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外伝 その王子と恋に落ちたら大変です 第七章 新たなる黄金竜の誕生
第二十六話 百年早い(中)
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ルドガーは、すぐさまジャクセンの仕事部屋内に“転移”した。
いつもなら、ルドガーがジャクセンの屋敷にやって来た時には、召使がルドガーを連れて、礼儀正しくジャクセンの仕事部屋の扉をノックし、中の召使が主人であるジャクセンの許しを得て、ルドガーを室内に招き入れてくれる。そうした一連の決まりめいた流れがあるのだが、この日、ルドガーは寝室に勝手に現れて枕をぶつけられていた時のように、ジャクセンのいる部屋内に許可も受けずに現れた(その時には、ジャクセンは魔道具の指輪を外していて、ルドガーの“転移”は阻まれることはなかった)。
ルドガーが現れても、ジャクセンは彼に視線を向けることなく、いつものように忙しそうに書類にサインをしたり、店舗からやってきた店員に指示を与えていた。
それで、ルドガーはツカツカと近寄って、ジャクセンの仕事をするデスクに両手をバンとついた(ちなみに、子供姿のルドガーは、身長が足りなかったので、足元を魔法で浮き上がらせた上で、そうした行為に及んでいた)。
それで、ようやくジャクセンはルドガーに視線を向けた。
「仕事中だ。邪魔をするな、ルドガー」
「おじいさまが襲われたという話を聞きました!! おじいさまを襲った不届き者はどこにいるんですか!!」
ルドガーはジャクセンの姿を、黄金色の瞳をギラギラと輝かせながら見つめる。
襲われたというジャクセンには、傷一つついていない。いつもの彼の姿や態度に変わりはない。
そのことに安堵する一方で、堪え切れない怒りが心の中を渦巻いていた。
(おじいさまを襲うなんて許せない!!)
その襲撃者は、四肢を引き裂いて、生まれたことを後悔するほど痛めつけて殺さなければならない。
ルドガーが怒りに目をギラギラと輝かせ、金の髪を逆立てて怒り狂っている様子とは裏腹に、ジャクセンの態度はあっさりしたものだった。
「護衛が止めて、男は警備隊に引き渡された」
ジャクセンの屋敷に警備隊の警備兵が来たのは、その時の聴収のためであった。
「あちらで処理される。別に騒ぐほどのことではない。むしろ、誰がお前にその話をしたのか、私は興味がある」
ジャクセンは執事を呼び、ルドガーにジャクセンが襲撃された件を漏らした召使を探すように話していた。口の軽い召使は害悪である。
ルドガーや、ひいては彼からその話を聞くであろうユーリスをこんなことで心配させるつもりは、ジャクセンにはなかった。過去にも、富豪であるジャクセンを狙っての襲撃や誘拐など、何度か発生したことがあったが、全て優秀な護衛達の阻止によって、未遂で終わっている。
そうした未遂で終わっている事件を、ジャクセンは家族が聞くことのないように内々で処理していた。家族達を怯えさせたくなかったからだ。そして彼は家族を守るため、常に屋敷の警備を厳重にしていた。
「僕がこれからはおじいさまをお守りします!! おじいさまが襲われるなんてことがあったら、僕には耐えられません!!」
前のめりになってそう宣言する黄金竜の雛である子供の姿のルドガーを、ジャクセンは冷ややかに一瞥していた。
「間に合っている。不要だ」
「僕がいつもおじいさまのそばにいます。そうしたら、おじいさまを傷つけようとする者が現れても、おじいさまが傷つくことはない。そうだ!! おじいさま」
ルドガーは良いことを思いついたように、金色に変わっている目を輝かせた。
「僕がおじいさまを変えてあげれば」
その時、冷ややかな怒りに満ちた声が響いた。
「ルドガー、それはしてはならないと言ったでしょう」
シルヴェスター王子と共に、突如、部屋の中に現れたのはユーリスだった。
いつもなら、ルドガーがジャクセンの屋敷にやって来た時には、召使がルドガーを連れて、礼儀正しくジャクセンの仕事部屋の扉をノックし、中の召使が主人であるジャクセンの許しを得て、ルドガーを室内に招き入れてくれる。そうした一連の決まりめいた流れがあるのだが、この日、ルドガーは寝室に勝手に現れて枕をぶつけられていた時のように、ジャクセンのいる部屋内に許可も受けずに現れた(その時には、ジャクセンは魔道具の指輪を外していて、ルドガーの“転移”は阻まれることはなかった)。
ルドガーが現れても、ジャクセンは彼に視線を向けることなく、いつものように忙しそうに書類にサインをしたり、店舗からやってきた店員に指示を与えていた。
それで、ルドガーはツカツカと近寄って、ジャクセンの仕事をするデスクに両手をバンとついた(ちなみに、子供姿のルドガーは、身長が足りなかったので、足元を魔法で浮き上がらせた上で、そうした行為に及んでいた)。
それで、ようやくジャクセンはルドガーに視線を向けた。
「仕事中だ。邪魔をするな、ルドガー」
「おじいさまが襲われたという話を聞きました!! おじいさまを襲った不届き者はどこにいるんですか!!」
ルドガーはジャクセンの姿を、黄金色の瞳をギラギラと輝かせながら見つめる。
襲われたというジャクセンには、傷一つついていない。いつもの彼の姿や態度に変わりはない。
そのことに安堵する一方で、堪え切れない怒りが心の中を渦巻いていた。
(おじいさまを襲うなんて許せない!!)
その襲撃者は、四肢を引き裂いて、生まれたことを後悔するほど痛めつけて殺さなければならない。
ルドガーが怒りに目をギラギラと輝かせ、金の髪を逆立てて怒り狂っている様子とは裏腹に、ジャクセンの態度はあっさりしたものだった。
「護衛が止めて、男は警備隊に引き渡された」
ジャクセンの屋敷に警備隊の警備兵が来たのは、その時の聴収のためであった。
「あちらで処理される。別に騒ぐほどのことではない。むしろ、誰がお前にその話をしたのか、私は興味がある」
ジャクセンは執事を呼び、ルドガーにジャクセンが襲撃された件を漏らした召使を探すように話していた。口の軽い召使は害悪である。
ルドガーや、ひいては彼からその話を聞くであろうユーリスをこんなことで心配させるつもりは、ジャクセンにはなかった。過去にも、富豪であるジャクセンを狙っての襲撃や誘拐など、何度か発生したことがあったが、全て優秀な護衛達の阻止によって、未遂で終わっている。
そうした未遂で終わっている事件を、ジャクセンは家族が聞くことのないように内々で処理していた。家族達を怯えさせたくなかったからだ。そして彼は家族を守るため、常に屋敷の警備を厳重にしていた。
「僕がこれからはおじいさまをお守りします!! おじいさまが襲われるなんてことがあったら、僕には耐えられません!!」
前のめりになってそう宣言する黄金竜の雛である子供の姿のルドガーを、ジャクセンは冷ややかに一瞥していた。
「間に合っている。不要だ」
「僕がいつもおじいさまのそばにいます。そうしたら、おじいさまを傷つけようとする者が現れても、おじいさまが傷つくことはない。そうだ!! おじいさま」
ルドガーは良いことを思いついたように、金色に変わっている目を輝かせた。
「僕がおじいさまを変えてあげれば」
その時、冷ややかな怒りに満ちた声が響いた。
「ルドガー、それはしてはならないと言ったでしょう」
シルヴェスター王子と共に、突如、部屋の中に現れたのはユーリスだった。
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