学園ランキング最強はチートで無双する~能力はゴミだが、異世界転生で得たチート能力で最強~

榊与一

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バトルフェスティバル

第42話 え?俺が悪いの?

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「一つ聞いて良いか?」

試合が終わり、握手する俺と金剛。
鳴り響く拍手の中、金剛がまじまじと俺の顔を見つめ訪ねて来る。

「ん?なんだ?」

「鏡には恋人とか、将来を決めた相手とかいるのか?」

「はぁ?」

将来を決めた相手というのは、恐らく許嫁の事だろう。
勿論そんな物はいない。

つか、いきなり何聞いてんだこいつは?

「いる訳ねーだろ。こっちはお前みたいに女子にモテモテじゃないんだからな」

「俺としては、女子にモテても全然嬉しくないんだがな。しかしそうか、恋人や思い人はいないのか。だったら――」

急に腕を引っ張られ、そして金剛の顔が――

「…………」

「…………」

金剛の唇が重なり、俺の――会場全体の時間が止まる。
不覚にも突然の出来事過ぎて、思いっきり金縛りに遭ってしまった。

「ふぅ」

ゆっくりと顔が離れ、照れ臭そうに金剛は微笑んだ。

はぁ!?
何が「ふぅ」だ!?

ひょっとして俺が強く攻撃しすぎて、奴の頭がおかしくなってしまったのだろうか?

「ああ、お前は勘違いしてるみたいだけど」

金剛が少し前かがみになり、服の襟元を強く引っ張る。
中から見えるその胸元には白い布がぐるぐる巻きにされており、立派な饅頭がぎゅうぎゅうに押しつぶされていた。

「……え?」

「俺は女だぞ」

「……いや、でも王子って?」

「ああ。だから王子は止めてくれって言ってるんだがな。困ったもんだよ。皆俺が女だって知ってるのに、王子はないよなぁ」

「そ、そうなんだ……」

それ以外返しようがなかった。
いや、それはいい。
それよりも、何でこいつは俺にキスしたんだ?

「鏡は剣を使えるんだろ?家は剣術を営む家系なんだ。お前なら金剛流を継ぐ婿に相応しい。だから俺と結婚してくれ」

俺の視線から疑問に気づいたのか、金剛が理由を説明してくれる。
が、その内容は完全に頭のいかれた物だった。

「いや、そういう事をいきなり言われても……」

流石に対応に困るわ。

「別に、直ぐに返事を貰おうとは思ってはいないさ。俺はお前を口説き落とす。それだけの事だ。覚悟しておけ」

流石に少し恥ずかったのか、そう宣言した金剛は少し頬を染めて速足で会場から出て行ってしまう。
周囲がやけに静かだと思ったら、観客席の女子連中の大半が席に凭れ掛かり、魂の抜かれたような表情で放心していた。

これが世に言う、推しロスって奴か?

「しかし……いきなり口説くとか言われても――っぼげぇっ!?」

いきなり頭上から氷柱が落ちてきて、押し潰されてしまった。
動揺して攻撃に気づけないとは……完全に不覚だ。

「何をやってるのかしら?」

顔を上げると、そこには能面の様な表情で俺を睨み付ける氷部の姿があった。
目が座ってて凄く怖いんだが?

「何をって言われても、試合をしてただけなんだが?」

「試合?婦女子と、公衆の面前で如何わしい行為をする事が?」

「いやいやいや!あれはどう見ても不可抗力だろ!?」

「言い訳は結構。風紀を乱すふしだらな行為は、風紀委員長として見逃す訳には行きません」

弁明虚しく、氷部の作った氷のロープでぐるぐる巻きにされた俺は会場から罪人宜しく引きずられていく。
連れられた先は反省室という名の、鉄柵で出来たどうみても牢屋にしか見えない場所だった。

「そこで10時間程反省してなさい」

「ええ?10時間って長くね?」

「あんな真似をしておいて、短い位よ」

そう冷たく告げると、氷部はさっさと反省室から出て行ってしまう。
しかもわざわざ電気まで消して。

「おいおい、真っ暗じゃねーか」

室内には窓がなく、電気を消されると完全な暗闇に閉ざされてしまう。
まあ別に暗所恐怖症という訳ではないので、明かりが無くてもどうって事は無いが。

「やれやれ。仕事熱心なのは分かるが、やりすぎだっての」

氷部の気真面目さも考え物だと肩を竦める。
風紀委員の職務に忠実なのは分かるが、もう少し柔軟な思考を持ち合わて貰いたい物だ。

「そういや、試合はどうなるんだ?」

決勝戦は俺の勝ちだ。
だがその後すぐ、風紀を乱したという理由で氷部に捕縛されてしまっている。
だから決勝戦後に求められる、荒木との最終勝負の意思表示を俺は出来ていないのだが……この場合、奴との勝負はどうなってしまうのだろうか?

「まあ、あいつは学園の権力者みたいだし。適当に通すか」

あれだけ此方を挑発して来たんだ。
“あ、風紀乱したしたから勝負は無しね”とはならないだろう。

……ならないよね?

「まあ考えても仕方が無い。大人しくしとこ」

その気になれば外に出る事は容易いが、やめておく。
氷部を怒らせると厄介そうだから。
素直に瞑想でもして、時間を潰すとしよう。

「よう、絞られてんな」

数時間ほど瞑想を続けていると、室内に明かりが戻る。
そして扉が開いて人が入って来た。

「ああ、言いがかりもいい所だぜ」

入って来たのは理沙だ。
彼女はニコニコと嬉しそうにしていた。

何かいい事でもあったのだろうか?

「腹減ってるだろうと思って、差し入れを持って来たぜ」

「お、悪いな。センキュウ、理沙」

やはり持つべきものは友達だ。
気配りの出来る理沙は、将来いいお嫁さんなる事だろう。
まあビジュアル的にはあんまり想像は出来ないけど。

「ほれ」

理沙は鞄からラップの張ってある皿を取り出し、剥がして鉄柵の下にある隙間から中に滑り込ませた。
その上には――

「何で生肉?」

「ああ。シロ達様に用意してたんだけど、買い込み過ぎたせいで腐らせちまったんだよ。捨てるのもなんだし、遠慮なく食ってくれ」

「腐った生肉を?」

 「遠慮しなくていいぞ 」

理沙は笑顔で肉の乗った皿を、此方に指先で押してくる。
せめて調理して持ってきて欲しかったんだが?

「やれやれ」

今日は厄日だな。
そんな事を考えながら、俺は皿の上の肉を手に取り齧り付いた。

「って!?何本当に喰ってんだ!?」

「ああ、これぐらいならどうって事無い」

レベルアップによって胃腸も超絶強化されているので、腐ってるぐらいなら全く問題はなかった。
異世界にいた頃は、緑の液体をまき散らすドス黒い謎の芋虫とかを非常時に喰ってたりもしたからな、それに比べれば遥かにましだ。

「馬鹿!吐き出せ!」

モグモグしてると、鉄柵から伸びた理沙の手が俺の口から肉を奪う。
食えとか食うなとか……どっちなんだよ全く

「ったく、あたしがこんなもん本当に差し入れで持って来る訳ないだろ。本気で食べるなよな」

そう言いつつ理沙は鞄から弁当箱を取り出し、柵の下から差し込んだ。
今度はちゃんと箸まで付いた至れり尽くせりだ。

「だったら馬鹿な事しないで、最初っから弁当渡してくれよ」

「ふん。女に迫られてデレデレしてたから、ちょっとお灸を据えてやろうって思ったんだよ」

蓋を開けると、ハンバーグや目玉焼きが詰まっていた。
美味そうだ。

「失敬な。硬派な俺が女子にデレデレする訳ないだろ」

「どうだかな」

箸でタコさんウィンナーを摘み、口に放り込む。

「美味い!」

「ほら、お茶も」

理沙が鞄から水筒を取り出した。
生肉を出された時はなんの嫌がらせかとも思ったが、やはり持つべきものは友人だ。

「それで?どうすんだ?」

弁当を食い終わると、理沙が訪ねて来る。

「勿論、荒木真央とは試合するぜ」

「馬鹿!そっちじゃねぇよ」

そっちじゃなければどっちの話だ?
他に選択を尋ねられる様な事は思い浮かばないのだが?

「金剛だよ!金剛!キスして来たって事は……その……お前に気があるって事だろ?」

「ああ、それか。何か家の後継ぎとして、婿に取りたいって言われたよ」

反応的に、理沙も金剛が女だとは知っていた様だ。
知ってたんなら教えてくれりゃいいのに。

「はぁ!?ぷぷぷ、プロポーズされたのか!?」

「まあそうとも取れるな」

「そうとしか取れねぇよ!それで!?どうするつもりなんだ!?」

理沙が興奮して声を荒げる。
唾が飛んでくるから、至近距離で大声を出すのは止めろっての。

「どうもしないぞ。他所様の剣術を引き継ぐつもりとか無いしな」

今日日、このご時世に剣術を生業にしてる古風な家がある事には驚きを隠せない。
金剛の家に興味があるかないかと聞かれれば、大ありだった。
とは言え現状で将来を決めるつもりは更々ないので、金剛には悪いが婿とかそういう話は諦めて貰う事にする。

「そ、そうか。ははは、そうだよな。家継いでくれなんて言われても困るよな」

「まあな」

「じゃ、あたしは帰るよ。シロ達の世話があるから」

「おう、センキュウな」

弁当箱を回収し、理沙が反省室を出て行く。
それと入れ替わる様に氷部が入って来た。

「随分と楽しそうだったわね」

「まあ友達だからな」

「ふぅん……どうだか。まあいいわ」

氷部が俺のぶち込まれている牢屋の鍵を開ける。

「もういいのか?まだ10時間たってないぜ」

「今出て行かなきゃ、明日の朝までここだけど?それでもいいんなら泊って行っていいわよ」

「そりゃ勘弁だ」

俺は牢屋から飛び出し、反省室から出る。
そして振り返って尋ねた。

「荒木との試合は?」

「明日の15時……前にも言ったけど、彼女は化け物よ」

「ああ、知ってる。明日は化け物退治としゃれこむさ」

「ふふ、全く貴方って人は……まあ精々頑張りなさい」

「おう!俺が勝つ方に賭けて良いぜ」

冗談だったのだが、睨まれてしまった。
まあ風紀委員にして良い冗談ではなかったな。

「冗談だよ。じゃあな」

明日の15時か。
取り敢えず、朝6時くらいまではトレーニングが出来そうだな。
俺は寮に戻り、さっそく訓練を始める。
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