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王子様頑張る
謝罪
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「5分だけで良い。彼女と二人っきりにさせてくれないか?」
王子のその言葉にラーが顔を顰める。
ラーだけではない。
王子の控室に居る従者や護衛達もだ。
「申し訳――」
「どうしても彼女と二人っきりで話したい事があるんだ。やましい事は何もしない。それはこのペペロン・チーノの名において誓おう」
ラーの言葉を遮って王子は言葉を続ける。
王子に誓われた以上、周りはその言葉を疑う事は出来ない。
それを疑うという事は不敬に当たるからだ。
これにはラーも黙らざる得なかった。
「頼む、5分で良いんだ。その間お前達は扉の前で待機していてくれ」
「……分かりました……」
それだけ絞り出すと、ラー頭を下げてから退出する。
それに続いて従者や護衛達も出ていく。
最後の一人が出て行くと扉が静かに閉じられ、私と王子は二人っきりになる。
ペペロン王子を見ると、思いつめた様な表情で此方をじっと見つめていた。
話とはいったい何だろうか?
優勝したから御褒美に口づけをくれとか言わないでしょうね?
まあその場合鉄拳制裁で5分間寝て頂くまでの事だが。
その時はMRIでもう一度王子の体を診断してもいいかも。
「カルボ・ナーラ」
「え?あ……は、はい」
急にフルネームで呼ばれて思わずドキリとしてしまう。
いつもはハニーだったりカルボって呼び捨てにするっていうのに、一体どういう心境なのだろうか?
「初めて会った時の事を覚えているかい?」
「え、ええ」
あんなインパクトのあった日を忘れるわけがない。
仮にも侯爵令嬢である私に、面と向かって不細工呼ばわりしてきたのは王子が初めての事だった。あの時のショックたるや。
あの時は本当に腹が立ったものだ。
まあもう過ぎた事だから、今更怒ってはいないけどね。
こっちも一発昇天ものかましたし。
とは言え、忘れろと言われて記憶から完全に消去出来るかと言われれば話は別だ。
「あの時は本当にすまなかった」
王子が深々と頭を下げる。
「え?あの?……」
突然謝られて頭に?マークが浮かび上がる。
いきなり何?
「本当はもっと早くに謝るべきだった。だが王子たる俺が、軽々しく周りの目がある場所で頭を下げる事は出来なかった。どうか許して欲しい」
2人っきりになりたいって言ったのは、まさかこの為?
そりゃまあ、王子が周りの目のある所で頭を下げるのは問題があるのは確かだけど。
過ぎた事を今更そんな大げさに考えなくても。
「あ、あの。私気にしてませんから。どうかお顔をお上げになってください」
「そうはいかない。俺は自分のやった事を理解しているつもりだ。女性にあんな暴言を吐く等、男として許される行為ではない」
まあそうだが。
私も女としては有り得ない報復――グーパン――で返してるわけだし。
お互いさまで良いと思うんだけどなぁ。
だが王子の必死の様子を見る限り、それでは済まなさそうだ。
こういう場合、罰を与えるのが一番だろう。
昔ナルトが悪戯してきたとき、機嫌が良かったので怒らなかった事がある。
その時あの子は逆に私がとんでもなく怒っているんじゃないかと、数日怯えていた。
まあ結局ナルトが泣きながら謝ってきて、罰を与える事にした訳だが。
様は王子は心配なのだ。
私がまだ本心では恨んでいないかと。
だから私から罰を引き出して安心したいのだろう。
正直少しずるい気もするが、このまま5分間頭を下げられ続けるのもあれだし。
王子の為に一発ぶちかまして上げるとしよう。
私がもう怒ってないのは本当だしね。
王子がしっかり頭を下げているのを確認し、私は魔法を発動させる。
目に見えない結界を張って、音が外部に漏れないようにする為の魔法だ。
「王子、頭を上げて歯を食い縛って下さい 」
王子が驚いた様に顔を上げ、訝し気に私の目を見る。
どうやら私の言葉の意図を測りかねている様だ。
ま、まさか罰として自分がぶん殴られるとは夢にも思わないだろうから、仕方ない。
「歯を食い縛って下さい」
もう一度だけそう言うと、私は掌を全力で王子の顔へと振りぬいた。
王子なら私の手の動きに反応して歯を食い縛る事位出来るだろう。
多分。
その際、私は腕に少しだけ魔力を籠める。
私の素の腕力では大した威力が出ない、下手をしたら殆ど痛くない可能性もあるからだ。
だがそれでは意味がない。
痛くなければ意味が無いのだ。
パーンと乾いた音が響き、王子がよろめいて後ずさる。
威力を上げただけあって、音は思ったより大きかいかった。
結界を事前に張っておいて正解だ。
もし張ってなかったら今の音で皆が部屋へと突入してきた事だろう。
「何事も倍返し。暴言に対して私は王子を二度殴りました。これでお相子、恨みっこ無しです」
「本当に……これで許してくれるのか?」
「王子しつこい男は嫌われますよ?」
「ふ、それは困るな。他はともかく君にだけは嫌われたくはない」
私にこそ嫌われても問題ない気がするんだけどなぁ。
あと王子、心なしか顔が紅潮しているんだが。
ひょっとして喜んでる?
まさかね。
王子のその言葉にラーが顔を顰める。
ラーだけではない。
王子の控室に居る従者や護衛達もだ。
「申し訳――」
「どうしても彼女と二人っきりで話したい事があるんだ。やましい事は何もしない。それはこのペペロン・チーノの名において誓おう」
ラーの言葉を遮って王子は言葉を続ける。
王子に誓われた以上、周りはその言葉を疑う事は出来ない。
それを疑うという事は不敬に当たるからだ。
これにはラーも黙らざる得なかった。
「頼む、5分で良いんだ。その間お前達は扉の前で待機していてくれ」
「……分かりました……」
それだけ絞り出すと、ラー頭を下げてから退出する。
それに続いて従者や護衛達も出ていく。
最後の一人が出て行くと扉が静かに閉じられ、私と王子は二人っきりになる。
ペペロン王子を見ると、思いつめた様な表情で此方をじっと見つめていた。
話とはいったい何だろうか?
優勝したから御褒美に口づけをくれとか言わないでしょうね?
まあその場合鉄拳制裁で5分間寝て頂くまでの事だが。
その時はMRIでもう一度王子の体を診断してもいいかも。
「カルボ・ナーラ」
「え?あ……は、はい」
急にフルネームで呼ばれて思わずドキリとしてしまう。
いつもはハニーだったりカルボって呼び捨てにするっていうのに、一体どういう心境なのだろうか?
「初めて会った時の事を覚えているかい?」
「え、ええ」
あんなインパクトのあった日を忘れるわけがない。
仮にも侯爵令嬢である私に、面と向かって不細工呼ばわりしてきたのは王子が初めての事だった。あの時のショックたるや。
あの時は本当に腹が立ったものだ。
まあもう過ぎた事だから、今更怒ってはいないけどね。
こっちも一発昇天ものかましたし。
とは言え、忘れろと言われて記憶から完全に消去出来るかと言われれば話は別だ。
「あの時は本当にすまなかった」
王子が深々と頭を下げる。
「え?あの?……」
突然謝られて頭に?マークが浮かび上がる。
いきなり何?
「本当はもっと早くに謝るべきだった。だが王子たる俺が、軽々しく周りの目がある場所で頭を下げる事は出来なかった。どうか許して欲しい」
2人っきりになりたいって言ったのは、まさかこの為?
そりゃまあ、王子が周りの目のある所で頭を下げるのは問題があるのは確かだけど。
過ぎた事を今更そんな大げさに考えなくても。
「あ、あの。私気にしてませんから。どうかお顔をお上げになってください」
「そうはいかない。俺は自分のやった事を理解しているつもりだ。女性にあんな暴言を吐く等、男として許される行為ではない」
まあそうだが。
私も女としては有り得ない報復――グーパン――で返してるわけだし。
お互いさまで良いと思うんだけどなぁ。
だが王子の必死の様子を見る限り、それでは済まなさそうだ。
こういう場合、罰を与えるのが一番だろう。
昔ナルトが悪戯してきたとき、機嫌が良かったので怒らなかった事がある。
その時あの子は逆に私がとんでもなく怒っているんじゃないかと、数日怯えていた。
まあ結局ナルトが泣きながら謝ってきて、罰を与える事にした訳だが。
様は王子は心配なのだ。
私がまだ本心では恨んでいないかと。
だから私から罰を引き出して安心したいのだろう。
正直少しずるい気もするが、このまま5分間頭を下げられ続けるのもあれだし。
王子の為に一発ぶちかまして上げるとしよう。
私がもう怒ってないのは本当だしね。
王子がしっかり頭を下げているのを確認し、私は魔法を発動させる。
目に見えない結界を張って、音が外部に漏れないようにする為の魔法だ。
「王子、頭を上げて歯を食い縛って下さい 」
王子が驚いた様に顔を上げ、訝し気に私の目を見る。
どうやら私の言葉の意図を測りかねている様だ。
ま、まさか罰として自分がぶん殴られるとは夢にも思わないだろうから、仕方ない。
「歯を食い縛って下さい」
もう一度だけそう言うと、私は掌を全力で王子の顔へと振りぬいた。
王子なら私の手の動きに反応して歯を食い縛る事位出来るだろう。
多分。
その際、私は腕に少しだけ魔力を籠める。
私の素の腕力では大した威力が出ない、下手をしたら殆ど痛くない可能性もあるからだ。
だがそれでは意味がない。
痛くなければ意味が無いのだ。
パーンと乾いた音が響き、王子がよろめいて後ずさる。
威力を上げただけあって、音は思ったより大きかいかった。
結界を事前に張っておいて正解だ。
もし張ってなかったら今の音で皆が部屋へと突入してきた事だろう。
「何事も倍返し。暴言に対して私は王子を二度殴りました。これでお相子、恨みっこ無しです」
「本当に……これで許してくれるのか?」
「王子しつこい男は嫌われますよ?」
「ふ、それは困るな。他はともかく君にだけは嫌われたくはない」
私にこそ嫌われても問題ない気がするんだけどなぁ。
あと王子、心なしか顔が紅潮しているんだが。
ひょっとして喜んでる?
まさかね。
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