異世界転移しても所詮引きこもりじゃ無双なんて無理!しょうがないので幼馴染にパワーレベリングして貰います

榊与一

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ヴァンパイアスレイヤー(幼馴染が)

第四十八話 今日もいい天気だ

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「うーん」

空を見て声を唸らす。

何がどうなったらこうなるんだ?

何度見ても快晴の空。

俺の知る限りここはダンジョンの中だ。
いや、だったと言うべきか。

朝目を覚ました俺は介抱してくれたおやじに謝礼を払い、置き換えリプレイスで神樹のダンジョンに置いてきたミノタウロスと場所を交代したのだが、そこは快晴の空の下だった。

一瞬ミノタウロスが無理やり動かされたのかとも考えたが、周りの壁面には見覚えがあったため、ここは間違いなく神樹のダンジョンだ。

まあ彩音がやったんだろうけど、流石に神樹吹っ飛ばすのはやりすぎじゃね?
エルフに恨まれなきゃいいけど……

そんな事を考えていると、上から俺の名前を呼ぶ声が響いてきた。
声に反応し上を見上げると、凄いスピードでリンが降ってくる。

「ええ!?ちょ!!」

すごい勢いで落ちてくるリンを目の当たりにし、思わず大声がでる。
リンはそのまま高速で迫り、俺の前でくるっと一回転して華麗に着地。そこから跳ねるかの様に俺に飛び掛かり抱き着いてきた。
もはや弾丸と言っていいレベルのタックルをぶちかまされ、非力な俺は当然のように吹っ飛び、背中をもろに強打する。

「ぐぇ……」
「あ、ごめんなさい!私嬉しくってつい」
「び……びしょうじょに……だきつかれるなんて……おとこみょうりに……つきるぜ」

かっこいい台詞を吐こうと頑張ったが、全身を襲う激痛のせいで上手く喋れず、亡くなる前の遺言みたいな喋り方になってしまった。

「大丈夫ですか!?」

リンが心配そうに俺の上に乗っかったままで、俺の顔を覗き込んでくる。

ほんとに心配なら上からどけよ。

平素なら大喜びしてしまいそうな状況ではあるが、昨日のダメージがまだ抜けきってない状況で上に乗られるのはきつい。
ちょっとどいてくれる?そう言いたいところだが、女性にそれを言うと、暗にお前重いんだよと言うようで気が引けてしまい口にし辛い。
如何したものかと思案に暮れていると……

「りんちゃん、たかしさん余り体調が良くないみたいだから、どいてあげた方がいいよ」

いつのまにやら現れたフラムが助け舟を出してくれる。

「あ!ごめんなさい!直ぐどきます!」

言われてリンが飛び跳ねる様に俺の上からいなくなる。

助かった……

「大丈夫ですか?」

まだ倒れたままの俺に、フラムが上から心配そうに覗き込み優しく声をかけてくれた。
だがその姿を見て思わずぎょっとしてしまう。

何で翼生えてんだ?俺は幻覚でも見ているのか?

訳が分からずフラムの背中の翼を凝視してしまう。

「あ、この翼はティーエさんの飛行魔法なんですよ。可愛いでしょ。」
「ああ、なるほど……」

ついにフラムの頭のねじが吹っ飛んで、コスプレまでしだしたのかとも思ったが違う様で安心した。
まあ普段着ウェディングドレスからしてコスプレの様な物だが……

「いい天気だな」
「はい、快晴ですね!」
「で?何でこうなった訳?」

至極まっとうな疑問を口にする。
するとリンが興奮したような口調で説明しだした。

「えっとですね!えっとですね!彩音さんが凄かったんです!全身ぼわぼわって赤くなって!そしたら手がピカピカーって青く光ったとおもたっら、そのてからぼわーーーって光が上がっていって!ずかーんってなったと思ったら、こうなってたんです!!」

あほっぽい説明有り難う。
この子ってこんなに頭弱そうだったっけ?

要は彩音が全てを貫く一撃グングニルで吹っ飛ばしたって訳か……
まあ多分そうなんだろうとは思っていたが。

だが情報が足りない。
何故の部分の方が需要なのだが、興奮してるリンに聞いても埒が明かなさそうなのでフラムに尋ねる。

「何で神樹吹っ飛ばしたんだ?」

リンの説明は軽くスルーしてフラムに尋ねたせいか、リンが拗ねたように頬を膨らましているが気にしない。
フラムもそんなリンの反応に困ったような顔をするが、質問にはちゃんと答えてくれる。

「ええと、私もその場に居なかったので詳しくは分からないんですけど、負けを悟ったヴラドが最後の嫌がらせに神樹を呪ったらしくて、そのままだと森全体が呪われそうだったんで吹き飛ばしたらしいです」
「成程。でも大丈夫なのか?神樹吹っ飛ばしちゃって。エルフに取って大事な物なんじゃ?」
「あ、それなら大丈夫です。神樹が消滅する時その種がドロップしてるんで、多少時間はかかりますが種さえあれば神樹は復活できますから。」

ドロップ?
え?神樹って魔物だったのか!?

「あ、言っておきますけど神樹は魔物じゃありませんよ。多分呪いを受けたことで魔物化しちゃったんだと思います」

どうやら顔に出てたらしく、それに気づいたフラムが素早く補足説明をしてくれる。

こういう所は察しがいいのに、なんで彩音との事はちゃんと説明しても全く聞かないんだろうか?

本当に謎な女だ。

「成程。それで彩音は?」
「今はマーサさんの所でティーエさん達と休んでいますよ」

あ、やっぱりティーエさん達も来てたのか。
まあ彩音が囮作戦考えたとはとても思えないからな。

恐らくティーエさんの入れ知恵だろう。
ティーエさんにも文句を言ってやりたい所だが「え!?たかしさん気付いてなかったんですか?私てっきり気付いているものとばかり思っていました」と、返してきそうだ。
何よりティータが糞五月蠅そうだから、口惜しいがこの借りは別の機会に返して貰うとしよう。

「皆たかしさんが無事だと知ったら喜びますよ!さあ、行きましょう!」

そういうとフラムが俺に手を差し出す。
すると、対抗意識でも芽生えたのか何故かリンも手をこっちに差し出してきた。

どっちの手を取ろうか一瞬迷ったが、さっき無視したこともあるのでリンの手を取り起して貰う。
途端にさっきまでの不機嫌そうな顔が嘘のように晴れ、花が咲いたような純粋で眩しい笑顔に変わる。

やれやれ、子供だなまったく。

呆れつつも、可愛いから許す!と思うたかしなのであった。
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