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第54話 会議
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「生存者は5割といった所です」
会議の席で、アイシャさんが沈痛な面持ちで言葉を紡ぐ。
生存者というのは、王都の人間の事だ。
城から飛び立った魔人は王都を襲い、好き放題暴れ去っていった。
幸い王都に乗り込んだメンバーに被害はなく。
合流した際には、アイシャさん達を見事に救出して見せていた。
なんでも一時はやばかったらしいが、途中ライラさん達を囲んでいた精鋭達の一部が撤退してくれたおかげで、何とか乗り切れたらしい。
恐らく俺とアイリーンとの戦いに駆け付けた奴らが、それだろう。
「相手は魔人。5割も残ったと考えるべきだろうな」
アイシャさんの横に座る壮年の男性。
彼女の父親であるグレン・ベルベットが、ため息とともにそう漏らす。
王都の人口は60万にも達する。
5割という事は、30万人もの死者が出たという事だ。
それだけの馬鹿げた被害が出て言う状態で、ポジティブに考えるのは流石に無理がある。
「伝承を軽んじていたわけではないが、まさかここまでの化け物とは……」
白髪でひげ面の老人。
高位貴族の一人が呟く。
恐らく、伝承による脅威を話半分程度に考えていたのだろう。
しかし現実は違った。
魔人が首都を襲撃したのは、1時間足らずと短い時間でしかない。
その短い時間で、奴は30万人もの人間の命を奪ったのだ。
世界を滅ぼすという魔人の肩書は、伊達ではなかったという事だ。
俺も下半身の切り離しで逃げ切れなかったら、確実に殺されていただろう。
「これは始まりにすぎないだろうな。魔人はどこかに行ってしまったが、そのままおとなしくしているとは思えん」
別の老人が口を開く。
魔人の動向は全く掴めていなかった。
首都が大打撃を陥り、絶対的な支配者であった王女が死んだ事で国政も混乱している。
たった三日であれもこれもとこなすのは無理があった。
とにかく、今は首都の混乱を収めるのが急務だ。
「このままでは……このままでは……人類が……」
貴族の一人が、両手で頭を抱え込む。
個人的に、魔人は人類を根絶やしにするつもりはないんじゃないかとは思っている。
もしその気なら、グレンさんじゃないが、王都の人間を5割も残してくれはしなかっただろう。
今頃きっと皆殺しになっていたはず。
とは言え、奴が人間を殺しまくるのは王都の事を考えても確定している事だ。
放置しておける様な物ではないが。
「召喚者殿は、あれと遭遇したのですよね?」
育ちの良さそうな、俺と同じ年位の青年が声をかけてきた。
この場にいるという事は、彼も高位の貴族なのだろう。
この場は、ファーレン王国の行く末を決める臨時会議の場だった。
俺以外はこの国の有力貴族達だ。
そのため、一市民である俺の場違い感が凄い。
「ええ」
「魔人と遭遇して生き延びるとは、流石としか言いようがありません……もし戦ったら――」
「無理です。勝てません」
相手が何を聞こうとしたのか分かったので、その言葉を遮って即答する。
奴と対面したとき、俺は本能的に死を覚悟した。
相手はSランクモンスターであるシーが、恐怖に身を震わせる程の化け物だ。
戦って勝つ所か、勝負にもならないだろう。
仮に永久コンボを上手く決める事が出来たとしても、俺では殺せない。
あれにダメージが与えられるとは到底思えなかった。
まあそれ以前に、あれに俺のスキルが効くかどうかも怪しい所だ。
「むう……打つ手なしという訳か……」
俺の言葉に、全員が落胆の表情を見せる。
アイシャさんにはっきりと勝てないと伝えてあるし、その事は彼らにも伝わっているはずだ。
だがそれでも、一縷の希望を俺に駆けたかったのだろう。
だが無理な物は無理だ。
「せめて、他の召喚者方が生き延びてさえいれば……」
この世界に蘇生魔法などなく、聖女の持っていたEXスキルのみが死者を蘇らせることが出来る唯一の術だった。
そのため、聖女が死に、スキルをコピーしたアイリーンが死んだ事で、クラスメート達の蘇生は不可能となっている。
まあ彼らが生きていたとして、あれがどうにか出来るとは思えないが。
何にせよ。
状況は絶望的だった。
「……」
皆が黙り込む中、不安そうな表情のリーンと目が合う。
彼女は王家最後の生き残りであり――次期女王としてこの場に出席している。
王位継承権を持つ様な血筋の繋がりがある相手は、アイリーンが軒並み始末してしまっているそうだ。
自分の立場を盤石にしたかったんだろうな。
本当に何から何まで、ロクな事をしない女だった。
結局会議は王都の立て直しを急ぐという内容だけで終わる。
魔人については、各国と協議するという形で先送りだ。
それは現状、魔人への有効な対策がない以上仕方のない事だった。
とは言え、封印を続けてきたファーレン王国ですら打つ手がないのに、他国にそれがあるのかは正直疑問だ。
正直、余り期待はできないだろう。
あー、元の世界に帰りてぇ……
会議の席で、アイシャさんが沈痛な面持ちで言葉を紡ぐ。
生存者というのは、王都の人間の事だ。
城から飛び立った魔人は王都を襲い、好き放題暴れ去っていった。
幸い王都に乗り込んだメンバーに被害はなく。
合流した際には、アイシャさん達を見事に救出して見せていた。
なんでも一時はやばかったらしいが、途中ライラさん達を囲んでいた精鋭達の一部が撤退してくれたおかげで、何とか乗り切れたらしい。
恐らく俺とアイリーンとの戦いに駆け付けた奴らが、それだろう。
「相手は魔人。5割も残ったと考えるべきだろうな」
アイシャさんの横に座る壮年の男性。
彼女の父親であるグレン・ベルベットが、ため息とともにそう漏らす。
王都の人口は60万にも達する。
5割という事は、30万人もの死者が出たという事だ。
それだけの馬鹿げた被害が出て言う状態で、ポジティブに考えるのは流石に無理がある。
「伝承を軽んじていたわけではないが、まさかここまでの化け物とは……」
白髪でひげ面の老人。
高位貴族の一人が呟く。
恐らく、伝承による脅威を話半分程度に考えていたのだろう。
しかし現実は違った。
魔人が首都を襲撃したのは、1時間足らずと短い時間でしかない。
その短い時間で、奴は30万人もの人間の命を奪ったのだ。
世界を滅ぼすという魔人の肩書は、伊達ではなかったという事だ。
俺も下半身の切り離しで逃げ切れなかったら、確実に殺されていただろう。
「これは始まりにすぎないだろうな。魔人はどこかに行ってしまったが、そのままおとなしくしているとは思えん」
別の老人が口を開く。
魔人の動向は全く掴めていなかった。
首都が大打撃を陥り、絶対的な支配者であった王女が死んだ事で国政も混乱している。
たった三日であれもこれもとこなすのは無理があった。
とにかく、今は首都の混乱を収めるのが急務だ。
「このままでは……このままでは……人類が……」
貴族の一人が、両手で頭を抱え込む。
個人的に、魔人は人類を根絶やしにするつもりはないんじゃないかとは思っている。
もしその気なら、グレンさんじゃないが、王都の人間を5割も残してくれはしなかっただろう。
今頃きっと皆殺しになっていたはず。
とは言え、奴が人間を殺しまくるのは王都の事を考えても確定している事だ。
放置しておける様な物ではないが。
「召喚者殿は、あれと遭遇したのですよね?」
育ちの良さそうな、俺と同じ年位の青年が声をかけてきた。
この場にいるという事は、彼も高位の貴族なのだろう。
この場は、ファーレン王国の行く末を決める臨時会議の場だった。
俺以外はこの国の有力貴族達だ。
そのため、一市民である俺の場違い感が凄い。
「ええ」
「魔人と遭遇して生き延びるとは、流石としか言いようがありません……もし戦ったら――」
「無理です。勝てません」
相手が何を聞こうとしたのか分かったので、その言葉を遮って即答する。
奴と対面したとき、俺は本能的に死を覚悟した。
相手はSランクモンスターであるシーが、恐怖に身を震わせる程の化け物だ。
戦って勝つ所か、勝負にもならないだろう。
仮に永久コンボを上手く決める事が出来たとしても、俺では殺せない。
あれにダメージが与えられるとは到底思えなかった。
まあそれ以前に、あれに俺のスキルが効くかどうかも怪しい所だ。
「むう……打つ手なしという訳か……」
俺の言葉に、全員が落胆の表情を見せる。
アイシャさんにはっきりと勝てないと伝えてあるし、その事は彼らにも伝わっているはずだ。
だがそれでも、一縷の希望を俺に駆けたかったのだろう。
だが無理な物は無理だ。
「せめて、他の召喚者方が生き延びてさえいれば……」
この世界に蘇生魔法などなく、聖女の持っていたEXスキルのみが死者を蘇らせることが出来る唯一の術だった。
そのため、聖女が死に、スキルをコピーしたアイリーンが死んだ事で、クラスメート達の蘇生は不可能となっている。
まあ彼らが生きていたとして、あれがどうにか出来るとは思えないが。
何にせよ。
状況は絶望的だった。
「……」
皆が黙り込む中、不安そうな表情のリーンと目が合う。
彼女は王家最後の生き残りであり――次期女王としてこの場に出席している。
王位継承権を持つ様な血筋の繋がりがある相手は、アイリーンが軒並み始末してしまっているそうだ。
自分の立場を盤石にしたかったんだろうな。
本当に何から何まで、ロクな事をしない女だった。
結局会議は王都の立て直しを急ぐという内容だけで終わる。
魔人については、各国と協議するという形で先送りだ。
それは現状、魔人への有効な対策がない以上仕方のない事だった。
とは言え、封印を続けてきたファーレン王国ですら打つ手がないのに、他国にそれがあるのかは正直疑問だ。
正直、余り期待はできないだろう。
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