報いは受けて貰う。
「お灸をすえるとしよう」
「はい」
俺は態と人気のなさそうな場所に入っていく。
普通に考えれば誘い込まれていると気づきそうなあからさまな動きなのだが、所詮子供と侮っているのか、それとも酔って正常な判断が出来ないのか、背後の奴らはのこのこと俺達について来た。
「俺達に何か用かい?」
完全に人気のない路地裏で、振り返って声をかけた。
馬鹿たれ共は一瞬面食らった様な顔をするが、直ぐにその表情はにやけ面へと変わる。
「おう、坊主共。俺達が先輩冒険者として稽古をつけてやるよ」
「お代はお前の有り金全部。あと、買った地図も含めてな」
「稽古をつけてくれるのか?そいつは有難いな。お代はそうだな――右ひざにしとこう」
「はぁ?何言ってん――ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
素早く近づいて、相手の右膝に蹴りを入れる。
膝の皿所か、相手の関節その物を完全に粉砕してやった。
「お見事です。師匠」
輩の一人が悲鳴を上げて地面に転がる
これが地球なら、確実に障害で真面に歩けなくるダメージだっただろう。
だがこの世界には魔法やポーション類がある。
高度な回復は期待できないだろうから多少時間はかかるだろうが、それでもそのうち回復するはず。
まあカツアゲの罰としてはこんなもんでいいだろう。
俺は残り二人の右ひざも素早く粉砕し、さっさとその場を立ち去る。
人気がないとはいえ、大きな叫び声が響いたからな。
きっと直ぐに人がやって来る筈だ。
「ベニイモは何か必要な物とかあるか?」
「いえ、特には」
「そうか。じゃあ、オプション付加用の素材でも見にいくとしよう」
場所は宿の人間にギルドの場所を尋ねたついでに聞いているので分かっている。
俺はベニイモを連れ、そう言った品物を取り扱っている店へと向かう。
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