異世界転移しても所詮引きこもりじゃ無双なんて無理!しょうがないので幼馴染にパワーレベリングして貰います

榊与一

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第二章 希望を求めて

第二十六話 エロ>命

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轟音とともにドラゴンが吹き飛ぶ。
途中何度も地面にバウンドし、最終的にコロセウムの壁面に頭から刺さるような形で止まる。

「ふん!我と勝負しよう等1000年早いわ!!」

壁に無様に突き刺さり、此方に間抜けなお尻姿を晒しているドラゴン――エリンケウト・ドラグーン2世に向けて邪竜ヘルが吠える。

「お見事です」

クラウスが手を叩きながら邪竜へと近づき声を掛けた。

「流石は邪竜殿です。その強大な御力、このクラウスめ感服の至りで御座います」

自分の所の皇帝が壁にめり込んで偉い事になっているにもかかわらず。
クラウスは全く気にする素振りを見せない。

(少しはコテンパンにやられたエリンの事を心配してやれよ)

大臣の薄情さに、ついついエリンに同情してしまう。

「あ、あの、たかしさん。エリンちゃんの回復をお願いしてもいいですか!」
「ああ、別にいいぞ」

リンは変身のクールタイム中であるため回復を行なえない。
その為、俺へエリンの回復を頼んでくる。
断る理由も特にはないので承諾する。すると答えたとたんリンはアホ毛で俺を持ち上げ、観客席から飛び降りて凄い勢いでエリンの元へと向かう。

「ぬおわああああああ」

いきなり持ち上げられて高速で引っ張られた為、思わず叫び声を漏らしてしまう。
到着して地面におろされ、アホ毛の巻き付いて居た辺りをさする。
慌てていて力加減を間違えたのか、物凄く痛かったのだ。

「おいリン。もう少し丁寧に運んでくれ。内臓が飛び出るかと思ったわ」
「あ、ごめんなさい。そんな事よりもエリンちゃんの事お願いします!」

そんな事ときたか。
まあいいけど……
友達を心配する優しい気持ちに免じて、今回は不問とする。

俺はエリンの尻に触れ、仮契約サモンフレンドを使用してら回復魔法をかける。魔法をかけ始めてすぐに尻がプルプル小刻みに震え、足を屈めたかと思うとヒップアタックで弾き飛ばされた。凄まじい衝撃が全身を駆け巡り、勢いよく弾き飛ばされた俺は一瞬死を覚悟する。

「おい、主。大丈夫か?」
「た……助かった」

勢いよく地面にぶつかって昇天する所を、ガートゥの分厚い胸板に受け止められ危うく難を逃れる。とは言え、ヒップアタックのダメージだけでも相当な物で、全身が死ぬほど痛む。

「全身……死ぬほどいてぇ」
「しょうがねぇなぁ。回復してやるよ」
「え!?」

俺をお姫様抱っこで抱えるガートゥの両手が薄っすらと白く光る。
ガートゥの手から放たれたその光が俺の体を包み込むと、体からすぅっと痛みが引いていく。

「お前回復魔法なんか仕えたのか!?」
「魔法じゃねーよ、スキルだ。自分には使えないから、あんまり使えねーんだよなこのスキル」
「他にもなんかスキルあるのか?」
「ん?他か。あとは解毒とか体力やMPの回復するスキルぐらいだな。どれもこれも自分には使えないから微妙だけどな」

微妙どころか十分凄い気もするが。
ガートゥにとっては、自分に使えるかどうかが重要なのだろう。

案外多芸だなこいつ。
見た目的には完全に脳筋ファイター以外の何物でもないのだが。
ガートゥの万能薬張りの有能っぷりに驚かされる。
勇者の称号は伊達ではなかったようだ。

「もう痛みは大丈夫だ。ありがとうガートゥ」
「おう!もういいのか!だったらお礼に覚醒させてくれていいんだぜ!」
「だからしねーっつうの。それより降ろしてくれ。この体制恥ずかしくて仕方がない」
「確かに男がされてて嬉しい体制ではねーわな!」

ガートゥはゆっくりと俺を地面に卸し、俺の肩に手を置いてがっはっはと笑う。

「ガートゥ、お前実は女にモテたりする?」

顔つきは厳ついが、男らしくそこそこ気遣いが出来る。
何となくモテそうだなと思い聞いてみる。

「女にモテるだぁ?何訳の解らん事言ってるんだ主。俺は雌だぞ?」
「は?へ?」
「名に驚いた顔してるんだ?気づいてなかったのか?」
「え?マジで?冗談じゃなくて?」
「冗談なんぞ言ってねーぞ。確かに親父からはもう少し女らしくしろとよく言われてるが」

どこからどう見ても男にしか見えない。
声だって野太い。
だがガートゥの表情は至って真面目な様子だ。

「マジで女?」
「しつけぇな。ていうか、いくら何でもその態度は失礼すぎねぇか?」
「あ、ああ。すまん」

確かに本当に女なら失礼どころか、ぶん殴られても文句は言えないだろう。
只どうしても気になるところが一つある。

「なあ、一つ聞いていいか」
「ん?なんだ?」
「何で胸丸出しなんだ?」

ガートゥの胸元は分厚い筋肉で盛り上がり、女性らしい膨らみなど皆無だ。
だからと言って丸出しはどうなんだ?

「はっはっは、何言ってんだ。戦士が胸なんか隠すわけないだろうが」

ガートゥは両拳をへその前で合わせ、胸元の筋肉をパンプアップする。
鋼の様な胸筋が更に厚みを増し、此方を威嚇してくる。

「ご……豪快だな……」
「おう!俺のこの肉体美をいやらしい目つきで見てくるような馬鹿はいねぇぜ!」

確かにこの暴力的ともいえる筋肉の塊を見て、性的興奮を覚える者もいないだろう。
そういう問題でもない気がするが。
まあ本人が気にしていないなら良いだろう。

そういえばエリンを回復している最中だった事を思い出し、そちらの方を見ると、既に起き上がりリンと楽し気に談笑していた。
回復は殆どかけれていないのにあれだけ元気という事は、どうやらダメージの方は初めからたいしたものでは無く。頭を打った拍子で気絶していただけの様だ。

どうりでクラウスが気にしなかったわけだ。
クラウスはエリンの状態に気づいていたのだろう。
とにかく回復はもう不要と判断し、ガートゥに視線を戻す。

どうみても男にしか見えないガートゥを、頭のてっぺんからつま先まで眺める。
さの際、ふと馬鹿な考えが頭をよぎった。
本当にどうしようもない馬鹿な考えだ。

「どうした主?俺の事をじろじろみて?」
「ああ、いや。なんでもないから気にするな」

言えるはずがない。
ガートゥが覚醒してオッパイボインボインの姿になったら、生で見放題だなんて不埒な想像をしていた事など。

そもそもそんな事がある筈もない。
ガートゥがボインボインに覚醒するなど、そんな事は……
だが……その可能性が0でないのならば……
賭けてみる価値はあるのかもしれない。

自らの寿命を賭けて、ガートゥを覚醒させる価値が!!


この日たかしは覚悟を決める。
自らの命の欠片と引き換えに、ガートゥを覚醒させる覚悟を。
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