ブラック労働死した俺は転生先でスローライフを望む~だが幼馴染の勇者が転生チートを見抜いてしまう。え?一緒に魔王を倒そう?マジ勘弁してくれ~黒

榊与一

文字の大きさ
上 下
9 / 68

第9話 魔法の習得

しおりを挟む
クラスアップ。
それはより上位のクラスへと進化する事を差す。

通常、レベルが30になると市民以外は上級職へとクラスアップする事が出来る――まあ市民も、極低確率で特殊職になれるが。
クラスアップすると取得できるマスタリー等のスキルが追加されるので、それは強化につながる物となっていた。

だが同時に、レベルは30を超えると一気に上がり辛くなるとも言われている。
一種の壁という奴だ。
大げさに言うと、これを乗り越えた者だけが上級職のスキルを習得できるとも言えるだろう。

まあ何が言いたいのかと言うと、ここ最近は全然レベルが上がっていないという事だ。
それまでは年に7~8個は上がっていたレベルが、30超えた途端、極端に上がり辛くなってしまっていた。

今の俺のレベルは34。
今年8歳になったが、この2年で上がったレベルはたったの5個だけ。
ソアラの方も似たような感じで、レベルは38だ。

……まあ普通に考えれば、8歳でレベル30台ってのは結構滅茶苦茶な方ではあるが。

この2年で新しくとったスキルは2つ――

ダンスマスタリーLv10。
消費SP20。
全ステータスがレベル×5パーセント上昇し、踊りに補正が付く。

記憶マスタリーLv10
消費SP10
魔力・知力・精神にレベル×5%の補正がかかり、更に記憶力が上昇する。

ダンスマスタリーを取ったのは、残ったマスタリーの中で一番SP当たりの能力上昇が良かったからだ。
もう剣の扱いに補正のあるマスタリーはないので、純粋にステータスアップだけで決めている。
別に村祭りの踊りに感銘して、自分も踊りたくなったわけではない。

そして記憶マスタリーだが――実は最近魔法の勉強を始めていた。

勿論、ソアラが言い出した事だ。
アイツは思い立ったら全力疾走だからな。
当然俺もそれに付き合わされる羽目に。

学習用の教材は結構高いらしいが、それは騎士さん達に頼んで用意して貰っている。
これも経費で落ちるそうだ。
まあ勇者は魔法も扱えるクラスだからな。

さて、この世界での魔法の使い方だが――それは極極シンプルな物となっていた。

魔法陣をイメージし、魔力を流し込む。
それだけだ。
そのため、この世界の魔法には詠唱がない。

なんだ、それなら習得楽勝じゃん。
って思うだろ?
だが世の中、そんなに甘くは出来ていない。

魔力を流し込むのは確かに簡単だ。
だが問題は、魔法陣をイメージする方である。

魔法陣と言われれば、大抵の人間は円の中に文様が描かれた物を思い浮かべるだろう。
有名所で言えば、六芒星の魔法陣なんかがそうだ。

だがこの世界の魔法陣は円ではない。
きゅうだ。
二次元的な面の文様ではなく、球体に複雑な物が描かれている。
それがこの世界の魔法陣。

どういう感じかは、地球儀を思い浮かべて貰えばいいだろう。
アレをさらに複雑にした物を、脳内に寸分の狂いなく完璧に焼き付ける。
こういえば、それがどれ程難しい事か理解してもらえると思う。

そのため魔法を一つ覚えるのにかかる期間は、人によって――知能も影響する――前後するだろうが、だいたい半年程かかると言われていた。

――そこで役に立つのが記憶マスタリーだ。

俺が新たに習得したこれは、魔法系のクラスが持つマスタリーで、記録力を高める効果を持っている。
このマスタリーの有る無しで、記憶速度が倍ほど変わると言われている程だ。

それに難解な魔法陣を、忘れる事無く完璧な形で覚え続けるのは相当難しい。
覚えた直後はともかく、頻繁に使わないとすぐにぼやけて行ってしまうだろう。
この記憶マスタリーはそう言った長期の記憶の保持にも、力を発揮してくれるのだ。

正に魔法使い系には必須のマスタリーと言えるだろう。

因みに、勇者の取得できる伝説マスタリー――取得済み――にも同じ様な効果があった。
だったらそれだけでいいと思うかもしれないが、追加の効果を期待して俺は記憶マスタリーを習得している。

追加効果を求めた理由は――

剣術では勝てないから、せめて魔法の習得だけは追い抜いてやろうという、びっくりする程小さな理由ではあるが。

やっぱ腹立つじゃん。
負けっぱなしってのは。
だからせめて魔法の習得だけは勝ってやろうと、思った訳だ。

――40歳児である、おっさんの俺は。

うん、我ながらちっさい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お願いだから、私を追放してください!

詩森さよ(さよ吉)
ファンタジー
わたしエイリーンは、転生者で料理に関するスキルを神様からもらいました。 でもそのおかげで、賢者に選ばれた兄に勇者パーティー入れられてしまいました。 もう気力も体力も限界なんです。 そうしたら、見かねた勇者がパーティーを追放すると言ってくれたんだけど……。 アルファポリス(以後敬称略)、小説家になろうにも掲載。 筆者は体調不良なことが多いので、コメントなどの受け取らない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました

饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。 わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。 しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。 末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。 そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。 それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は―― n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。 全15話。 ※カクヨムでも公開しています

最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~

津ヶ谷
ファンタジー
 綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。 ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。  目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。 その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。  その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。  そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。  これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。

拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~

藤原ライラ
ファンタジー
心を奪われた手紙の先には、運命の人が待っていた――  子爵令嬢のキャロラインは、両親を早くに亡くし、年の離れた弟の面倒を見ているうちにすっかり婚期を逃しつつあった。夜会でも誰からも相手にされない彼女は、新しい出会いを求めて文通を始めることに。届いた美しい字で洗練された内容の手紙に、相手はきっとうんと年上の素敵なおじ様のはずだとキャロラインは予想する。  彼とのやり取りにときめく毎日だがそれに難癖をつける者がいた。幼馴染で侯爵家の嫡男、クリストファーである。 「理想の相手なんかに巡り合えるわけないだろう。現実を見た方がいい」  四つ年下の彼はいつも辛辣で彼女には冷たい。  そんな時キャロラインは、夜会で想像した文通相手とそっくりな人物に出会ってしまう……。  文通相手の正体は一体誰なのか。そしてキャロラインの恋の行方は!? じれじれ両片思いです。 ※他サイトでも掲載しています。 イラスト:ひろ様(https://xfolio.jp/portfolio/hiro_foxtail)

【書籍化進行中、完結】私だけが知らない

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

ブラック労働死した俺は転生先でスローライフを望む~だが幼馴染の勇者が転生チートを見抜いてしまう。え?一緒に魔王を倒そう?マジ勘弁してくれ~白

榊与一
ファンタジー
黒田武(くろだたけし)。 ブラック企業に勤めていた彼は三十六歳という若さで過労死する。 彼が最後に残した言葉は―― 「早く……会社に行かないと……部長に……怒られる」 だった。 正に社畜の最期に相応しい言葉だ。 そんな生き様を哀れに感じた神は、彼を異世界へと転生させてくれる。 「もうあんな余裕のない人生は嫌なので、次の人生はだらだらスローライフ的に過ごしたいです」 そう言った彼の希望が通り、転生チートは控えめなチート職業のみ。 しかも周囲からは底辺クラスの市民に見える様な偽装までして貰い、黒田武は異世界ファーレスへと転生する。 ――第二の人生で穏やかなスローライフを送る為に。 が、何故か彼の隣の家では同い年の勇者が誕生し。 しかも勇者はチートの鑑定で、神様の偽装を見抜いてしまう。 「アドル!魔王討伐しよ!」 これはスローライフの為に転生した男が、隣の家の勇者に能力がバレて鬼の猛特訓と魔王退治を強制される物語である。 「やだやだやだやだ!俺はスローライフがしたいんだ!」 『ブラック労働死した俺は転生先でスローライフを望む~だが幼馴染の勇者が転生チートを見抜いてしまう。え?一緒に魔王を倒そう?マジ勘弁してくれ~黒』と、13話までは全く同じ内容となっております。 別の話になるのは14話以降で、少し違ったテイストの物語になっています。

処理中です...