51 / 67
51話 決戦
しおりを挟む
「ブレイブ……」
奴と目が合う。
此処から数キロ離れた地点。
大軍を率い、奴は丘の上に立っていた。
あいつも此方には気づいているだろう。
俺は冥界の力を使ってブレイブを見ているが、奴にそんな物は必要ない。
勇者の眼は遥か上空から落ちて来る、最初の雨粒すらも捕らえる驚異的な視力をしているからだ。
生物として根本的な作りが違う。
それが勇者。
「あの剣……ブレイブめ……」
奴の腰にかけている剣に目が止まる。
ブレイブソード。
それは勇者として、神に選ばれた戦士のみ扱う事を許された聖剣だ。
だが今、その剣からは聖なる波動だけではなく。
同時に邪悪な闇の波動が垣間見える。
どうやら何らかの仕掛けを施している様だ。
「まあ当然か」
俺はかつての仲間達を次々と破って此処まで来ている。
俺の力を警戒し、勝つために何らかの対策を打つのは当然の手段だ。
しかしまさか闇の力に手を染めるとは……勇者も落ちたものだ。
いや、違うな。
初めから奴は勝利の為なら手段を選ばない男だった。
今まではそれをうまく隠してきだけに過ぎない。
そもそもあいつが勇者である事自体が間違いなのだ。
ならば俺が今日、奴に引導を渡し。
不良品を神の元へ送り返してやるとしよう。
「随分怖い顔をしてるわね。ブレイブを見つけたの?」
じっとブレイブを睨んでいると、横からレイラに声を掛けられる。
顔には身分を隠すためにマスクを付けてある。
だから俺の表情は見える分けがないのだが、まあ雰囲気から察したのだろう。
「ああ」
「勝てそうかい?」
「勝つさ」
実質、ブレイブとの戦いが最後の戦いになるだろう。
ラキアなどその気になればいつでも殺せる。
カウントするまでもない。
俺はブレイブを殺し、復讐を遂げる。
遂げて見せる。
「ははっ、さっすがうちの大将だ」
イナバが俺の背中を力強く叩く。
その左手にはデビルアクスが握られている。
訓練の成果で、彼女は封印状態ならもう問題なく斧を扱えるようになっていた。
「リピも頑張ってお手伝いするよ!」
「いや、リピはイナバ達を手伝ってやってくれ」
「えぇー」
場所は見晴らしのいい戦場だ。
リピが傍に居れば、ブレイブは真っ先に彼女を狙うだろう。
そうなれば力どころか、足手纏いになりかねない。
それに――
「俺はブレイブとの勝負に専念する。そうなれば総大将としての仕事を放棄する事になってしまう、俺の抜けた分イナバ達に尽力してやってくれ」
この戦争の魔族側の旗印は俺だ。
ブレイブを倒せれば相手側の士気を落とせるとはいえ、自分勝手な理由で代表を放棄する事には変わりない。
先陣を切るイナバへの負担も大きくなるだろう。
だからリピにはそのサポートを頼む。
「頼む」
「うん……わかった」
リピは少し不満そうだが、渋々承諾してくれる。
後は――
「危険だが、レイラにはリピの護衛を頼まれて欲しい」
リピの魔法はかなり強力だ。
しかも頭を務めるイナバと行動を共にするのだ、敵の的になる可能性は非常に高かい。
だがレイラが傍に付いていてくれれば安心だ。
今の彼女の実力ならリピを問題なく任せられる。
「しょうがないね、任せなよ」
「感謝する」
「代わりに、絶対勝って帰って来なよ」
「勿論だ」
「約束だよー!絶対だよー!」
俺はリピの頭を撫でた。
彼女には大量の借りがある。
それは必ず生きて返す。
「準備はいいかい?」
俺が頷くと、イナバが配下に命じて銅鑼を鳴らさせる。
大気を震わせ、相手の陣地にまで届きそうな程の轟音が鳴り響いた。
戦の合図だ。
俺は仮面を外し、投げ捨てた。
もはや身分を偽る必要は無い。
後はブレイブを殺し、全てを終わらせるのみだ。
奴と目が合う。
此処から数キロ離れた地点。
大軍を率い、奴は丘の上に立っていた。
あいつも此方には気づいているだろう。
俺は冥界の力を使ってブレイブを見ているが、奴にそんな物は必要ない。
勇者の眼は遥か上空から落ちて来る、最初の雨粒すらも捕らえる驚異的な視力をしているからだ。
生物として根本的な作りが違う。
それが勇者。
「あの剣……ブレイブめ……」
奴の腰にかけている剣に目が止まる。
ブレイブソード。
それは勇者として、神に選ばれた戦士のみ扱う事を許された聖剣だ。
だが今、その剣からは聖なる波動だけではなく。
同時に邪悪な闇の波動が垣間見える。
どうやら何らかの仕掛けを施している様だ。
「まあ当然か」
俺はかつての仲間達を次々と破って此処まで来ている。
俺の力を警戒し、勝つために何らかの対策を打つのは当然の手段だ。
しかしまさか闇の力に手を染めるとは……勇者も落ちたものだ。
いや、違うな。
初めから奴は勝利の為なら手段を選ばない男だった。
今まではそれをうまく隠してきだけに過ぎない。
そもそもあいつが勇者である事自体が間違いなのだ。
ならば俺が今日、奴に引導を渡し。
不良品を神の元へ送り返してやるとしよう。
「随分怖い顔をしてるわね。ブレイブを見つけたの?」
じっとブレイブを睨んでいると、横からレイラに声を掛けられる。
顔には身分を隠すためにマスクを付けてある。
だから俺の表情は見える分けがないのだが、まあ雰囲気から察したのだろう。
「ああ」
「勝てそうかい?」
「勝つさ」
実質、ブレイブとの戦いが最後の戦いになるだろう。
ラキアなどその気になればいつでも殺せる。
カウントするまでもない。
俺はブレイブを殺し、復讐を遂げる。
遂げて見せる。
「ははっ、さっすがうちの大将だ」
イナバが俺の背中を力強く叩く。
その左手にはデビルアクスが握られている。
訓練の成果で、彼女は封印状態ならもう問題なく斧を扱えるようになっていた。
「リピも頑張ってお手伝いするよ!」
「いや、リピはイナバ達を手伝ってやってくれ」
「えぇー」
場所は見晴らしのいい戦場だ。
リピが傍に居れば、ブレイブは真っ先に彼女を狙うだろう。
そうなれば力どころか、足手纏いになりかねない。
それに――
「俺はブレイブとの勝負に専念する。そうなれば総大将としての仕事を放棄する事になってしまう、俺の抜けた分イナバ達に尽力してやってくれ」
この戦争の魔族側の旗印は俺だ。
ブレイブを倒せれば相手側の士気を落とせるとはいえ、自分勝手な理由で代表を放棄する事には変わりない。
先陣を切るイナバへの負担も大きくなるだろう。
だからリピにはそのサポートを頼む。
「頼む」
「うん……わかった」
リピは少し不満そうだが、渋々承諾してくれる。
後は――
「危険だが、レイラにはリピの護衛を頼まれて欲しい」
リピの魔法はかなり強力だ。
しかも頭を務めるイナバと行動を共にするのだ、敵の的になる可能性は非常に高かい。
だがレイラが傍に付いていてくれれば安心だ。
今の彼女の実力ならリピを問題なく任せられる。
「しょうがないね、任せなよ」
「感謝する」
「代わりに、絶対勝って帰って来なよ」
「勿論だ」
「約束だよー!絶対だよー!」
俺はリピの頭を撫でた。
彼女には大量の借りがある。
それは必ず生きて返す。
「準備はいいかい?」
俺が頷くと、イナバが配下に命じて銅鑼を鳴らさせる。
大気を震わせ、相手の陣地にまで届きそうな程の轟音が鳴り響いた。
戦の合図だ。
俺は仮面を外し、投げ捨てた。
もはや身分を偽る必要は無い。
後はブレイブを殺し、全てを終わらせるのみだ。
0
お気に入りに追加
834
あなたにおすすめの小説
最強の職業は付与魔術師かもしれない
カタナヅキ
ファンタジー
現実世界から異世界に召喚された5人の勇者。彼等は同じ高校のクラスメイト同士であり、彼等を召喚したのはバルトロス帝国の3代目の国王だった。彼の話によると現在こちらの世界では魔王軍と呼ばれる組織が世界各地に出現し、数多くの人々に被害を与えている事を伝える。そんな魔王軍に対抗するために帝国に代々伝わる召喚魔法によって異世界から勇者になれる素質を持つ人間を呼びだしたらしいが、たった一人だけ巻き込まれて召喚された人間がいた。
召喚された勇者の中でも小柄であり、他の4人には存在するはずの「女神の加護」と呼ばれる恩恵が存在しなかった。他の勇者に巻き込まれて召喚された「一般人」と判断された彼は魔王軍に対抗できないと見下され、召喚を実行したはずの帝国の人間から追い出される。彼は普通の魔術師ではなく、攻撃魔法は覚えられない「付与魔術師」の職業だったため、この職業の人間は他者を支援するような魔法しか覚えられず、強力な魔法を扱えないため、最初から戦力外と判断されてしまった。
しかし、彼は付与魔術師の本当の力を見抜き、付与魔法を極めて独自の戦闘方法を見出す。後に「聖天魔導士」と名付けられる「霧崎レナ」の物語が始まる――
※今月は毎日10時に投稿します。
俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉
まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。
貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。
そんなに妹が好きなら死んであげます。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』
フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。
それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。
そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。
イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。
異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。
何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……
【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。
帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。
しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。
自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。
※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。
※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。
〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜
・クリス(男・エルフ・570歳)
チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが……
・アキラ(男・人間・29歳)
杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が……
・ジャック(男・人間・34歳)
怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが……
・ランラン(女・人間・25歳)
優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は……
・シエナ(女・人間・28歳)
絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……
幼い頃に魔境に捨てたくせに、今更戻れと言われて戻るはずがないでしょ!
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
ニルラル公爵の令嬢カチュアは、僅か3才の時に大魔境に捨てられた。ニルラル公爵を誑かした悪女、ビエンナの仕業だった。普通なら獣に喰われて死にはずなのだが、カチュアは大陸一の強国ミルバル皇国の次期聖女で、聖獣に護られ生きていた。一方の皇国では、次期聖女を見つけることができず、当代の聖女も役目の負担で病み衰え、次期聖女発見に皇国の存亡がかかっていた。
S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る
神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】
元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。
ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、
理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。
今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。
様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。
カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。
ハーレム要素多め。
※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。
よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz
他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。
たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。
物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz
今後とも応援よろしくお願い致します。
妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~
サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――
神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました
向原 行人
ファンタジー
僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。
実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。
そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。
なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!
そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。
だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。
どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。
一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!
僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!
それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?
待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる