学園ランキング最強はチートで無双する~能力はゴミだが、異世界転生で得たチート能力で最強~

榊与一

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留学生

第54話 世に悪の栄えた試しなし

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金剛とゲオルギオスの勝負の場は、闘祭本選が行われる大演武場で行われる。
立会人兼審判は風紀委員長の氷部、それに生徒会副会長の茨城だ。

それ以外には、武舞台外で医療スタッフらしき集団が控えている。
準備は万全といった所だろう。

「おお!すっげぇ美人!」

ギリシア組に最近赴任してきたイケメン外国人用務員と、見た事のない美女が話しかけていた。
その女性に泰三アホが鼻の下を伸ばして唸る。

「……あ!もちろん氷部さん程じゃないですよ!」

「それはどうも」

直ぐ傍に氷部がいる事を思い出してか泰三は苦しい言い訳をするが、当の氷部にはどうでも良さげにあしらわれてしまう。
まあ本当にどうでもいいんだろう。

「あの二人って、ギリシア組の知り合いか?」

「ギリシアの能力者を教育している機関のトップよ。この学園には、生徒の引率としてやって来ているわ」

「へぇ。ギリシアは女性がトップなんだな」

考えて見たら、うちの実質的な支配者も女だ――というか少女だ。
まあ荒木は置いておくとして、能力者の比率が女性の方が高い事を考えると、トップが女性になるのは極自然な形とも言える。

「女性じゃないわよ?」

「え?あの人ニューハーフなのか!?」

「違うわよ。用務員さんの方がトップだって言ってるの」

「はぁ?何で他所の教育機関のトップがうちで用務員なんてやってるんだ?」

流石に意味不明過ぎる。
上はふんぞり返る物だとは思わないが、流石によその国で雑用の様な仕事はないだろう。

「さあ?何か理由があるとは思うけど」

どうやら詳しい事情は聞かされていない様だ。
まあ氷部は風紀を取り締まるのが仕事だからな。
そう言った裏事情までは、聞かされたりはしないのだろう。

だがまあ……これで謎が解けた。

おかしいと思っていたのだ。
新任の用務員にしては余りにも強すぎると。

俺はぱっと見で相手の強さを見抜く事が出来る。
これは別にスキルではない。
異世界で生きる死ぬを繰り返し続けた結果、自然と身に着いた能力だ。

俺の見立てでは、あの男の強さは花丸レベルだ。
恐らく、荒木真央に近い力を有しているだろう。

当然戦いたいと思っている俺は、なんとか勝負を挑めない物かとここ最近頭を悩ましていた訳だが……未だいい案は思いついてはいなかった。

なんとかならんもんかなー。

「それより理沙。難しい顔してどうした?」

「え、ああ……どっちを応援しようかと思って」

難しい顔をしていたので尋ねてみたが、留学生だが同じクラスのゲオルギオスか、学年は違うが同じ学園の金剛のどちらを応援するか迷っていた様だ。

因みに俺には、そもそも応援すると言う発想自体が無かった。
「殺し合いじゃないんだから、どっちが勝っても別にいいじゃん」程度に考えていた訳だが、死ななきゃいいというこの感覚は、異世界暮らしの弊害と言ってもいいだろう。

帰ってきた以上、その辺りはある程度修正しておく必要があるな。
あんまり非常識なのもあれだし。

「エヴァの弟はあんまり応援したくないし、かといって金剛先輩もあんまり好きじゃないんだよな」

どっちを応援すればいいのか困る、ではなく。
どっちも応援したくないから困ってるのか……だったら何で見に来たんだ?

「だったら、共倒れを期待すればいいわよ」

「いや、流石にそれは……って、千堂先生!?」

すぐ後ろに立っていた先生に驚き、理沙が飛び退る。
もちろん俺は彼女達の接近に気づいていた。

「調子はどうだ?」

「ばっちりだ」

俺は千堂先生の背後に立つ、金剛に声をかけた。
気力の充実した良い顔だ。
彼女は俺達の横を通り過ぎ、武舞台の上に上がって――そして振り返る

「勝ってくる」

「おう、期待してるぞ」

金剛が中央に向かうと、千堂先生がこっそりと俺に小声で耳打ちしてきた。

「どっちが勝つか、1万円かけない?」

彼女は悪戯気にウィンクしてくる。
分かってはいたが、本当に禄でもない教師だ。

――が、今回は場所が悪かった

「教師が風紀委員の目の前で、賭け事の斡旋とは……」

鬼の風紀委員長は悪事を見逃さない。
本当に小さな声だったのだが、その地獄耳で聞きつけた氷部が千堂に迫る。

「いやいやいや。冗談よ、じょーだん」

「教師がしていい冗談ではないと思いますが?」

「もう、氷部ちゃんったら堅いんだからぁ。あっ!もうすぐ試合が始まる時間よ!審判なんでしょ?早く用意しなくっちゃ!」

言われて氷部がチラリと時計に目をやった瞬間、千堂先生は脱兎のごとくその場を逃げ出した。
あっと言う間にその姿は通路へと消え去ってしまう。
見事な逃げ足だ。

「くっ……こんな手に引っ掛かって逃がしてしまうなんて」

氷部が千堂先生の消えた方を睨みながら、小さく声を上げる。
試合までは十分に時間があったのに、古典的な手にひっかかったのが悔しいのだろう。

だが今のは千堂先生が上手かった。
金剛が早めに舞台に上がってしまった状況を利用して、もう時間がないと氷部に錯覚させ隙を作ったのだ。

――亀の甲より年の功とは、よく言った物である。

本人に聞かれたらぶん殴られそうなので、そういう迂闊な言葉は口にはしないが。
あの先生も地獄耳っぽいからな。

「後で締め上げればいいんじゃないの?」

そんな氷部を見て、理沙が千堂先生の努力を無駄にする案を投げかけた。

「……まあ、それもそうね」

世に悪の栄えた試しなし。
そんな言葉が頭にうかぶ。

ま、どうでもいいか。
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