137 / 165
第二章 希望を求めて
第四十九話 体罰
しおりを挟む
「どうか王女様をお願いします!」
「お願いって言われてもなぁ」
目の前の騎士が、無茶な願いと共に頭を下げる。俺が渋っているとフラムが横から口を挟んできた。
「たかしさん!二人は心の底から愛し合っているんです!折角乗りかかった船なんですから、私達愛のキューピッドの力で二人の愛を守ってあげましょう!」
乗りかかったんじゃ無くて、騙して載せやがったんだろうが。っていうか誰がキューピッドだ。
自分が何を言っているのか理解しているのか怪しいフラムを、俺はげんなりした顔で見つめて答える。
「いや、やんねーから」
「勇者どの、そこを何とかお願いします!どうか王女を!」
「二人の愛を守ってあげましょう!」
俺は二人とのやり取りにゲームの無限ループする選択肢が頭に浮かび、今の状況に盛大に溜息を吐いた。
「まあ取り敢えず、落ち着いて話し合おう」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
《よし、行くか》
フラムに合図を送り、サキュバスを召喚する。いつ見ても子供の教育によろしくないお色気ムンムンの姿に少し見入ってしまうが、まあ健全な男子なのだから仕方ない事だろう。
俺は看守達を洗脳するようサキュバスに頼んだ。サキュバスは指示に従い、鉄格子をすり抜け看守達の元へと向かう。
俺の召喚した淫魔には実体がない。
その為、障害物があっても容易くすり抜けられる。まあ正確には実体が無い訳ではなく、彼らの体は水。それも霧状の水蒸気、それこそが彼らの正体だ。
彼らを一言で表すなら、空間に漂う美しい蜃気楼と言った所だろうか。
水蒸気である彼らは少しでも小さな隙間があれば、そこを通って自在に移動することが出来た。そんな彼らにとって鉄格子のすり抜けなど朝飯前と言った所だろう。
因みに淫夢に付いての知識は、水の大精霊との訓練の休憩時間中に聞いた豆知識だったりする。
サキュバスが戻ってきた。
その後ろには、幸せそうな助平顔で涎をたらす看守が付いてくる。その間抜け顔を見て、自分が対象になるのだけは絶対に勘弁願いたくなる。
「鍵を開けさせてくれ」
小声で呟く様に指示話出す。
俺とフラム以外囚人は居ないので、小声である必要性はないのだが、念のため周りに気をつける。
鍵が外され、外に出た俺は真っ直ぐフラムの元へと向かう。俺の姿を見つけたフラムが鉄格子の隙間から嬉しそうに手を振り。
大声で叫ぶ。
「たかしさーん!こっちです!こっちこっち!」
俺は素早く駆け寄り、鉄格子の隙間に手を突っ込んでその頭をはたく。
「えぇ…何でですか?」
「大声だすな、アホ。外の奴が聞きつけたらどうする」
只の兵士ぐらいならいいが、騎士が聞きつけてやって来たら計画がパァだ。鍵を開けて外に出してやると、フラムがぶつくさ文句を言ってくる。
「だったら口で言って下さいよぉ。そういう叩いたり蹴ったりのコミュニケーションは、彩音さんとだけでお願いします」
「誰がするか」
そんな一方的な暴力に曝されるコミュニケーションなんぞしてたまるか。兎に角まずは看守から話を聞こう。そう思った時、階段を降りてくる足音が聞こえてきた。
溜息を吐き、軽くフラムを睨みつける。
「ま、まあ。イレギュラーに対応してこそですし……」
「それを元凶が言うな」
足音がどんどん近づいてくる。
薄ぼんやりと辺りを照らす魔法の光の中、現れたのは純白の鎧を身に待とう騎士だった。
「ちっ、やっぱり無理か」
一応サキュバスに催淫を命じたが、案の定レジストされる。剣は捕まった時に取り上げられているので、拳を握りこむ。
素手でも支配者の指輪があれば俺の強さはドラゴン並だ。仲間を呼ばれる前にーー
「ま、待ってくれ!俺は君達の敵じゃない!」
戯言だな。
誰がそんなセリフを鵜呑みにするかよ。
油断させる作戦に違いない。
「ま、待ってください。たかしさん!多分この方は味方です!」
「は?」
相手はいきなり俺達を捉えた魔法国の騎士だ、味方な訳がない。これがリンなら兎も角、それがフラムに分からないはずがないのだが。何かあるのだろうか?
俺は訝しげにフラムを見つめ、続く言葉を待つ。
「アラン・クリアさんですよね?」
「はい。使者の方々が捕らえられたと聞き、こうして人目を偲び救出に来た次第なのですが、どうやらその必要は無かった様ですね」
「やっぱり!たかしさん安心してください。この方は私達の味方です」
騎士は俺達を救出に来たと言い。
フラムはその騎士が味方だと自信満々に答える。
「フラム?何か俺に言う事はないか?」
「え、いえ。特にはないですけど」
なら何故盛大に目をそらす。
俺は大きく溜息を吐き、フラムにゲンコツ叩き落とした。
「あいったあ~」
どうやらフラムは事情を把握していた様だ。でなきゃ騎士の名前なんざ知っている訳がない。道理で連れて行けとしつこかった訳だ。
「隠してる事を全部話せ。いいな」
「お願いって言われてもなぁ」
目の前の騎士が、無茶な願いと共に頭を下げる。俺が渋っているとフラムが横から口を挟んできた。
「たかしさん!二人は心の底から愛し合っているんです!折角乗りかかった船なんですから、私達愛のキューピッドの力で二人の愛を守ってあげましょう!」
乗りかかったんじゃ無くて、騙して載せやがったんだろうが。っていうか誰がキューピッドだ。
自分が何を言っているのか理解しているのか怪しいフラムを、俺はげんなりした顔で見つめて答える。
「いや、やんねーから」
「勇者どの、そこを何とかお願いします!どうか王女を!」
「二人の愛を守ってあげましょう!」
俺は二人とのやり取りにゲームの無限ループする選択肢が頭に浮かび、今の状況に盛大に溜息を吐いた。
「まあ取り敢えず、落ち着いて話し合おう」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
《よし、行くか》
フラムに合図を送り、サキュバスを召喚する。いつ見ても子供の教育によろしくないお色気ムンムンの姿に少し見入ってしまうが、まあ健全な男子なのだから仕方ない事だろう。
俺は看守達を洗脳するようサキュバスに頼んだ。サキュバスは指示に従い、鉄格子をすり抜け看守達の元へと向かう。
俺の召喚した淫魔には実体がない。
その為、障害物があっても容易くすり抜けられる。まあ正確には実体が無い訳ではなく、彼らの体は水。それも霧状の水蒸気、それこそが彼らの正体だ。
彼らを一言で表すなら、空間に漂う美しい蜃気楼と言った所だろうか。
水蒸気である彼らは少しでも小さな隙間があれば、そこを通って自在に移動することが出来た。そんな彼らにとって鉄格子のすり抜けなど朝飯前と言った所だろう。
因みに淫夢に付いての知識は、水の大精霊との訓練の休憩時間中に聞いた豆知識だったりする。
サキュバスが戻ってきた。
その後ろには、幸せそうな助平顔で涎をたらす看守が付いてくる。その間抜け顔を見て、自分が対象になるのだけは絶対に勘弁願いたくなる。
「鍵を開けさせてくれ」
小声で呟く様に指示話出す。
俺とフラム以外囚人は居ないので、小声である必要性はないのだが、念のため周りに気をつける。
鍵が外され、外に出た俺は真っ直ぐフラムの元へと向かう。俺の姿を見つけたフラムが鉄格子の隙間から嬉しそうに手を振り。
大声で叫ぶ。
「たかしさーん!こっちです!こっちこっち!」
俺は素早く駆け寄り、鉄格子の隙間に手を突っ込んでその頭をはたく。
「えぇ…何でですか?」
「大声だすな、アホ。外の奴が聞きつけたらどうする」
只の兵士ぐらいならいいが、騎士が聞きつけてやって来たら計画がパァだ。鍵を開けて外に出してやると、フラムがぶつくさ文句を言ってくる。
「だったら口で言って下さいよぉ。そういう叩いたり蹴ったりのコミュニケーションは、彩音さんとだけでお願いします」
「誰がするか」
そんな一方的な暴力に曝されるコミュニケーションなんぞしてたまるか。兎に角まずは看守から話を聞こう。そう思った時、階段を降りてくる足音が聞こえてきた。
溜息を吐き、軽くフラムを睨みつける。
「ま、まあ。イレギュラーに対応してこそですし……」
「それを元凶が言うな」
足音がどんどん近づいてくる。
薄ぼんやりと辺りを照らす魔法の光の中、現れたのは純白の鎧を身に待とう騎士だった。
「ちっ、やっぱり無理か」
一応サキュバスに催淫を命じたが、案の定レジストされる。剣は捕まった時に取り上げられているので、拳を握りこむ。
素手でも支配者の指輪があれば俺の強さはドラゴン並だ。仲間を呼ばれる前にーー
「ま、待ってくれ!俺は君達の敵じゃない!」
戯言だな。
誰がそんなセリフを鵜呑みにするかよ。
油断させる作戦に違いない。
「ま、待ってください。たかしさん!多分この方は味方です!」
「は?」
相手はいきなり俺達を捉えた魔法国の騎士だ、味方な訳がない。これがリンなら兎も角、それがフラムに分からないはずがないのだが。何かあるのだろうか?
俺は訝しげにフラムを見つめ、続く言葉を待つ。
「アラン・クリアさんですよね?」
「はい。使者の方々が捕らえられたと聞き、こうして人目を偲び救出に来た次第なのですが、どうやらその必要は無かった様ですね」
「やっぱり!たかしさん安心してください。この方は私達の味方です」
騎士は俺達を救出に来たと言い。
フラムはその騎士が味方だと自信満々に答える。
「フラム?何か俺に言う事はないか?」
「え、いえ。特にはないですけど」
なら何故盛大に目をそらす。
俺は大きく溜息を吐き、フラムにゲンコツ叩き落とした。
「あいったあ~」
どうやらフラムは事情を把握していた様だ。でなきゃ騎士の名前なんざ知っている訳がない。道理で連れて行けとしつこかった訳だ。
「隠してる事を全部話せ。いいな」
0
お気に入りに追加
326
あなたにおすすめの小説

異世界に召喚されたぼっちはフェードアウトして農村に住み着く〜農耕神の手は救世主だった件〜
ルーシャオ
ファンタジー
林間学校の最中突然異世界に召喚された中学生の少年少女三十二人。沼間カツキもその一人だが、自分に与えられた祝福がまるで非戦闘職だと分かるとすみやかにフェードアウトした。『農耕神の手』でどうやって魔王を倒せと言うのか、クラスメイトの士気を挫く前に兵士の手引きで抜け出し、農村に匿われることに。
ところが、異世界について知っていくうちに、カツキは『農耕神の手』の力で目に見えない危機を発見して、対処せざるを得ないことに。一方でクラスメイトたちは意気揚々と魔王討伐に向かっていた。

召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~
さとう
ファンタジー
生まれながらにして身に宿る『召喚獣』を使役する『召喚師』
誰もが持つ召喚獣は、様々な能力を持ったよきパートナーであり、位の高い召喚獣ほど持つ者は強く、憧れの存在である。
辺境貴族リグヴェータ家の末っ子アルフェンの召喚獣は最低も最低、手のひらに乗る小さな『モグラ』だった。アルフェンは、兄や姉からは蔑まれ、両親からは冷遇される生活を送っていた。
だが十五歳になり、高位な召喚獣を宿す幼馴染のフェニアと共に召喚学園の『アースガルズ召喚学園』に通うことになる。
学園でも蔑まれるアルフェン。秀な兄や姉、強くなっていく幼馴染、そしてアルフェンと同じ最底辺の仲間たち。同じレベルの仲間と共に絆を深め、一時の平穏を手に入れる
これは、全てを失う少年が最強の力を手に入れ、学園生活を送る物語。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる
僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。
スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。
だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。
それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。
色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。
しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。
ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。
一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。
土曜日以外は毎日投稿してます。
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

哀れな寄生系美少女が金に惹かれて吸い付いてきたので、逆に食べる事にしました。
true177
恋愛
恋愛という世界から取り残されていた隆仁(たかひと)は、誰が見ても美少女だと評するであろう結莉(ゆり)からいきなり告白される。
とは言え、好感度どころか会話すらしたことのない二人。隆仁が抱いた訝しさは、明確に形となって現れる。
財布を忘れたと平気で嘘を付く、プレゼントのおねだりに薄っぺらい土下座、やたら医者である隆仁の両親の話をしたがる……。結莉は、正に寄生系女の子だったのである。
あからさまな物目当ての美少女。その美貌にものを言わせて、要求を通してこようとする。典型的な地雷であり、関係を切るのが無難なのだろう。
しかし、隆仁は諦めきれなかった。
『性格以外は、むしろ好印象なんだけどな……。どうしたら、本心で見てくれるんだろう……』
仮初めの状態で付き合いが続いても、未来はない。歪んだ性格を正すことは出来ないのか。本気で惚れ落としてしまう方法はないだろうか、と。
残念な美少女と、一風変わった考えの持ち主である隆仁。果たして、彼女を寄生から脱却されることはできるのだろうか……。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる