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超重の制圧者
第27話 氷部vs四条
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「おらおらおらおらおらぁ!!」
周囲を覆う蒸気と土煙を貫き、無数の炎の槍が私に迫って来る。
「はっ!」
私は自身の周りに氷の結晶を展開し、それら全てを受け止めた。
爆音が周囲に響き、膨大な粉塵と蒸気が月の光を遮る。
――「どうしてあの子はあんな風に扱われてるの?」――
子供の頃、四条家で周囲の人間にそう尋ねた事がある。
子供ながらに疑問だったのだ。
何故四条王喜が、ああも軽んじられているのかが。
周囲の大人達は言う。
彼はどうしようもない出来損ないだと。
だけど一人だけ、違う言葉を答えた人がいた。
四条羅轟。
それは彼の兄だった。
「そこっ!」
私は右側に冷気を放つ。
粉塵と蒸気で閉ざされた視界の中、彼は側面に回り込んで不意打ちを仕掛け様としていた様だが――
「私に不意打ちは効かない!」
私は周囲に常に探索用の結晶を放出し続けている。
その為、彼の動きは完璧に把握出来ていた。
「くっ!?」
四条王喜は咄嗟に風の壁を展開し、放った冷気を受け止め様とする。
だが私の攻撃はそれを貫き、彼の体を凍り付かせた。
「くそがぁ!俺は天才なんだ!生意気なんだよ!」
慌ててそれを炎で溶かし、彼は吠える。
確かに彼は天才だった。
四条王喜の能力が発露したのは15の時――2年前だ。
それから1年足らずで彼は四天王と呼ばれるまでに成長し、その力で風紀委員長の地位にまで上り詰めている。
単純なセンスだけなら、私や金剛劔を超えていると言って間違いないだろう。
だが残念ながら、彼は努力を怠った。
自分の才能に胡坐をかき、踏ん反り返る。
いくら天賦の才があろうとも、努力しなければそれは只の宝の持ち腐れにしかならない。
――「弟は確かに優秀ではない。だが、あいつには諦めずに努力し続ける不屈の精神がある」――
そう私に語った四条羅轟もまた、四条王喜には厳しく接していた。
だが他の人間が能力的に侮っていたのに対して、彼の場合、意味合いがまるで違っている。
弟はいずれ家督争いのライバルになりうる。
そう考えていたからこそ、四条羅轟は弟に厳しかったのだ。
それは決して身内贔屓などではなく、純粋に四条王喜の事を評価した結果に私には見えた。
「俺にぃ!跪け!!」
馬鹿の一つ覚えの様に、炎の槍が飛んでくる。
パワーはあっても、その戦略は力押しの稚拙な物でしかなかった。
残念ながらその戦闘スタイルは、自分よりもパワーの勝る相手には通用しない。
そして私のパワーは彼より上だ。
「無駄よ」
私は冷気の塊を波の様に放ち、迎え撃つ。
凍てつく波動。
冷気を放射状に放つ、私の得意とする技の一つだ
それは私に襲い掛かる炎を飲み込んで掻き消し、そして四条王喜の肉体を完全に凍り付かせた。
勝負あり。
私の勝ちよ。
「あなたがもし努力する事を忘れず鍛錬に励んでいたなら。この勝負、どうなっていたか分からなかったわ」
もっとも、もしそうだったなら、そもそも薬になど手を出していなかっただろうが。
人は変わる。
良くも、悪くも。
四条王喜は力を得て、悪い方に転がってしまった。
もし彼を諫めてくれる人物が傍に居たなら、こうはならなかっただろう。
弟もきっと……
私が指を慣らすと、四条王喜を覆う氷が粉々に砕け散った。
閉じ込めたままでは窒息死、もしくは凍死してしまう。
道を踏み外したとはいえ、彼もまた被害者なのだ。
殺す様な真似はしない。
「話を聞かせて貰うわよ」
「がはっ……ぐうぅぅぅ……こおりベェ……」
寒さで体をガタガタ震わせながらも、彼は増悪に染まった眼差しを此方へと向ける。
薬を使ってもなお、届かない圧倒的な力を見せつけたというのに困った人だ。
まあそれも薬による影響なのかもしれないが。
「手足だけは封じていた方がいいみたいね」
「俺を……舐めるなよ……」
手足を氷の錠で封じようとするが、それよりも早く四条王喜はマントの中から何かを取り出した。
それは――
「注射器?まさか!?」
緑色の液体の入った注射器を、彼は迷わずその手に打ち込む。
ブースターは危険な薬物だ。
しかも彼の使っている物は以前より強化されている。
そんな物を連続投与するなんて……
「く……ひへへ……何だこれ……なんだこれぇ!!」
ゆらりと、水蒸気の様な物が四条王喜の体から立ち昇った。
私は咄嗟に結晶を前方に展開する。
「吹きとべやぁ!!」
四条の目の前に巨大な火柱が生まれる。
さらにその火柱に突風が絡みつく。
それはまるで炎のハリケーン。
それが暴れ狂い、凄まじい勢いで此方へと突っ込んで来た。
「複合能力!?」
複数の能力を同時に使う事は、そこまで難しい事ではない。
私もそれは普通にやっている。
だが二つの能力を重ね合わせるとなれば、話は別だった。
基本的に能力は干渉し合い、打消し合う物だ。
例えそれが自分の能力であったとしても。
その為、複数の能力を一つに纏め合わせるという行為は至難の業に等しかった。
だが、四条王喜はそれをやってのけて見せている。
ブースターの過剰摂取。
それが此処までの力を引き出すとは……
彼の生み出した炎の嵐と、私の結晶が接触し大爆発を引き起こす。
爆風によって巻き上げられる蒸気と粉塵、それは私の視界を覆い尽くした。
周囲を覆う蒸気と土煙を貫き、無数の炎の槍が私に迫って来る。
「はっ!」
私は自身の周りに氷の結晶を展開し、それら全てを受け止めた。
爆音が周囲に響き、膨大な粉塵と蒸気が月の光を遮る。
――「どうしてあの子はあんな風に扱われてるの?」――
子供の頃、四条家で周囲の人間にそう尋ねた事がある。
子供ながらに疑問だったのだ。
何故四条王喜が、ああも軽んじられているのかが。
周囲の大人達は言う。
彼はどうしようもない出来損ないだと。
だけど一人だけ、違う言葉を答えた人がいた。
四条羅轟。
それは彼の兄だった。
「そこっ!」
私は右側に冷気を放つ。
粉塵と蒸気で閉ざされた視界の中、彼は側面に回り込んで不意打ちを仕掛け様としていた様だが――
「私に不意打ちは効かない!」
私は周囲に常に探索用の結晶を放出し続けている。
その為、彼の動きは完璧に把握出来ていた。
「くっ!?」
四条王喜は咄嗟に風の壁を展開し、放った冷気を受け止め様とする。
だが私の攻撃はそれを貫き、彼の体を凍り付かせた。
「くそがぁ!俺は天才なんだ!生意気なんだよ!」
慌ててそれを炎で溶かし、彼は吠える。
確かに彼は天才だった。
四条王喜の能力が発露したのは15の時――2年前だ。
それから1年足らずで彼は四天王と呼ばれるまでに成長し、その力で風紀委員長の地位にまで上り詰めている。
単純なセンスだけなら、私や金剛劔を超えていると言って間違いないだろう。
だが残念ながら、彼は努力を怠った。
自分の才能に胡坐をかき、踏ん反り返る。
いくら天賦の才があろうとも、努力しなければそれは只の宝の持ち腐れにしかならない。
――「弟は確かに優秀ではない。だが、あいつには諦めずに努力し続ける不屈の精神がある」――
そう私に語った四条羅轟もまた、四条王喜には厳しく接していた。
だが他の人間が能力的に侮っていたのに対して、彼の場合、意味合いがまるで違っている。
弟はいずれ家督争いのライバルになりうる。
そう考えていたからこそ、四条羅轟は弟に厳しかったのだ。
それは決して身内贔屓などではなく、純粋に四条王喜の事を評価した結果に私には見えた。
「俺にぃ!跪け!!」
馬鹿の一つ覚えの様に、炎の槍が飛んでくる。
パワーはあっても、その戦略は力押しの稚拙な物でしかなかった。
残念ながらその戦闘スタイルは、自分よりもパワーの勝る相手には通用しない。
そして私のパワーは彼より上だ。
「無駄よ」
私は冷気の塊を波の様に放ち、迎え撃つ。
凍てつく波動。
冷気を放射状に放つ、私の得意とする技の一つだ
それは私に襲い掛かる炎を飲み込んで掻き消し、そして四条王喜の肉体を完全に凍り付かせた。
勝負あり。
私の勝ちよ。
「あなたがもし努力する事を忘れず鍛錬に励んでいたなら。この勝負、どうなっていたか分からなかったわ」
もっとも、もしそうだったなら、そもそも薬になど手を出していなかっただろうが。
人は変わる。
良くも、悪くも。
四条王喜は力を得て、悪い方に転がってしまった。
もし彼を諫めてくれる人物が傍に居たなら、こうはならなかっただろう。
弟もきっと……
私が指を慣らすと、四条王喜を覆う氷が粉々に砕け散った。
閉じ込めたままでは窒息死、もしくは凍死してしまう。
道を踏み外したとはいえ、彼もまた被害者なのだ。
殺す様な真似はしない。
「話を聞かせて貰うわよ」
「がはっ……ぐうぅぅぅ……こおりベェ……」
寒さで体をガタガタ震わせながらも、彼は増悪に染まった眼差しを此方へと向ける。
薬を使ってもなお、届かない圧倒的な力を見せつけたというのに困った人だ。
まあそれも薬による影響なのかもしれないが。
「手足だけは封じていた方がいいみたいね」
「俺を……舐めるなよ……」
手足を氷の錠で封じようとするが、それよりも早く四条王喜はマントの中から何かを取り出した。
それは――
「注射器?まさか!?」
緑色の液体の入った注射器を、彼は迷わずその手に打ち込む。
ブースターは危険な薬物だ。
しかも彼の使っている物は以前より強化されている。
そんな物を連続投与するなんて……
「く……ひへへ……何だこれ……なんだこれぇ!!」
ゆらりと、水蒸気の様な物が四条王喜の体から立ち昇った。
私は咄嗟に結晶を前方に展開する。
「吹きとべやぁ!!」
四条の目の前に巨大な火柱が生まれる。
さらにその火柱に突風が絡みつく。
それはまるで炎のハリケーン。
それが暴れ狂い、凄まじい勢いで此方へと突っ込んで来た。
「複合能力!?」
複数の能力を同時に使う事は、そこまで難しい事ではない。
私もそれは普通にやっている。
だが二つの能力を重ね合わせるとなれば、話は別だった。
基本的に能力は干渉し合い、打消し合う物だ。
例えそれが自分の能力であったとしても。
その為、複数の能力を一つに纏め合わせるという行為は至難の業に等しかった。
だが、四条王喜はそれをやってのけて見せている。
ブースターの過剰摂取。
それが此処までの力を引き出すとは……
彼の生み出した炎の嵐と、私の結晶が接触し大爆発を引き起こす。
爆風によって巻き上げられる蒸気と粉塵、それは私の視界を覆い尽くした。
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