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外伝 その王子と恋に落ちたら大変です 第七章 新たなる黄金竜の誕生
第一話 抱卵
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ユーリス=バンクールが産んだ真っ白い竜の卵。
ユーリスとシルヴェスター王子は、卵を布の袋に入れて、胸元で温める作業を代わる代わる行っていた。
いわゆる“抱卵”である。
ユーリスは、かつて自分が卵を抱いて孵化させたウェイズリーのことを思い出して、懐かしそうな顔をしていた。
「ウェイズリーもこうやって温めて孵したものです」
ただ最初は、いつの間にか宿の寝台の上に転がっていた竜の卵をどうすればいいのか分からず、叔父のリヨンネに押し付けた。押し付けたはずなのに、また宿の寝台の上に再出現して転がっていたために、驚き呆れ、このまま放っておくのは可哀想だと思って温めたものだった。
ユーリスの手元にある、この真っ白い卵は、シルヴェスターとウェイズリー、そしてユーリスを親とする卵であった。
ユーリスは考え深げに、滑らかな真っ白い卵を優しく撫でる。
すると、卵は嬉しそうに震える。
「早く、孵らないかな」
そう言うと、シルヴェスターは微笑み、ユーリスの額に口づけた。
「そろそろ私が代わって温めようか」
「ええ、お願いできるでしょうか」
ユーリスが胸元から卵の入っている袋をそっと大切そうに取り上げると、シルヴェスターが今度は自分のシャツの前を開いて卵の入っている袋を斜めにかける。シャツの前を開けたことで、シルヴェスターの首筋や固く引き締まった筋肉のついた胸が見える。シルヴェスターは、学園時代からダンカンの冒険者ギルドにいて、王子の身分でありながら、実戦に身を置いていた。その身体には贅肉の一つもついていない。ユーリスは笑みを浮かべ、卵を渡しながらも王子の首元に顔を埋めた。シルヴェスターの首筋にそっと口づけを落とす。柔らかな唇の感触と吐息。シルヴェスターは身を軽く震わせた。
「ヴィーの匂いがする」
ユーリスも掠れた声でそんなことを言う。
「……誘惑しているのか」
身を寄せて来るユーリスの顔を見つめてシルヴェスターがそう言うと、ユーリスも笑った。
「そうですね。誘惑しているのかも知れません」
ユーリスの艶やかな黒髪の後頭部に手をやり、シルヴェスターはその唇に自分の唇を重ねた。互いの唇を食むような口づけをしばらく続ける。だが、胸元にある卵のことが気になるのか、シルヴェスターは困ったように眉を寄せる。
ユーリスの身を引き寄せ、これからそのまま本格的に愛し合おうとしては、胸元の卵を潰してしまいそうだ。
かといって卵を温めないわけにはいかないだろう。
そう考えているシルヴェスターに、ユーリスは言った。
「少しくらいなら、温めなくても大丈夫だと聞いています」
「お前をゆっくり時間をかけて愛したいのに」
シルヴェスター王子は不満そうだ。
そしてシルヴェスター王子の胸元の卵もまた、不満を表すようにブルブルと震えている。
親達からないがしろにされていると感じているようだ。
「確か、竜騎兵団には竜の卵を温める魔道具があると聞いたことがあります。その魔道具を購入しましょうか」
孵卵器である。
それを聞いたシルヴェスターは目を輝かせ、愛しい伴侶の身体を抱きしめながら「それは、早急に手配しなければならないな」と宣言していたのだった。
ユーリスとシルヴェスター王子は、卵を布の袋に入れて、胸元で温める作業を代わる代わる行っていた。
いわゆる“抱卵”である。
ユーリスは、かつて自分が卵を抱いて孵化させたウェイズリーのことを思い出して、懐かしそうな顔をしていた。
「ウェイズリーもこうやって温めて孵したものです」
ただ最初は、いつの間にか宿の寝台の上に転がっていた竜の卵をどうすればいいのか分からず、叔父のリヨンネに押し付けた。押し付けたはずなのに、また宿の寝台の上に再出現して転がっていたために、驚き呆れ、このまま放っておくのは可哀想だと思って温めたものだった。
ユーリスの手元にある、この真っ白い卵は、シルヴェスターとウェイズリー、そしてユーリスを親とする卵であった。
ユーリスは考え深げに、滑らかな真っ白い卵を優しく撫でる。
すると、卵は嬉しそうに震える。
「早く、孵らないかな」
そう言うと、シルヴェスターは微笑み、ユーリスの額に口づけた。
「そろそろ私が代わって温めようか」
「ええ、お願いできるでしょうか」
ユーリスが胸元から卵の入っている袋をそっと大切そうに取り上げると、シルヴェスターが今度は自分のシャツの前を開いて卵の入っている袋を斜めにかける。シャツの前を開けたことで、シルヴェスターの首筋や固く引き締まった筋肉のついた胸が見える。シルヴェスターは、学園時代からダンカンの冒険者ギルドにいて、王子の身分でありながら、実戦に身を置いていた。その身体には贅肉の一つもついていない。ユーリスは笑みを浮かべ、卵を渡しながらも王子の首元に顔を埋めた。シルヴェスターの首筋にそっと口づけを落とす。柔らかな唇の感触と吐息。シルヴェスターは身を軽く震わせた。
「ヴィーの匂いがする」
ユーリスも掠れた声でそんなことを言う。
「……誘惑しているのか」
身を寄せて来るユーリスの顔を見つめてシルヴェスターがそう言うと、ユーリスも笑った。
「そうですね。誘惑しているのかも知れません」
ユーリスの艶やかな黒髪の後頭部に手をやり、シルヴェスターはその唇に自分の唇を重ねた。互いの唇を食むような口づけをしばらく続ける。だが、胸元にある卵のことが気になるのか、シルヴェスターは困ったように眉を寄せる。
ユーリスの身を引き寄せ、これからそのまま本格的に愛し合おうとしては、胸元の卵を潰してしまいそうだ。
かといって卵を温めないわけにはいかないだろう。
そう考えているシルヴェスターに、ユーリスは言った。
「少しくらいなら、温めなくても大丈夫だと聞いています」
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シルヴェスター王子は不満そうだ。
そしてシルヴェスター王子の胸元の卵もまた、不満を表すようにブルブルと震えている。
親達からないがしろにされていると感じているようだ。
「確か、竜騎兵団には竜の卵を温める魔道具があると聞いたことがあります。その魔道具を購入しましょうか」
孵卵器である。
それを聞いたシルヴェスターは目を輝かせ、愛しい伴侶の身体を抱きしめながら「それは、早急に手配しなければならないな」と宣言していたのだった。
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