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ラーの恋?
従魔
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「は、は、は、はじゅめまして!は、ハム・サラダと申します!」
「よろしくね。ハム・サラダ」
「よ、よりょしくお願いします!」
ハムサンドと名乗ったメイド服姿の少女が、少々噛みながらも元気よく挨拶して頭を下げる。
彼女の名はハム・サラダ。
サラダ男爵家の子女だ。
今日から彼女は私専属の傍仕えを務める事になる。
何故貴族が?と、思われるかもしれないが。
低位貴族の子女が高位貴族の従者等になる事はそれほど珍しくはない。
特に子だくさんだと仕えに出される傾向が高く、彼女も上には3人姉がいるらしい。
実際この屋敷にも何人か……というか私周りの侍女の大半は、貴族の子女で固められている。傍仕えの平民上りは執事のラーくらいのものだ。
彼は出自ではなく、その能力だけで執事に上がってきただけあってやり手だったりする。
ま、おべんちゃらだけは下手糞だけどね。
しかし可愛らしい少女だ。
歳は私より一つ下の15らしいが、もう少し幼く見える。
太めの眉に垂れた目じり、ほっぺが少しふっくらしている愛らしい顔立ちだ。
美人ではないが、小動物的な可愛らしさを持つ少女。
緊張のためだろうとは思うが、手をもじもじさせたり、少し落ち着きない感じが昔飼っていたペットを連想させる。
私は以前ペットを飼っていた事がある。
まあ正確には動物ではなく従魔で、しかも転生の前の話なんだけどね。
少し目を瞑ると、あの懐かしき日々が瞼の裏に蘇る。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ご主人様!ご主人様!」
大声に振り返る。
そこには黄金の毛並みを持つ子狐の姿をした従魔が床に座り、そのふさふさの尻尾を嬉しそうにぶんぶんと振り回していた。私は少し嫌な予感を覚えながらも優しく尋ねる。
「どうしたの?」
「贈り物を持ってきました!!」
言われて彼の足元を見る。
そこには一匹の GG(グレートなサイズのGの略)がががががががががががががががががががががっがががががっがががが
「世界をつかさどる万物よ!我に不浄を焼き尽くす清浄なる炎を!滅却炎 !」
両手の間の魔法陣が青く輝き、砕けて青い炎の塊に変わる。
私はその炎を迷わず従魔へと叩き込んだ。
「ほげぇぇぇぇぇ」
凄まじい火勢が従魔を包み込み、研究室をその焔が嘗め尽くす。
だが問題ない。
研究室全体を魔法で火炎対策してある。
私の火炎魔法をもってしてもその守りを抜くのは容易ではない。
つまり従魔と足元のGG以外無傷。
めでたしめでたし。
「ちょっと!ご主人様酷いですよ!」
炎で焦げてチリチリ巻き毛になった従魔が抗議の声を上げる。
「あの炎を喰らってその程度とは、流石私の従魔ね」
「えへへへ、そうですかぁ~って!そうじゃありませんよ!何でいきなり攻撃魔法を撃ったりしたんですか!?」
「私、前にも言ったよね?Gと蜘蛛みたいな虫を持ち込むなって?」
「あれ?そうでしたっけ?」
言われて思い出したのか、後ろ足で頭をかいて恍けだす。
「もう100回は言ってるわよ?」
50回目あたりからは問答無用で燃やしてるのだが、いつになったら治ってくれるのやら。
私は大きく溜息を吐く。
一見馬鹿っぽく見えるが、こう見えて知能や魔力は高かったりする。
のだが、まだ幼い為テンションが上がるとどうも知能が0になってしまうらしく、虫を見つける度テンションを爆上げして私の元へもって来てしまうのだ。
私は虫が大っ嫌いなので冗談抜きで勘弁してほしい。
「きょ!今日のはすっごくおっきかったんです!変異種か何かできっとご主人様の研究の手伝いになると思って!」
苦しい言い訳だ。
私は虫の研究などしていない。
勿論昆虫の生態から学び、研究に生かされる事も少なくはないが――
「ほう、あの巨大Gが痩せ薬制作に役に立つと?」
「う……いや……その……」
仮に役に立ったとして、G由来の成分入り痩せ薬など誰も飲みたがりはしないだろう。
因みに今研究している薬は王家から直々の以来だ。
どうもお姫様が太り過ぎて貰い手どころか、ベッドから起き上がるのすら困難な状態らしい。どうやったらそこまで太れるのやら。
とにかくそう言った事情で、私は急ピッチで痩せ薬の開発を急いでいた。
王家は金払いがいい。開発費は潤沢に用意され快適に研究できる。
しかも現物を支給した後のロイヤリティは、私の方で独占してもいいとの約定だ。
正に濡れ手に粟のこの事、唯一の問題は期限が短い事だろう。
失敗は私の名誉に関わる。
だから私は研究を急いでいるのだが、構って貰えないのが寂しいのか、私の従魔は暇潰しに外に出ては虫を拾って来て研究の手を止めさせる。
全く困った奴だ。
「すまんな、ナルト。構ってやれず、お前には寂しい思いをさせてしまっている。もう少しで研究は終わる。もう少しだけ辛抱してくれないか?」
「は、はい!ご主人様!僕良い子にして待ってます!」
いい子だ。
私はナルトの頭を撫でてやる。
だが結局ナルトは我慢出来ず、この後10回は燃え上がる事になる。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ナルトは元気にしているだろうか。
いや、もうあれから1000年以上経っているのだ。
魔法で生み出した従魔とは言え、もう生きてはいないだろう。
私が死ぬとき見せた、あの子の泣きそうな顔を思い出す。
どうか私の死んだ後、ナルトが幸福に生きれた事を祈るばかりだ。
「よろしくね。ハム・サラダ」
「よ、よりょしくお願いします!」
ハムサンドと名乗ったメイド服姿の少女が、少々噛みながらも元気よく挨拶して頭を下げる。
彼女の名はハム・サラダ。
サラダ男爵家の子女だ。
今日から彼女は私専属の傍仕えを務める事になる。
何故貴族が?と、思われるかもしれないが。
低位貴族の子女が高位貴族の従者等になる事はそれほど珍しくはない。
特に子だくさんだと仕えに出される傾向が高く、彼女も上には3人姉がいるらしい。
実際この屋敷にも何人か……というか私周りの侍女の大半は、貴族の子女で固められている。傍仕えの平民上りは執事のラーくらいのものだ。
彼は出自ではなく、その能力だけで執事に上がってきただけあってやり手だったりする。
ま、おべんちゃらだけは下手糞だけどね。
しかし可愛らしい少女だ。
歳は私より一つ下の15らしいが、もう少し幼く見える。
太めの眉に垂れた目じり、ほっぺが少しふっくらしている愛らしい顔立ちだ。
美人ではないが、小動物的な可愛らしさを持つ少女。
緊張のためだろうとは思うが、手をもじもじさせたり、少し落ち着きない感じが昔飼っていたペットを連想させる。
私は以前ペットを飼っていた事がある。
まあ正確には動物ではなく従魔で、しかも転生の前の話なんだけどね。
少し目を瞑ると、あの懐かしき日々が瞼の裏に蘇る。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ご主人様!ご主人様!」
大声に振り返る。
そこには黄金の毛並みを持つ子狐の姿をした従魔が床に座り、そのふさふさの尻尾を嬉しそうにぶんぶんと振り回していた。私は少し嫌な予感を覚えながらも優しく尋ねる。
「どうしたの?」
「贈り物を持ってきました!!」
言われて彼の足元を見る。
そこには一匹の GG(グレートなサイズのGの略)がががががががががががががががががががががっがががががっがががが
「世界をつかさどる万物よ!我に不浄を焼き尽くす清浄なる炎を!滅却炎 !」
両手の間の魔法陣が青く輝き、砕けて青い炎の塊に変わる。
私はその炎を迷わず従魔へと叩き込んだ。
「ほげぇぇぇぇぇ」
凄まじい火勢が従魔を包み込み、研究室をその焔が嘗め尽くす。
だが問題ない。
研究室全体を魔法で火炎対策してある。
私の火炎魔法をもってしてもその守りを抜くのは容易ではない。
つまり従魔と足元のGG以外無傷。
めでたしめでたし。
「ちょっと!ご主人様酷いですよ!」
炎で焦げてチリチリ巻き毛になった従魔が抗議の声を上げる。
「あの炎を喰らってその程度とは、流石私の従魔ね」
「えへへへ、そうですかぁ~って!そうじゃありませんよ!何でいきなり攻撃魔法を撃ったりしたんですか!?」
「私、前にも言ったよね?Gと蜘蛛みたいな虫を持ち込むなって?」
「あれ?そうでしたっけ?」
言われて思い出したのか、後ろ足で頭をかいて恍けだす。
「もう100回は言ってるわよ?」
50回目あたりからは問答無用で燃やしてるのだが、いつになったら治ってくれるのやら。
私は大きく溜息を吐く。
一見馬鹿っぽく見えるが、こう見えて知能や魔力は高かったりする。
のだが、まだ幼い為テンションが上がるとどうも知能が0になってしまうらしく、虫を見つける度テンションを爆上げして私の元へもって来てしまうのだ。
私は虫が大っ嫌いなので冗談抜きで勘弁してほしい。
「きょ!今日のはすっごくおっきかったんです!変異種か何かできっとご主人様の研究の手伝いになると思って!」
苦しい言い訳だ。
私は虫の研究などしていない。
勿論昆虫の生態から学び、研究に生かされる事も少なくはないが――
「ほう、あの巨大Gが痩せ薬制作に役に立つと?」
「う……いや……その……」
仮に役に立ったとして、G由来の成分入り痩せ薬など誰も飲みたがりはしないだろう。
因みに今研究している薬は王家から直々の以来だ。
どうもお姫様が太り過ぎて貰い手どころか、ベッドから起き上がるのすら困難な状態らしい。どうやったらそこまで太れるのやら。
とにかくそう言った事情で、私は急ピッチで痩せ薬の開発を急いでいた。
王家は金払いがいい。開発費は潤沢に用意され快適に研究できる。
しかも現物を支給した後のロイヤリティは、私の方で独占してもいいとの約定だ。
正に濡れ手に粟のこの事、唯一の問題は期限が短い事だろう。
失敗は私の名誉に関わる。
だから私は研究を急いでいるのだが、構って貰えないのが寂しいのか、私の従魔は暇潰しに外に出ては虫を拾って来て研究の手を止めさせる。
全く困った奴だ。
「すまんな、ナルト。構ってやれず、お前には寂しい思いをさせてしまっている。もう少しで研究は終わる。もう少しだけ辛抱してくれないか?」
「は、はい!ご主人様!僕良い子にして待ってます!」
いい子だ。
私はナルトの頭を撫でてやる。
だが結局ナルトは我慢出来ず、この後10回は燃え上がる事になる。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ナルトは元気にしているだろうか。
いや、もうあれから1000年以上経っているのだ。
魔法で生み出した従魔とは言え、もう生きてはいないだろう。
私が死ぬとき見せた、あの子の泣きそうな顔を思い出す。
どうか私の死んだ後、ナルトが幸福に生きれた事を祈るばかりだ。
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