53 / 165
王墓探索
第五十三話 帝国首都1日目
しおりを挟む
「おや、新婚さんかい?お熱いねぇ~」
宿の亭主がフラムを見て、ニヤニヤしながら此方をちゃかしてくる。
「全然違う」
当然即座に否定する。
仮に新婚だったとしても、どこの世界にウェディングドレス着たまま宿探しする馬鹿が居るんだよ。
「なんだ、違うのかい?だったら何でそんな恰好を?」
「余計な詮索はやめてくれ。それよりこの宿はケーキとか置いてるか?」
「あー、うちは基本冒険者用の店だからケーキとかはちょっと置いてねぇなぁ」
「そうか、じゃあ悪いけど他を当たらしてもらうよ」
フラム達を連れて宿を出る。
此処でもう10件目だ。
そもそも王墓周りの宿は遺跡を探索する冒険者向けの宿が殆どであるため、当然ケーキ等の甘味は置いておらず、宿探しは難航していた。
「なかなかありませんねぇ」
「ごめんなさい、私の我が儘のせいで……」
「まあ、気にすんな」
とは言え、もうだいぶ日も傾いて来てる。
リンには悪いが、適当な宿屋で決めてしまうか。
そもそもケーキが食べたいのなら、それ専用の店に食べに行けばいいだけだ。
無理に宿屋に求める条件ではないだろう。
「ねぇ、お兄さんたち?ひょっとして宿屋をお探し?」
急に声を掛けられたので立ち止まり、振り返ってみると其処には一人の少女が。
黒髪黒目の可愛らしい顔をした少女で、その顔には満面の笑みが湛えられている。
「君は?」
「私は樫木亭の従業員でニカって言います。もし良かったら内にお泊りになられませんか?」
どうやら呼び込みの様だ。
余りこの手の呼び込みは好きではない為、どうした物かと思案に暮れていると相手に先手を取られる。
「内は料理が自慢なんです!バララ蜥蜴の帝国風姿焼きは最高の逸品ですよ!ぜひ泊って行ってください!」
帝国風姿焼きか、上手そうだな……
この世界に来る前なら蜥蜴等進められたら憤慨物だったが、この世界での生活がそんな認識を大きく覆らせる。気付けば蜥蜴料理は大好物になっていた。
「ケーキって置いてありますか?」
「え?ケーキですか?う~ん、普段は出してないんですけど、お客さんの御要望とあらば御用意させて頂きますよ。まあ、私の手作りになりますけど」
自慢の蜥蜴料理にケーキまで付いてくるなら断る手はないか……
「じゃあお世話になるよ」
「まいどあり~」
「リンちゃん手作りケーキだって、楽しみだね」
「はい!とっても楽しみです!」
▼
「ここが樫木邸になります!」
ニカがオーバーアクションで手を掲げた先には……
「な……なんというか、趣深い建物だな……」
帝都の街並みは道が石畳で整備されており、その建物の殆んどが立派な石造りの物ばかりだ。
そんな街並みの中、違和感をまき散らしながら建つ古びたボロい木造の建物。
それが樫木亭だ。
「あははは。見た目はちょっとあれですけど、内装はしっかりしてますし、料理の味は保証しますから……」
女性二人が嫌がるかと思いリン達の方をちらりと見るが、二人共特に不満な表情はしていない。
まあ元々エルフは木に囲まれた生活してるし、気にならんのかな?
個人的に見た目より料理を重視するタイプなので、女性陣が気にしないのなら断る理由は無かった。
「まあ、別にいいよ。それより本当に料理には期待していいのか?」
「勿論です!!ささ、皆様それでは此方にどうぞ!」
ニカが玄関に素早く走り寄り、ドアを開け俺達を招き入れる。
やれやれ、やっと一息付けるな。
帝国1日目 宿探しだけで終わる。
宿の亭主がフラムを見て、ニヤニヤしながら此方をちゃかしてくる。
「全然違う」
当然即座に否定する。
仮に新婚だったとしても、どこの世界にウェディングドレス着たまま宿探しする馬鹿が居るんだよ。
「なんだ、違うのかい?だったら何でそんな恰好を?」
「余計な詮索はやめてくれ。それよりこの宿はケーキとか置いてるか?」
「あー、うちは基本冒険者用の店だからケーキとかはちょっと置いてねぇなぁ」
「そうか、じゃあ悪いけど他を当たらしてもらうよ」
フラム達を連れて宿を出る。
此処でもう10件目だ。
そもそも王墓周りの宿は遺跡を探索する冒険者向けの宿が殆どであるため、当然ケーキ等の甘味は置いておらず、宿探しは難航していた。
「なかなかありませんねぇ」
「ごめんなさい、私の我が儘のせいで……」
「まあ、気にすんな」
とは言え、もうだいぶ日も傾いて来てる。
リンには悪いが、適当な宿屋で決めてしまうか。
そもそもケーキが食べたいのなら、それ専用の店に食べに行けばいいだけだ。
無理に宿屋に求める条件ではないだろう。
「ねぇ、お兄さんたち?ひょっとして宿屋をお探し?」
急に声を掛けられたので立ち止まり、振り返ってみると其処には一人の少女が。
黒髪黒目の可愛らしい顔をした少女で、その顔には満面の笑みが湛えられている。
「君は?」
「私は樫木亭の従業員でニカって言います。もし良かったら内にお泊りになられませんか?」
どうやら呼び込みの様だ。
余りこの手の呼び込みは好きではない為、どうした物かと思案に暮れていると相手に先手を取られる。
「内は料理が自慢なんです!バララ蜥蜴の帝国風姿焼きは最高の逸品ですよ!ぜひ泊って行ってください!」
帝国風姿焼きか、上手そうだな……
この世界に来る前なら蜥蜴等進められたら憤慨物だったが、この世界での生活がそんな認識を大きく覆らせる。気付けば蜥蜴料理は大好物になっていた。
「ケーキって置いてありますか?」
「え?ケーキですか?う~ん、普段は出してないんですけど、お客さんの御要望とあらば御用意させて頂きますよ。まあ、私の手作りになりますけど」
自慢の蜥蜴料理にケーキまで付いてくるなら断る手はないか……
「じゃあお世話になるよ」
「まいどあり~」
「リンちゃん手作りケーキだって、楽しみだね」
「はい!とっても楽しみです!」
▼
「ここが樫木邸になります!」
ニカがオーバーアクションで手を掲げた先には……
「な……なんというか、趣深い建物だな……」
帝都の街並みは道が石畳で整備されており、その建物の殆んどが立派な石造りの物ばかりだ。
そんな街並みの中、違和感をまき散らしながら建つ古びたボロい木造の建物。
それが樫木亭だ。
「あははは。見た目はちょっとあれですけど、内装はしっかりしてますし、料理の味は保証しますから……」
女性二人が嫌がるかと思いリン達の方をちらりと見るが、二人共特に不満な表情はしていない。
まあ元々エルフは木に囲まれた生活してるし、気にならんのかな?
個人的に見た目より料理を重視するタイプなので、女性陣が気にしないのなら断る理由は無かった。
「まあ、別にいいよ。それより本当に料理には期待していいのか?」
「勿論です!!ささ、皆様それでは此方にどうぞ!」
ニカが玄関に素早く走り寄り、ドアを開け俺達を招き入れる。
やれやれ、やっと一息付けるな。
帝国1日目 宿探しだけで終わる。
0
お気に入りに追加
325
あなたにおすすめの小説
家族全員異世界へ転移したが、その世界で父(魔王)母(勇者)だった…らしい~妹は聖女クラスの魔力持ち!?俺はどうなんですかね?遠い目~
厘/りん
ファンタジー
ある休日、家族でお昼ご飯を食べていたらいきなり異世界へ転移した。俺(長男)カケルは日本と全く違う異世界に動揺していたが、父と母の様子がおかしかった。なぜか、やけに落ち着いている。問い詰めると、もともと父は異世界人だった(らしい)。信じられない!
☆第4回次世代ファンタジーカップ
142位でした。ありがとう御座いました。
★Nolaノベルさん•なろうさんに編集して掲載中。
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
社畜おっさんは巻き込まれて異世界!? とにかく生きねばなりません!
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はユアサ マモル
14連勤を終えて家に帰ろうと思ったら少女とぶつかってしまった
とても人柄のいい奥さんに謝っていると一瞬で周りの景色が変わり
奥さんも少女もいなくなっていた
若者の間で、はやっている話を聞いていた私はすぐに気持ちを切り替えて生きていくことにしました
いや~自炊をしていてよかったです
好き勝手スローライフしていただけなのに伝説の英雄になってしまった件~異世界転移させられた先は世界最凶の魔境だった~
狐火いりす@商業作家
ファンタジー
事故でショボ死した主人公──星宮なぎさは神によって異世界に転移させられる。
そこは、Sランク以上の魔物が当たり前のように闊歩する世界最凶の魔境だった。
「せっかく手に入れた第二の人生、楽しみつくさねぇともったいねぇだろ!」
神様の力によって【創造】スキルと最強フィジカルを手に入れたなぎさは、自由気ままなスローライフを始める。
露天風呂付きの家を建てたり、倒した魔物でおいしい料理を作ったり、美人な悪霊を仲間にしたり、ペットを飼ってみたり。
やりたいことをやって好き勝手に生きていく。
なぜか人類未踏破ダンジョンを攻略しちゃったり、ペットが神獣と幻獣だったり、邪竜から目をつけられたりするけど、細かいことは気にしない。
人類最強の主人公がただひたすら好き放題生きていたら伝説になってしまった、そんなほのぼのギャグコメディ。
器用さんと頑張り屋さんは異世界へ 〜魔剣の正しい作り方〜
白銀六花
ファンタジー
理科室に描かれた魔法陣。
光を放つ床に目を瞑る器用さんと頑張り屋さん。
目を開いてみればそこは異世界だった!
魔法のある世界で赤ちゃん並みの魔力を持つ二人は武器を作る。
あれ?武器作りって楽しいんじゃない?
武器を作って素手で戦う器用さんと、武器を振るって無双する頑張り屋さんの異世界生活。
なろうでも掲載中です。
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
MMOやり込みおっさん、異世界に転移したらハイエルフの美少女になっていたので心機一転、第二の人生を謳歌するようです。
遠野紫
ファンタジー
大人気スマホMMO『ネオ・ワールド・オンライン』、通称ネワオンの廃人プレイヤーであること以外はごく普通の一般的なおっさんであった彼は今日もいつもと変わらない日常を送るはずだった。
しかし無情にもネワオンのサ終が決まってしまう。サービスが終わってしまう最後のその時を見届けようとした彼だが、どういう訳か意識を失ってしまい……気付けば彼のプレイヤーキャラであるハイエルフの姿でネワオンの世界へと転移していたのだった。
ネワオンの無い元の世界へと戻る意味も見いだせなかった彼は、そのままプレイヤーキャラである『ステラ・グリーンローズ』としてネワオンの世界で生きて行くことを決意。
こうして廃人プレイヤーであるおっさんの第二の人生が今始まるのである。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる