異世界転移しても所詮引きこもりじゃ無双なんて無理!しょうがないので幼馴染にパワーレベリングして貰います

榊与一

文字の大きさ
上 下
35 / 165
ヴァンパイアスレイヤー(幼馴染が)

第三十五話 幼馴染を囮に使うな!

しおりを挟む
「それで?何故私たちをここへ誘き出した?」
「誘き寄せた?」

彩音の言葉が理解できず、思わず口に出る。

「リンはアルバート邸であった時点で既にヴァンパイアだった。私たちに接触してここへ連れてきたのには理由がある。そうだろう?」
「成程、最初からお見通しか。つまり騙された振りをして、彼を囮に使ったという訳か。これは一本取られてしまったな」

囮?まさか俺の事か!?

「すまない、たかし。相手の目的が不明瞭だったので囮に使わせてもらった」

彩音は謝りこそすれ、悪びれた様子はまるでない。

人を何だと思ってやがる。仮にも幼馴染だぞ?

当たり前のように捨て駒扱いされた事に腹は立つが、今はそれよりも……
彩音に向けていた視線をヴラドに戻す。

「ふむ、仲間割れはしないか……つまらんな」

こいつ……仲違いさせる為に囮の事をわざと口したのか。

老紳士然とした態度に少々油断しそうになっていたが、目の前にいるヴァンパイアは、エルフの半数以上を手にかけた凶悪なモンスターだと再認識させられる。

「そうそう、目的だったな。もちろん君達を、正確には彩音・彩堂、君をここへ招待するためだ」
「私に用があったのなら、こんな回りくどい手を使わず直接伝えればよかったものを」
「ヴァンパイアに呼び出されてのこのこと現れる馬鹿などいまい?」

いる。それも目の前に……
彩音なら確実に相手の挑戦を受けて立つだろう。

「それで?私に何の用だ」
「なに、君の父上への意趣返しだよ。君の父上には20年前酷い目に遭わされたからね」

彩音のおやじさん!?
たしか彩音が生まれてすぐに行方不明になったって聞いてるが、この世界に来てたのか?

「本来なら本人へ報復すべきなのだろうが、残念なことに彼への復讐はもはや敵わぬ願いだ」

彩音を見るが驚いている様子が一切ない。
この世界に父親が来ている事を既に知っていたのだろう。

「八つ当たりで悪いが、君には彼の代わりを務めてもらうよ」
「いいだろう。父の代わりにここでお前を仕留めさせてもらう」
「その強気がいつまで持つか楽しみだ」

瞬間、凄まじい殺気がブラドから放たれる。
まるで心臓を鷲掴みにされかのるような、心の芯まで凍えつかせる殺気に体が震える。だが放たれたのは殺気だけではなかった。
ヴラドを見ると、先程まではなかった禍々しい黒いオーラの様な物が全身を覆っている。

素人目にもその禍々しいオーラが危険な物だとはっきり分かる。

こいつ……ひょっとしてドラゴンよりやばくねぇか?

彩音を見ると、険しい面持ちでブラドを睨みつけていた。
ドラゴン戦ですらリラックスしてた彩音が緊張している。
つまりそれほどの敵という事なのだろう。

こりゃ最悪の場合、逃げる準備をしておいた方がいいな……

「たかし!下がっていろ!」

邪魔だと言わんばかりに彩音が大声で怒鳴る。
まあ実際邪魔なのだろう。

「わかった」

彩音から離れ、入口付近に陣取る。
その時ふと気付く。

あれ?リンがいねぇ?

ブラドに気を取られ、完全にリンの事を失念していた。
辺りを見渡すがどこにも姿は見当たらない。

ん?

何か動いた気がして足元を見ると、影が膨らみ中からリンが飛び出してきた。

「え!?」

余りの出来事に一切反応できず、リンになすすべもなく後ろ手に右手を捩じられ拘束される。

やばい!やらかした!

戦闘で役に立たないどころか、開戦直後に捕まるとか終わっとる。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~

冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。  俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。 そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・ 「俺、死んでるじゃん・・・」 目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。 新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。  元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

処理中です...