14 / 35
王子様頑張る
剣技大会
しおりを挟む
むぅ、相手は私の母親か。
母は父にぞっこんなので不倫の心配はないが、どうやって諦めさせたらいい物か。
だいたい諦めさせても、根本としてラーが年上好きだった場合、年下のハム子ちゃんとくっつけるのは難しいだろう。ラーが偏った趣味を持っていない事を祈るばかりだ。
そんな他人事に頭を悩ませていると、今度は私の悩みが飛び込んできた。
自室で寛いでいると、扉がノックされ。
お父様かお母さまかなと思い、侍女に目配せして迎え入れさせると。
開いた扉の先には ペペロン王子が花束を持って立っていた。
「お、おおおお。王子様!どうしてここに!?」
「やあ、ハニー。元気にしてたかい?君に会いたくてやって来たよ」
度肝を抜かれた私は急いで椅子から立ち上がろうとして、足を引っかけて椅子からひっくり返りそうになる。
それを咄嗟にラーに受け止められて難を逃れた。
「あ、ありがとう。ラー」
「これぐらいおやす――」
彼の返事を遮るかのように、王子が腰に手をまわして私を胸元に引き寄せる。
「お、おおおおおお、王子!?」
「ご苦労。だが彼女は俺の妻となる女性だ。事故とはいえ、他の男にあまり長く抱きしめてられているのは気分が宜しくないのでね」
「これは、失礼いたしました」
ラーは丁寧に王子へと腰を折り、後ろへと下がる。
彼に落ち度はないと言うのに酷い話だ。
文句のひとつも言ってやりたい所だが、ラーが家の為に我慢して嫌な顔一つせず笑顔で下がってくれたのだ。主の私がそれを無駄にするの憚られる。
ま、今の王子なら私が何を言っても笑顔で受け流してくれそうではあるが。
無用なリスクを背負ってまで試す気は更々ない。
それにしても王子意外と胸板あるわね。
それに凄く良い匂いがする。
このまま抱きしめられ続けたいと言う誘惑が私を襲う。
でもこのままじゃ流石にあれなので、誘惑を振り切り何とか言葉を絞り出す。
「あ、あの……ペペロン王子。皆が見ていますので、そうきつく抱きしめられては……その、私困ってしまいますわ」
「ふふ、俺達は婚約者同士だ。何も憚る必要はないさ。見せつけてやろう」
くっ、眩しい。
超イケメンにそんな台詞言われたら、眩しすぎて相手の顔を直視できない。
今の私は完全に茹蛸状態だ。
ああ、このまま……ってダメダメ!
早く離してくれないと興奮しすぎて鼻血が垂れちゃう!
鼻の奥がツーンとしてきたので、魔力で強化して胸板を押し、無理やり王子を引きはがす。
危うく人前で間抜けな鼻血姿を晒すところだった。
不細工な上に鼻血とか見苦しい事この上ないもの。
「照れ屋さんだな。ハニーは」
王子がウィンクを飛ばしてきたので体を逸らして躱す。
今のは危険な攻撃だった。
この王子様はそんなに私に鼻血を流させたいのか?
「そ、それで今日はどういったご用件で?」
「君に会うのに用件など必要かい?」
だから一々ウィンク飛ばすなっての!
全く困った王子だ。
「まあ、一応無い訳では無いんだけどな」
「そうですか、それで用件と言うのは?」
態々アポも取らずにやって来たのだ。
相当な用件だろう。
少し嫌な気がする。
「ああ、実は……」
「実は?」
王子が不敵に笑い、勿体ぶって引き延ばす。
その様子に私は思わず唾を飲み込む。
緊張したから――
ではなく、単にその様子がかっこよくて涎が出てきたからだ。
「実は来月の剣技大会に出場する事になってね。君に応援に来てもらおうと思って」
「は?」
剣技大会?
それって毎年この国で開催される、剣技を競う大会にペペロン王子が出るって事?
私に一発でのされる体たらくで?
いやまあ、あの一発は王子は態と喰らったわけだし。
魔力が拳に乗ってたから、それで判断するのはどうかとも思わなくも無いが。
正直目の前の王子が勇壮に剣を振るう姿が思い浮かばない。
そもそも王家の人間がそういった大会に出るなど私は聞いた事が無い。
剣技を競う大会である以上、大怪我をする危険性もあるわけで。
この王子、一体何を考えてそんな危険な大会に出るつもりなのやら。
やっぱ早く何とかしないといけないわね。
この御乱心は完全に私の所為に違いない。
「実は君に良い所を見せようと、ここ暫く猛特訓していてね。それで君に会いにこれなかったって訳だ。寂しい思いをさせて悪かったね」
あー、べた惚れぽかったのにここ最近顔を見せなかったのはそういう訳か。
しかし女に良い所見せたくて特訓して大会に出るとか、真面目に剣を極めようとしている人達にこれ程失礼な話はないのだが。
ま、言ってもしょうがないか。
「寂しいだなんてそんな。ペペロン王子はお忙しい方だと存じておりますから、私気にいたしませんわ。是非大会も見学させて頂きます」
「ありがとう、ハニー。ペペロン・チーノの名に懸けて、大会の優勝を君に捧げる事を誓うよ」
王子は跪き、右手の花束を私に捧げる。
私はそれを受け取りにっこりと微笑んだ。
ま、確実に大恥をかくことになるだろうけど。
しょうがないから、その時は私が慰めてあげるとしよう。
母は父にぞっこんなので不倫の心配はないが、どうやって諦めさせたらいい物か。
だいたい諦めさせても、根本としてラーが年上好きだった場合、年下のハム子ちゃんとくっつけるのは難しいだろう。ラーが偏った趣味を持っていない事を祈るばかりだ。
そんな他人事に頭を悩ませていると、今度は私の悩みが飛び込んできた。
自室で寛いでいると、扉がノックされ。
お父様かお母さまかなと思い、侍女に目配せして迎え入れさせると。
開いた扉の先には ペペロン王子が花束を持って立っていた。
「お、おおおお。王子様!どうしてここに!?」
「やあ、ハニー。元気にしてたかい?君に会いたくてやって来たよ」
度肝を抜かれた私は急いで椅子から立ち上がろうとして、足を引っかけて椅子からひっくり返りそうになる。
それを咄嗟にラーに受け止められて難を逃れた。
「あ、ありがとう。ラー」
「これぐらいおやす――」
彼の返事を遮るかのように、王子が腰に手をまわして私を胸元に引き寄せる。
「お、おおおおおお、王子!?」
「ご苦労。だが彼女は俺の妻となる女性だ。事故とはいえ、他の男にあまり長く抱きしめてられているのは気分が宜しくないのでね」
「これは、失礼いたしました」
ラーは丁寧に王子へと腰を折り、後ろへと下がる。
彼に落ち度はないと言うのに酷い話だ。
文句のひとつも言ってやりたい所だが、ラーが家の為に我慢して嫌な顔一つせず笑顔で下がってくれたのだ。主の私がそれを無駄にするの憚られる。
ま、今の王子なら私が何を言っても笑顔で受け流してくれそうではあるが。
無用なリスクを背負ってまで試す気は更々ない。
それにしても王子意外と胸板あるわね。
それに凄く良い匂いがする。
このまま抱きしめられ続けたいと言う誘惑が私を襲う。
でもこのままじゃ流石にあれなので、誘惑を振り切り何とか言葉を絞り出す。
「あ、あの……ペペロン王子。皆が見ていますので、そうきつく抱きしめられては……その、私困ってしまいますわ」
「ふふ、俺達は婚約者同士だ。何も憚る必要はないさ。見せつけてやろう」
くっ、眩しい。
超イケメンにそんな台詞言われたら、眩しすぎて相手の顔を直視できない。
今の私は完全に茹蛸状態だ。
ああ、このまま……ってダメダメ!
早く離してくれないと興奮しすぎて鼻血が垂れちゃう!
鼻の奥がツーンとしてきたので、魔力で強化して胸板を押し、無理やり王子を引きはがす。
危うく人前で間抜けな鼻血姿を晒すところだった。
不細工な上に鼻血とか見苦しい事この上ないもの。
「照れ屋さんだな。ハニーは」
王子がウィンクを飛ばしてきたので体を逸らして躱す。
今のは危険な攻撃だった。
この王子様はそんなに私に鼻血を流させたいのか?
「そ、それで今日はどういったご用件で?」
「君に会うのに用件など必要かい?」
だから一々ウィンク飛ばすなっての!
全く困った王子だ。
「まあ、一応無い訳では無いんだけどな」
「そうですか、それで用件と言うのは?」
態々アポも取らずにやって来たのだ。
相当な用件だろう。
少し嫌な気がする。
「ああ、実は……」
「実は?」
王子が不敵に笑い、勿体ぶって引き延ばす。
その様子に私は思わず唾を飲み込む。
緊張したから――
ではなく、単にその様子がかっこよくて涎が出てきたからだ。
「実は来月の剣技大会に出場する事になってね。君に応援に来てもらおうと思って」
「は?」
剣技大会?
それって毎年この国で開催される、剣技を競う大会にペペロン王子が出るって事?
私に一発でのされる体たらくで?
いやまあ、あの一発は王子は態と喰らったわけだし。
魔力が拳に乗ってたから、それで判断するのはどうかとも思わなくも無いが。
正直目の前の王子が勇壮に剣を振るう姿が思い浮かばない。
そもそも王家の人間がそういった大会に出るなど私は聞いた事が無い。
剣技を競う大会である以上、大怪我をする危険性もあるわけで。
この王子、一体何を考えてそんな危険な大会に出るつもりなのやら。
やっぱ早く何とかしないといけないわね。
この御乱心は完全に私の所為に違いない。
「実は君に良い所を見せようと、ここ暫く猛特訓していてね。それで君に会いにこれなかったって訳だ。寂しい思いをさせて悪かったね」
あー、べた惚れぽかったのにここ最近顔を見せなかったのはそういう訳か。
しかし女に良い所見せたくて特訓して大会に出るとか、真面目に剣を極めようとしている人達にこれ程失礼な話はないのだが。
ま、言ってもしょうがないか。
「寂しいだなんてそんな。ペペロン王子はお忙しい方だと存じておりますから、私気にいたしませんわ。是非大会も見学させて頂きます」
「ありがとう、ハニー。ペペロン・チーノの名に懸けて、大会の優勝を君に捧げる事を誓うよ」
王子は跪き、右手の花束を私に捧げる。
私はそれを受け取りにっこりと微笑んだ。
ま、確実に大恥をかくことになるだろうけど。
しょうがないから、その時は私が慰めてあげるとしよう。
0
お気に入りに追加
628
あなたにおすすめの小説
【完結】元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?
雨宮羽那
恋愛
元社畜聖女×笑顔の腹黒宰相のラブストーリー。
◇◇◇◇
名も無きお飾り聖女だった私は、過労で倒れたその日、思い出した。
自分が前世、疲れきった新卒社会人・花菱桔梗(はなびし ききょう)という日本人女性だったことに。
運良く婚約者の王子から婚約破棄を告げられたので、前世の教訓を活かし私は逃げることに決めました!
なのに、宰相閣下から求婚されて!? 何故か甘やかされているんですけど、何か裏があったりしますか!?
◇◇◇◇
お気に入り登録、エールありがとうございます♡
※ざまぁはゆっくりじわじわと進行します。
※「小説家になろう」「エブリスタ」様にも掲載しております(アルファポリス先行)。
※この作品はフィクションです。特定の政治思想を肯定または否定するものではありません(_ _*))
月誓歌
有須
恋愛
第五回カクヨムwebコンテスト特別賞頂きました! 詳細は近況ボードにて。
↓↓以下あらすじ↓↓
メイラは清貧を旨とする修道女。親のない子供たちを育てながら神に仕える日々を送っているが、実はハーデス公爵の妾腹の娘であった。
ある日父親に呼び出された彼女は、エゼルバード帝国皇帝ハロルドの後宮に妾妃としてあがるように命じられる。
主人公は修道女から後宮の妃へと転身します。
時に命を狙われ、時に陛下から愛でられ、侍女たちにも愛でられ、基本平凡な気質ながらもそれなりにがんばって居場所を作ってきます。
現在、後宮を飛び出して家出中。陛下は戦争中。
この作品は、小説家になろう、アルファポリス、カクヨムで試験的なマルチ投稿をしています。
よろしくお願いします。
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。
待鳥園子
恋愛
グレンジャー伯爵令嬢ウェンディは父が友人に裏切られ、社交界デビューを目前にして無一文になってしまった。
父は異国へと一人出稼ぎに行ってしまい、行く宛てのない姉を心配する弟を安心させるために、以前邸で働いていた竜騎士を頼ることに。
彼が働くアレイスター竜騎士団は『恋愛禁止』という厳格な規則があり、そのため若い女性は働いていない。しかし、ウェンディは竜力を持つ貴族の血を引く女性にしかなれないという『子竜守』として特別に採用されることになり……。
子竜守として働くことになった没落貴族令嬢が、不器用だけどとても優しい団長と恋愛禁止な竜騎士団で働くために秘密の契約結婚をすることなってしまう、ほのぼの子竜育てありな可愛い恋物語。
【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
扇 レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋
伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。
それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。
途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。
その真意が、テレジアにはわからなくて……。
*hotランキング 最高68位ありがとうございます♡
▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
殿下が恋をしたいと言うのでさせてみる事にしました。婚約者候補からは外れますね
さこの
恋愛
恋がしたい。
ウィルフレッド殿下が言った…
それではどうぞ、美しい恋をしてください。
婚約者候補から外れるようにと同じく婚約者候補のマドレーヌ様が話をつけてくださりました!
話の視点が回毎に変わることがあります。
緩い設定です。二十話程です。
本編+番外編の別視点
うたた寝している間に運命が変わりました。
gacchi
恋愛
優柔不断な第三王子フレディ様の婚約者として、幼いころから色々と苦労してきたけど、最近はもう呆れてしまって放置気味。そんな中、お義姉様がフレディ様の子を身ごもった?私との婚約は解消?私は学園を卒業したら修道院へ入れられることに。…だったはずなのに、カフェテリアでうたた寝していたら、私の運命は変わってしまったようです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる