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第二章 希望を求めて

第十三話 急襲

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グラトル
恐竜の様な見た目をした二足歩行の爬虫類。
鋭い爪と牙を持ち、その長い尾には毒を持つ鋭い針が備わる強力な魔獣。

今私はそんな魔獣と戦っていた。

相手の爪をしゃがんで躱し、飛び上がりつつ体を縦に回転させ相手の顎を蹴り砕く。
以前彩音さんがブラド相手に使った動き。
たしかサマーソルトキックだったかな?

蹴りの威力で頭部が完全に吹き飛んだグラトルが崩れ落ちるのを見届けてから、辺りを見回す。
ぱっと見、周りにはもうグラトル達は見当たらない。

「どうやら逃げたようだな」
「ふん!所詮魔獣など我らの敵ではないのだ!」

大柄のゴブリンさんが、何か変なポーズをとりながら叫ぶ。
このゴブリンさんはガートゥさんのお父さんでダートゥさん。

この人はちょっと苦手。
だってすぐ大声で怒鳴るし。
それに変なポーズで筋肉をぴくぴくさせてて、ちょっと気持ち悪いんだもん。

「吠えるなよ親父。どう考えても今回は数が少なかっただろう。それに」

ガートゥさんがこっちをちらりと見てから言葉を続ける。

「敵の半数を始末したのはリンだろうが」
「むう、確かにその娘の強さは認めよう。だが今ぐらいの数なら、我らだけでも問題なかった」

確かに数は少なかった。
100匹以上いるって聞いてたけど、今のは30匹ぐらいかな。
流石にあれで全部ってことは無いよね?

「あれは此処へ逃げ込んだ、ゲルの族の者の臭いを追いかけてきた一部だろう。何匹か逃してしまった以上、じき大群が押し寄せてくるはず。ここからが本番になる、頼みましたぞリン殿」
「あ、はい!頑張ります!」

白い髭を生やしたゴブリンさんに頭を下げられ、つられてあたしも頭を下げる。

「はっはっは、リン殿が頭を下げる必要はありませんよ。無理を言っているのは此方なのですから」
「そ、そうですね、えへへ」

物腰の柔らかいこのお爺さんはバートゥさん。
ガートゥさんのお父さんのお父さん、つまりお爺ちゃんに当たる人で、バヌ族のリーダーさん。
白い髭を生やした小柄な人で、さっきの戦いで魔法を使ってたから、たぶん魔法使いなのかな?

「では一旦戻るとしよう」

ここは集落から少し東に離れた場所。
巡回していたウォーリアさん達がグラトルの接近に気づいて、ここで迎え撃った。
集落の近くで戦うと、集落に被害がでてしまうかもしれなかったから。
集落には戦えないゴブリンさん達がいっぱいいて、それにケロちゃんもお留守番してる。

ケロちゃん寂しがってないかな?
戻ったら抱っこしてあげよう。
今帰るから待っててねケロちゃん。

戻ったらケロちゃんとどんな遊びをしようか?
そんな幸せな気分は、ガートゥさんの叫び声で吹き飛ばされる。

「不味いぞ!血の臭いだ!」
「なんだと!?」

血の匂い!?
どこから?
凄く嫌な予感が……

そしてその予感は、続くガートゥさんの言葉で肯定される。

「集落からだ!」

その言葉を耳にした瞬間、私は影に潜り込んでいた。
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