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バトルフェスティバル
第43話 差し入れ
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「ふあぁ……」
時計を見ると、13時過ぎを指していた。
もう少し眠れそうだが、まあ起きるとしよう。
飯を食って、少々ストレッチすれば丁度いい時間になる筈だ。
俺はベッドから起き上がり、キッチンへと向かう。
まあカップラーメンで良いだろう。
湯を沸かし、食事の用意をしてるとインターフォンが鳴った。
気配から、泰三だと言うのは分かる。
何か用だろうか?
「へーい」
「よう!」
ドアを開けると、泰三が笑顔で片手をあげる。
その反対の手には、スーパーの袋が握られていた。
中には弁当箱が二つ。
「なんだ、差し入れか?」
「おう!特上ののり弁買って来てやったぞ!」
スーパーで売ってるのり弁に上も下もない。
何を持って特上を謳っているのやら。
「入るぜ」
「やれやれ」
許可も出していないのに、泰三が当たり前の様にずけずけと俺の部屋に入って来る。
相変わらずマナーのなってない奴だ。
「なんだよ。カップラーメンで済ます気だったのか?これから頂上決戦だってのに、せこい物食ってんなよな」
スーパーの激安のり弁はせこくないのか?
そう言いたかったが、まあ差し入れに文句を言うのもあれなので止めておいた。
沸かしたお湯で緑茶を淹れ、テーブルに置く。
「よし!食おうぜ!」
俺が座ると、泰三はがつがつ飯を食い始めた。
差し入れを持ってきて、先にお前が喰ってどうすんだよ。
呆れつつも、俺も弁当を口にする。
うん、美味い。
安物とは言っても、学園付属のスーパーに置かれてる品は基本採算度外視だ。
野菜もふんだんに詰め込まれ、300円とは思えないボリュームと味をしている。
まあ流石に理沙の手作り弁当には敵わないが、これはこれで満足のいく逸品だった。
「しかし、まさかお前が差し入れなんて持って来るとは思わなかったよ」
ここ数日、泰三は明かにテンションが低かった。
まあ初戦で俺に当たった上に、パンチ一発で瞬殺されてる訳だからな。
それで元気でいろと言う方が無理だろうが。
「おう!お前が優勝したからな!」
泰三はいい笑顔で親指を立てる。
まさかこいつが俺の優勝を、こんなに喜んでくれるとは思わなかった。
不覚にもちょっとだけ胸が熱くなる。
友情ってのはいい物だ。
「俺、考えたんだよ」
「何を?」
「竜也に一回戦で惜敗しただろ?」
何一つ惜しむ事の無い完全敗北だと思うのだが、突っ込むのは止めておいてやろう。
差し入れへの返礼だ。
「なんで一回戦でってすっげー悔しかったんだけど、でもよく考えたら優勝者に負けたんなら仕方ないよなって思ってさ」
まあ確かに。
自分で言うのもあれだが、相手が悪かったのは事実だ。
組み合わせ次第では、泰三が本選に出場できていた可能性は十分ある。
「そこで頼みなんだが」
「なんだ?」
「闘祭で手強かった相手は誰かを聞かれたら……是非俺の名前を言ってくれ!そしたら一回戦敗北でも、実はあの人凄いってなるから!!」
まじまじと奴の顔を覗き込む。
泰三はそんな俺の視線を真っ向から受け止めた。
どうやら本気の様だ。
「……」
「……」
「断る!」
「なんでだよ!のり弁食っただろ!?」
賄賂かよ!?
少しでも感動した俺の気持ちを返せ!
「お前が強敵とか、そんなすぐばれる嘘誰が付くかよ。お前は俺を狼少年にしたいのか?」
「大丈夫だ!俺は強くなる!その為にお前の元で訓練してるんだからな!」
「だったら嘘は必要ないだろ?強くなってから胸を張って周囲に見せつけてやれ」
だいたい、強いかもしれない的な噂を流す行為が意味不明だ。
一回戦負けは、所詮どこまで行っても一回戦負けでしかない。
言い訳を考えてどうする?
黙って現実を受け止めろ。
「いわゆる前借って奴だ!」
「そんな前借、聞いた事ねーよ。諦めろ」
「た!の!む!よ!ちょっとくらい俺にも格好つけさせろ!」
泰三の奴が、立ち上がった俺の足元にしがみついて来る。
うぜぇ……
その余りのしつこさに、これは何かあるなと俺はピーンと来た。
「泰三、理由を話すんなら協力しない事も無いぞ?」
「本当か!?実は昨日の試合の観戦で、隣に可愛い後輩が座ってよ!その子とちょっと仲良くなった訳なんだよ!」
ぬぅ。
泰三の癖にナンパとは生意気な。
「お前氷部のファンじゃなかったのか?」
「それはそれ!これはこれだよ!アイドルと結婚できると考える程俺も馬鹿じゃないからな!」
俺はそんな馬鹿だと思っていたんだが、どうやら想定よりはほんのちょっぴりだけまともだった様だ。
つか、氷部は別にアイドルではないんだが……まあとにかく話は見えて来た。
「つまり。その後輩に格好をつけて、試合内容を盛ったと?」
「まあな。でもしょうがないんだよ!その子スッゴイ胸が大きくてさ!お前なら分かってくれるよな!」
「よく分かる。が、本気で付き合いたいなら嘘じゃなく自力で勝負しろ」
巨乳の彼女が欲しいと言う気持ちは、死ぬ程よく分かる。
俺だってそんな恋人が欲しい。
「ばっかお前!世の中流れだよ!このビッグウェーブを逃したらどうなるか分からん!頼む!先っちょだけでも!」
何が先っちょだけなのか。
意味不明過ぎる。
これから大事な試合があるというのに、これ以上アホに煩わされるのもあれだな。
そう思った俺は、黙って奴の顔面に闘気を叩き込んで黙らせた。
「寝てろ」
「ほげぇ……」
「さて、行くか」
鼻血を垂らして気絶している泰三を廊下に転がし、俺は部屋を後にする。
早めに行って大演武場で入念にストレッチするとしよう。
この後、泰三は嘘がばれて件の巨乳の後輩には見事に玉砕した様だった。
ま、俺にはどうでもいい事である。
時計を見ると、13時過ぎを指していた。
もう少し眠れそうだが、まあ起きるとしよう。
飯を食って、少々ストレッチすれば丁度いい時間になる筈だ。
俺はベッドから起き上がり、キッチンへと向かう。
まあカップラーメンで良いだろう。
湯を沸かし、食事の用意をしてるとインターフォンが鳴った。
気配から、泰三だと言うのは分かる。
何か用だろうか?
「へーい」
「よう!」
ドアを開けると、泰三が笑顔で片手をあげる。
その反対の手には、スーパーの袋が握られていた。
中には弁当箱が二つ。
「なんだ、差し入れか?」
「おう!特上ののり弁買って来てやったぞ!」
スーパーで売ってるのり弁に上も下もない。
何を持って特上を謳っているのやら。
「入るぜ」
「やれやれ」
許可も出していないのに、泰三が当たり前の様にずけずけと俺の部屋に入って来る。
相変わらずマナーのなってない奴だ。
「なんだよ。カップラーメンで済ます気だったのか?これから頂上決戦だってのに、せこい物食ってんなよな」
スーパーの激安のり弁はせこくないのか?
そう言いたかったが、まあ差し入れに文句を言うのもあれなので止めておいた。
沸かしたお湯で緑茶を淹れ、テーブルに置く。
「よし!食おうぜ!」
俺が座ると、泰三はがつがつ飯を食い始めた。
差し入れを持ってきて、先にお前が喰ってどうすんだよ。
呆れつつも、俺も弁当を口にする。
うん、美味い。
安物とは言っても、学園付属のスーパーに置かれてる品は基本採算度外視だ。
野菜もふんだんに詰め込まれ、300円とは思えないボリュームと味をしている。
まあ流石に理沙の手作り弁当には敵わないが、これはこれで満足のいく逸品だった。
「しかし、まさかお前が差し入れなんて持って来るとは思わなかったよ」
ここ数日、泰三は明かにテンションが低かった。
まあ初戦で俺に当たった上に、パンチ一発で瞬殺されてる訳だからな。
それで元気でいろと言う方が無理だろうが。
「おう!お前が優勝したからな!」
泰三はいい笑顔で親指を立てる。
まさかこいつが俺の優勝を、こんなに喜んでくれるとは思わなかった。
不覚にもちょっとだけ胸が熱くなる。
友情ってのはいい物だ。
「俺、考えたんだよ」
「何を?」
「竜也に一回戦で惜敗しただろ?」
何一つ惜しむ事の無い完全敗北だと思うのだが、突っ込むのは止めておいてやろう。
差し入れへの返礼だ。
「なんで一回戦でってすっげー悔しかったんだけど、でもよく考えたら優勝者に負けたんなら仕方ないよなって思ってさ」
まあ確かに。
自分で言うのもあれだが、相手が悪かったのは事実だ。
組み合わせ次第では、泰三が本選に出場できていた可能性は十分ある。
「そこで頼みなんだが」
「なんだ?」
「闘祭で手強かった相手は誰かを聞かれたら……是非俺の名前を言ってくれ!そしたら一回戦敗北でも、実はあの人凄いってなるから!!」
まじまじと奴の顔を覗き込む。
泰三はそんな俺の視線を真っ向から受け止めた。
どうやら本気の様だ。
「……」
「……」
「断る!」
「なんでだよ!のり弁食っただろ!?」
賄賂かよ!?
少しでも感動した俺の気持ちを返せ!
「お前が強敵とか、そんなすぐばれる嘘誰が付くかよ。お前は俺を狼少年にしたいのか?」
「大丈夫だ!俺は強くなる!その為にお前の元で訓練してるんだからな!」
「だったら嘘は必要ないだろ?強くなってから胸を張って周囲に見せつけてやれ」
だいたい、強いかもしれない的な噂を流す行為が意味不明だ。
一回戦負けは、所詮どこまで行っても一回戦負けでしかない。
言い訳を考えてどうする?
黙って現実を受け止めろ。
「いわゆる前借って奴だ!」
「そんな前借、聞いた事ねーよ。諦めろ」
「た!の!む!よ!ちょっとくらい俺にも格好つけさせろ!」
泰三の奴が、立ち上がった俺の足元にしがみついて来る。
うぜぇ……
その余りのしつこさに、これは何かあるなと俺はピーンと来た。
「泰三、理由を話すんなら協力しない事も無いぞ?」
「本当か!?実は昨日の試合の観戦で、隣に可愛い後輩が座ってよ!その子とちょっと仲良くなった訳なんだよ!」
ぬぅ。
泰三の癖にナンパとは生意気な。
「お前氷部のファンじゃなかったのか?」
「それはそれ!これはこれだよ!アイドルと結婚できると考える程俺も馬鹿じゃないからな!」
俺はそんな馬鹿だと思っていたんだが、どうやら想定よりはほんのちょっぴりだけまともだった様だ。
つか、氷部は別にアイドルではないんだが……まあとにかく話は見えて来た。
「つまり。その後輩に格好をつけて、試合内容を盛ったと?」
「まあな。でもしょうがないんだよ!その子スッゴイ胸が大きくてさ!お前なら分かってくれるよな!」
「よく分かる。が、本気で付き合いたいなら嘘じゃなく自力で勝負しろ」
巨乳の彼女が欲しいと言う気持ちは、死ぬ程よく分かる。
俺だってそんな恋人が欲しい。
「ばっかお前!世の中流れだよ!このビッグウェーブを逃したらどうなるか分からん!頼む!先っちょだけでも!」
何が先っちょだけなのか。
意味不明過ぎる。
これから大事な試合があるというのに、これ以上アホに煩わされるのもあれだな。
そう思った俺は、黙って奴の顔面に闘気を叩き込んで黙らせた。
「寝てろ」
「ほげぇ……」
「さて、行くか」
鼻血を垂らして気絶している泰三を廊下に転がし、俺は部屋を後にする。
早めに行って大演武場で入念にストレッチするとしよう。
この後、泰三は嘘がばれて件の巨乳の後輩には見事に玉砕した様だった。
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