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[挿話] 前途多難な恋
第十九話 不死者の討伐と石化
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六十階層に帰還した三名を含め、作戦会議では二人の姉妹への討伐作戦が練られることになった。
傍目から見てもリーダーの佐久間柚彦が、メンバーの隊員二人が石化した状態のまま、置いていかざるを得なかったことに、断腸の思いであったことは見て取れた。。
だが、副リーダーの伊勢谷進の言葉通り、あの時は石化して動くこともできない彼らを連れて逃げることは不可能であった。
そして、一度撤退したとはいえ、まだあの二人の不死の女達を倒す必要があることは変わらなかった。
「メドゥーサの頭を奪還することが、絶対勝利条件になる」
秋元は、今回の作戦会議に出席してそう発言した。
「神話では、メドゥーサの姉二人は不死だという。メドゥーサだけが不死ではなかった。順番的には、メドゥーサの頭を刎ねて、その後現れた二人の不死の姉に対して、石化するメドゥーサの頭を見せて倒すのだろう。だがその手順が分からなかったから、メドゥーサの頭を彼女らに取られてしまった」
淡々と語る秋元の言葉に、その場の隊員の誰もが口を挟まなかった。
「分かっていたなら、早くそう教えろよ」
瓜生がボソリと言うが、「分かっていたわけじゃないよ」と秋元はポリポリと頭を掻いた。
「メドゥーサと戦うのは僕だって初めてだよ。二人の姉はいるという伝説はあったけど、実際にはいなかったのだから。メドゥーサを倒したら姉二人が出て来るなんて誰もわからなかっただろう。でも、今となってはある程度、推察はできる」
その場にいた者は皆、いずれも秋元を第一陣に同行させれば良かったと一瞬思ったのだった。しかし、すでにもう起きてしまったことはどうしようもない。
「とにかく、メドゥーサの頭を奪還する必要がある」
「分かりました」
柚彦はうなずき、二人の不死の女達から、そのメドゥーサの頭を取り上げる方法について検討を始めた。
調査班の映像の分析で、二人の女の動きの素早さには注意を払うべきだとあったが(石化した隊員をすぐに押さえ込んでいた)、それでもついていけない速さではない。
「ヘルメットで戦うのは変わらないけど、遠方からボウガンで動きを止めよう」
前回のドラゴンと同じくワイヤー銃を使用することも考えられたが、素早く動き回る二人の姉妹を捕縛する際、メドゥーサの頭もワイヤーに巻き取られる可能性がある。それを避けるため、ボウガンで四肢を射貫いて動きを止める方法が選ばれた。
火器の銃の使用は、ダンジョンでは見合わされている。火薬を使うモンスターの出現を恐れているからだ。
「いっそのこと、ボウガンで頭を砕いてもいいだろう。瞬時、再生するというわけではないから、時間が稼げる」
「いや、それはだめだ」
隊員の意見に、秋元は頭を攻撃することは避けるべきだと言った。
「奪い取ったメドゥーサの目を見てもらわないとダメなんだ。頭を砕いたり、目が見えないように攻撃することは避けてほしい」
その後、地上本隊からボウガンを輸送してもらい、準備が整った隊員達のボウガンが、不死者二人の姉妹をボウガンで射貫いた。
強力なボウガンの、連射の威力に姉妹の手足は吹っ飛ぶ。手にしていたメドゥーサの頭も地面に転がり落ちてしまう。
それでもゆるゆると動き続ける彼女の傍らにすぐさま、一人の隊員が駆け寄って、メドゥーサの頭を掴んだ。
そして地面に倒れ伏した姉妹二人の眼前に、その頭を置く。
彼女らの目はそのまま、蛇の頭をした恐ろしい妹の黄色い目を見つめた。
やがて手足から白く硬い石に変化していく。
横たわったその姿のまま、二人の姉妹は石に変わり、隊員達は勝利したのであった。
倒す方法さえ分かれば、メドゥーサとその姉妹達の攻略は簡単であったといえる。
おそらく再度出会うことがあっても、カメラのついたヘルメットがあれば数分と経たずに倒せただろう。
しかし、初めて彼女らと出会った隊員達は不運であった。
結果的に二人の石化という状態異常の犠牲者を出してしまった。
石化状態の隊員達は、すぐさまダンジョンから運び出されて病院へ運ばれる。
とはいえ、状態は石化である。
通常の傷や病と違って、傷口を縫い合わせて治すということも、薬で状態異常を治すこともできない。
医師に何かできる手段はなかった。
今までダンジョンにおける討伐任務で、怪我人こそ出したことはあったが、こうした犠牲者を出したことのない自衛隊である。
この後、何故犠牲者を出すことになったのか、作戦に不備があったのではないかと、しばらくの間、マスコミから執拗に叩かれることになったのだった。
傍目から見てもリーダーの佐久間柚彦が、メンバーの隊員二人が石化した状態のまま、置いていかざるを得なかったことに、断腸の思いであったことは見て取れた。。
だが、副リーダーの伊勢谷進の言葉通り、あの時は石化して動くこともできない彼らを連れて逃げることは不可能であった。
そして、一度撤退したとはいえ、まだあの二人の不死の女達を倒す必要があることは変わらなかった。
「メドゥーサの頭を奪還することが、絶対勝利条件になる」
秋元は、今回の作戦会議に出席してそう発言した。
「神話では、メドゥーサの姉二人は不死だという。メドゥーサだけが不死ではなかった。順番的には、メドゥーサの頭を刎ねて、その後現れた二人の不死の姉に対して、石化するメドゥーサの頭を見せて倒すのだろう。だがその手順が分からなかったから、メドゥーサの頭を彼女らに取られてしまった」
淡々と語る秋元の言葉に、その場の隊員の誰もが口を挟まなかった。
「分かっていたなら、早くそう教えろよ」
瓜生がボソリと言うが、「分かっていたわけじゃないよ」と秋元はポリポリと頭を掻いた。
「メドゥーサと戦うのは僕だって初めてだよ。二人の姉はいるという伝説はあったけど、実際にはいなかったのだから。メドゥーサを倒したら姉二人が出て来るなんて誰もわからなかっただろう。でも、今となってはある程度、推察はできる」
その場にいた者は皆、いずれも秋元を第一陣に同行させれば良かったと一瞬思ったのだった。しかし、すでにもう起きてしまったことはどうしようもない。
「とにかく、メドゥーサの頭を奪還する必要がある」
「分かりました」
柚彦はうなずき、二人の不死の女達から、そのメドゥーサの頭を取り上げる方法について検討を始めた。
調査班の映像の分析で、二人の女の動きの素早さには注意を払うべきだとあったが(石化した隊員をすぐに押さえ込んでいた)、それでもついていけない速さではない。
「ヘルメットで戦うのは変わらないけど、遠方からボウガンで動きを止めよう」
前回のドラゴンと同じくワイヤー銃を使用することも考えられたが、素早く動き回る二人の姉妹を捕縛する際、メドゥーサの頭もワイヤーに巻き取られる可能性がある。それを避けるため、ボウガンで四肢を射貫いて動きを止める方法が選ばれた。
火器の銃の使用は、ダンジョンでは見合わされている。火薬を使うモンスターの出現を恐れているからだ。
「いっそのこと、ボウガンで頭を砕いてもいいだろう。瞬時、再生するというわけではないから、時間が稼げる」
「いや、それはだめだ」
隊員の意見に、秋元は頭を攻撃することは避けるべきだと言った。
「奪い取ったメドゥーサの目を見てもらわないとダメなんだ。頭を砕いたり、目が見えないように攻撃することは避けてほしい」
その後、地上本隊からボウガンを輸送してもらい、準備が整った隊員達のボウガンが、不死者二人の姉妹をボウガンで射貫いた。
強力なボウガンの、連射の威力に姉妹の手足は吹っ飛ぶ。手にしていたメドゥーサの頭も地面に転がり落ちてしまう。
それでもゆるゆると動き続ける彼女の傍らにすぐさま、一人の隊員が駆け寄って、メドゥーサの頭を掴んだ。
そして地面に倒れ伏した姉妹二人の眼前に、その頭を置く。
彼女らの目はそのまま、蛇の頭をした恐ろしい妹の黄色い目を見つめた。
やがて手足から白く硬い石に変化していく。
横たわったその姿のまま、二人の姉妹は石に変わり、隊員達は勝利したのであった。
倒す方法さえ分かれば、メドゥーサとその姉妹達の攻略は簡単であったといえる。
おそらく再度出会うことがあっても、カメラのついたヘルメットがあれば数分と経たずに倒せただろう。
しかし、初めて彼女らと出会った隊員達は不運であった。
結果的に二人の石化という状態異常の犠牲者を出してしまった。
石化状態の隊員達は、すぐさまダンジョンから運び出されて病院へ運ばれる。
とはいえ、状態は石化である。
通常の傷や病と違って、傷口を縫い合わせて治すということも、薬で状態異常を治すこともできない。
医師に何かできる手段はなかった。
今までダンジョンにおける討伐任務で、怪我人こそ出したことはあったが、こうした犠牲者を出したことのない自衛隊である。
この後、何故犠牲者を出すことになったのか、作戦に不備があったのではないかと、しばらくの間、マスコミから執拗に叩かれることになったのだった。
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