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外伝 その王子と恋に落ちたら大変です 第六章 その王子と竜に愛されたら大変です(下)
第五話 もう一度(上)
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結局、義父となるダンカン新国王とシルヴェスター王子に押し切られるように、ユーリスはその後、王都内を巡るパレードの馬車にも乗せられた。王宮へ戻れば今度は、長々と祝いの食事会が大広間で開かれる。玉座に座るダンカン新国王の横のシルヴェスター王子の、更にその横にユーリスは座って、その宴のさなかも笑顔で来賓達に応接していた。
そんな時間が夜までずっと続いたのである。
ようやくユーリスが、シルヴェスター王子と二人して、新王宮の自分達の居室へ戻ってきた時には夜も遅くの時間であった。疲れ切ったユーリスが、バタンと寝台の上に倒れるように横になると、シルヴェスターはその寝台のユーリスのそばに座って、ユーリスの黒髪を撫でた。
「疲れたな」
「ええ」
「……ユーリス、お前が疲れているところに、申し訳ないのだが」
「……どうしたのですか?」
寝台の上に横になったままユーリスが、言い淀んでいるシルヴェスターに視線で問いかけると、シルヴェスターはユーリスの髪を優しく撫で続けながら、口を開いた。
「ウェイズリーが、もう一度、今度は空中城の方で、お前と式を挙げたいと言っているのだが……」
寝台の上に横たわっていたユーリスの青い両眼が、信じられないように大きく見開かれた。
「え?」
「私とお前が、結婚式を挙げたのなら、自分もあの空中城で式を挙げると言い張っていて」
シルヴェスターは、非常に申し訳なさげな口調である。疲れ切っているユーリスをさらに疲れさせるような行事がまだまだ続くというのだ。
「明日ではダメなのですか」
「同じ日に挙げたいというのだ。ウェイズリーは“仲間外れ”は嫌だと言っている」
「“仲間外れ”とかそういう問題じゃないでしょうが………………」
だいたい、シルヴェスターと黄金竜ウェイズリーは同一体なのである。シルヴェスターと婚姻したことで、黄金竜ウェイズリーとも、ユーリスは今回の式で婚姻したことになる。もう一度わざわざ式を挙げる必要などない。
そのことはシルヴェスターも理解していた。
しかし、シルヴェスターの中のウェイズリーは、せっせと番のために築きあげたあの純白の城で、愛しい番と式を挙げたいという気持ちでいっぱいだった。それを「ダメだ」と冷たく突き放すことは、シルヴェスターには出来なかった。
ユーリスに対して非常に健気な黄金竜の雛に、同化しているシルヴェスターも随分と同情的になっていた。
「ユーリス……」
シルヴェスターの碧い目が懇願するようにユーリスを見つめると、ユーリスは深いため息を飲み込んで、頷いた。
「分かりました」
途端、ユーリスの前に小さな黄金竜の雛が、シルヴェスター王子の体に代わって現れて、「キュルルルルルルルル!!!!」と囀り、ユーリスの胸にぺったりと張り付いたのだった。
黄金竜ウェイズリーは、ユーリスを空中城まで“転移”魔法で連れていく。ユーリス達が現れると同時に、準備のために待ち構えていた小人達がわらわらと出迎えた。この日のために小人達が精魂込めて作り上げた礼服に、ユーリスを着替えさせていく。そしていつの間にか、ユーリスの前には小さな黄金竜の雛から、黄金色の豊かな髪をなびかせた若い男の姿に変わったウェイズリーもいて、彼もユーリスと揃いの白の礼服を纏っていた。
ウェイズリーは、眩しいほどの笑顔を浮かべて、ユーリスの手を取り、彼は言ったのだ。
「ユーリス、お前が大好きだ。愛しているよ」
その言葉をユーリスは知っていた。
傷つき倒れたシルヴェスターを、救って欲しいと望んだユーリスに、小さな黄金竜の雛は、ユーリスの足にしがみついて、ユーリスを見上げて言った言葉だった。
その真摯な、あまりにも真っ直ぐな言葉に、ユーリスは一瞬言葉を失ってしまう
人間の男のユーリスのことを、番だと言い張って、出会った時からずっとこの黄金竜の雛ウェイズリーは、ただただ愛を囁いていた。ユーリスが応えることは出来ないと突っぱねても、健気なほどこの黄金竜である男は、ユーリスを求めていた。
そのひたむきさに、胸が強く締め付けられる思いになる。
ユーリスは、ウェイズリーの差し出された大きな手を受け取り、自然と口について言っていた。
「私もお前を愛しているよ、ウェイズリー」
そんな時間が夜までずっと続いたのである。
ようやくユーリスが、シルヴェスター王子と二人して、新王宮の自分達の居室へ戻ってきた時には夜も遅くの時間であった。疲れ切ったユーリスが、バタンと寝台の上に倒れるように横になると、シルヴェスターはその寝台のユーリスのそばに座って、ユーリスの黒髪を撫でた。
「疲れたな」
「ええ」
「……ユーリス、お前が疲れているところに、申し訳ないのだが」
「……どうしたのですか?」
寝台の上に横になったままユーリスが、言い淀んでいるシルヴェスターに視線で問いかけると、シルヴェスターはユーリスの髪を優しく撫で続けながら、口を開いた。
「ウェイズリーが、もう一度、今度は空中城の方で、お前と式を挙げたいと言っているのだが……」
寝台の上に横たわっていたユーリスの青い両眼が、信じられないように大きく見開かれた。
「え?」
「私とお前が、結婚式を挙げたのなら、自分もあの空中城で式を挙げると言い張っていて」
シルヴェスターは、非常に申し訳なさげな口調である。疲れ切っているユーリスをさらに疲れさせるような行事がまだまだ続くというのだ。
「明日ではダメなのですか」
「同じ日に挙げたいというのだ。ウェイズリーは“仲間外れ”は嫌だと言っている」
「“仲間外れ”とかそういう問題じゃないでしょうが………………」
だいたい、シルヴェスターと黄金竜ウェイズリーは同一体なのである。シルヴェスターと婚姻したことで、黄金竜ウェイズリーとも、ユーリスは今回の式で婚姻したことになる。もう一度わざわざ式を挙げる必要などない。
そのことはシルヴェスターも理解していた。
しかし、シルヴェスターの中のウェイズリーは、せっせと番のために築きあげたあの純白の城で、愛しい番と式を挙げたいという気持ちでいっぱいだった。それを「ダメだ」と冷たく突き放すことは、シルヴェスターには出来なかった。
ユーリスに対して非常に健気な黄金竜の雛に、同化しているシルヴェスターも随分と同情的になっていた。
「ユーリス……」
シルヴェスターの碧い目が懇願するようにユーリスを見つめると、ユーリスは深いため息を飲み込んで、頷いた。
「分かりました」
途端、ユーリスの前に小さな黄金竜の雛が、シルヴェスター王子の体に代わって現れて、「キュルルルルルルルル!!!!」と囀り、ユーリスの胸にぺったりと張り付いたのだった。
黄金竜ウェイズリーは、ユーリスを空中城まで“転移”魔法で連れていく。ユーリス達が現れると同時に、準備のために待ち構えていた小人達がわらわらと出迎えた。この日のために小人達が精魂込めて作り上げた礼服に、ユーリスを着替えさせていく。そしていつの間にか、ユーリスの前には小さな黄金竜の雛から、黄金色の豊かな髪をなびかせた若い男の姿に変わったウェイズリーもいて、彼もユーリスと揃いの白の礼服を纏っていた。
ウェイズリーは、眩しいほどの笑顔を浮かべて、ユーリスの手を取り、彼は言ったのだ。
「ユーリス、お前が大好きだ。愛しているよ」
その言葉をユーリスは知っていた。
傷つき倒れたシルヴェスターを、救って欲しいと望んだユーリスに、小さな黄金竜の雛は、ユーリスの足にしがみついて、ユーリスを見上げて言った言葉だった。
その真摯な、あまりにも真っ直ぐな言葉に、ユーリスは一瞬言葉を失ってしまう
人間の男のユーリスのことを、番だと言い張って、出会った時からずっとこの黄金竜の雛ウェイズリーは、ただただ愛を囁いていた。ユーリスが応えることは出来ないと突っぱねても、健気なほどこの黄金竜である男は、ユーリスを求めていた。
そのひたむきさに、胸が強く締め付けられる思いになる。
ユーリスは、ウェイズリーの差し出された大きな手を受け取り、自然と口について言っていた。
「私もお前を愛しているよ、ウェイズリー」
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