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24話 ムカつく顔面に鉄拳を
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「久しぶりね、ガルガーノ」
驚きに目を見開いていたレイラの口元が歪む。
動揺から一瞬で立ち直るあたり、流石としか言いようがない。
腐っても魔王討伐者と言った所だろうか。
「ブレイブから脱獄したとは聞いていたから、いつかは私の前に現れると思ってたけど、まさかこんなに直ぐとはね」
「女性を待たせるのは好きじゃないんでね」
一歩前に出る。
レイラが枕元から何かを掴みとり、天蓋付きの豪華なベッドから起き上がる。
みしみしと悲鳴を上げるかの様に、ベッドと床が軋む。
「随分と贅沢をしていた様だな」
「ええ、貴方のお陰で何不自由なくやらせて貰っていたわ」
レイラが目を細めて笑う。
その姿は丸で豚だ。
かつてのスリムな面影はなく、全身が脂肪に包まれ。
手足を抱え込めばさぞかしよく転がりそうな体型をしていた。
「でも驚いたわ。貴方用に大量のトラップを仕掛けていたのに、その様子じゃ全部無効かしてきてみたいね。やっぱり魔法ってすごいわ」
「……」
此処迄来るのに使ったのは、魔法ではなく魔王の力だった。
どうやら彼女は俺が神封石を何とかして、魔法の力でここへやって来たと思っている様だ。
「で・も・ね……これならどうかしら」
彼女が先程手にしていた宝玉を俺へと向ける。
その宝玉が赤く輝き、周囲を包み込む。
「ふふふ。これはね、結界を発動させるスイッチなの。貴方は気づいていなかったでしょうけど、この屋敷には、いいえ!この屋敷こそ貴方を封じ込める牢獄よ!貴方はもう魔法は使えないわ!」
レイラは嬉しそうに笑う。
恐らくこれが、彼女の俺対策としての切り札なのだろう。
事前に発動させていなかったのは、常時発動させていたら俺がそれに気づいて先に対処される可能性があったからだろう。
「さあ、どうする?ガルガーノ?魔法の使えない貧弱な貴方に私を殺せるかしら」
レイラはにたにた笑いながら、俺へと近づいてくる。
奴が足を一歩踏み出すたびに、盛大に床が軋む。
一体何キロあるのやら。
「さあさあさあ。ピンチよ」
レイラは俺の直ぐ目の前に立って笑う。
魔法が無ければ何もできないと思っているのだろうが……
俺はそのムカつく顔面に、迷わず拳を叩き込んだ。
「ぶげぇ!」
レイラが潰れたカエルの様な声を上げる。
その巨体は宙を舞い、天蓋付きのベッドへと突っ込んだ。
彼女の重みと勢いに耐えきれなかったベッドが、豪快に粉砕する。
「な、なんでぇ……」
ガラガラと瓦礫を押しのけ、レイラがフラフラと起き上る。
その瞳はまるで不可解な物を見るかの様に、疑問の色に彩られていた。
「俺は魔法で脱獄したわけじゃない。この腕力でだ」
力こぶを作って見せる。
そしてレイラが落とした、宝玉を俺は広い握りつぶした。
「んな……」
「このトラップには最初から気づいていた。意味がないから無視しただけだ」
神封石で魔法が完全に封じられている俺にとって、このトラップはまったく意味をなさない。だから気にも留めなかった。
今宝玉を砕いたのは、にやついて宝玉を見せつけてきたレイラに対する意趣返しの様な物だ。別にトラップを止める為ではない。
「神封石はこの通り付いたままだ」
ズボンの裾を引っ張り上げ、足首についている枷を見せる。
「無駄な対策だったな」
「く……」
レイラが悔しそうに俯く。
自分の対策が無意味だった事が悔しいのだろう。
彼女は歯を食いしばって、体は震わせる。
精々自分の愚かさを――
「くっ……く……あーっははははははははは」
突然レイラが大声を上げて笑いだす。
俺は突然の事に、笑い転げる彼女を呆然と見つめる。
気でも狂ったのだろうか?
「はぁ……はぁ……馬鹿正直で、間抜けな所は相変わらずだねぇ。そんなんだから、牢獄に突っ込まれるんだよ」
笑い終えた彼女は聞き捨てならない言葉を吐き出す。
「なに?」
「馬鹿正直に教えなきゃ、あたしは魔法を警戒する事になったんだ。だけど態々自慢げに教えてくれたお陰で――」
レイラはドスドスと音を立てて壁際に走り。
そこに掛けてあった巨大な鉄の槌を手に取った。
「あたしは気兼ねなく、あんたをぶち殺せるってもんさ」
「成程。確かに魔法を匂わせれば、お前の動きは制限できたかもな。だが必要ない」
かつてのレイラ相手だったならば、それも作戦として必要だったかもしれない。
だが今の彼女なら――
「今のお前如き、小細工は不要だ。この拳で粉砕してやる」
「はっ!確かにパワーは認めてやる!けど、魔法の使えない賢者如きに負けるレイラ様じゃないよ!」
そういうと彼女はドスドスと巨体を揺らし、突っ込んでくる。
さあ、報復開始だ。
俺は拳を強く握り込み、レイラを迎え撃つ。
驚きに目を見開いていたレイラの口元が歪む。
動揺から一瞬で立ち直るあたり、流石としか言いようがない。
腐っても魔王討伐者と言った所だろうか。
「ブレイブから脱獄したとは聞いていたから、いつかは私の前に現れると思ってたけど、まさかこんなに直ぐとはね」
「女性を待たせるのは好きじゃないんでね」
一歩前に出る。
レイラが枕元から何かを掴みとり、天蓋付きの豪華なベッドから起き上がる。
みしみしと悲鳴を上げるかの様に、ベッドと床が軋む。
「随分と贅沢をしていた様だな」
「ええ、貴方のお陰で何不自由なくやらせて貰っていたわ」
レイラが目を細めて笑う。
その姿は丸で豚だ。
かつてのスリムな面影はなく、全身が脂肪に包まれ。
手足を抱え込めばさぞかしよく転がりそうな体型をしていた。
「でも驚いたわ。貴方用に大量のトラップを仕掛けていたのに、その様子じゃ全部無効かしてきてみたいね。やっぱり魔法ってすごいわ」
「……」
此処迄来るのに使ったのは、魔法ではなく魔王の力だった。
どうやら彼女は俺が神封石を何とかして、魔法の力でここへやって来たと思っている様だ。
「で・も・ね……これならどうかしら」
彼女が先程手にしていた宝玉を俺へと向ける。
その宝玉が赤く輝き、周囲を包み込む。
「ふふふ。これはね、結界を発動させるスイッチなの。貴方は気づいていなかったでしょうけど、この屋敷には、いいえ!この屋敷こそ貴方を封じ込める牢獄よ!貴方はもう魔法は使えないわ!」
レイラは嬉しそうに笑う。
恐らくこれが、彼女の俺対策としての切り札なのだろう。
事前に発動させていなかったのは、常時発動させていたら俺がそれに気づいて先に対処される可能性があったからだろう。
「さあ、どうする?ガルガーノ?魔法の使えない貧弱な貴方に私を殺せるかしら」
レイラはにたにた笑いながら、俺へと近づいてくる。
奴が足を一歩踏み出すたびに、盛大に床が軋む。
一体何キロあるのやら。
「さあさあさあ。ピンチよ」
レイラは俺の直ぐ目の前に立って笑う。
魔法が無ければ何もできないと思っているのだろうが……
俺はそのムカつく顔面に、迷わず拳を叩き込んだ。
「ぶげぇ!」
レイラが潰れたカエルの様な声を上げる。
その巨体は宙を舞い、天蓋付きのベッドへと突っ込んだ。
彼女の重みと勢いに耐えきれなかったベッドが、豪快に粉砕する。
「な、なんでぇ……」
ガラガラと瓦礫を押しのけ、レイラがフラフラと起き上る。
その瞳はまるで不可解な物を見るかの様に、疑問の色に彩られていた。
「俺は魔法で脱獄したわけじゃない。この腕力でだ」
力こぶを作って見せる。
そしてレイラが落とした、宝玉を俺は広い握りつぶした。
「んな……」
「このトラップには最初から気づいていた。意味がないから無視しただけだ」
神封石で魔法が完全に封じられている俺にとって、このトラップはまったく意味をなさない。だから気にも留めなかった。
今宝玉を砕いたのは、にやついて宝玉を見せつけてきたレイラに対する意趣返しの様な物だ。別にトラップを止める為ではない。
「神封石はこの通り付いたままだ」
ズボンの裾を引っ張り上げ、足首についている枷を見せる。
「無駄な対策だったな」
「く……」
レイラが悔しそうに俯く。
自分の対策が無意味だった事が悔しいのだろう。
彼女は歯を食いしばって、体は震わせる。
精々自分の愚かさを――
「くっ……く……あーっははははははははは」
突然レイラが大声を上げて笑いだす。
俺は突然の事に、笑い転げる彼女を呆然と見つめる。
気でも狂ったのだろうか?
「はぁ……はぁ……馬鹿正直で、間抜けな所は相変わらずだねぇ。そんなんだから、牢獄に突っ込まれるんだよ」
笑い終えた彼女は聞き捨てならない言葉を吐き出す。
「なに?」
「馬鹿正直に教えなきゃ、あたしは魔法を警戒する事になったんだ。だけど態々自慢げに教えてくれたお陰で――」
レイラはドスドスと音を立てて壁際に走り。
そこに掛けてあった巨大な鉄の槌を手に取った。
「あたしは気兼ねなく、あんたをぶち殺せるってもんさ」
「成程。確かに魔法を匂わせれば、お前の動きは制限できたかもな。だが必要ない」
かつてのレイラ相手だったならば、それも作戦として必要だったかもしれない。
だが今の彼女なら――
「今のお前如き、小細工は不要だ。この拳で粉砕してやる」
「はっ!確かにパワーは認めてやる!けど、魔法の使えない賢者如きに負けるレイラ様じゃないよ!」
そういうと彼女はドスドスと巨体を揺らし、突っ込んでくる。
さあ、報復開始だ。
俺は拳を強く握り込み、レイラを迎え撃つ。
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