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外伝 はじまりの物語 第二章 彼の願いは
第四話 祝いの宴(下)
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宴の席で、勇者である鈴木は多くの人々に讃えられ、是非ともこの国にこのまま残って欲しいとせがまれた。
しかし、鈴木は「残念ではありますが」と言いながらキッパリと断っていた。
それから、鈴木の持つ勇者の証である“勇者の剣”を触らせて欲しいという願いも相次いでいた。
鈴木は困った顔をしていたが、鞘に入れておけば誰にも抜けることのない剣である。“試し”をさせるには問題ないと、鞘に入れたままの“勇者の剣”をテーブルの上に置いた。そこに人々は列を為して、自分も勇者になれるかと意気込んで“試し”をしていた。
皆、懸命に鞘から剣を抜こうとしていたが、誰一人として剣を抜くことは出来なかった。
雪也は「勇者だからあの剣を抜けるんだ。勇者の鈴木以外の誰も抜けないのは当たり前じゃんか。鈴木は凄いんだから」と言って、少し鼻を高くしていた。
我が事のように、鈴木の事が誇らしいようだ。
見れば、佐藤優斗も“勇者の剣”の試しをしていたが、やはり剣は抜けなかったようだ。
そして、雪也が「勇者の鈴木は凄いんだ」と口にしていたことを耳にして、彼は真っすぐに雪也を見つめた。
佐藤のぶ厚い眼鏡のレンズの向こうの両眼は、黒々として、どこか虚ろな様子があった。
「お前は、本当に何も考えてない奴だな。その勇者の鈴木のせいで、僕達は巻き込まれてこんな異世界に来させられたのに」
佐藤は言った。
どこまでも平坦なその声。
「え?」
雪也も、彼の隣にいた勇者の鈴木も動きを止める。
佐藤は言葉を続ける。
「あの時、あの場所に、鈴木と一緒にいただけで僕達は巻き込まれた。嗚呼、なんで僕はあの時、あの場所に鈴木と一緒にいたんだろう。鈴木と一緒にいなければ巻き込まれることはなかったのに」
佐藤は雪也から、鈴木に視線をやる。
「お前が一緒にいなければ良かったのに」
その言葉に、鈴木は立ち尽くし、雪也は言い返す。
「佐藤、お前なんてこと言うんだよ!! 鈴木のおかげで俺達は元の世界に帰れることになったんだぞ!!」
「そもそも、鈴木があの場所にいなければ、僕達はこんなことにはならなかった」
佐藤は淡々と言葉を続けた。
「こいつがいなければ良かったんだよ」
そう言う佐藤に、言い返そうとする雪也の腕を、鈴木が強く引いた。
「ユキ、言い返さなくていい」
佐藤はじっと鈴木と雪也の二人を見つめ、それから踵を返してどこかへ行ってしまった。
佐藤の消えていく姿を鈴木は見つめている。
「あいつ、酷い。鈴木が頑張って魔人を倒して元の世界に戻れるようにしてくれたのに」
悔しそうに雪也は言っているが、鈴木はぽつりと言った。
「彼の言葉には一理ある」
そう。
そもそも鈴木があの道にいなければ、佐藤達は鈴木の召喚に巻き込まれてこんな異世界に来ることはなかった。
「鈴木が頑張ってくれた」と言う雪也だって、あの時、鈴木とあの道にいなければ、異世界に来て、いらん苦労をしなくて済んだはずだ。
佐藤の言葉は真実を突いている。だから鈴木は言い返すことは出来なかった。
しかし、雪也は苛立ったようにため息をつく。
「佐藤はひねくれ過ぎだ。異世界に来てあいつら、体調崩したりして大変なのは分かるけど、鈴木のせいだって言うのは間違えている。鈴木だって“巻き込まれた”だけじゃんか。異世界に来たのは鈴木のせいじゃない」
雪也は真っ直ぐに鈴木を見つめて、言った。
「鈴木のせいじゃないからな」
しかし、鈴木は「残念ではありますが」と言いながらキッパリと断っていた。
それから、鈴木の持つ勇者の証である“勇者の剣”を触らせて欲しいという願いも相次いでいた。
鈴木は困った顔をしていたが、鞘に入れておけば誰にも抜けることのない剣である。“試し”をさせるには問題ないと、鞘に入れたままの“勇者の剣”をテーブルの上に置いた。そこに人々は列を為して、自分も勇者になれるかと意気込んで“試し”をしていた。
皆、懸命に鞘から剣を抜こうとしていたが、誰一人として剣を抜くことは出来なかった。
雪也は「勇者だからあの剣を抜けるんだ。勇者の鈴木以外の誰も抜けないのは当たり前じゃんか。鈴木は凄いんだから」と言って、少し鼻を高くしていた。
我が事のように、鈴木の事が誇らしいようだ。
見れば、佐藤優斗も“勇者の剣”の試しをしていたが、やはり剣は抜けなかったようだ。
そして、雪也が「勇者の鈴木は凄いんだ」と口にしていたことを耳にして、彼は真っすぐに雪也を見つめた。
佐藤のぶ厚い眼鏡のレンズの向こうの両眼は、黒々として、どこか虚ろな様子があった。
「お前は、本当に何も考えてない奴だな。その勇者の鈴木のせいで、僕達は巻き込まれてこんな異世界に来させられたのに」
佐藤は言った。
どこまでも平坦なその声。
「え?」
雪也も、彼の隣にいた勇者の鈴木も動きを止める。
佐藤は言葉を続ける。
「あの時、あの場所に、鈴木と一緒にいただけで僕達は巻き込まれた。嗚呼、なんで僕はあの時、あの場所に鈴木と一緒にいたんだろう。鈴木と一緒にいなければ巻き込まれることはなかったのに」
佐藤は雪也から、鈴木に視線をやる。
「お前が一緒にいなければ良かったのに」
その言葉に、鈴木は立ち尽くし、雪也は言い返す。
「佐藤、お前なんてこと言うんだよ!! 鈴木のおかげで俺達は元の世界に帰れることになったんだぞ!!」
「そもそも、鈴木があの場所にいなければ、僕達はこんなことにはならなかった」
佐藤は淡々と言葉を続けた。
「こいつがいなければ良かったんだよ」
そう言う佐藤に、言い返そうとする雪也の腕を、鈴木が強く引いた。
「ユキ、言い返さなくていい」
佐藤はじっと鈴木と雪也の二人を見つめ、それから踵を返してどこかへ行ってしまった。
佐藤の消えていく姿を鈴木は見つめている。
「あいつ、酷い。鈴木が頑張って魔人を倒して元の世界に戻れるようにしてくれたのに」
悔しそうに雪也は言っているが、鈴木はぽつりと言った。
「彼の言葉には一理ある」
そう。
そもそも鈴木があの道にいなければ、佐藤達は鈴木の召喚に巻き込まれてこんな異世界に来ることはなかった。
「鈴木が頑張ってくれた」と言う雪也だって、あの時、鈴木とあの道にいなければ、異世界に来て、いらん苦労をしなくて済んだはずだ。
佐藤の言葉は真実を突いている。だから鈴木は言い返すことは出来なかった。
しかし、雪也は苛立ったようにため息をつく。
「佐藤はひねくれ過ぎだ。異世界に来てあいつら、体調崩したりして大変なのは分かるけど、鈴木のせいだって言うのは間違えている。鈴木だって“巻き込まれた”だけじゃんか。異世界に来たのは鈴木のせいじゃない」
雪也は真っ直ぐに鈴木を見つめて、言った。
「鈴木のせいじゃないからな」
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