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外伝 その王子と恋に落ちたら大変です  第三章 再びの出会い

第二十五話 詫びを入れる

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 クラン“竜の牙”に、皇国の三人の皇女達が真っ青な顔をして現れた。
 護衛や侍女達を引き連れたその美しい皇女達は、副クラン長フィアとユーリスの前で、驚いたことに両手両膝をつき、床に頭を擦りつけるようにして謝罪した。
 もう二度と、ユーリスを傷つけるようなことをしないと、涙ながらに震えながら言ったのだ。

 何故彼女達がこうして謝罪するのかよく分からないユーリスは、呆然と彼女達を見つめる。
 彼女達は「お詫びの品です。どうぞお収めください」と述べて、金貨のぎっしりと詰まった壺を五つも置いてそこから立ち去った。
 その様子を黙って見守っていたフィアは、皇女達が渡した金貨の壺を見つめて口笛を吹いていた。

「随分と気前の良いことですね。しかし、なんでまたこんな急に、貴方に謝罪しようという気になったのでしょう」

 副クラン長フィアは、ユーリスが暴れ馬に襲われた一件や、刃物で襲われそうになった事件の報告を受けていた。おそらくそれは、シルヴェスター王子に想いを寄せる皇女達の仕業だろうとは思っていた。
 ユーリスの周囲を護衛達でしっかりと固め、これからも気を配り、危険がないようにしなければならないと心に決めていたところにコレである。
 こんな形であっさりと解決するとは思わなかった。

 ユーリスはピンと来ていない様子だった。
 暴れ馬に襲われた時は、勿論驚いたのだが、後は全て護衛を務めていた冒険者達がよく防いでくれた。そもそもあの一件が、皇女達の手によるものだと、この謝罪で知ったくらいである。

「貰って困るものではない。金貨は受け取っておきなさい」

 そうフィアは言う。

「そうですね」

 ユーリスは困ったような顔をしながらも頷いて、その金貨の入った壺をシルヴェスターの部屋へ置いておくことにした。



 三人の皇女達が謝罪に来て、ユーリスに大量の金貨を捧げた様子を、黄金竜の雛ウェイズリーもどこからか眺めていた。もう二度とユーリスを傷つけることはしないという言葉を聞いて、とりあえず、三人の皇女達を一旦は、許してやることにした。
 ただ、ウェイズリーは番を傷つけようとしたものを完全に許すつもりはなかったから、三人の皇女達の身には、彼女達の知らぬうちに、小さな金色の芽が巻き付き、何か裏切るような行為があれば、いつでもその細首を絞めることが出来るようにしていた。

 夜、静かに寝台の上で眠りに落ちるユーリスを、黄金竜の雛は、愛し気に見つめ、そっと身を寄せていた。
 美しいユーリスは、これから先もきっと、煩わしい虫を呼び寄せてしまうだろう。
 だが、これから先もずっと、ウェイズリーは、ユーリスを守り続けるつもりだった。

 ユーリスは、ウェイズリーの番だから。
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