71 / 165
王墓探索
第七十話 いざ30層へ
しおりを挟む
「この下にお母さんが……」
大きな下り階段を前にニカが呟く。
此処を下れば、ニカの母親たちが全滅した30層へ到達することになる。
「ニカちゃん……大丈夫?」
リンが心配そうにニカの肩に手を置き、張り詰めた表情のニカに声をかける。
「ん、大丈夫。ちょっと緊張しただけだから。ありがとう、りんちゃん」
ニカは、肩に置かれたリンの手を握りながら笑顔で答えた。
王墓探索がスタートしてから、既に10日以上経過している。
その間、リンとニカはほぼマンツーマンの形で行動していた為か、二人は仲のいい友人関係を見事に構築していた。
微笑ましく思うと同時に、ボッチの眼には彼女たちの関係が羨ましく映る。
一応俺も、レインとの友人関係は築けている?筈なのだが。
どうも俺の描いていた友人関係とは違う。
放課後や休憩時間に楽しく談笑するといった通常の友人ではなく、戦場で背中を任せ合うような、どちらかと言えば戦友に近い関係だ。
戦いながらではあるが、奴に剣術や戦いの指南を受けている事を考えると、どちらかと言えば子弟に近いのかもしれない。
まあようは、言葉ではなく拳や剣で語り合う仲という訳だ。
「さてそれじゃあ、下に降りる前にマニュアルを確認しようかい。最後のね」
パーにマニュアルを読むよう勧められたので、フラムが手にしていたマニュアルを開く。
マニュアルを開くのもこれが最後になるだろう。
残念ながら、マニュアルに載っているのは30層までだ。
マニュアルは王墓に潜入した直後は俺が携帯していたが、隊列が変更され、トラップゾーン以外俺とレインで前衛を務める様になってからは、フラムに所持して貰っている。
トラップゾーンに関しては、相変わらず俺は最後尾だが。
「ふむふむ、分かってはいたけど。30層の情報はやっぱり断片的な物だねぇ」
パーが、フラムの手にしたマニュアルを横から覗き込みながら声を出す。
「30層に潜入できたのは、1パーティーだけだからな」
レインが言う通り、冒険者たちが到達している階層は、30層までと言われている。
しかもそのパーティーは、1人を残して全滅してしまっている。
その為、30層の情報は断片的な物しか記載されていない。
ここまで順調に進んでこれたのは、マニュアルのお陰だ。
その恩恵が受けれなくなる以上、ここからの探索は相当な時間を要する事になるだろう。
「何々、出現する魔物は、と…………え!?嘘だろ!?」
フラムのマニュアルを横から覗き込み、内容を確認する。
そして、そこに書き込まれたモンスターの名前を見て、思わず大声を出してしまう。
「へぇ、たかし君はこの魔物を知っているのかい?僕は初めて目にする名前なんだけど?」
パーが感心したように言ってくる。
知っているも何も。
俺はこいつを呼び出す事が出来る。
だが何故だ?俺の知るそのモンスターはとてつもなく弱い。
とてもではないが、30層に配置されるようなレベルのモンスターではない。
というか、ニカの母親が所属していた大型パーティーはこいつらにやられたって事か?いやいやいやいや、無い。
それは無い。
「それで、どういった魔物何だい?この“ゴブリン”って魔物は?」
俺の知る限り最弱のモンスター、ゴブリン。
そのゴブリンが、30層の出現モンスターとマニュアルには記載されていた。
これ絶対何かの間違いだよな?
大きな下り階段を前にニカが呟く。
此処を下れば、ニカの母親たちが全滅した30層へ到達することになる。
「ニカちゃん……大丈夫?」
リンが心配そうにニカの肩に手を置き、張り詰めた表情のニカに声をかける。
「ん、大丈夫。ちょっと緊張しただけだから。ありがとう、りんちゃん」
ニカは、肩に置かれたリンの手を握りながら笑顔で答えた。
王墓探索がスタートしてから、既に10日以上経過している。
その間、リンとニカはほぼマンツーマンの形で行動していた為か、二人は仲のいい友人関係を見事に構築していた。
微笑ましく思うと同時に、ボッチの眼には彼女たちの関係が羨ましく映る。
一応俺も、レインとの友人関係は築けている?筈なのだが。
どうも俺の描いていた友人関係とは違う。
放課後や休憩時間に楽しく談笑するといった通常の友人ではなく、戦場で背中を任せ合うような、どちらかと言えば戦友に近い関係だ。
戦いながらではあるが、奴に剣術や戦いの指南を受けている事を考えると、どちらかと言えば子弟に近いのかもしれない。
まあようは、言葉ではなく拳や剣で語り合う仲という訳だ。
「さてそれじゃあ、下に降りる前にマニュアルを確認しようかい。最後のね」
パーにマニュアルを読むよう勧められたので、フラムが手にしていたマニュアルを開く。
マニュアルを開くのもこれが最後になるだろう。
残念ながら、マニュアルに載っているのは30層までだ。
マニュアルは王墓に潜入した直後は俺が携帯していたが、隊列が変更され、トラップゾーン以外俺とレインで前衛を務める様になってからは、フラムに所持して貰っている。
トラップゾーンに関しては、相変わらず俺は最後尾だが。
「ふむふむ、分かってはいたけど。30層の情報はやっぱり断片的な物だねぇ」
パーが、フラムの手にしたマニュアルを横から覗き込みながら声を出す。
「30層に潜入できたのは、1パーティーだけだからな」
レインが言う通り、冒険者たちが到達している階層は、30層までと言われている。
しかもそのパーティーは、1人を残して全滅してしまっている。
その為、30層の情報は断片的な物しか記載されていない。
ここまで順調に進んでこれたのは、マニュアルのお陰だ。
その恩恵が受けれなくなる以上、ここからの探索は相当な時間を要する事になるだろう。
「何々、出現する魔物は、と…………え!?嘘だろ!?」
フラムのマニュアルを横から覗き込み、内容を確認する。
そして、そこに書き込まれたモンスターの名前を見て、思わず大声を出してしまう。
「へぇ、たかし君はこの魔物を知っているのかい?僕は初めて目にする名前なんだけど?」
パーが感心したように言ってくる。
知っているも何も。
俺はこいつを呼び出す事が出来る。
だが何故だ?俺の知るそのモンスターはとてつもなく弱い。
とてもではないが、30層に配置されるようなレベルのモンスターではない。
というか、ニカの母親が所属していた大型パーティーはこいつらにやられたって事か?いやいやいやいや、無い。
それは無い。
「それで、どういった魔物何だい?この“ゴブリン”って魔物は?」
俺の知る限り最弱のモンスター、ゴブリン。
そのゴブリンが、30層の出現モンスターとマニュアルには記載されていた。
これ絶対何かの間違いだよな?
0
お気に入りに追加
325
あなたにおすすめの小説
〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。
了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。
テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。
それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。
やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには?
100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。
200話で完結しました。
今回はあとがきは無しです。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
その幼女、最強にして最恐なり~転生したら幼女な俺は異世界で生きてく~
たま(恥晒)
ファンタジー
※作者都合により打ち切りとさせて頂きました。新作12/1より!!
猫刄 紅羽
年齢:18
性別:男
身長:146cm
容姿:幼女
声変わり:まだ
利き手:左
死因:神のミス
神のミス(うっかり)で死んだ紅羽は、チートを携えてファンタジー世界に転生する事に。
しかしながら、またもや今度は違う神のミス(ミス?)で転生後は正真正銘の幼女(超絶可愛い ※見た目はほぼ変わってない)になる。
更に転生した世界は1度国々が発展し過ぎて滅んだ世界で!?
そんな世界で紅羽はどう過ごして行くのか...
的な感じです。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる