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第27話 風早
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黒髪短髪で長身。
清潔感漂う、爽やかなアイドルの様な顔をした青年。
それが風早と言う男のビジュアルだった。
そりゃまあ、女共がキャーキャー言う訳だ。
「風早!」
「連れて来たぜ!安田だ!」
エミとショーコが、群がる他の女共を押しのけて前に出る。
そして手を掴まれてる俺も一緒に出る羽目に。
「へぇ、君が噂の安田君かい?ウィングエッジの代表をさせて貰っている風早壮太だ。うちへようこそ」
風早が両手を広げ、ハグしようとして来たので俺はそれをひょいと躱す。
何考えてんだこいつ?
「俺はウィングエッジとやらに入る気はさらさらないぞ」
「あれ?でもエミとショーコが……」
「安田は照れてるんだって!」
「そうそう!うちに入らない理由なんて皆無だし!」
風早が不思議そうにエミとショーコを見ると、二人は慌てて苦しい言い訳を口にする。
すぐにばれる嘘を吐く見苦しさよ。
まあこいつら的には状況に流されてそのまま、とか考えているのだろうが……
残念ながら、俺は損得でしっかりと物事を判断するタイプだ。
雰囲気に流されて等ありえない。
「あらあら……うちには入りたくないんだ?じゃあ無理強いは良くないわよねぇ」
さっき二人に絡んでいた派手な女——エリカが、水を得た魚の如く口を挟んで来た。
その人を見下した様な底意地の悪そうな嫌らしい目元は、異世界の鼻持ちならない貴族を思い思い起こさせる。
因みに、そういった貴族連中の大半は始末している。
利己的、保身的。
権力を持つそういう連中は、ギリギリの戦いですら平気で足をひぱって来たからな。
魔王との戦いをスムーズに進めるため、暗殺チームを組んで邪魔者は排除するのは当然の事だ。
姿を隠す闇を纏う魔法や、他人の皮を被った変装はその用途のために習得したと言っていいだろ。
「無理強いなんてしてねぇっての!」
「安田はマジで落ちかけだから!」
エミとショーコ。
二人のその自信が一体どこから来るのか謎だ。
「んな訳ないだろ。ここに来たのも、どうしてもって言うから来ただけだぞ」
脳みそ空っぽのエミとショーコ。
純粋に性格が悪そうなエリカ。
後者の方が心情的により嫌いなタイプではあるが、エミとショーコに義理立てする理由もないのでばっさり切り捨てる。
「だってさ」
勝ち誇るエリカと、恨めし気に俺を見るエミとショーコ。
どうでもいいので彼女達は無視して俺は風早に話かけた。
「一つ聞きたい事があるんだが」
「俺にかい?」
「ああ」
「まあエミとショーコが迷惑をかけてるみたいだし、なんでも聞いてくれ」
入らないと宣言した事は特に気にしていないのか、風早は笑顔だ。
「ギャオスから気を使うって聞いてるんだが、気孔闘士って知ってるか?」
慎重に腹の探り合いをしてまで得なければならない情報でもないので、ド直球で尋ねた。
それで隠される様ならそこまでだ。
「ふむ……どうやら君も、師匠から指導を受けたみたいだね。成程。ギャオス君に勝ったのも頷けるよ」
否定しないあたり、予想は当たっていた様だ。
風早の言う師匠ってのは、あの禿げデブに教えたのと同一人物の可能性があるな。
まあだがそんな事よりも、今の奴の発言にはもっと気になる点があった。
それはギャオスに君付けしている事だ。
どういう心情であの筋肉おカマに君付けしてるというのか。
謎な男である。
「安田君。もしよかったら奥の部屋で二人で話さないかい?」
「わかった」
人前では話しにくい内容でもあるのだろう。
そう思い、俺はイエスと返す。
まあ仮に、こいつが何かしてきても返り討ちにすればいいだけだしな。
「皆、ちょっと彼と話があるから抜けさせて貰うよ」
そう風早は周囲に宣言し、出て来たと思われる奥の扉へと俺を誘導する。
さて、それじゃあこの世界特有の力の話を聞かせて貰うとしようか。
清潔感漂う、爽やかなアイドルの様な顔をした青年。
それが風早と言う男のビジュアルだった。
そりゃまあ、女共がキャーキャー言う訳だ。
「風早!」
「連れて来たぜ!安田だ!」
エミとショーコが、群がる他の女共を押しのけて前に出る。
そして手を掴まれてる俺も一緒に出る羽目に。
「へぇ、君が噂の安田君かい?ウィングエッジの代表をさせて貰っている風早壮太だ。うちへようこそ」
風早が両手を広げ、ハグしようとして来たので俺はそれをひょいと躱す。
何考えてんだこいつ?
「俺はウィングエッジとやらに入る気はさらさらないぞ」
「あれ?でもエミとショーコが……」
「安田は照れてるんだって!」
「そうそう!うちに入らない理由なんて皆無だし!」
風早が不思議そうにエミとショーコを見ると、二人は慌てて苦しい言い訳を口にする。
すぐにばれる嘘を吐く見苦しさよ。
まあこいつら的には状況に流されてそのまま、とか考えているのだろうが……
残念ながら、俺は損得でしっかりと物事を判断するタイプだ。
雰囲気に流されて等ありえない。
「あらあら……うちには入りたくないんだ?じゃあ無理強いは良くないわよねぇ」
さっき二人に絡んでいた派手な女——エリカが、水を得た魚の如く口を挟んで来た。
その人を見下した様な底意地の悪そうな嫌らしい目元は、異世界の鼻持ちならない貴族を思い思い起こさせる。
因みに、そういった貴族連中の大半は始末している。
利己的、保身的。
権力を持つそういう連中は、ギリギリの戦いですら平気で足をひぱって来たからな。
魔王との戦いをスムーズに進めるため、暗殺チームを組んで邪魔者は排除するのは当然の事だ。
姿を隠す闇を纏う魔法や、他人の皮を被った変装はその用途のために習得したと言っていいだろ。
「無理強いなんてしてねぇっての!」
「安田はマジで落ちかけだから!」
エミとショーコ。
二人のその自信が一体どこから来るのか謎だ。
「んな訳ないだろ。ここに来たのも、どうしてもって言うから来ただけだぞ」
脳みそ空っぽのエミとショーコ。
純粋に性格が悪そうなエリカ。
後者の方が心情的により嫌いなタイプではあるが、エミとショーコに義理立てする理由もないのでばっさり切り捨てる。
「だってさ」
勝ち誇るエリカと、恨めし気に俺を見るエミとショーコ。
どうでもいいので彼女達は無視して俺は風早に話かけた。
「一つ聞きたい事があるんだが」
「俺にかい?」
「ああ」
「まあエミとショーコが迷惑をかけてるみたいだし、なんでも聞いてくれ」
入らないと宣言した事は特に気にしていないのか、風早は笑顔だ。
「ギャオスから気を使うって聞いてるんだが、気孔闘士って知ってるか?」
慎重に腹の探り合いをしてまで得なければならない情報でもないので、ド直球で尋ねた。
それで隠される様ならそこまでだ。
「ふむ……どうやら君も、師匠から指導を受けたみたいだね。成程。ギャオス君に勝ったのも頷けるよ」
否定しないあたり、予想は当たっていた様だ。
風早の言う師匠ってのは、あの禿げデブに教えたのと同一人物の可能性があるな。
まあだがそんな事よりも、今の奴の発言にはもっと気になる点があった。
それはギャオスに君付けしている事だ。
どういう心情であの筋肉おカマに君付けしてるというのか。
謎な男である。
「安田君。もしよかったら奥の部屋で二人で話さないかい?」
「わかった」
人前では話しにくい内容でもあるのだろう。
そう思い、俺はイエスと返す。
まあ仮に、こいつが何かしてきても返り討ちにすればいいだけだしな。
「皆、ちょっと彼と話があるから抜けさせて貰うよ」
そう風早は周囲に宣言し、出て来たと思われる奥の扉へと俺を誘導する。
さて、それじゃあこの世界特有の力の話を聞かせて貰うとしようか。
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