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第十五章 この世界で君と共に
第十六話 総力戦(上)
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リン王太子妃は、毎日、朝も早い時間にカルフィー魔道具店の“水場”に、魔術師カルフィーに連れてきてもらい、そして素足を“水場”の冷たい水に浸からせている。
毎日“水場”の水に足を浸して、根気よくその水の中から濃い魔力を吸い上げているものだから、すでにリン王太子妃の身は恐ろしいほどの量の“魔素”を蓄えていた。同じことがルーシェや三橋友親にも起きているようだった。三橋友親に至っては、リン王太子妃が王宮へ戻った後もこの地下の“水場”の水の中で横になっていたりする。もしその水の中で静かに横たわっている友親の姿をリン王太子妃が見つけたのなら、間違いなく、ルーシェと同じく「友親が死んでる!!」と絶叫するだろう。
幸いな事にその姿を見られることはなかった。
三橋友親は、もし、ハルヴェラ王国がサトー王国の侵攻を受けたのなら、すぐさま自分に“遠話魔道具”で知らせるように、リン王太子妃に頼んでいた。侵攻当初、“星弾”の初撃を防ぐ役目を負っているリン王太子妃は、それが出来ないだろうから、彼女は何人もの侍従や女官達に、“遠話魔道具”で、三橋友親だけでなく、イスフェラ皇国以下の同盟国に連絡するように命じていた。それがスムーズになされるよう、侍従達には訓練すら彼女は施していた。
それこそ、いつサトー王国が侵攻してきても良いように。
各国への連絡がスムーズに行われること。
そのことがハルヴェラ王国の死活問題に繋がるものだから、王宮の者達も真剣に訓練に励んでいた。
仮初の平和な日々が流れていく。
いつかサトー王国が攻め込んでくる。そのことが分かりつつも、爪の先を鋭く研がすように備えるしかなかった。そして備えつつも平穏な毎日を繰り返していく。
エイベル副騎兵団長ら竜騎兵達がハルヴェラ王国に来て、五週間が経過した時、ようやく事態が動いたのだった。
「西方、アレドリア王国方面から“星弾”が飛んできているとのことです!!!!」
アレドリア王国方面から“星弾”が飛んでくることは予期していた。
王宮の面々に緊張が走り、侍従や女官達は“遠話魔道具”にかじりついて、事前に訓練されていたように同盟各国へ連絡をする。
アレドリア王国方面から飛ばしてくる“星弾”がハルヴェラ王国に到着するまでにはまだ猶予がある。発見が早ければその分だけ対応する時間もあるのだ。
リン王太子妃は、王宮魔術師達を率いて、これまた事前に組み上げていた王宮の物見櫓に登った。
そして同時刻、紫竜ルーシェはすぐさま成竜の姿をとってアルバート王子を背に乗せる。同じく、エイベル副騎兵団長も、麾下の竜騎兵達を率いていつでも飛び立てるよう準備を進める。そして彼らの前に“転移”魔法を使った魔術師カルフィーが現れ、事前に打ち合わせをしていたように、カルフィーはアルバート王子達竜騎兵達を、アレドリア王国内のサトーがいるであろう地点へ“転移”させた。竜でアレドリア王国に飛んでいくよりも、“転移”魔法を使う方が圧倒的に早く、佐藤の元に到着できるはずだからだ。
リン王太子妃は、自身の両腕に複数の魔法紋を刻ませていた。
一人ではなく複数の王宮魔術師達に自分の“魔素”を与える道を作るためだった。
その魔法紋が白く光を放つ。
そして王宮詰めの魔術師達が呪文を唱えだす。
アレドリア王国の国境を越え、巨大な“星弾”が飛んでくる。
その“星弾”の前に、これまた巨大な防御魔法が幾重にも重なり現れ、それに衝突した“星弾”が轟音と共に落ちていった。
アレドリア王国内に“転移”していた佐藤優斗は、一撃目の“星弾”が防御魔法の壁にぶつかり、凄まじい轟音と、地面を揺らすような振動で、それが落ちたことを知って驚いて立ち尽くしていた。
「……ハルヴェラ王国に“星弾”を防ぐ術があるとは聞いていないぞ」
その佐藤の言葉に、そばについていた魔の三公が一人ヴィータが頷きつつも言った。
「我々が次にハルヴェラ王国へ侵攻すると予想していたのでしょう。陛下、二撃目はいかがなさいますか」
「やる。魔族達も侵攻させろ。アレドリア王国と同じ手でいけばいい」
「分かりました」
防御魔法を展開する魔術師達を見つけて、それらを倒せば良いだけだった。そうすれば“星弾”から国を守る手段が無くなる。
ヴィータが魔族達に侵攻を命じると同時に、佐藤優斗は巨大な“星弾”を“無限収納”から取り出していた。異世界から転移してきた者達が使える“無限収納”。それを利用して佐藤優斗は事前に“星弾”を作っていたのだ。
佐藤が二撃目を空に飛ばして、ハルヴェラ王国に向かわせた時、その二撃目は、雷撃魔法の大きな一撃を受けて空中で粉々に砕け散ったのだった。
その落とし方を知っているヴィータは声に出して言った。
「イーサン=クレイラがいるようです。陛下、“転移”でここはお引き下さい。私はイーサン=クレイラを足止めして参ります」
毎日“水場”の水に足を浸して、根気よくその水の中から濃い魔力を吸い上げているものだから、すでにリン王太子妃の身は恐ろしいほどの量の“魔素”を蓄えていた。同じことがルーシェや三橋友親にも起きているようだった。三橋友親に至っては、リン王太子妃が王宮へ戻った後もこの地下の“水場”の水の中で横になっていたりする。もしその水の中で静かに横たわっている友親の姿をリン王太子妃が見つけたのなら、間違いなく、ルーシェと同じく「友親が死んでる!!」と絶叫するだろう。
幸いな事にその姿を見られることはなかった。
三橋友親は、もし、ハルヴェラ王国がサトー王国の侵攻を受けたのなら、すぐさま自分に“遠話魔道具”で知らせるように、リン王太子妃に頼んでいた。侵攻当初、“星弾”の初撃を防ぐ役目を負っているリン王太子妃は、それが出来ないだろうから、彼女は何人もの侍従や女官達に、“遠話魔道具”で、三橋友親だけでなく、イスフェラ皇国以下の同盟国に連絡するように命じていた。それがスムーズになされるよう、侍従達には訓練すら彼女は施していた。
それこそ、いつサトー王国が侵攻してきても良いように。
各国への連絡がスムーズに行われること。
そのことがハルヴェラ王国の死活問題に繋がるものだから、王宮の者達も真剣に訓練に励んでいた。
仮初の平和な日々が流れていく。
いつかサトー王国が攻め込んでくる。そのことが分かりつつも、爪の先を鋭く研がすように備えるしかなかった。そして備えつつも平穏な毎日を繰り返していく。
エイベル副騎兵団長ら竜騎兵達がハルヴェラ王国に来て、五週間が経過した時、ようやく事態が動いたのだった。
「西方、アレドリア王国方面から“星弾”が飛んできているとのことです!!!!」
アレドリア王国方面から“星弾”が飛んでくることは予期していた。
王宮の面々に緊張が走り、侍従や女官達は“遠話魔道具”にかじりついて、事前に訓練されていたように同盟各国へ連絡をする。
アレドリア王国方面から飛ばしてくる“星弾”がハルヴェラ王国に到着するまでにはまだ猶予がある。発見が早ければその分だけ対応する時間もあるのだ。
リン王太子妃は、王宮魔術師達を率いて、これまた事前に組み上げていた王宮の物見櫓に登った。
そして同時刻、紫竜ルーシェはすぐさま成竜の姿をとってアルバート王子を背に乗せる。同じく、エイベル副騎兵団長も、麾下の竜騎兵達を率いていつでも飛び立てるよう準備を進める。そして彼らの前に“転移”魔法を使った魔術師カルフィーが現れ、事前に打ち合わせをしていたように、カルフィーはアルバート王子達竜騎兵達を、アレドリア王国内のサトーがいるであろう地点へ“転移”させた。竜でアレドリア王国に飛んでいくよりも、“転移”魔法を使う方が圧倒的に早く、佐藤の元に到着できるはずだからだ。
リン王太子妃は、自身の両腕に複数の魔法紋を刻ませていた。
一人ではなく複数の王宮魔術師達に自分の“魔素”を与える道を作るためだった。
その魔法紋が白く光を放つ。
そして王宮詰めの魔術師達が呪文を唱えだす。
アレドリア王国の国境を越え、巨大な“星弾”が飛んでくる。
その“星弾”の前に、これまた巨大な防御魔法が幾重にも重なり現れ、それに衝突した“星弾”が轟音と共に落ちていった。
アレドリア王国内に“転移”していた佐藤優斗は、一撃目の“星弾”が防御魔法の壁にぶつかり、凄まじい轟音と、地面を揺らすような振動で、それが落ちたことを知って驚いて立ち尽くしていた。
「……ハルヴェラ王国に“星弾”を防ぐ術があるとは聞いていないぞ」
その佐藤の言葉に、そばについていた魔の三公が一人ヴィータが頷きつつも言った。
「我々が次にハルヴェラ王国へ侵攻すると予想していたのでしょう。陛下、二撃目はいかがなさいますか」
「やる。魔族達も侵攻させろ。アレドリア王国と同じ手でいけばいい」
「分かりました」
防御魔法を展開する魔術師達を見つけて、それらを倒せば良いだけだった。そうすれば“星弾”から国を守る手段が無くなる。
ヴィータが魔族達に侵攻を命じると同時に、佐藤優斗は巨大な“星弾”を“無限収納”から取り出していた。異世界から転移してきた者達が使える“無限収納”。それを利用して佐藤優斗は事前に“星弾”を作っていたのだ。
佐藤が二撃目を空に飛ばして、ハルヴェラ王国に向かわせた時、その二撃目は、雷撃魔法の大きな一撃を受けて空中で粉々に砕け散ったのだった。
その落とし方を知っているヴィータは声に出して言った。
「イーサン=クレイラがいるようです。陛下、“転移”でここはお引き下さい。私はイーサン=クレイラを足止めして参ります」
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