上 下
17 / 165
エルフの森からやってきた少女

第十七話 口は災いの元

しおりを挟む
「おお!皆さん良く来てくださった!」

豪奢な大広間の中央。
立派な金の髭を蓄えた大男が、体に負けない大きな声で俺達を出迎えてくれた。

「カーターお兄様、お久しぶりですわ」
「お久しぶりです兄上。相変わらず御元気そうで何よりです」
「おお!ティーエにティータ、良く来てくれたな!お前たちの顔が見れて兄は嬉しいぞ!」

そう言いながら2人をカーターさんは強く抱きしめた。

暑苦しそうで正直苦手なタイプだ。

ここは王都カルディオンにあるアルバート家の別邸。
ここへは報酬を受け取りに来たわけだが、別邸とは思えないほどの豪華絢爛さについ気圧されてしまう。

しかし、いつまで抱き合ってるんだこの兄妹は……

3人の兄妹はずっと抱き合ったままだ。
長い抱擁である。
かれこれもう5分は抱き合っているだろう。

久しぶりに会えてうれしいのは分かるが、待たされる身としては手早く終わらせて欲しい所。
それでなくても建物が豪奢すぎて、場違い感から居心地が悪いのでさっさと用を済ませたいのだが。

「カーター様、お客様を余りお待たせするのは……」

後ろに控えていた初老の執事が声をかける。
爺さんナイスだ。

「おお、そうっだった!お待たせして申し訳ない。久しぶりの再会でつい感激してしまって」
「いえ、お気になさらないでください。感動の再会をお邪魔するほど、私達も野暮ではありませんから」

フラムが丁寧に対応するのを見て感心する。
見た目以外は本当に完璧だな、この人。

「そう言って貰えるとありがたい。そういえば自己紹介がまだでしたな。私はカーター・アルバート。アルバート家の次男で、この別邸を預かる身です。どうぞ気軽にカーターと呼んでください」
「初めましてフラム・リーアと申します。私の事も気軽にフラムとお呼びください」
「おお!貴方がフラムさんですか、大変優秀なドルイドだと妹達から伺っていますよ」
「いえ、そんな。私なんてまだまだです」
「ははは、謙虚な御方だ。」

こういう寒いやり取りは苦手なんだよなぁ…

和やかなやり取りを横目に、はよ金よこせと言いたくなる。
言ったら言ったで面白そうではあるが、後々生じるであろうデメリットを考えると、流石に実行する気にはなれない。

フラムさんとのやり取りがまだ続きそうなので、暇つぶしに後ろに控えているメイドさん達を眺めてみる。
どの娘も美人だ。

これは絶対顔で選んでるな。

そう考えると、途端にカーターの顔がスケベ顔に見えてきた。

そんなどうでもいい事を考えていると、カーターに声をかけられる。
どうやらこっちの番が周ってきたようだ。

「たかし君と彩音・彩堂さんだね。」
「初めまして」
「はよ金くれ」

言う気はなかったはずなのに、突然声を掛けられてつい本音が出てしまう。

そして次の瞬間首筋に衝撃が走り、俺の意識は途切れた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

転生して捨てられたけど日々是好日だね。【二章・完】

ぼん@ぼおやっじ
ファンタジー
おなじみ異世界に転生した主人公の物語。 転生はデフォです。 でもなぜか神様に見込まれて魔法とか魔力とか失ってしまったリウ君の物語。 リウ君は幼児ですが魔力がないので馬鹿にされます。でも周りの大人たちにもいい人はいて、愛されて成長していきます。 しかしリウ君の暮らす村の近くには『タタリ』という恐ろしいものを封じた祠があたのです。 この話は第一部ということでそこまでは完結しています。 第一部ではリウ君は自力で成長し、戦う力を得ます。 そして… リウ君のかっこいい活躍を見てください。

異世界で俺はチーター

田中 歩
ファンタジー
とある高校に通う普通の高校生だが、クラスメイトからはバイトなどもせずゲームやアニメばかり見て学校以外ではあまり家から出ないため「ヒキニート」呼ばわりされている。 そんな彼が子供のころ入ったことがあるはずなのに思い出せない祖父の家の蔵に友達に話したのを機にもう一度入ってみることを決意する。 蔵に入って気がつくとそこは異世界だった?! しかも、おじさんや爺ちゃんも異世界に行ったことがあるらしい?

虚無からはじめる異世界生活 ~最強種の仲間と共に創造神の加護の力ですべてを解決します~

すなる
ファンタジー
追記《イラストを追加しました。主要キャラのイラストも可能であれば徐々に追加していきます》 猫を庇って死んでしまった男は、ある願いをしたことで何もない世界に転生してしまうことに。 不憫に思った神が特例で加護の力を授けた。実はそれはとてつもない力を秘めた創造神の加護だった。 何もない異世界で暮らし始めた男はその力使って第二の人生を歩み出す。 ある日、偶然にも生前助けた猫を加護の力で召喚してしまう。 人が居ない寂しさから猫に話しかけていると、その猫は加護の力で人に進化してしまった。 そんな猫との共同生活からはじまり徐々に動き出す異世界生活。 男は様々な異世界で沢山の人と出会いと加護の力ですべてを解決しながら第二の人生を謳歌していく。 そんな男の人柄に惹かれ沢山の者が集まり、いつしか男が作った街は伝説の都市と語られる存在になってく。 (

「天災」の名を持つ超能力を手にした少年はこの世界を破壊する

daichi
ファンタジー
超能力と呼ばれる異能な力が存在する街に住む高校生・城ヶ崎陽翔 陽翔は妹の紫音と共に、中高一貫校 時雨学園に入学した。 これから学園生活が始まると思っていたその夜、事件に巻き込まれ、無能力者の陽翔は超能力 【disaster】を手に入れて、この街の謎に迫ってゆく……

哀れな寄生系美少女が金に惹かれて吸い付いてきたので、逆に食べる事にしました。

true177
恋愛
 恋愛という世界から取り残されていた隆仁(たかひと)は、誰が見ても美少女だと評するであろう結莉(ゆり)からいきなり告白される。  とは言え、好感度どころか会話すらしたことのない二人。隆仁が抱いた訝しさは、明確に形となって現れる。  財布を忘れたと平気で嘘を付く、プレゼントのおねだりに薄っぺらい土下座、やたら医者である隆仁の両親の話をしたがる……。結莉は、正に寄生系女の子だったのである。  あからさまな物目当ての美少女。その美貌にものを言わせて、要求を通してこようとする。典型的な地雷であり、関係を切るのが無難なのだろう。  しかし、隆仁は諦めきれなかった。 『性格以外は、むしろ好印象なんだけどな……。どうしたら、本心で見てくれるんだろう……』  仮初めの状態で付き合いが続いても、未来はない。歪んだ性格を正すことは出来ないのか。本気で惚れ落としてしまう方法はないだろうか、と。  残念な美少女と、一風変わった考えの持ち主である隆仁。果たして、彼女を寄生から脱却されることはできるのだろうか……。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

再び君に出会うために

naomikoryo
SF
僕たちは宇宙の中で存在している、地球上のものでいえばエネルギー生命体に近い存在だ。星間塵(せいかんじん)を糧として、宇宙空間であれば何万光年も生きていける。 気の合う同じ種族の異性とは合体することで一つの生命体となり、気持ちが変われば分裂して個々となり、離れて行く。言葉は持たないが一種のテレパスを使って感情を伝え合うことができる。 僕たちは、とある彗星に流され引力を持つ星に、途中で分裂させられながら降りてしまった。宇宙に戻ることも出来ず、ただ少しずつエネルギーを失いながら消滅するしかなくなっていた僕は、最後にもう一度彼女と出会うことを望んでテレパスを送り、何とか移動し続けるしかなかった・・・

処理中です...