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外伝 その王子と恋に落ちたら大変です 第六章 その王子と竜に愛されたら大変です(下)
第十二話 紫竜からのお祝い(上)
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ラウデシア王国にいる紫竜ルーシェと、そのパートナーで竜騎兵であるアルバート王子が、是非、ユーリス達の結婚のお祝いをしたいと言ってきたので、ユーリスは黄金竜ウェイズリーの“転移”魔法を使って、竜騎兵団のリヨンネの部屋にやって来た。
春の初めに行われたゴルティニア王国の建国とシルヴェスター王子の婚礼の式典。あいにくと、その式典にはアルバート王子達は都合が合わず出席出来なかったのだ。出席したリヨンネから「素晴らしい式だった。ユーリスもすごく綺麗だったよ」とお土産を渡されながら、その華やかな式典の様子について話をされたものだから、以前よりユーリスやシルヴェスター王子、黄金竜ウェイズリーと再会したいと思っていた紫竜ルーシェは、「俺達も会ってお祝いを言いたい!!」と言って、リヨンネ(ユーリスの叔父)→ジャクセン(バンクール商会長でユーリスの父)→ユーリスという親族経由で話が回され、今日のこの日を迎えたのだった。
ユーリスは、小さな黄金竜の雛を胸元にぺったりと張り付かせたまま、ラウデシア王国の竜騎兵団の青竜寮のリヨンネに与えられている一室に現れた。
黄金竜ウェイズリーは、一度でも行ったことのある場所には“転移”することが出来る。卵から孵って生まれたばかりの頃、ウェイズリーはこのリヨンネの部屋に来たことがあるのだ。だから、すんなりとリヨンネの部屋の中に、ユーリスと黄金竜ウェイズリーは現れたのだった。
部屋の中でユーリスの出現を待ち構えていたのは、紫竜ルーシェとアルバート王子、叔父のリヨンネとキース、アルバート王子の護衛騎士バンナムと魔術師レネの六名であった。それほど広くないリヨンネの部屋は、ユーリス達を迎えていっぱいいっぱいという様子だった。
ユーリスがアルバート王子と紫竜ルーシェに再会するのは、あのシルヴェスター王子の伝言と叔父リヨンネの手紙を届けに来た時以来である。あれから、ユーリスはシルヴェスター王子に会うために留学していたアレドリア王国からイスフェラ皇国へ渡り、旧カリン王国まで行った。今や再会したシルヴェスター王子と婚姻まで結んでいる。まだ結ばれる前の、二人の恋の行方を心配していたルーシェとアルバート王子からしてみれば、まことにめでたいことだった。
アルバート王子に抱っこされている小さな紫色の竜は、部屋の中に現れたのがユーリスと黄金竜ウェイズリーだけで、シルヴェスター王子がいないことに気が付くと「ピルピルピルルルー?(あれ、お兄さん王子は?)」と尋ねてくる。折角の結婚のお祝いを、二人揃ったところでしたかったのだ。でも、シルヴェスターは建国したばかりの新王国の王子である。忙しくてプライベートなお祝いの場にも出られないのも仕方がないのかも知れないと、そんなことをルーシェが内心思っているところで、ユーリスは自分の胸元にいる黄金竜ウェイズリーに言った。
「ヴィーに交替してくれる?」
途端、黄金竜ウェイズリーが消え去り、その場にアルバート王子の兄である、シルヴェスター王子が現れた。
「ピルピルピルピルピルピルゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!」
驚いて、紫竜ルーシェの目が丸くなり、ピンとその尻尾も立ち上がっていた。
それは、部屋の中にいた他の者達も同様だった。
ユーリスの胸元にいた黄金竜の雛ウェイズリーの姿が消えると同時に、目の前に金髪碧眼のがっしりとした体躯のシルヴェスター王子が現れた。彼はすかさずユーリスのそばに立って、彼の腰を抱くようにして立っていた。
「久しぶりだな」
「久しぶりじゃない」「これは一体どういうことなのだ」と問い詰めたかったリヨンネやアルバート王子、ルーシェ達であったが、今は驚きのあまり、口は開いており、何も言葉を発することが出来ない。
その様子に気が付いたユーリスが、一同の前で話し始めた。
ユーリスはここへ来る前から、シルヴェスター王子の弟アルバート王子とそのパートナーの紫竜ルーシェと仲間達には、自分達の秘密を明かそうと考えていた。アルバート王子とルーシェ達は、ユーリスが黄金竜ウェイズリーを孵した時から、ユーリスが黄金竜をそばに置いて育てているという秘密をずっと守り続けてくれたのだ。彼らに秘密を話しても、決して他言しない、信頼できる者達であるという認識がユーリスにはあった。
「シルヴェスターは、とあることから、黄金竜ウェイズリーと“同化”して“一体化”しているのです。彼は今、シルヴェスター王子でもあり、黄金竜でもある存在なのです」
その言葉に、竜の生態学者でもあるリヨンネがすかさず「竜と“同化”ってどういうことなんだ!!」と食いついてくる。それからリヨンネは、どういう状態でシルヴェスター王子とウェイズリーが“同化”したのか、事細かに質問をぶつけてくる。その食いつき具合に、若干ユーリスとシルヴェスター王子は引き気味であったが、リヨンネの質問に丁寧に答えていた。
ユーリスは、サトー王国との戦いの中で、シルヴェスターが半ば死にかけて帰還した時、黄金竜ウェイズリーに彼を救ってくれるように願ったという。そして黄金竜ウェイズリーは番であるユーリスの願いを叶え、シルヴェスター王子と“同化”した。
一連の話を聞いたリヨンネは考え深げであった。
「……なるほど、だから“同調”をすることを、竜騎兵達は禁止されているのかも知れませんね。“同調”から戻れなくなる者がいるという話を聞いていましたが、それが“同化”というわけですか」
ユーリスは静かに頷きながら答えた。
「ええ、シルヴェスターとウェイズリーは“一体化”しているので、この世に同時に現れることは出来ないのです。彼は、ゴルティニア王国の王子でもあり、黄金竜でもある人です」
今や、シルヴェスターは、ゴルティニア王国の世継ぎの王子でもあり、王国を守る黄金竜そのもの。
そしてユーリスは、二人の伴侶であるのだった。
春の初めに行われたゴルティニア王国の建国とシルヴェスター王子の婚礼の式典。あいにくと、その式典にはアルバート王子達は都合が合わず出席出来なかったのだ。出席したリヨンネから「素晴らしい式だった。ユーリスもすごく綺麗だったよ」とお土産を渡されながら、その華やかな式典の様子について話をされたものだから、以前よりユーリスやシルヴェスター王子、黄金竜ウェイズリーと再会したいと思っていた紫竜ルーシェは、「俺達も会ってお祝いを言いたい!!」と言って、リヨンネ(ユーリスの叔父)→ジャクセン(バンクール商会長でユーリスの父)→ユーリスという親族経由で話が回され、今日のこの日を迎えたのだった。
ユーリスは、小さな黄金竜の雛を胸元にぺったりと張り付かせたまま、ラウデシア王国の竜騎兵団の青竜寮のリヨンネに与えられている一室に現れた。
黄金竜ウェイズリーは、一度でも行ったことのある場所には“転移”することが出来る。卵から孵って生まれたばかりの頃、ウェイズリーはこのリヨンネの部屋に来たことがあるのだ。だから、すんなりとリヨンネの部屋の中に、ユーリスと黄金竜ウェイズリーは現れたのだった。
部屋の中でユーリスの出現を待ち構えていたのは、紫竜ルーシェとアルバート王子、叔父のリヨンネとキース、アルバート王子の護衛騎士バンナムと魔術師レネの六名であった。それほど広くないリヨンネの部屋は、ユーリス達を迎えていっぱいいっぱいという様子だった。
ユーリスがアルバート王子と紫竜ルーシェに再会するのは、あのシルヴェスター王子の伝言と叔父リヨンネの手紙を届けに来た時以来である。あれから、ユーリスはシルヴェスター王子に会うために留学していたアレドリア王国からイスフェラ皇国へ渡り、旧カリン王国まで行った。今や再会したシルヴェスター王子と婚姻まで結んでいる。まだ結ばれる前の、二人の恋の行方を心配していたルーシェとアルバート王子からしてみれば、まことにめでたいことだった。
アルバート王子に抱っこされている小さな紫色の竜は、部屋の中に現れたのがユーリスと黄金竜ウェイズリーだけで、シルヴェスター王子がいないことに気が付くと「ピルピルピルルルー?(あれ、お兄さん王子は?)」と尋ねてくる。折角の結婚のお祝いを、二人揃ったところでしたかったのだ。でも、シルヴェスターは建国したばかりの新王国の王子である。忙しくてプライベートなお祝いの場にも出られないのも仕方がないのかも知れないと、そんなことをルーシェが内心思っているところで、ユーリスは自分の胸元にいる黄金竜ウェイズリーに言った。
「ヴィーに交替してくれる?」
途端、黄金竜ウェイズリーが消え去り、その場にアルバート王子の兄である、シルヴェスター王子が現れた。
「ピルピルピルピルピルピルゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!」
驚いて、紫竜ルーシェの目が丸くなり、ピンとその尻尾も立ち上がっていた。
それは、部屋の中にいた他の者達も同様だった。
ユーリスの胸元にいた黄金竜の雛ウェイズリーの姿が消えると同時に、目の前に金髪碧眼のがっしりとした体躯のシルヴェスター王子が現れた。彼はすかさずユーリスのそばに立って、彼の腰を抱くようにして立っていた。
「久しぶりだな」
「久しぶりじゃない」「これは一体どういうことなのだ」と問い詰めたかったリヨンネやアルバート王子、ルーシェ達であったが、今は驚きのあまり、口は開いており、何も言葉を発することが出来ない。
その様子に気が付いたユーリスが、一同の前で話し始めた。
ユーリスはここへ来る前から、シルヴェスター王子の弟アルバート王子とそのパートナーの紫竜ルーシェと仲間達には、自分達の秘密を明かそうと考えていた。アルバート王子とルーシェ達は、ユーリスが黄金竜ウェイズリーを孵した時から、ユーリスが黄金竜をそばに置いて育てているという秘密をずっと守り続けてくれたのだ。彼らに秘密を話しても、決して他言しない、信頼できる者達であるという認識がユーリスにはあった。
「シルヴェスターは、とあることから、黄金竜ウェイズリーと“同化”して“一体化”しているのです。彼は今、シルヴェスター王子でもあり、黄金竜でもある存在なのです」
その言葉に、竜の生態学者でもあるリヨンネがすかさず「竜と“同化”ってどういうことなんだ!!」と食いついてくる。それからリヨンネは、どういう状態でシルヴェスター王子とウェイズリーが“同化”したのか、事細かに質問をぶつけてくる。その食いつき具合に、若干ユーリスとシルヴェスター王子は引き気味であったが、リヨンネの質問に丁寧に答えていた。
ユーリスは、サトー王国との戦いの中で、シルヴェスターが半ば死にかけて帰還した時、黄金竜ウェイズリーに彼を救ってくれるように願ったという。そして黄金竜ウェイズリーは番であるユーリスの願いを叶え、シルヴェスター王子と“同化”した。
一連の話を聞いたリヨンネは考え深げであった。
「……なるほど、だから“同調”をすることを、竜騎兵達は禁止されているのかも知れませんね。“同調”から戻れなくなる者がいるという話を聞いていましたが、それが“同化”というわけですか」
ユーリスは静かに頷きながら答えた。
「ええ、シルヴェスターとウェイズリーは“一体化”しているので、この世に同時に現れることは出来ないのです。彼は、ゴルティニア王国の王子でもあり、黄金竜でもある人です」
今や、シルヴェスターは、ゴルティニア王国の世継ぎの王子でもあり、王国を守る黄金竜そのもの。
そしてユーリスは、二人の伴侶であるのだった。
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