異世界転移しても所詮引きこもりじゃ無双なんて無理!しょうがないので幼馴染にパワーレベリングして貰います

榊与一

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ヴァンパイアスレイヤー(幼馴染が)

第四十四話 グングニル

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呪い……か。

ブラドの手に握られた球からは、凄まじいまでの怨嗟の負のエネルギーを感じる。
ひょっとしたら父がブラドをあえて倒さず封印したのは、この呪いを警戒しての事だったのかもしれない。

 心眼マインズアイで確認したところ、ブラドのHPは0になっている。
つまり自らの命と引き換えに発動される大技というわけだ。
正真正銘の最後の一撃ラストアタック

私は一息深呼吸し、拳に力を籠めた。

正面から受けきる!!

その強い意志を視線に乗せて、ブラドを睨みつける。
逃げも隠れもしない、真っ向勝負だ。

「ああ、勘違いしないでもらいたい。君に使うつもりはない」
「何!?」
「君に使っても、耐え凌がれる可能性が高いからな」

こいつ今更何を?

その時はっと気づく。

狙いはリンか!

リンを守るべく、横っ飛びしてリンとブラドの直線状を遮る。

「残念、外れだ。私の狙いは神樹だ!!!」

ブラドが天を掴むように左手を突き上げると、手の中にあった呪いが打ち上げられ、天井へと消えていく。

「くくく、神樹はこのエルフの森全ての木と繋がっている。私の呪いは神樹を蝕み、やがてこの森全てを呪いで覆いつくすだろう。自分たちの生きる支えであった神樹とこの森を失うエルフ達の苦しむ顔が見れないのが残念だが。まあいいだろう。私は一足先に失礼させてもらうよ」

そう言い放つと、ブラドの肉体は灰となって消えていった。

次の瞬間洞窟内が激しく振動し、頭上から凄まじい負のエネルギーの波動が感じられた。神樹が呪いを受けた影響だろう。

「リン、ブラドの言っていた神樹の話は本当か?」
「は……はい。神樹が森を管理しているそうです」
「そうか。なら神樹を破壊するぞ」
「え!?」

森自体が失われればエルフたちの生活が成り立たなくなる。
神樹一本か森全体なら、考えるまでもないだろう。

「で、でも……」
「気持ちはわかる……だが今はエルフ達のために森を守るのが最優先だ」
「わかりました……」

納得は出来ないだろうが、我慢して貰う。
本来ならエルフ達の総意を確認すべきだろうが、そんな時間は無い。
ちんたらしていたのでは手遅れになってしまう。

「リン。ドラゴンリングをこっちに」

リンからドラゴンリングを受け取り指にはめる。
その瞬間、体の内から凄まじい力が湧き上がってきた。

凄いアイテムだなこれは……

ずっと指にはめていたい、思わずそう思ってしまう程に強力なアイテムだ。

自らを高めるために、可能な限り道具に頼らないようにしてきた。
それなのに強力なアイテムを身に着けたとたん、その魅力に魅せられ、力を手放したくなくなってしまう。
自らを律し生きてきたつもりだが、まだまだ未熟だと痛感させられる。

いかんいかん、余計な事を考えている場合じゃないな。

ぼーっと考え事をしていたせいで、手遅れになるなど笑えない。
両手で自らの頬を強く張り、気合を入れなおす。

「あ、彩音さん!?」

急に頬を張ったりしたから、リンを脅かしてしまったようだ。

「何でもない。危ないからリンは少し離れていてくれ」
「あ、はい」

リンが離れるのを確認し、全神経を丹田に集中する。

圧倒的力ジャガーノート!」

スキルを発動させると、丹田のあたりから暑いマグマの様な力の奔流が円を描くように広がっていく。
体が熱い、力が漲る。
余りにも力が漲りすぎて、まるで早く解き放てと言わんばかりに体が小刻みに震えだす。

「分かっているさ。そう急かすな」

自身の体に答えるように小さく呟き、すべての力を左手に収束させる。

全てを貫く一撃グングニル

自身の扱う技の中で最大最強の技だ。
その破壊力は全てを貫き塵と化す。
ただし、通常の状態ではエネルギー不足の為発動させることが出来ない。その為圧倒的力ジャガーノートとセットで扱わなければならず。体にかかる負担は大きい。

左拳に十分なエネルギーが収束したのを感じ、拳を天に突き上げる。

全てを貫く一撃グングニル!!」

技を発動した瞬間、突き上げた左拳から全てを消し飛ばす圧倒的な力の奔流がほとばしり、凄まじい轟音と共に自らの前に立ちはだかるすべてを飲み込みながら、天へと駆けあがっていく。

凄まじいまでのエネルギーの奔流。
そのエネルギーが過ぎ去った後には、塵一つ残っていなかった。

全てが終わり、静寂が辺りを支配する。

上を見上げると、綺麗な星空が広がっていた。
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