異世界転移しても所詮引きこもりじゃ無双なんて無理!しょうがないので幼馴染にパワーレベリングして貰います

榊与一

文字の大きさ
上 下
78 / 165
王墓探索

第七十七話 合流

しおりを挟む
「敵だ。たかし、仮契約サモンフレンドを」

先頭を行くレインが素早く敵を察知し、戦闘準備を促す。

仮契約サモンフレンド
一時的に仲間を召喚扱いにできるスキルだ。
召喚扱いになる仲間達には召喚用の回復魔法は勿論の事、召喚強化のスキルでの基礎強化も適応される。
流石にこの強化には支配者の指輪ルーラーオブザリングの効果は乗らないが、このスキル習得によってパーティーは大幅に強化されたと言えるだろう。

此方へと襲い掛かってくるサイクロプス。その数およそ十二匹。
レインはまるで舞を舞うかのような華麗な動きで、敵を次々と斬り伏せていく。

殲滅。
それも30秒とかからずに。
レイン一人の手で。

以前のレインならば、格下相手に強化を自ら求めたりはしなかっただろう。
ゴブリン達との戦いが、レインのそんな意識を変えたのだ。


30層でのゴブリンキング達との戦い……
レインはあの戦いを生き延びた。

流石レインと言いたいところだが、実際はゴブリン達が俺に逃げられた腹いせ辺りで、レインを殺さずいたぶってくれたお陰だ。
酷い目に遭わされて、お陰も何もあったものでは無いが。
結果的にそれがレインの命を救ったのも事実。

そう、レインは九死に一生を得た。


だがニカは助からなかった……

戦場となった場所から少し離れた所で、ニカは事切れていた。
背中に受けた大きな傷が原因だ。

ゴブリンは、遠く離れた仲間の血の臭いすら嗅ぎ分ける嗅覚を持つ。
恐らく、臭いや音で察知したゴブリンに襲われたのだろう。
姿を隠すだけでは不十分だったのだ。

ニカの亡骸を前に、パーは何度もすまないと謝罪を繰り返していた。
自分の判断ミスだと……

決して彼女だけの責ではない。
その事は彼女だって理解している。

だがそれでも

「確かに僕だけのせいだとは思わないよ。でも、僕がミスしたのは変えようのない事実だ。だから彼女を生き返らせて見せる。この天才錬金術師、パマソー・グレンの名に懸けて」

分厚い眼鏡のせいで、その瞳は伺えない。
だが口調やその雰囲気から、彼女の本気の気持ちが伝わってくる。

普段からふざけた態度の女性ではあったが、彼女にとっても仲間の死は重い罪業なのだろう。
普段の態度は相変わらずだが、明かに以前とは違う。
それが鈍感な俺にも感じ取れた。


そんな彼女の為、レインも必死なのだ。
これ以上彼女が余計な物を背負わずに済むよう。
その為、以前のように戦いを楽しむ事はせず、確実な戦いを選ぶようになった。


「見事だ」

レインの戦いぶりに、ティータが称賛の言葉を贈る。

「たかしやティーエの強化があればこそだ。本来の俺ではああはいかんさ」
「ふん。姉上は兎も角、たかしの強化など大したものでは無いだろう」

明らかに俺の仮契約サモンフレンドの方が効果大きいんだがな。
どうやらティータは、俺の事は絶対に認めたくないらしい。
相変わらずの態度に辟易する。

レインも男だというのに、何故か俺だけが悪い虫扱いだ。
やはり好きな相手がいるというのが大きいのかもしれない。

俺は別にティーエさんに特別な感情など抱いていない。
それをきっちり伝えれば、奴の態度も少しはましになるのだろうか?

ま、無理か。
俺の話、絶対まともに聞かなさそうだし。

「ティータ!たかしさんに失礼ですよ」

ティーエさんが弟を叱りつける。

「う、申し訳ありません。姉上」
「私ではありませんよ」
「く……すまない……たかし」

ティーエさんに促され、ティータが嫌々謝罪してくる。
本当に。
びっくりするほど嫌々。

此処まで態度があからさまだと、もはや謝る意味無いんだが。

「たかしさん。弟の非礼、どうか許してあげてください」
「そんな、気にしてませんよ」

1秒でも早く踏破する為、アルバート兄妹には頭を下げて手伝って貰っている。
ティータの態度は確かに不快だが、こうやって王墓探索を手伝ってもらっている手前、我慢するしかないだろう。
命懸けの探索の対価が嫌味程度なら安いものだ。

とにかく今は1秒でも早く50層へたどり着く為、俺達は先を急ぐ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~

さとう
ファンタジー
生まれながらにして身に宿る『召喚獣』を使役する『召喚師』 誰もが持つ召喚獣は、様々な能力を持ったよきパートナーであり、位の高い召喚獣ほど持つ者は強く、憧れの存在である。 辺境貴族リグヴェータ家の末っ子アルフェンの召喚獣は最低も最低、手のひらに乗る小さな『モグラ』だった。アルフェンは、兄や姉からは蔑まれ、両親からは冷遇される生活を送っていた。 だが十五歳になり、高位な召喚獣を宿す幼馴染のフェニアと共に召喚学園の『アースガルズ召喚学園』に通うことになる。 学園でも蔑まれるアルフェン。秀な兄や姉、強くなっていく幼馴染、そしてアルフェンと同じ最底辺の仲間たち。同じレベルの仲間と共に絆を深め、一時の平穏を手に入れる これは、全てを失う少年が最強の力を手に入れ、学園生活を送る物語。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

哀れな寄生系美少女が金に惹かれて吸い付いてきたので、逆に食べる事にしました。

true177
恋愛
 恋愛という世界から取り残されていた隆仁(たかひと)は、誰が見ても美少女だと評するであろう結莉(ゆり)からいきなり告白される。  とは言え、好感度どころか会話すらしたことのない二人。隆仁が抱いた訝しさは、明確に形となって現れる。  財布を忘れたと平気で嘘を付く、プレゼントのおねだりに薄っぺらい土下座、やたら医者である隆仁の両親の話をしたがる……。結莉は、正に寄生系女の子だったのである。  あからさまな物目当ての美少女。その美貌にものを言わせて、要求を通してこようとする。典型的な地雷であり、関係を切るのが無難なのだろう。  しかし、隆仁は諦めきれなかった。 『性格以外は、むしろ好印象なんだけどな……。どうしたら、本心で見てくれるんだろう……』  仮初めの状態で付き合いが続いても、未来はない。歪んだ性格を正すことは出来ないのか。本気で惚れ落としてしまう方法はないだろうか、と。  残念な美少女と、一風変わった考えの持ち主である隆仁。果たして、彼女を寄生から脱却されることはできるのだろうか……。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

異世界と現実世界が融合してしまったので、復元しようと思います。

月海水
ファンタジー
 ある日突然、現実世界に異世界の一部が転移してきた。  日本と異世界は融合し、列島の約半分が異世界となってしまう。  主人公の竜弥は魔法の源を無尽蔵に生み出す能力を得たことで騒動に巻き込まれていく。  竜弥は異世界で恐れられているらしい幼女と行動を共にし、日本の復元を目指していくが……!?

処理中です...