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第20話 お告げ
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「市民じゃない?ですか?」
麓の村で宿を取り、一息ついた所で俺は自分のクラスが市民でない事をイモ兄妹に告げる。
魔王を倒すと決めた以上、最早隠す必要は無い。
「ああ。偽装で市民になってるだけで、俺の本当のクラスは別なんだ」
「そうだったんですか……」
「隠してて悪かったな」
当時は自分が戦いの場に身を置くなんて、考えもしていなかった事だ。
だが騙していた事には変わりない。
俺はその事を素直に謝る。
「それで?師匠の本当のクラスってなんなんです?」
「スキルマスターってクラスだ」
レベルアップ時に大量のSPを獲得でき、全てのクラスのスキルを習得出来るクラスだとざっくりと説明する。
「全てのクラスのスキル……」
「アドル師匠の強さは出鱈目だと思ってましたけど、そういう事だったんですね」
「一応、レベルアップ時のステータス成長が最低っていう欠点もあるけどな」
ステータスブースト系を取りまくれるとは言え、基本値は低い。
その為、ある程度スキルを習得するまでは今一だったりする。
まあ大器晩成タイプって奴だ。
「その……アドル師匠は、ソアラ師匠の仇を討つんですよね」
「ああ……魔王を倒す」
ベニイモの問いに、俺は迷わず答えた。
仇を討ったからと言って、彼女が生き返る訳ではない。
だが俺はソアラの相棒だ。
だから俺には、その夢を引き継ぐ義務がある。
まあそれを抜きにしても、今の魔王は放置するわけにはいかないからな。
何故なら奴は――
「私達もお供します。そのために師匠を探していたんです」
「お供……か。今の二人は何レベルなんだ?」
「二人とも65です」
「65……最上級には覚醒してるんだよな?」
通常のクラスの場合、レベル30で上級、60で最上級へと覚醒する機会が訪れる。
ただし、レベルさえ上がれば誰でも覚醒できる上級クラスとは違い、最上級クラスへは才能の有る者だけしか覚醒できない。
「はい。私は武王に。タロイモは守護騎士です」
兄妹揃って最上級に覚醒か。
まあ何だかんだで、二人とも才能があったからな。
けど――
「正直、二人の実力じゃ魔王との戦いはキツイ」
「確かに……今の私達じゃ話にならないかもしれません。でも、レベルを上げれば――」
レベル65でスキルも取り切っていない事を考えると、彼女達にはまだまだまだ伸びしろがあると言えるだろう。
だがそれを踏まえて考えても、現段階でアイスドラゴン程度を二人がかりでやっとな彼女達が、魔王戦で戦力になれるとは到底思えなかった。
「魔王と戦った時、ソアラのレベルは93だった」
激しい魔族と戦いの中で、彼女のレベルは93まで上がっていたそうだ。
その強さは、他クラスの人間と比較にならないレベルだったはず。
そんな彼女が敗れたのだ。
それも――
「そしてソアラが戦った魔王は……ただの分身だった」
「「っ!?」」
ベニイモの表情が驚愕に変わる。
それまで黙っていたタロイモも、俺の言葉の意味に目を見開いた。
「冗談……ですよね。アドル師匠」
「ソアラの事で、俺は嘘なんかつかない」
本体の強さは分身を遥かに超えている。
残念ながら、一般クラスの彼女達がレベルを限界まで上げたからと言って、真面に戦えるような相手ではない。
勿論、魔王と戦うための周囲の露払いとしてなら役には立ってくれるだろう。
だがベニイモ達の言うお供とは、そう言う意味ではないはずだ。
「なんで師匠はそんな事を知っているんだ?ソアラ師匠のレベルや、魔王が分身だったなんて話。ゼッツさんだって知らない事だ」
ゼッツ……タロイモが口にした名は、ソアラの護衛騎士の隊長を務めていた人の名だ。
魔王戦で彼女の最後をその目に刻み、俺にその全てを伝えてくれた人でもある。
「神様から聞いたんだ」
ソアラの戦死を知ってから、一度だけ、俺の夢の中に神様が姿を現していた。
そこで聞いたのだ。
ソアラのレベルや魔王の強さを。
「神?師匠、ふざけてるのか?」
タロイモがきつい眼差しで俺を睨みつける。
まあ急に神とか言い出した訳だからな。
ふざけるなと思うのも無理はない。
「ちょっと!兄さん!」
「確かに、急に神様とか言われても信じられないのわかる。だが事実だ」
そしてその時、神は言っていた。
例え上限突破した150までレベルを上げ様とも、俺では魔王には勝てないと。
麓の村で宿を取り、一息ついた所で俺は自分のクラスが市民でない事をイモ兄妹に告げる。
魔王を倒すと決めた以上、最早隠す必要は無い。
「ああ。偽装で市民になってるだけで、俺の本当のクラスは別なんだ」
「そうだったんですか……」
「隠してて悪かったな」
当時は自分が戦いの場に身を置くなんて、考えもしていなかった事だ。
だが騙していた事には変わりない。
俺はその事を素直に謝る。
「それで?師匠の本当のクラスってなんなんです?」
「スキルマスターってクラスだ」
レベルアップ時に大量のSPを獲得でき、全てのクラスのスキルを習得出来るクラスだとざっくりと説明する。
「全てのクラスのスキル……」
「アドル師匠の強さは出鱈目だと思ってましたけど、そういう事だったんですね」
「一応、レベルアップ時のステータス成長が最低っていう欠点もあるけどな」
ステータスブースト系を取りまくれるとは言え、基本値は低い。
その為、ある程度スキルを習得するまでは今一だったりする。
まあ大器晩成タイプって奴だ。
「その……アドル師匠は、ソアラ師匠の仇を討つんですよね」
「ああ……魔王を倒す」
ベニイモの問いに、俺は迷わず答えた。
仇を討ったからと言って、彼女が生き返る訳ではない。
だが俺はソアラの相棒だ。
だから俺には、その夢を引き継ぐ義務がある。
まあそれを抜きにしても、今の魔王は放置するわけにはいかないからな。
何故なら奴は――
「私達もお供します。そのために師匠を探していたんです」
「お供……か。今の二人は何レベルなんだ?」
「二人とも65です」
「65……最上級には覚醒してるんだよな?」
通常のクラスの場合、レベル30で上級、60で最上級へと覚醒する機会が訪れる。
ただし、レベルさえ上がれば誰でも覚醒できる上級クラスとは違い、最上級クラスへは才能の有る者だけしか覚醒できない。
「はい。私は武王に。タロイモは守護騎士です」
兄妹揃って最上級に覚醒か。
まあ何だかんだで、二人とも才能があったからな。
けど――
「正直、二人の実力じゃ魔王との戦いはキツイ」
「確かに……今の私達じゃ話にならないかもしれません。でも、レベルを上げれば――」
レベル65でスキルも取り切っていない事を考えると、彼女達にはまだまだまだ伸びしろがあると言えるだろう。
だがそれを踏まえて考えても、現段階でアイスドラゴン程度を二人がかりでやっとな彼女達が、魔王戦で戦力になれるとは到底思えなかった。
「魔王と戦った時、ソアラのレベルは93だった」
激しい魔族と戦いの中で、彼女のレベルは93まで上がっていたそうだ。
その強さは、他クラスの人間と比較にならないレベルだったはず。
そんな彼女が敗れたのだ。
それも――
「そしてソアラが戦った魔王は……ただの分身だった」
「「っ!?」」
ベニイモの表情が驚愕に変わる。
それまで黙っていたタロイモも、俺の言葉の意味に目を見開いた。
「冗談……ですよね。アドル師匠」
「ソアラの事で、俺は嘘なんかつかない」
本体の強さは分身を遥かに超えている。
残念ながら、一般クラスの彼女達がレベルを限界まで上げたからと言って、真面に戦えるような相手ではない。
勿論、魔王と戦うための周囲の露払いとしてなら役には立ってくれるだろう。
だがベニイモ達の言うお供とは、そう言う意味ではないはずだ。
「なんで師匠はそんな事を知っているんだ?ソアラ師匠のレベルや、魔王が分身だったなんて話。ゼッツさんだって知らない事だ」
ゼッツ……タロイモが口にした名は、ソアラの護衛騎士の隊長を務めていた人の名だ。
魔王戦で彼女の最後をその目に刻み、俺にその全てを伝えてくれた人でもある。
「神様から聞いたんだ」
ソアラの戦死を知ってから、一度だけ、俺の夢の中に神様が姿を現していた。
そこで聞いたのだ。
ソアラのレベルや魔王の強さを。
「神?師匠、ふざけてるのか?」
タロイモがきつい眼差しで俺を睨みつける。
まあ急に神とか言い出した訳だからな。
ふざけるなと思うのも無理はない。
「ちょっと!兄さん!」
「確かに、急に神様とか言われても信じられないのわかる。だが事実だ」
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