異世界転生帰りの勇者、自分が虐められていた事を思い出す~なんか次々トラブルが起こるんだが?取り敢えず二度と手出しできない様に制圧するけどさ~

榊与一

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第75話 追跡装置

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楽しい楽しい誕生日が終わり、母が眠りについた深夜。
遠くの山へと行き、そこで穴を掘ってワーウルフの蘇生を試みる。

「お、一発で上手く行ったな」

人間ではあっても、姿が明らかに異質だったので普通の蘇生では上手く行かない。
そう判断し、魔法にアレンジを加えてみたところ一発で成功した。
まさに練習台共を蘇生し潰し、大量に練習した成果の賜物と言えるだろう。

「う……ここは……」

ワーウルフが目を覚ます。
蘇生させたのは、あの場にいたリーダーの女っぽい奴だ。

「あたしはたしか……っ!?テメーは誰だ?」

目覚めた女が目の前に立つ此方に気付き、距離を取る様にその場から跳ね起きた。
その表情は厳つく歪められ、犬歯をむき出しにして俺を睨んで来る。

誰かと聞いてくるあたり、俺の事が分からない様だ。
まあ闇で覆ってないから仕方がないか。

「ダークソウルって言わばわかるか?」

「ダークソウル……はっ!そうだ!!あたしは黒い奴と戦って……それで……間抜けにも捕まっちまったって訳か……くそっ……」

死ぬ直前の記憶を思い出し、女が悔し気に顔を歪める。

「理解した様だな」

「その声……あんたがあの化け物の正体かい?」

「ああ、そうだ」

特に隠す理由もないので素直に答えてやる。
まあ俺は優しいからな。
手向けって奴だ。

「殺さずわざわざあたしを捕らえたって事は……」

「お前にはいろいろ聞かせて貰う」

取り敢えず、改造人間っぽい奴らの情報と。
帝真グループの事辺りを聞く予定だ。

「やっぱそうだよねぇ。分かった、何でも素直に話すよ。あたしは別に、帝真グループに命懸けの忠誠を誓ってる訳じゃないからね。けど……代わりに命だけは助けて欲しい。アンタだって、別にあたしに恨みがある訳じゃないだろ?もちろん開放してくれとは言わない。捕虜のままでもいいからさ。命だけは助けてくれないかい?」

「……」

女は生かしてくれるなら素直に全てを話すと言う。
単に死にたくないから協力的なだけと言えなくもないが、どうも違和感を感じてしょうがない。
特に、命さえあれば捕虜のままでもいいと言う言葉に。

生きてさえいればいいってのは、その先に希望があってこそだからな……

「ひょっとして……帝真グループからの救助を期待してるのか?」

「あそこは失敗した間抜けを生かしておくほど、優しい所じゃないさ」

俺の言葉に対し、表情には特に変化がでない。
だが女は皆、女優なんて言葉があるくらいだ。
顔色を変えなかったからといって、それを鵜呑みにするのは余りにも愚かだ。

「そうか。じゃあ確認させて貰うぞ」

「何を……」

俺は女に無造作に近づき、その頭を握って素早く魔法を発動させる。
使った魔法はサーチ系の魔法で。
探るのは女の肉体。

この女には魔法がかかっていない。
それは確かだ。
なので、帝真グループがこの女の居場所を突き止める方法がもし体に仕込まれているとするなら、それは何らかの機械類だろうと思われる。

パッと思いつくのはGPS。
つまり無機物系。
俺はそれを魔法でサーチする。

「心臓に何か埋め込まれているな」

やっぱあったな。
恐らくこれで自分達の位置を知らせたりするのだろう

まあ亜空間は完全に遮断された空間だから、流石に追跡は出来てないだろうとは思うが……

外に取り出した時点でここの位置はバレたかもな。
まあそれはそれで構わないさ。
誰か来たらそいつらも制圧すればいいだけだし。

「——っ!?」

俺の言葉に、女が驚いた様に目を見開く。

「大方これで、現在の場所を知らせてるって所か」

「な、なんでそれが……」

魔法を知らない女からしたら不思議な事だろう。
頭に手を当てて何かを呟いた途端、自分の肉体の秘密がバレたのだから。

「まさか!?まさか魔法か!?」

「魔法を知ってるのか?」

「噂ぐらいには……」

「まあ何にせよ、話は――」

「何を……ぐぇあっ!?」

俺は女の胸を素早く突き破り、心臓をとりだす。
そしてその中にある小さな機械っぽい物を取り出した。

「やっぱ見た目じゃ何かわからんな」

機械には詳しくないのでさっぱりだ。
まあそれも含めて、女から聞き出すとしよう。

あ、血がすっごい吹き出してるけどそこは安心してくれ。
ちゃんと使い捨てしてもいいボロ着着て来てるから。
ノープロブレムだ。

「よし起きろ」

再び女に蘇生魔法をかけ、頬を叩いて起こす。

「うっ……あれ?あたしは……それにこの血の匂い……はっ!?そうだ!?胸をぶち抜かれて……」

女が自分の胸元を慌ててまさぐって確認する。

「あれ?なんともない?なんで?血はこんなに付いてるってのに……」

「俺は蘇生魔法を使えるからな。だからいくら死んでも大丈夫だぞ。お前の望み通り、

必死に逃げる子供を笑いながら撃ってた様な糞野郎だからな。
女だからなんてくだらない理由で、お情けをかけてやるつもりは更々ない。
当然コイツには、拷問からのお決まりのコースだ。

「ひぃ……」

死んでも生き返らせればいい。
その言葉の意味を理解したのか、女はその場に尻もちをついて失禁してしまう。

――さて、それじゃ情報収集を始めるとしようか。
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