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15話 救出

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「ここか」

チンピラからの情報で裏路地を抜け、倉庫区画の奥へとやって来た。
目の前には壁に囲まれた大きな建物がある。
門は厳重に閉じられ、門番が鋭い眼光で辺りの様子を見張っていた。

どうやら情報に嘘は無かった様だ。
俺は物陰で冥界の扉ゲートを使ってポトフを呼び出した。

「お呼びでしょうか?大賢者様」

ゲートから黒いマリモの様な悪魔が現れ、俺に恭しく挨拶をする。

「俺を透明化させろ」

挨拶は返さず、俺は手短に用件を伝えた。
魔王の配下と無駄に馴れ合うつもりなどない。

「畏まりました」

そういうと口から泡を吹きだし、俺を包み込む。
泡に包まれた俺の体は少しづつ色を失い、最後には無色透明へと変化した。

「では、わたしはこれで。また御用がありましたらいつでもお呼びください」

そう言い残すとポトフは消える。
寿命は縮むので余り無駄遣いはしたくないのだが、今回はしょうがない。

何でもチンピラの所属する組織は誘拐を生業とするらしく。
アジトには攫われてきた者が閉じ込められているそうだ。
その為、正面から何も考えず突っ込めば人質に取られてしまうのは目に見えていた。
だからまず透明化して潜入し、攫われた人間を救出する。

ゲートに続いて俺は冥界の瞳アナザービジョンを発動させた。
情報が頭に一気に流れ込み、気分が悪くなる。

「これは慣れそうにないな」

だがこれで建物内の見取り図に警備の配置、それに捉えられている人達の居場所も分かった。
捉えられている数は全部で6人。
それと、恐らく妖精が一体だ。

妖精とは大陸の北にある、世界樹で暮らす精霊の一種だ。
めったに世界樹から出てこないと聞くが、ここの奴らはどうやってそんな妖精を捕まえたというのだろうか?
まあついでに助けてやるとしよう。

俺は物陰から出て、警備の横をすり抜ける。
姿が消えているうえに、気配を殺すように動いているので全く気付いていない。

正面の分厚い大扉は閉じ、鍵がかかっている。
そこで俺は裏口に回り込んだ。
そこではチンピラ共がカードに興じていた。

扉は開放されている。
俺はそこを通って建物に侵入する。
誘拐された人達はすべて地下だ。
一階には殆ど人がいないので、俺は堂々と大階段下にある隠し扉を通って地下へと向かう。

薄暗い階段を下りて行った先には、鉄の扉が備え付けられている。
この中には見張りが3人。
扉を開ければ姿を消していても侵入がばれてしまう可能性は高い。
いきなり扉が開いたら、余程の馬鹿でもない限り異変に気づくだろう。

しかもこの扉には、ご丁寧にも鍵が掛かっている。
無理やりこじ開ける以上、その音も中に響いてしまう。
これで気づかなかったら中の連中はボンクラ所の話ではなくなってしまう。

「さて、行くか」

ポイントは大声を出させない事だ。
用は上にバレなければいいのだ。
幸い1階には人が殆どいない。
余程の事がない限り気づくものはいないだろう。

俺はエル字型のドアノブを回して、そこに力いっぱい掌底をかます。
ガゴンと鈍い音が響き、ドアが大きく解放される。
と同時に俺は駆けた。

「な!?きさ――」

「おの――」

「ま、まて――」

3人の見張りを光の速さで殴り倒す。
大声を出す隙は与えなかった。
最初にドアを解放した音を誰かに聞きつけられていなければ、上の人間は異変に気付かないはずだ。
まあドアの音だけはどうしようもない。

「大丈夫か?助けに来たぞ」

地下室は牢獄になっている。
中には若い女性が3人と子供が3人だ。
俺の姿を見て怯えていた6人は、俺の言葉を聞いて顔を綻ばせる。

因みに俺の姿は、ノブへの掌底で透明化が切れて見えている。

「あ、ありが……ありがとう……ございまずぅ」

女性の一人が涙を流す。
余程怖い思いをしたのだろう。
それに続いて周りの子供達も泣き出す。
そんな彼女達の姿を見ていたら、無性に腹が立ってきた。

よし決めた。
此処の奴らは皆殺しだ。

捉えられている皆には分からない様、さり気無く倒した奴らの首を踏み抜き止めを刺した。
そして遺体から鍵を奪うと、俺は捉えられている人達を牢から解放する。

「さあ、脱出しよう」
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