12 / 68
第12話 ドナドナ
しおりを挟む
「いよいよだな……」
イモ兄妹と訓練を始める様になって、もう4年たつ。
彼らは無事レベル30になり、上級職へと覚醒を済ませていた。
お陰で騎士学校への試験は免除されている。
「はい!兄妹で最強の騎士になってきます!」
今日、二人は入学の為生まれ育ったこの村を旅立つ。
その表情は晴れやかだ。
それもその筈。
何故なら、彼らは自分達の夢の一歩を踏み出すのだから。
この4年間、兄妹はソアラの地獄の猛特訓に耐えきって見せた。
そんな二人なら、騎士学校でも余裕でやって行ける事だろう。
――勉強以外は。
「立派な騎士になりたいなら、ちゃんと勉強も頑張れよ」
二人は大馬鹿ではないが、頭がいいかと言えばノーと言える程度のお頭の出来だった。
まあだからこそ、二人は試験をパスする為にレベルを30にまで上げていたのだ。
一般知識の方で足切りされないために。
「う……だ、大丈夫です。根性で何とかしますから」
「安心してください。勉強どうこうでガタガタ言われないぐらいに強くなって見せますよ」
狼狽えるベニイモに対し、タロイモは堂々ととんでもない事を宣言する。
脳筋兄妹ではあるが、脳筋度は兄のタロイモの方が高かった。
「タロイモ。強くなるためにも知識は必要な物だぞ。魔物を倒すのだって、相手の特徴や弱点を知っておいた方が有利になるだろ?それと同じだ。ましてや。騎士になるお前が戦うのは魔物だけとは限らない。弱者を守る剣になるってんなら、強くなるため可能な限りの知識を求めろ」
長々と喋ったが、要約すると内容は――「ちゃんと勉強しろよ」――である。
まあ苦手な事を避け続ける様な奴に、騎士が務まるとは思えないからな。
「……分かりました、勉強も頑張ります」
タロイモが気まずそうに頬をかく。
その姿には不安しかない。
いやホント頑張れよ、お前。
「出発しますよー」
タロイモ達は、騎士学校のある王都まで馬車で移動する予定になっていた。
もう出発なのか、馬車の御者が声をかけて来る。
「ふたりとも!ファイトだよ!」
ソアラが拳に力を込めて、ガッツポーズする。
「「オッス!」」
それに応える様に、イモ兄妹が同じポーズで返した。
ノリは完全に体育会系だ。
俺にはついていけん。
「ソアラ師匠。アドル師匠。俺、二人に弟子入りして本当に良かったと思っています。今までありがとうございました」
「私もです!ありがとうございました!」
兄妹そろって俺達に大きく頭を下げる。
迷惑な押しかけ弟子だったが、何だかんだで長い付き合いだ。
こいつらがいなくなると思うと、少々物寂しく感じてしまう。
「元気でな」
「王都で待っててね!」
ソアラが力いっぱい腕を振る中、二人が乗り込んだ馬車は出発する。
やがてその姿が見えなくなると、ソアラがポツリと呟いた。
「二人になっちゃったね」
「ああ」
何か、子供が巣立った後の熟年夫婦みたいな会話だ。
まあ俺もソアラも10歳で、しかも巣立った側の方が歳が上ではあるが。
「よし!訓練を頑張って、向こうであった時二人をびっくりさせよう!」
ソアラは2年後に専門の教育を受ける為、王都に行く事になっている。
騎士学校は3年制なので、向こうで顔を合わす事も出来るだろう。
「俺は王都にはいかないから、頑張るなら一人でしてくれ」
親父の跡を継いでモーモ農家になる俺に、今以上の力など不要だ。
そもそも、王都にはいかないし。
「駄目だよ!アドルも一緒に頑張るの!」
相変わらずソアラは人の話を聞かない。
俺は首根っこを彼女に捕まれ、そのまま引きずられる。
「さ!今から訓練しよ!」
イモ兄妹を見送るから必然的に休息日だとほくそ笑んでいたのだが、世の中そう甘くなかった様だ。
しかもソアラは普段以上にやる気満々と来ている。
「はぁ……」
俺は大きく溜息を吐いた。
早く2年たたないかな……
心の底からそう願う。
イモ兄妹と訓練を始める様になって、もう4年たつ。
彼らは無事レベル30になり、上級職へと覚醒を済ませていた。
お陰で騎士学校への試験は免除されている。
「はい!兄妹で最強の騎士になってきます!」
今日、二人は入学の為生まれ育ったこの村を旅立つ。
その表情は晴れやかだ。
それもその筈。
何故なら、彼らは自分達の夢の一歩を踏み出すのだから。
この4年間、兄妹はソアラの地獄の猛特訓に耐えきって見せた。
そんな二人なら、騎士学校でも余裕でやって行ける事だろう。
――勉強以外は。
「立派な騎士になりたいなら、ちゃんと勉強も頑張れよ」
二人は大馬鹿ではないが、頭がいいかと言えばノーと言える程度のお頭の出来だった。
まあだからこそ、二人は試験をパスする為にレベルを30にまで上げていたのだ。
一般知識の方で足切りされないために。
「う……だ、大丈夫です。根性で何とかしますから」
「安心してください。勉強どうこうでガタガタ言われないぐらいに強くなって見せますよ」
狼狽えるベニイモに対し、タロイモは堂々ととんでもない事を宣言する。
脳筋兄妹ではあるが、脳筋度は兄のタロイモの方が高かった。
「タロイモ。強くなるためにも知識は必要な物だぞ。魔物を倒すのだって、相手の特徴や弱点を知っておいた方が有利になるだろ?それと同じだ。ましてや。騎士になるお前が戦うのは魔物だけとは限らない。弱者を守る剣になるってんなら、強くなるため可能な限りの知識を求めろ」
長々と喋ったが、要約すると内容は――「ちゃんと勉強しろよ」――である。
まあ苦手な事を避け続ける様な奴に、騎士が務まるとは思えないからな。
「……分かりました、勉強も頑張ります」
タロイモが気まずそうに頬をかく。
その姿には不安しかない。
いやホント頑張れよ、お前。
「出発しますよー」
タロイモ達は、騎士学校のある王都まで馬車で移動する予定になっていた。
もう出発なのか、馬車の御者が声をかけて来る。
「ふたりとも!ファイトだよ!」
ソアラが拳に力を込めて、ガッツポーズする。
「「オッス!」」
それに応える様に、イモ兄妹が同じポーズで返した。
ノリは完全に体育会系だ。
俺にはついていけん。
「ソアラ師匠。アドル師匠。俺、二人に弟子入りして本当に良かったと思っています。今までありがとうございました」
「私もです!ありがとうございました!」
兄妹そろって俺達に大きく頭を下げる。
迷惑な押しかけ弟子だったが、何だかんだで長い付き合いだ。
こいつらがいなくなると思うと、少々物寂しく感じてしまう。
「元気でな」
「王都で待っててね!」
ソアラが力いっぱい腕を振る中、二人が乗り込んだ馬車は出発する。
やがてその姿が見えなくなると、ソアラがポツリと呟いた。
「二人になっちゃったね」
「ああ」
何か、子供が巣立った後の熟年夫婦みたいな会話だ。
まあ俺もソアラも10歳で、しかも巣立った側の方が歳が上ではあるが。
「よし!訓練を頑張って、向こうであった時二人をびっくりさせよう!」
ソアラは2年後に専門の教育を受ける為、王都に行く事になっている。
騎士学校は3年制なので、向こうで顔を合わす事も出来るだろう。
「俺は王都にはいかないから、頑張るなら一人でしてくれ」
親父の跡を継いでモーモ農家になる俺に、今以上の力など不要だ。
そもそも、王都にはいかないし。
「駄目だよ!アドルも一緒に頑張るの!」
相変わらずソアラは人の話を聞かない。
俺は首根っこを彼女に捕まれ、そのまま引きずられる。
「さ!今から訓練しよ!」
イモ兄妹を見送るから必然的に休息日だとほくそ笑んでいたのだが、世の中そう甘くなかった様だ。
しかもソアラは普段以上にやる気満々と来ている。
「はぁ……」
俺は大きく溜息を吐いた。
早く2年たたないかな……
心の底からそう願う。
0
お気に入りに追加
89
あなたにおすすめの小説

お願いだから、私を追放してください!
詩森さよ(さよ吉)
ファンタジー
わたしエイリーンは、転生者で料理に関するスキルを神様からもらいました。
でもそのおかげで、賢者に選ばれた兄に勇者パーティー入れられてしまいました。
もう気力も体力も限界なんです。
そうしたら、見かねた勇者がパーティーを追放すると言ってくれたんだけど……。
アルファポリス(以後敬称略)、小説家になろうにも掲載。
筆者は体調不良なことが多いので、コメントなどの受け取らない設定にしております。
どうぞよろしくお願いいたします。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました
饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。
わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。
しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。
末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。
そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。
それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は――
n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。
全15話。
※カクヨムでも公開しています
【書籍化進行中、完結】私だけが知らない
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始

ブラック労働死した俺は転生先でスローライフを望む~だが幼馴染の勇者が転生チートを見抜いてしまう。え?一緒に魔王を倒そう?マジ勘弁してくれ~白
榊与一
ファンタジー
黒田武(くろだたけし)。
ブラック企業に勤めていた彼は三十六歳という若さで過労死する。
彼が最後に残した言葉は――
「早く……会社に行かないと……部長に……怒られる」
だった。
正に社畜の最期に相応しい言葉だ。
そんな生き様を哀れに感じた神は、彼を異世界へと転生させてくれる。
「もうあんな余裕のない人生は嫌なので、次の人生はだらだらスローライフ的に過ごしたいです」
そう言った彼の希望が通り、転生チートは控えめなチート職業のみ。
しかも周囲からは底辺クラスの市民に見える様な偽装までして貰い、黒田武は異世界ファーレスへと転生する。
――第二の人生で穏やかなスローライフを送る為に。
が、何故か彼の隣の家では同い年の勇者が誕生し。
しかも勇者はチートの鑑定で、神様の偽装を見抜いてしまう。
「アドル!魔王討伐しよ!」
これはスローライフの為に転生した男が、隣の家の勇者に能力がバレて鬼の猛特訓と魔王退治を強制される物語である。
「やだやだやだやだ!俺はスローライフがしたいんだ!」
『ブラック労働死した俺は転生先でスローライフを望む~だが幼馴染の勇者が転生チートを見抜いてしまう。え?一緒に魔王を倒そう?マジ勘弁してくれ~黒』と、13話までは全く同じ内容となっております。
別の話になるのは14話以降で、少し違ったテイストの物語になっています。
伯爵令嬢の秘密の知識
シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のルナリス伯爵家にミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる