上 下
131 / 165
第二章 希望を求めて

第四十三話 おめでとう

しおりを挟む
「英雄ねぇ」

事情を聞いてベッドの上で頬杖をつく。
どうやら俺が眠ってる間にティーエさんが色々と働き掛けて、俺達は帝国を救った英雄という事になっているらしい。
道理で見ず知らずの看護婦が迫って来たわけだ。

「おや、不服そうだねぇ」

「そらそうだろう。厄災が暴れたのは俺達のせいなんだぜ。それを倒したからって国を救ったってのはちょっとおかしくないか?」

やれやれ、ティーエさんは一体どんな交渉したんだか。本来なら英雄どころか、帝国を危険に晒したろくでなし集団と言われてもおかしくない所だ。

「君は根本的な事を勘違いしていないかい?言っておくけど厄災が暴れたのは決して僕たちの責任じゃないよ」

「あれが俺達の責任じゃないってんなら誰の責任だってんだ」

パーの主張には無理がありすぎる。
責任の所在は火を見るよりも明らかだ。

「責任は帝国にある」

おいおいレイン。
いくらパーの気を引きたいからってそれは無くないか?

「僕達は冒険者として登録して、正式に帝国の許可を貰って王墓を探索をしているんだよ?なら王墓内で起こった問題は、それを管理し許可を出している帝国が背負うべきでしょ?」

「そういう事だ」

言われてみればまあそうか。
帝国は厄災が居るなんて夢にも思わなかったろうが。帝国が管理している以上、厄災が居るなんて思いもしませんでしたは通用しない。

俺達に責任が全くないとは思わないが。
リスクをきちんと把握できず、よくわからん場所に冒険者を送り続けた帝国の責任の方が確かにずっと重い。まあ帝国が進んで責任取ってくれるってんなら、こちらとしても文句をつける理由はないか。

しかし…パーの方を見ると。
どうだい、勉強になったかい?と言わんばかりの物凄いドヤ顔を見せつけてくる。いつ見てもムカつく顔だ。見れば見るほどレインはこれのどこがいいのか謎が深まる。こんど機会があったら聞いてみるとするか。

「そんなに見つめられちゃ、僕照れちゃうよ」

パーがほっぺに両手を当てて、体をクネクネさせる。無駄な恥ずかしさアピールにイラっとする事この上なしだ。
足が滑った事にして蹴り飛ばしてもいいかな?だめかな?

「あら、ダメですよたかしさん。パーちゃんはレインさんとお付き合いしてるんですから」

「え!?」

ベッドの淵に腰掛け、バレない様にそーっとパーに蹴りを入れようとした所。思わぬフラムの言葉に俺は固まる。

つきあう?
マジで!?

「やー、バレちゃったかー」

レインの方を見て目が合うと、奴は満足気に頷いた。一瞬冗談かとも思ったが、レインがこの手の冗談に乗るとも思えないので事実なのだろう。

しかし一体いつの間に……

「ふふ、たかしさんが寝て居る間にレインさんが告白されたんですよ」

フラムが俺の心を読んだかの様に説明してくれた。みるとその顔は上気し、目はこれでもかというぐらいキラキラと輝いている。
本当に恋話の好きな女だ。

しかし人が意識不明の間に告白とは。
普通そういうのって俺が目覚めるまで自粛するもんじゃないか?
あれ?ひょっとして俺軽んじられてる?

レインとはいい友人関係を築けてると思ってたんだが、ちょっとショックだ。
まあ今は細かいことは気にせず、奴を祝福してやるとしよう。

「レインおめでとう」

「ありがとう、たかし。お前のおかげだ」

「は?俺のおかげ?」

告白シーンに立ち会うどころか、俺はグースカ寝てたわけで。はっきり言って俺は何もしていないのだが。

「お前の強さが俺に勇気を与えてくれたんだ」

「え?どゆこと?」

俺の頭は?マークで一杯だ。
相変わらずレインは言葉足らずで、何を言っているのかよくわからん。

「お前はあの時彩音を救うために命を賭け、そして強くなって戻って来た。その時気付いたのさ。ただ守るだけでは無く、お互いに手を取り合い生きる強さを。だから俺は彼女とそうあるべく、勇気を出して彼女に自分の思いのたけをぶつける事ができた。おまえのお陰だ、ありがとう」

「お、おう……」

適当に相槌を打っては見たものの、正直何言ってるか全然わからん。というか俺に感謝してるなら、それこそ俺が起きる迄はまてよな。まあ、軽んじられてる訳じゃないと分かったから良しとするか。

たかし君も頑張って素敵な恋人探しをすると良いよ。そう上から目線で語るパーに若干イライラしつつも、俺は素直にレインを祝福した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。 了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。 テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。 それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。 やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには? 100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。 200話で完結しました。 今回はあとがきは無しです。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

父は異世界で魔王してます。

ファンタジー
平凡な毎日をおくっているつもりです。ただ、父は異世界に単身赴任中。魔王してます。

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

その幼女、最強にして最恐なり~転生したら幼女な俺は異世界で生きてく~

たま(恥晒)
ファンタジー
※作者都合により打ち切りとさせて頂きました。新作12/1より!! 猫刄 紅羽 年齢:18 性別:男 身長:146cm 容姿:幼女 声変わり:まだ 利き手:左 死因:神のミス 神のミス(うっかり)で死んだ紅羽は、チートを携えてファンタジー世界に転生する事に。 しかしながら、またもや今度は違う神のミス(ミス?)で転生後は正真正銘の幼女(超絶可愛い ※見た目はほぼ変わってない)になる。 更に転生した世界は1度国々が発展し過ぎて滅んだ世界で!? そんな世界で紅羽はどう過ごして行くのか... 的な感じです。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

最強の職業は付与魔術師かもしれない

カタナヅキ
ファンタジー
現実世界から異世界に召喚された5人の勇者。彼等は同じ高校のクラスメイト同士であり、彼等を召喚したのはバルトロス帝国の3代目の国王だった。彼の話によると現在こちらの世界では魔王軍と呼ばれる組織が世界各地に出現し、数多くの人々に被害を与えている事を伝える。そんな魔王軍に対抗するために帝国に代々伝わる召喚魔法によって異世界から勇者になれる素質を持つ人間を呼びだしたらしいが、たった一人だけ巻き込まれて召喚された人間がいた。 召喚された勇者の中でも小柄であり、他の4人には存在するはずの「女神の加護」と呼ばれる恩恵が存在しなかった。他の勇者に巻き込まれて召喚された「一般人」と判断された彼は魔王軍に対抗できないと見下され、召喚を実行したはずの帝国の人間から追い出される。彼は普通の魔術師ではなく、攻撃魔法は覚えられない「付与魔術師」の職業だったため、この職業の人間は他者を支援するような魔法しか覚えられず、強力な魔法を扱えないため、最初から戦力外と判断されてしまった。 しかし、彼は付与魔術師の本当の力を見抜き、付与魔法を極めて独自の戦闘方法を見出す。後に「聖天魔導士」と名付けられる「霧崎レナ」の物語が始まる―― ※今月は毎日10時に投稿します。

処理中です...